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〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜
98話✡︎✡︎クロノスの神話✡︎✡︎
しおりを挟む暫くしてユリナ達は目的地に向かう、後数時間で着くだろう。
記憶の間の中には何かが居る気配は一切無い、静かなもので遠くの水飲み場から水が流れる音しかしない、数多くの棚にある記憶の石板が薄い青白い光を放っているが、無数にある為にそこまで暗くは無い……
三人は奥の方に一際輝く棚を見つける
「あれが破壊と科学の棚です。
クロノス様の封印が光り輝いています」
ピリアが言うとその輝きから温もりを感じた、青白い光り……神聖さを感じ温もりさえ感じた。
目的地が見えた事で三人の足は早まる、程なくして三人は棚の前まで来る。
「なぜこれが……」
トールが思わず声を出した……棚の封印は内部がみえる様に透明で棚の下段には印が書かれた鉄の球体があった、大きさは人の頭二個分はあろうか……
「これは?」
ユリナが聞く。
「見た事がある……クリアスだ……」
トールが汗を流して言い、ユリナとピリアが驚いた。
ピリアは知らなかった、ここにクリアスの石板と共にクリアスその物があるなんて想像もして居なかったのだ。
三人が驚いて居ると背後から声が聞こえた。
「それを求めるのか?」
ユリナが剣を握った。
「待て敵ではない」
トールが止める。
「いえ!求めて居ません‼︎
私はクリアスの石板を無に返したいのです!
十万年前に!
クリタス王国を滅ぼし、私の沢山の友達を奪ったクリアスを無に返したくて来たのです‼︎」
ピリアが自らの意思をはっきりと叫んだ!
声の主は薄暗い所に立ち顔を見せない、だが武器は何も持って居ない様に見受けられる。
優しく穏やかな温もりを感じさせる男性の声が響き渡る。
「天界は一度しか産まれず
地上は二度産まれ……
冥界も二度産まれた……
私は三度目は
無いと思っている……」
そう不思議な事を話し出し小さなため息をつき、また優しく話し出す。
「そなた達は不思議に思わないか?
地上は幾たびも冥界の脅威に晒され
天界は地上を救おうとはしない……
神々を恨まないのか?」
「私達が神々を恨む訳がありません!
私達は神々の恩恵に預かり、今を生きているのです!」
ユリナが答えた、だがユリナはこの声も聞き覚えのある声に気付いていた。
「可愛いエルフよ、ならば話そう……
私が知っている神話を……
最初に無があり
無は二人の魂を生み出された
二人は無の神ニヒルに祈り
心を生み出して貰う
それにより多くの心が生み出される
愛、希望、喜び、友情……
美しい心が多く生み出されたが
憎悪、憤怒、悲嘆、恐怖
そして絶望……
醜い心も共に産まれた
二人は最初に愛と希望を取り
地上を生み出した
最初の神
無の神ニヒルは言った
破壊の神クロノス
創造の神アイン
そなた達は大きな過ちを犯した
永遠に苦しむがいい……
そう無の神ニヒルは言い残し
姿を消してしまう……
二人の神は
その過ちに気付かなかった
そして地上に巨人族を送り出し
冥界が生まれた……
憎悪、憤怒、悲嘆、恐怖、絶望
冥界の神々が生まれた
巨人族が滅び死の女神まで生まれた
破壊の神クロノスは
大きな過ちに気付き
地上を無に返し
始めて涙を流した
神が願い求めた物は全て
神が受け止めなければならない
例えそれが醜いものであってもな」
声の主は何かを教える様に話していた……
「地上は一度、クリアスを求めた……
それが過ちとは言わない……
今の世界があるのはクリアスのおかげだと言う事を忘れてはならない……
そして冥界にはまだ多くの神々がいる。
その脅威をクリアス無しに乗り越えるならば、神が犯した過ちを越えなければならない……
それでも……
クリアスを無に返すのか?」
ユリナは声の主が僅かだが本当に僅かだが、申し訳なさそうに言った気がした。
「えぇ……あなたが気付いた過ちを私達は越えて見せます!
三度目が無いとは、この世界が冥界に敗れた時、あなたは天界すらも無に返すおつもりでしょう?
そんなことは絶対にさせません!
この世界にはあなた達が手に取った……
愛と希望に溢れています‼︎‼︎
それが過ちと言うならば!
何が正しいんですか⁈
破壊神クロノス様が諦めてどうするのですか⁈⁈」
ユリナは見破り叫んだ……
声の主は静かに歩み出し顔を見せた。
「やはりクロノス様でしたか……」
トールは気付いていた、そして静かにひざまづき礼をとる。
クロノスは微笑み静かに言う。
「流石、ディアボルスに魅入られた者よの……我に恐れぬか……
ならば見せてみよ、そなたの歩む道を‼︎
そなたが言う希望とやらを‼︎」
らそうクロノスは強く言い、静かに記憶の間の闇へと消えて行った……
気付けば破壊と科学の棚の封印が解かれていた。
クロノスはユリナが孫である事を知っていたが、何も言わなかった。
ユリナもクロノスの話を聞き、オプスと同じ近い存在に感じたが、そこには触れなかった……
遠くからクロノスの声が聞こえて来た。
「一つ良い事を教えよう、この記憶の間はディアボルスが作りし物その意味を考えるが良い」
クロノスは地上に選ばせた、近い未来に訪れる、小競り合いでは無い冥界の侵攻に対して、クリアスを使うか使わないかを地上世界に選ばせるつもりでいた。
その為に無に返さず封印しただけでクリアスその物さえも残していたのだ……
「トール、お願い……」
ユリナはトールを見てそれだけ言った。
トールはピリアを見てピリアはそれに頷いた……
トールは暗黒を抜き地面に突き刺し唱える。
「我が主神闇の女神オプスよ……
神剣の力を解放せり……」
ユリナが暗黒を見てクロノスの神話を思い出した。
闇の女神オプスは無に返す力も持っている……無の神ニヒルとオプスに深い関係があるのか疑問に思い始めていた。
「二人とも、少し下がってくれ……
思ったより力が強い……」
トールがそう言った、トールは暗黒の秘めた力を実感していた、気を抜けばユリナ達を巻き込んでしまいそうな気もしたのだ。
トールはゆっくりと暗黒を引き抜き、その刃をクリアスの上に載せた時、クリアスは暗黒に吸い込まれて行く……
一瞬光り風が蠢いているクリアスだ、暗黒が光り輝く!
暗黒内部でクリアスが爆発したのか解らないが、何かが暗黒から吹き出すがそれを暗黒が許さないかの様に、凄まじい勢いで吸い込んでいく!
その頃天界では。
「クッアァ……クッ……」
闇の女神オプスが苦しんでいた、目を見開き紫の血を吐き気を失う程の苦しみに耐えていた。
「負けません……私が私が……」
オプスは瞳を見開き自らの力を最大限に高める、暗黒の瞳に紋様が現れるが、何も見ない様に天を仰ぎ見る。
「クッハ……」
オプスは瞳を閉じて膝をつき……大量の血を吐き這いつくばって倒れた。
オプスは早い呼吸をしてうっすらと瞳を見開き……紫の瞳から涙を流して静かに言った。
「良かった……抑えきれた」
オプスがそう言った頃、トールの暗黒の光りが落ち着き静かになる。
ピリアが涙を流し始める、ピリアは解っていたクリアスが暗黒内で抵抗した様に爆発したのを……
巨人族がどの様にしたのか解らないが、クリアスは暗黒に吸い込まれて直ぐには無に出来なかった様だ。
トールはそのままクリアスの石板も無に返した。
天界では……
「暗黒の秘密……誰にも言わなくて良かった……」
闇の女神オプスはそう言い、その場にエヴァを呼び内緒で自ら吐いた血を流し清めてもらった。
「お姉様……」
水の女神エヴァはオプスを心配して、オプスに命の水を静かに差し出して、オプスを静かに見守っていた。
ユリナだけら感じていた、誰かが苦しんでいたことに、それが自分にとても近い存在が苦しんだ様にしか思えなくて、母エレナに何かあったのかと心配し始めていた。
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