111 / 234
〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜
100話✡︎✡︎生まれた確執✡︎✡︎
しおりを挟む「王子!ペンタリア国は既に崩壊し敵の手に落ち、これ以上の抗戦は無意味‼︎
ここは引いて下さい‼︎
我らの手には負えません!兵を思いセレスへ撤退を‼︎」
「ペンタリア?」
ユリナが何処か解らず疑問に思う。
「ペンタリア、今は地名も残らないな……
エルフは元々辺境地域の手前、ペンタリア地域の種族だったんだ……
それを巨人族がセレスの土地も与えたんだ、俺の時代までエルフ族は二カ国持つ強力な種族だったんだ……」
トールが説明してくれた。
「じゃ!国が崩壊したって……
何人殺されたの⁈」
「わからん……
だが今のセレスの半分くらいは命を落としただろうな……」
「そ、そんな……」
その被害の大きさにユリナは愕然とする、それだけの人々が死に、国が守れなかった……
悲劇どころでは無い絶望的である。
シェルドはそれを聞き振り向く……
民達の姿を見て叫ぶ!
「まだだ!我らが引けば……
あの民はどうなる?
国は民が居ればこそ再興出来る‼︎
踏み止まれ!
死力を尽くし剣を振れ‼︎」
シェルドは兵を鼓舞し防衛戦を繰り広げる……
「王子!無茶な‼︎
退いて下さい‼︎」
「戦わぬなら民と共に逃げよ‼︎
我は生き残った民を見捨てる事は出来ない‼︎‼︎
全部隊に次ぐ!全ての民を救え‼︎
国王軍の意地を見せよ‼︎」
シェルドは自らの剣が折れても、命を落とした兵の剣を拾い、死力を尽くして戦い乱戦に持ち込んだ。
その甲斐あってか、民達はミノタウロスの軍から十分距離を取ることが出来た……
だが、シェルドの部隊は僅か五個中隊、五千程まで兵を失ってしまう、甚大な被害を出していた。
そして敵の増援が度々来ていたのが、更に戦況を悪化させていた。
ついにその後方にミノタウロスの本体の旗が翻った。
それは先程、救えなかった者達が誰一人として生き残って無い証……残酷な旗にシェルドは見えていた。
「全軍撤退せよ!
生き残りたくば全力で走り切れ‼」
シェルドはついに撤退を指示した。
苦すぎる敗北……国を守れず民も半数は見捨てるしか出来なかった。
シェルドの心に初めて父ラステア国王への怒りが芽生えていた。
(なぜ民より先に逃げられたのか)
シェルドは心からそう思っていた……
「父上!フロースデア家‼︎
神の血を引く一族の誇りを!
忘れられたか‼」
シェルドはそう叫び涙を流し馬を走らせていた……
それでもシェルドの戦いによって、十数万の民を無事にセレスまで避難させる事が出来たのだが、シェルドの胸は悲しみと怒りが溢れそうな程に苦しんでいた。
ユリナはシェルドの言葉を聞き耳を疑った。
神の一族……フロースデア家が?じゃあ……彼は私のご先祖様なの?そう思っていた。
シェルドはすぐに王宮に向かい、ラステア国王の所に向かった。
ミノタウロス達は闇の街道を通ることは出来ない為に、守りを固める必要は無かった。
闇の街道を守るドッペルがエルフを守ってくれたのだ。
シェルドは王宮に向かう間、凄まじい程の歓声で迎えられる、彼はこの戦いで英雄と呼ばれる様になった……
だがそんな言葉は彼はどうでも良かった。
王宮につき玉座に座るラステアに駆け寄り直ぐに叫ぶ様に強く言った。
「父上‼
なぜ本軍を率いて先に撤退されたのですか⁉多くの民が残されているのを知っていたはず!それをなぜ‼」
「今の時代はな、他国にいつ攻め込まれるか解らん……
兵を無駄に死なせる訳にはいかんのだ……
よりによって攻めて来たのが辺境のミノタウロス、我らが兵を残せなければこのセレスも危うくなる、それが解らん訳では無かろう?」
ラステアは強くもなく弱くもなくそう言うと。
「ですが父上!」
「くどい!これ以上この話をするは無用!下がるが良い‼︎」
ラステアはシェルドにそう強く言い放ち、シェルドは下がるしか無かった。
シェルドが玉座の間から去ってすぐにラステアに話しかける者がいた。
「若君はまだお若いですな……
王が生き残ってこそ国は守れるもの、王が居なくては国はまとまりません。」
そう言いながらダークエルフの魔導師が話しかけて来た。
「最ッ低……」
ユリナがラステアに対して声を漏らした……
ピリアも思ってた事をユリナが言っていた。
「ラステア様、力を借りてペンタリアを取り戻してはいかがかな?」
「シュバルツ、何処に借りると言うのだ……」
ダークエルフはシュバルツと言うらしい、彼は不敵な笑みを浮かべて言う。
「不の闇の力です。
闇の女神が不在である今、闇の力の三分の一程が迷走しております。
その力を利用すればペンタリアを取り戻すのは可能かと存じます……」
シュバルツは自信に満ちた表情で言う。
「……」
ピリアがそれを聞いて怒りを覚えていた……
「この人が闇の力を悪用しようとしたんですね……なんて人なの……」
ピリアも解っていた、闇の女神オプスが囚われてから数万年は、一部の暴走し始めた闇の力を、闇の眷属がある程度は抑えていたが、地上世界の干渉により次第に効かなくなっていったのだ……
ユリナもそれを聞いて更に怒りを覚える、同じエルフ族の記憶であるから尚のことであった。
まだ記憶は続く……
「それは褐色を束ねる、そなたが言う意味を解っているのか?」
ラステアは聞く。
「無論、言う必要はありませんな……
今回の戦いで、命を落とした者達を考えればペンタリアを取り戻すこと、その意味の大きさは解って頂けるかと……」
しばらくの間、沈黙がその場を支配する……
「解った考えてみよう……」
その日を境にラステアとシェルドはあまり合わなくなってしまう。
シェルドも自らの屋敷を建て、そこに住む様になった、その屋敷は今のユリナの住む屋敷の場所に建てられた事がわかる。
それから五年の歳月が過ぎ、エルフ族はセレスの地で立ち直りつつあったある日、シェルドの部下が信じられない情報を持って来た……
ラステアはシュバルツと共に闇の不の力を、使う魔法を生み出そうとしているらしい、あろうことか、それは亡者を操る魔法であった。
ペンタリアでは多くのエルフが命を落としたそれを利用しようと言うのだ。
闇の力、そんなものをエルフが使いこなせるとはシェルドは考えられなかった、仮に使いこなせたとしても、死者を冒涜する様な行いは許される物では無い……
「父上、血迷われたか……」
シェルドは瞳に悲しみを宿しそう呟いた……
0
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる