✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜

107話✡︎✡︎ガーラの最後✡︎✡︎

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「グッ……」
(此奴大地の力が効かぬ……いや……)
その頃サラン王国、東の山脈で大地の使徒ガーラが何者かと戦っていた……

珍しく余裕を見せない。

 黒い影がガーラに襲い掛かる、ガーラは素早く手を振り木々の枝が槍になり影を突き刺す!
だが動じずにその影は突き進んで来る……

「アンサラ!」

 ガーラが叫び、大地から岩の壁が突き出しそれを止めたかに見えたが、ガーラは走りに出し深い森を駆け抜ける、あのガーラが逃げたのだ。


「アンサラ!エレナの元に行け!
そして伝えよ俺が死んだ事を‼︎」
「何を……え?」
 アンサラは気付いた凄まじい速さでそれは追って来たのだ。
 逃げ切る事は不可能と判断、ガーラは伝える事を選んだ……森の中で自然の中で最大の力を発揮するドルイド、大地の御使と言われたガーラが逃げる事しか出来ない……

 神々に仕える巫女と使徒さえ脅かす何かが居る事をアンサラは悟り大地に潜った。

 ガーラは振り向き大地を蹴った。

 凄まじい地震が起き巨大な地割れ生まれた。
ガーラはその地割れに落ちたが、それは追って来た。


「良かろう!
貴様も我と共に……
大地に抱かれるが良い‼︎」


 地割れに落ちて行くガーラの背後に灼熱のマグマが波打っている。

(愚か者は俺だったか……
アルベルト……今度こそエレナを泣かすなよ……)

 それが大地の使徒ガーラの最後の想いであった。


 ガーラはマグマの海に落ち声も上げずに消えていきそれと同時に地割れが塞がって行く……
 黒い影はすんでの所で浮き地上に戻ろうとしたが、そこに赤黒い何かが地上から突っ込んで行く……



「貴様に死をくれてやる!
その身をもって味わえぃ‼︎‼︎」



 ムエルテだ、凄まじい速さで巨大な骨の鎌で黒い影を切り裂いた。
 その鎌は冥界の亡者どもの呻き声を上げている……
 鎌の内側は鋭利な刃で骨でありながら輝き、外側は無数の牙が生えている様な、禍々し形をしていた。

黒い影は人の形になり、腹から切り裂かれマグマの中に落ち消滅した。


「大地の使徒よ、其方の死は喜べぬ……」


ムエルテは間に合わなかったと思っていた……神に仕える使徒が地上から一人消えた、それは地上世界にとって大きな損失であり取り戻せないものであった。



 その姿をユリナは夢で見ていた、信じられなかった。
 ガーラは大地の使徒で、母エレナと同等の力を持つ者が何も出来なかった。

 そしてムエルテが助けようとした事……

そのムエルテの姿は天界の神々が手を差し伸べない事に対して、まるで訴えている様であった。

 そして既に無の神ニヒルと冥界の戦いが、いや……地上世界でその戦いが始まっている事にユリナは気付いた。



 ユリナは飛び起きピリアを起こして、一部始終を話した。
 ピリアは顔を覆って涙を流した、あのガーラがいっときはエレナの屋敷で共に暮らしていた。
 気難しい人だったが、優しく穏やかでそんな人が居なくなってしまったのだ。

 そして、その仇を取ったのが死の女神ムエルテであった事に、何とも言えない複雑な気持ちになっていた。

 その話をトールもウィンダムの姿で聞いていた……

(アンサラ……
主人に忠実でも違うだろ……)
ウィンダムはそう思っていた。

 ユリナは直ぐに水の鳥をエレナに送った。
ガーラの死を伝え、カナの結婚の許しを強く願い送ったのだ、もはやいつまで平穏な時が続くか解らない……少しでもカナに幸せを味わって貰いたいと思っていた。


 そしてユリナ達は素早く支度してバータリスへの道を急いだ。
 ガーラが狙われて命を落とした、大地の使徒が手も足も出なかった。
 炎の使徒、シェラドが心配になったのだ。
戦士の一族のシェラドは逃げる様な事はしないだろうが、無駄に命を散らさせてはいけない……

 カナが悲しむ顔がユリナの頭を過った……


 翌日バータリスにつき、シェラドの屋敷に直ぐに向かった。
 だが、シェラドはカナと共にベルリス温泉に行った様だった……ユリナ達はすぐにシェラドとカナを追った。

 その頃ベルリス温泉では……

 遠いオプシェンからダークエルフの族長、シュトリスがやって来ていた。

 あの八万年前にエルフ族を、エルフとダークエルフと二分する原因を作った、シュバルツの子孫である……
 シュトリスはシェラドと話していた。

 何故今まで敵対していたセレスと同盟を結んだのか、傍にいるカナが原因か?とシェラドを問い詰めていた。
 ベルガル国王がその話に割って入り、国政と世界情勢を話し、シュトリスは納得出来ずに話し合いは荒れただけで終わり、シュトリスはその場を去った。

 そしてシュトリスに部下が何かを報告した……
 シュトリスは微笑み、ダークエルフの兵を率いて騎馬で走り出した。


「皆よ!セレスの姫君が此方に向かっている様だ!我らのやり方で迎えてやろうじゃないか‼︎」


 そう叫び、ベルリス温泉から出て行った。
シュトリスは考えた、アグド領内でセレスの姫が命を落とせば、アグドとセレスの関係は悪化すると……


 その叫びをベルリス温泉で買い物を楽しんでいるカナが聞いていた。
 カナはシェラドの元に走って、今の出来事をシェラドとベルガルに報告した、別にカナは心配する様子は見せなかったが……シェラドとベルガルは気が気じゃない。
 カナはユリナとトールが一緒であると知っていたので、さほど心配しては居なかった。

 直ぐにシェラドは飛び出し、ベルリス温泉の兵を集め少数ではあるがシュトリスを追った。

「私の護衛を全て急ぎ向かわせろ!
大恩あるエレナ殿の娘に何かあったらどうする!何があっても守れ!」
 ベルガルが叫び国王の護衛部隊が素早く行動を開始した。


「国王様?ユリナなら大丈夫ですよ、あの時デスロードを倒したのです。
ダークエルフの小隊相手に負けるはずはありません」
そうカナはベルガルに微笑みながら言った。


 ダークエルフの足は速い……騎馬も風の魔法により通常より速くシェラドの部隊もベルガルの部隊も追いつけるはずがない。

 ベルガルとシェルドはそう言う問題では無いと解っていたが、カナはエレナがアグド側が形式的に動けば問題無いと思い、更にユリナが初めての軍を相手にする実戦として、いい機会だと思っていた。

 争乱の時代を生き抜いたカナからすれば、このくらい超えて貰わなければ困る……そうも感じていたのだ。
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