✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜

108話✡︎✡︎フェルト✡︎✡︎

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「ユリナ……」
ウィンダムが言う。
「えぇ解ってる、ピリア戦闘になります。
気をつけて」
「はい、ユリナ様も気をつけて」

 ピリアがそう答えユリナは微笑んだ。
 前方に黒い一団が見えてきた、数は五百程シュトリスの一団だ、彼らは展開し囲む様に広がりだす。

ユリナは弓を構えた。

 矢に魔力を込めて左手側に放つ……
 その矢は凄まじい速さで飛び、左手側に展開していた部隊の前で竜巻になり、ダークエルフの部隊に襲い掛かる。


ユリナが先制攻撃を仕掛けた。


 そしてウィンダムが、トールになり暗黒を持ち凄まじい速さで正面に突っ込んで行く。
ピリアは右手側に馬を走らせ、エレナの姿になり剣で圧倒して行く。


「なんだ奴らは‼︎我らが敵と解っていたのか!」

 シュトリスは戸惑いながら、馬から飛び降り剣を抜き、トールに斬りかかる。
 シュバルツの血を引いてるだけあって見事な剣を振るが、闇のレジェンド・トールには敵わない……
 既にユリナは馬を止めて、戦局を見て矢に魔力を込めて放っているだけだ。


 カナが言った通り、シュトリス率いる五百程度の部隊はユリナ達の相手では無かった。

 ユリナがトールとシュトリスの戦いを見て、何かに気付いた……
 そして次の瞬間、トールが軽くだが右腕を斬られた。

「えっ?……」

ユリナは目を疑った、トールが手傷を負ったのだ。


 トールとシュトリスの戦いに割って入った者が居た。

「シュトリス様、ここは私にお任せを……」
「やれ!フェルト‼︎」

 トールは構え、素早く暗黒で斬りかかる!
フェルトは双刀の剣で其れを受け止めた!

「‼︎」

トールは驚きを隠せなかった……
 暗黒の刃は斬り裂くのではない、全てを無に返す為に斬れている様に見えるのだ、その為に斬れない物は無いはずだった。

 それを遠くから見ていたユリナもピリアも、有り得ない物を見た反応をし動作が遅れた……ピリアは敵兵の刃を、紙一重で躱してまた戦いに専念する。


「どう言うこと?
暗黒はオプス様の力その物……
何故……抵抗出来ると言うの?」


 ユリナは戸惑うが、トールは大剣らしくフェルトの双刀を押し込み崩した。


「こんな重い剣初めてだな」
フェルトは素早く下がり、速さで勝負に出た。
 だがトールはゴブリンとは思えない速さを見せ、暗黒を小枝の様に扱いフェルトを寄せ付けない……

 その様子を見て、ユリナが弓を構えて援護しようとした。
 それに気付いたフェルトは素早く、シュトリスの前に立ち、庇う様に振る舞いユリナが矢を放った時に……フェルトはその矢を避けた!


「なっ!」
ユリナは驚いた……
ユリナの矢はシュトリスの胸を射抜く。


「貴様、何故……」
騙されたシュトリスは血を吐きながら、必死に立っている。

「悪いな、俺はこの世界のイザコザに興味はない……
やることやって早く帰りたいんだ。

お前のやり方じゃ永遠に帰れない気がしてな、それだけだ」
 フェルトはそう言うと振り向き……
 素早く振り返りながらシュトリスの喉を剣で切り裂いた!



 シュトリスは声も上げれずに血飛沫を上げ倒れ命を落とした。

「シュトリスは死んだ‼︎

これ以上!

エルフと争えば我らは孤立するだけである‼︎

八万年前に俺は……
この世界に居なかった!
ここに居る全ての者が居なかった‼︎

先人達の過ちをの為に!
我らは争うのか⁈
それが過ちだと!
誰も思わないのか⁈⁈


そしてその恨みを未来に持って行くのか!
我らの子に背負わせるのか⁈

我々は!先人達の怨念を‼︎
背負わされて来ただけだ‼︎


我らは誰の為に!
エルフと争って来たのだ⁈
誰の為だ⁈

誰のためでも無い‼︎
これから生まれる……
我らの子のためでも無い‼︎

俺は同じ一族が争い続ける事に……
喜びを感じる事は出来ない‼︎

新しい世界の為に生きたい者は!
俺と共に歩め‼︎」


 フェルトは叫んだ力強く叫んでいた。
 その声は響き渡り……駆けつけようとしたシェラドとベルガル国王にまで聞こえた。

(こいつ……心が見えない……)
 トールはウィンダムの力でフェルトの心を見ようとするが、何故か見えなかった。


 ユリナはフェルトの叫びに心惹かれた……


 ダークエルフ達はフェルトに礼をとり、忠誠を示し始める、フェルトは仕組んでいた。

 このベルリス温泉の族長訪問は、フェルトが話を進めダークエルフの有力者を、これを機に取り込んでいたのだ、彼らが崇拝する死の女神ムエルテからの支援を背景にしていたのは言うまでも無い。
 無論この訪問に同行する者達も全て取り込んでいたのだ。


「お前、この世界の者か?」
 トールがフェルトに聞いた、暗黒を受け止める剣を持ち、守護竜の力で見抜けない心を持っているフェルトを疑うしか出来なかった。

「少なくとも、お前達の敵では無い……それだけていいだろう?」
 フェルトはトールに笑顔で答え、ユリナに向かって歩いていき、ユリナに礼を取り詫び願い始めた。


「セレスの姫君、ご無礼をお許し下さい。
私フェルトはセレスに刃を向ける気は有りません……
どうかセレスの女王様に謁見する機会をお与え下さい」
 その様子を追って来たシェラドとベルガルが少し離れた場所から、ゆっくりと近付きながら見ていた。

「えぇ、その気持ちが嘘でないなら……」
ユリナは久しぶりにセレスの姫として答えた。

「ユリナー!」

 カナが馬を走らせユリナに向かってくる。
 久しぶりの再会で全く心配してる様子は無いカナは既にユリナの実力を知っていた。
 あの時アグドを守る戦いで、ユリナはデスロードを倒し、それから二年毎日トールから大剣を教わっていた。

 星屑の劔は持つ者に合わせて軽くなったりしてくれる斬馬刀。
 ユリナは瞬間的に重くする方法も身につけて二年前とは比べ物にならない程腕を上げた。

 ユリナとカナは水の鳥の魔法でいつもやり取りしていてその様子をカナは知っていたのだ。


 フェルトがカナの方を見て少しだけ驚いた様だった。

(この人は……まさか……)
フェルトはカナを見てそう思っていた。

「私の姉カナです。
アグドのシェラド卿の妻になる方です」
ユリナがカナの紹介をした。

「ユリナ大丈夫?」
「えぇ、お姉ちゃんも元気そうだね。」
 ユリナは笑顔で受け答えをするがフェルトだけには見えていた。

 カナの幸せを願うがこれから起こる、絶望的な戦いの為に残された時が僅かしか無い……それを悲しむユリナの姿をフェルトの瞳は見ていた。
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