✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜

119話✡︎✡︎下手な童話✡︎✡︎

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 フィリアが死んだ……その知らせは直ぐにクリタスにいるフェルミンに届いた。
 闇の街道は魔族の結界に守られ、街道を使いクリタスに知らされた。

 フェルミンは泣き崩れ……数日間誰にも合わなかった。
 その知らせは更にパルセスに届き、直ぐにパルセス女王フェルミンの元に三千は超える女王護衛部隊がクリタス王国に送られた……



 そしてその動向は世界に不安を与えた。



 セレスではフィリアの遺体をエレナが魔力を持ちいて保存していた。
 フィリアの葬儀、フェルミンを待っていたのだ。
 フィリアの遺体は美しく整えられ、エレナの魔力でまるで死を思わせない程、眠る様に横たわっている。
 その周りは溢れる程の花で飾られ、まるで眠れるお姫様の様であった。


「フェルミン……大丈夫かな……」
 エレナはフェルミンを心配しながら待っていた……
 戦場で数多くの死を目の当たりにして来たエレナは死と言うものに慣れていた。
 エレナは精一杯明るく送り出そうと、心の支度も整えていたが、今度はフェルミンが心配になっていた。

 そしてふと気づいたユリナ達に今日は会っていない事に。




コンコン!
 クリタス王国のフェルミンがこもっている、トルミアの屋敷の一室にノックが鳴り響く。


「フェルミン、入るよ!」
 ユリナだ、トルミア女王が鍵を貸してくれて勝手に入って行った。

 フェルミンは椅子に座り外を眺めていた、反応は無い自ら命を絶ってる訳でも無い……ただボーっとしていた。

「フェルミン……」

 ユリナは呟きそっと歩み寄る……目の前にさっと手を振るが反応がない、フェルミンの悲しみは凄まじく深い……立ち直れていないのだった。


 ユリナはベッドに座り静かに話し出した。



「下手な童話だけど聞いてくれる?




 むかーしむかし……

記憶の棚に二人の名も無い少女が居ました。

二人は不老不死でずっと若い少女でした。

ですが悲しい事に魔族である二人は地上の暖かさ知らずに過ごしていました。

十万年経ったある日、赤い鎧を着た悪者が記憶の棚に現れて、百五十年も閉じ込められてしまいます。

そこに二人のエルフの少女が現れて光の騎士様を呼んでやっつけてもらいました。


名もない魔族の少女二人は、綺麗なお姉ちゃんに、愛と言う意味のある名前を貰いました」


 ユリナは静かに静かに不器用でも精一杯思い出しながら話した。


「二人の姉妹のお姉ちゃんは、綺麗なお姉ちゃんと冒険に行きました。

妹はおうちでお留守番です、でも二人とも違う場所で地上の温もりを、いっぱいいっぱい感じていました。

二人とも地上が大好きになりました。

お姉ちゃんの方は冒険から帰って来たら、とっても立派な魔族になっていました。

妹の方はお留守番をしていたので、変わらずでした。

 妹は思いました。

私も強くなりたい、強くなれなくても、守れる様になりたい……」


 ユリナは目に涙を溜め始めていた、そしてフェルミンも目に涙を溜めている……


「ある日、ドワーフのお姫様と出会いました。そのお姫様は自分のしたい事を一生懸命やっていました。

妹はお姫様に憧れました。

お姫様になりたいんじゃなくて、やりたい事をして、自由にしているその子に憧れました。

妹は思い出しました。

自分に名前をくれた綺麗なお姉さんが冒険に行く時、その憧れたお姫様が心配していっぱい泣いていたのを……

それでも強がって、何も言わずに馬車で帰って行った事を……

守りたい気持ちと、心配な気持ちを学びました。


そして暫くしてそのお姫様が女王様になる事を知りました。

妹は思いました、憧れの人を守りたいって強く思いました……」


 ユリナは言葉に詰まってしまったが、それを押し殺し、心の中で弱い自分に刃を突きつけた……
 フィリアの最後をどうしても伝えたかったのだ。


「ある時、地上が平和になったのに何かに女王様が狙われました。

妹はがんばりました、自分を身代わりにして……
きっと思ったでしょう。

お姉ちゃんの様に戦えれば……
名前をくれた綺麗なお姉さんの様に戦えれば……
でも妹は闘いませんでした。

身代わりになれば絶対に守れる。
そう思ったのです。

憧れの女王様を守りたい……
彼女は決めていました。

十万年、悲しみに目を背けて何もしなかった自分が今出来ることを精一杯すると……

暗い道を走り抜けて助けを呼ぶと……

彼女は逃げきれませんでした。

それでも、彼女はやり遂げました……
十万年何も守れなかった彼女は……

か、か、彼女は……」


 ユリナに悲しみがのしかかる、それはとてつも無く重くて、ズッシリと口を閉ざしてしまう程だったが……


「彼女は……憧れの……
女王様を守り切りました。

そしてエルフの国でその女王様を今も待っています。
し、しずか……に……」


 ユリナの方が泣き崩れてしまった。
 扉の向こうでは、カナとフェルト、トルミア、そしてトールが静かに話を聞いて悲しんでいた……

(フィリア……)
フェルミンは再び思い出した。
 フィリアとの短い日々を。

記憶の棚で巨人族の科学の石板を二人で漁る様に見た日々……

そして二人で新しいクアパを考えた日々……

一緒に街でお買い物して、服をプレゼントしあった日々。

女王として仕事をしている時に手伝ってくれた日々……

 細かく思い出せば、沢山の思い出があった事に気付く、フィリアはいつもフェルミンのそばに居てくれたのだ。


 そして窓からユリナを照らす日差しが遮られた……


「ユリナさん、セレスに行きましょう」


 フェルミンが立ち上がり、ユリナの涙を拭きながら優しく声をかけてくれた。
 フェルミンはフィリアがどんな思いで、フィリアのそばに来たのか知らなかったのだ……それを初めて聞いてフェルミンは、フィリアに会いに行く事にした。

 ユリナはフェルミンの顔を見て、無理にでも笑顔を作り、フェルミンもそれに答えて笑顔を見せてくれた。
フェルミンらしい愛らしい笑顔だが、その瞳は悲しみで溢れていた。
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