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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜
130話✡︎✡︎カイナの涙✡︎✡︎
しおりを挟む其れからの世界は動きが早かった、各国は軍を編成し次々と派遣して行く、戦の支度となれば武器や食料を集めなくてはならない、だが其れを経済大国でもあるパルセスとセレスが支援していた……
数日経ち辺境地域では、破滅の女神が苦しい戦いを強いられていた。
巨人族を押し返してはいたが、そこに巨人族が作り出した、シャッフェンが粘り強く一進一退を繰り広げていた。
花の女神であったフローディアは冥界に落ち破滅の女神となったが、元々の性質で花の魔物を生み出し戦っている。
フローディアはまだ力を見せていないが、この死を恐れないシャッフェンと言う怪物に手間取っていた。
そこに、南風が吹きフローディアは様々な花の香りを嗅ぎ取る。
「もう十分です、一度下がりましょう」
フローディアが呟き冥界の歪みを生み出し、花の魔物達は素早く戻っていった。
フローディアはニヒルが現れないこと、そして巨人族がクリアスを持ってる事を踏まえて一旦去る事にした、そして何よりもクリタス王国にユニオンレグヌスの旗が集まり始めてるのを感じたのだ。
「早い帰りですねぇ、目的は達したのですか?」
冥界に帰ったフローディアにメトゥスが色めいた声で話しかけて来た。
「私が手伝って差し上げても良かったのですよぉ」
「メトゥスさん、貴女の力は半分奪われたままです。もし全ての恐怖を奪われれば、貴女は消えてしまいます。
それが何を意味するか考えて下さい」
目を伏せながらフローディアは言うがメトゥスは気に入らなかったらしい。
「天界より落ちた女神が何を言う⁈
私が巨人族に劣るとでも⁈⁈」
メトゥスは空間を歪ませ地上に出向こうとするが、メトゥスの首に鎌が当てられた……
「誰が地上に行って良いと言った?
妾の命が聞けぬなら、今この場でそちの首を落としてやっても良いのだぞ?
さすればそちの恐怖は冥界に留まる……
いかがじゃ?
ニヒルに食われて無に帰るよりマシであろう?」
「ムエルテ……」
メトゥスは、苛立ちを見せながら冥界の奥に去って行った。
「フローディアすまんのぉ……
時間稼ぎご苦労であった。
地上がやっと動き出した」
「その様ですね、オプスには伝えて来ましたか?」
「あぁ、地上に出るのはもう少し待てとな……
ニヒルは魔族としても暗黒世界にいたからの……
地上より暗黒世界を食いに行った方が早いはずじゃ
もしその時にオプスが居なければ暗黒世界が奴の物に容易くなってしまう……
妾の誤算であったが冷静になれて良かった」
ムエルテが言う。
「そうですね、暗黒世界からなら天界も冥界も地上にも攻める事が出来ますからね……」
フローディアが言う。
ムエルテはあのリンゴの木からミノタウロス族の国に向かう途中でそれに気付いたのだ……
そして其れを伝えに天界に行ったが、オプスは既に暗黒世界に帰っていて、直ぐにオプスを追って暗黒世界に行っていたのだ。
「もし暗黒世界が落ちたら……
四界がバラバラになってしまいます。
そもそも……!」
フローディアが何かに気付いた。
「気付いたかフローディア、暗黒世界はオプスだけで作り上げた世界……
そして他の三界を繋ぎ一つの世界にしている。
闇の女神だけで作り上げれる代物では無い……」
(オプスよ……
闇の女神オプスよ話してくれぬか
其方は何者なのだ)
ムエルテは深く考えそれは表情にあからさまに出ていた。
その数日後、ユリナが強行軍でベルリス温泉に到着した。
兵は疲れ切っている、兵達に一日だけ休ませ、その翌日にバータリスに向かう様に指示を出して、ユリナ達は休まず直ぐにバータリスへ向かった。
あの知らせをエレナが受け取って何もしないはずは無い、それを知りたかった、ユリナ達は馬を変えて、風の様な速さでベルリス平原を駆け抜けて行った。
バータリスにはアグド全土から兵が集まり始めていた、既に三分のニが集結する予定である。
そして、オプシェンからの兵も一部到着している、ユリナ達がバータリスに着いてフェルトはダークエルフ野営地に向かった。
ユリナ達はバータリスの王宮に向かい、ベルガル国王と話しエレナの執務室に向かった。
カナは心配事があってアヤに会いに行った。
アヤは王宮の中庭でいつも通りヴァイオリンを弾いていた、美しく優しげな音色……このアグド王宮の中庭はアヤのお気に入りだった。
アヤは二年間この中庭でいつもヴァイオリンを弾いていた、その音色を優しい穏やかな瞳で見つめる者がいた……
ベルガルであった、そして二人は静かに距離を縮めながら二人の愛が産まれたのだ。
カナが気づかれない様にヴァイオリンの音色を聞いていると……
「水の舞姫どの、久しぶりに曲を合わせないか?」
「国王様……」
「すまないが私を信じてくれ……アヤはアヤだそれ以外の誰でも無い、アヤは私が守る神からも神の敵からもな」
カナは気付いていた、アヤが悲しみに満ちていた事もカイナと同じイミニーであった事も、だがベルガルも知りエレナも気付いていながら、そっとしているのを見て触れない事にした……
カナはベルガルから深く熱い愛を感じ微笑みながら、アヤに歩み寄って静かに舞い始めた。
二人の姿は以前と変わらなかった、以前と同じように美しくそして神に愛された証……
白銀の髪へと変わって行く、二人は感じていた二人とも同じ事を考えていた。
カイナの冥福を祈り、二人は最高に美しく舞いヴァイオリンを弾いていた。
「カイナは見てるかな?」
カナが囁く……静かに静かにアヤは瞳をつぶり……頷いた。
「見てるよ……私は見てるよ」
カイナは天界から二人の舞を見ながら目に涙をためて呟いていた……
「あのお二人はいつも美しいですね……
カイナさんの本当のご友人ですか?」
オプスが天界に戻って来ていた、カイナはオプスの元に来たばかりで、急いでオプスは暗黒世界に行ったが、心配になったのだ。
カイナは静かにうなずく……
「カイナさん?
まだ天界が憎いですか?」
オプスが聞いた。
カイナは静かにうなずく。
涙を流してうなずく。
「良いのです……それで……」
オプスがそう言う。
「えっ……」
カイナが驚く。
「無理に天界を良く思わなくていいです……
あなたの言う通り
私も天界に疑問を持つ時がありますから……
私がそう思うのに
カイナさんに無理に言えません……」
オプスが悲しい瞳で言う。
「オプス様がそんな……」
カイナが気にする。
「はい
私の立場でそれは
言ってはいけないことです。」
オプスは可愛らしく魅力的な笑顔でカイナに言う。
「でも……そうなんです。
暗黒世界を私が作ってから天界は、あまり地上に手を差し伸べなくなりました……
ですが私では全ての人々の声を聞けません……闇の女神ですから……
ですから地上世界に生まれ生きた
カイナさんが天界に意を唱えても
不思議では無いのです。
カイナさん……」
オプスはカイナの名を呼び、静かに深くお辞儀をしていた……
「なっ、オプス様‼︎やめて下さい。」
カイナは驚き戸惑い、慌ててしまう。
「いえ……こうさせて下さい……
神々が地上を良く見ていれば……
カイナさんの手が
血に染まることは無かったでしょう……
カイナさんの村の人々も救われたでしょう……
本当に……本当に……」
流石のオプスもカイナに詫びる言葉を見失ってしまう、カイナの歩んだ道は詫びて済む話では無い、だがオプスは神としてと言うよりも人として詫びなければと思っていた。
それは一時だが、オプスもユリナ達と地上にいて人として過ごし、痛いほどカイナの気持ちを知ったのだ。
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