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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜
131話✡︎✡︎辺境地域から✡︎✡︎
しおりを挟むユリナはすぐにエレナの元に向かった。
綺麗なエレナの執務室の扉を開けたが、エレナは居なかった。
ユリナは近くに居た衛兵に聞き直ぐにそこに向かった……そこは「失いし炎の間」アグドの悲しみを伝える部屋である、エレナは蝋燭を数本灯し祈りを捧げていた。
「お母さん、なんでここに……」
「ユリナ来たのね、サランの戦い頑張ったね……
カイナのことは、ごめんね……」
エレナはユリナの気持ちを察していた、本当は気持ちを整理したいはずだと感じていた
、でもユリナはそれを見せなかった。
二年前ユリナ達がアグドを訪れた時、アグドの内乱で多くの者が命を落として行くさまを目の前で見ていた。
そして驚く事に、其れから間もなくアグドの者達は笑顔を取り戻し、国を立て直す事に全てを注いでいた。
アグドのオーク達からユリナは死を無駄にしてはならないと深く学んでいた。
まだ、カイナを斬った感触がユリナのその手に残る……だが瞳は強い意志をエレナに強く伝えていた、ユリナはその感触を忘れたく無かった、カイナを救えなかったそれを忘れない為に。
そんなユリナを見てエレナは優しく伝える……
「ここに来たのは、私達が背負ってるものを見たくて来たの……」
「未来……?」
「えぇ、この子達は未来を奪われた……
悲しみと憎しみ、そして欲深い者達に、この大陸には沢山の子供達も居れば、明るい未来を見ている人々がいる……
でもその殆どの人達が、これから起きる事を知らない……でも知らない方が良いのかも知れない……
形は違う……でも……私達の戦いが負けてしまったら、この子達とは比べられない位の子ども達の未来が奪われてしまう。
私は負けられない……
ムエルテ様の話からしても勝ち目がない……
それでも負けられない‼︎」
弱気を見せながらもエレナの瞳は力強く、そして声にも覇気を込めていた。
「でも……ユリナ……貴女は何があっても生き残りなさい……
いい?絶対に生き残りなさい」
エレナの母としてのたった一つの心配をユリナに打ち明けた。
「お母さん、何か忘れてない?」
「え?」
「お母さんが勝てない相手から、逃げ切れるとは思えないな、水の巫女でこの前ドラゴンナイトになったお母さん……
凄い綺麗だった……それと神様の力を見せつけてくれた。
あんな戦い私には出来ないよ……」
エレナはあの戦いで怒りに任せて戦った。
それは普通なら誰でもひいてしまう様な戦い方をしたにもかかわらず。
ユリナは恐れていなかった……魔王の夢を見たユリナからしたら、そうでもない事だったのだ。
「だからお母さん、絶対に勝ってね」
ユリナは笑顔でそう言い膝をつき祈りを捧げた。
その祈りは失いし炎の間に眠る子ども達と全ての未来へ祈りを捧げていた。
エレナは微笑み執務室に向かい、そして支度を始めた……既に多くの国々がクリタス平原に向かって兵を送り始めていた。
エレナが軍を率いてバータリスを出陣しユリナもそれに続いた。
その頃クリタス平原では異変が起きていた……。
クリタス平原の北方にミノタウロスの一軍が現れ、クリタス王国首都クリタスに向かい進軍し始めていた……
「伝令!伝令!トール様!
ミノタウロスが此方に向かって進軍中‼︎
ですが……」
物見が伝えてくる。
「どうした?」
トールが聞く。
「敗走してる様子で、戦意は見られないとのことです」
「クリタス全軍に伝えよ、警戒態勢を取りいつでも出陣出来る様にせよ!第五軍は俺に続け‼︎」
(まさか辺境地域最大の勢力がここまで退いて来たのか?)
トールは焦った、ミノタウロスは戦士の一族で逃げるよりも戦って死を望むオーク達の様な種族、それが退いて来たのだ。
「トール行くのですか?」
トルミアが声をかけて来た。
太古の昔トータリアがトールを見ていた眼差しそっくりな瞳で……
「トルミアすまない、民を率いてすぐにベルリス温泉に逃げてくれ。
この戦い……嫌な予感がする……」
トールはクリタス王国がかつて滅亡した時を思い出していた。
そして今は、闇の女神オプスは囚われていない……トールは何も悩まず、民を逃す事を決断した。
トルミアは静かに頷き、大臣達に指示を出しクリタス王国首都クリタスは慌ただしくなる、トールは軍を率いて出撃……ミノタウロスの軍に向かった。
少しして、ミノタウロスの軍が何かと戦い始めるシャッフェンだ、敗走したミノタウロス達を追撃して来たのだ。
ミノタウロス達は諦めたか、最後の力を振り絞り戦っている!
無数のシャッフェンが一軍を形成し襲い掛かる。
「あれは……全軍突撃態勢!
ミノタウロスは友軍だ!救い出せ‼︎」
トールが叫んだ!
ゴブリンの英雄が巨人族が生み出した獣共に戦いを挑んで行く。
トールの軍はトールを先頭にシャッフェンに突っ込んで行く!
ユニオンレグヌスゴブリンの旗印を掲げて……
その戦いぶりは激しく、そして迷いの無い戦いぶりであった、トールはミノタウロスを救うために、クリタス王国の民を救う為に剣を振っている。
シャッフェンの群れは英雄トールの軍に押され始めるが……やがて地響きが聞こえて来た。
フェルムナイトだ、しかも大型でデスナイト程の大きさがある。
巨人族はミノタウロスの追撃と同時に、クリタス王国を滅ぼすつもりであった。
その様子はザラハトスに直ぐに知らせが入る……
「馬鹿な!トールは十万年前にメトゥスに命を奪われたはず!
何故奴が……直ぐに増援を送り奴を殺せ!
恐怖の竜フォルミドを追い込む力を持っている侮るな!」
巨人族の王ザラハトスが僅かな焦りを見せた……
それはザラハトスだけは薄々感じていたのだ、無の神ニヒルは冷酷であり、無用と感じれば部下である巨人族ですら滅ぼすかもしれないと……
(負ける訳にはいかぬ……我が種族の為に……)
ザラハトスも今や王子で無く、王であった……
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