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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜
137話✡︎✡︎見てしまった未来✡︎✡︎
しおりを挟むしばらく歩き連合軍の陣を抜けて行く、見張りの兵達は驚きを隠せない、恐怖の女神と死の女神がやって来たのだ。
そしてエレナはそれに対して、天幕の中で密かに話すのを避け、あえて兵達の前に出て話すことにした。
祝福の力を解放し出迎える。水色の神聖な輝きと冥界の異様なドス黒いオーラが対峙する形になった。
「ムエルテ様、メトゥス様何か重要なお話でも?」
エレナが自然に自らも女神であるかの様に聞く。
「ここで良いのか?良い話ではないぞ」
ムエルテが言う。
「えぇ……この戦い我らはどの様な結果も恐れては勝てません……」
エレナが静かに言う。
「良く言うわね、貴女も一つだけ恐れてる事があるのに……」
メトゥスがそう言い兵達がどよめく。
エレナは微笑みそれに応える。
「えぇ……私も母になり弱くも強くもなりました……
私が恐れることは……
二人の愛娘を失う事です。
おっとアルベルトが勝手に剣を振り……
再び死んだ所で、冷たい視線で文句言うだけです。」
エレナがそう言うと兵達は僅かな笑いをこぼす。
「ですが……
娘達だけは守りたい……
その未来のために……
私は居るのです‼︎」
エレナの言葉は酷く自己的な発言であった……だがそれはその場に居た兵達の殆どの共感を得た。
兵達にも家族がいれば、大切な人が居なくても兄弟やそれぞれに守りたい人が居る、そういった者達の心に強く伝わっていったのだ。
「そうか……まぁ良い……」
ムエルテがそう言った時、ユリナはムエルテがこれから言う内容が頭を過った、その光景が鮮明に頭に浮かんだのだ。
「まさか……本当に?」
ユリナが呟きカナが?と言う顔でユリナの顔を見た。
「実はの、フローディアが無に返された……ニヒルに負けたのだ……」
ムエルテが静かにそう言った。
それはトールが地上を巨人族が放ったクリアスから、自己犠牲の道を選び守った時にその知らせはザラハトスに届いた。
その時に、ザラハトスは凄まじい恐怖を感じ身の破滅を予感した。
それはニヒルを恐れてザラハトスは恐怖したのだ……
それをフローディアが察してザラハトスの居場所を突き止め、首を取りに行ったのだ。
だが、そこにはニヒルが居た。
「花か……」
ニヒルが呟き、フローディアを嘲笑う笑みを見せる。
「ニヒル!貴方は神として自ら生み出した物を破壊し無に返す事!
それが何を意味するかお解りですか⁈」
フローディアが強く訴える。
「神として……それを誤った者の一族が何を語る!」
ニヒルが言い返す。
「破壊はクロノスの役目……」
フローディアはそこまで言い何かに気づいた……その瞬間!
ザラハトスの首が飛んできた、既にザラハトスはニヒルに殺されていたのだ。
「それが欲しかったのだろう?
変わりに貴様を無に返してくれる‼︎‼︎」
そうニヒルが言い、姿を消し一瞬でフローディアの後ろから鋭い爪で切り裂こうとした。
フローディアの周りの薔薇がその爪を受け止め、腕に巻きつく。
薔薇のトゲがニヒルの腕に刺さり、黒い血が流れ出すが、その血は薔薇のつるを無に返しはじめる。
フローディアが距離を取り手をニヒルに向けると。
不思議な紋様が現れて黒光しその光がうねりだす。
「其方に破滅を!」
フローディアがそう言った時ニヒルはそこに居なかった。
フローディアが気づいた時にはその腕が切り落とされていた、そして鋭い爪が胸を貫き、フローディアは口から血を流していた。
「そんな……」
フローディアが起きた事を理解出来ずに呟く……
「ウァァー‼︎‼︎」
怒りの籠もった叫び声がしムエルテが現れニヒルに斬りかかる!
ニヒルはフローディアを貫いた爪を抜き、ムエルテの鎌をその爪で受け止める。
「死……久しぶりに遊ぶか?」
「ふざけるな‼︎」
怒りに任せムエルテが次々と斬撃を繰り出すが大鎌は届かない。
大きな巨体のニヒルは身軽過ぎるほどに早く、そして蛇の様に尾を振りムエルテを弾き飛ばすが、ムエルテは姿を消して其れを躱す。
「良いのか?花に別れを告げなくても」
ニヒルがそう言い、ムエルテがフローディアを見た時、既にフローディアが消えかけていた。
直ぐにムエルテはフローディアに向かうがニヒルは追わない、既にフローディアは体の殆どが消えかけている。
もう助ける事は出来ない、そしてムエルテは直ぐに感じた……フローディアの死がムエルテに流れ込んできたのだ。
仲間が死んだ……それでもムエルテは死の女神である為にそれを心地よく感じた。
そんな自分を初めておぞましく思い、涙を流しそれがフローディアに向かうムエルテのあまりの速さで横に流れて行く、ムエルテは直ぐにフローディアのまだ消えていない花を切り落とし手にする。
フローディアの一輪の花だけが残った。
「何故、死を消さぬか解るか?」
ニヒルが何も無かったかの様に聞いている。
ムエルテは口を閉ざし……涙溢れる瞳を鋭い目つきに変えニヒルを睨む……
「そちは天界を憎まないのか?
そちが生まれた時天界は何をした?
アインは何をした?
死は必ず生まれる物……それを……」
ニヒルが言う。
ムエルテは思い出していた、確かに……今ムエルテがニヒルに対抗する事は天界の為にもなる。
何もしない天界の為に、天界への憎しみが湧き上がるが……それを抑えていた。
天界にはオプスがいる、疑わしいが気の合う友人とも言える女神が生まれた世界……嫌いでも認めるしかなかった。
ムエルテは多くの疑念と悲しみを振り払って、フローディアの花を髪にさした、不思議とつるが伸びしっかりとムエルテの髪に着く、そしてムエルテは斬りかかる……
その刃は黒いオーラを放ち、とてつも無い速さでニヒルに襲い掛かるがニヒルはそれを手で止める。
ニヒルの手の平から血が流れる……
「ニヒル!貴様に死を与える!
甘んじて受けよ‼︎」
ムエルテが叫び、ニヒルの傷口が腐敗していくが、少しして戻ってしまう、与えた死を無に返されたのだ。
ニヒルがもう片方の腕の爪で、ムエルテを切り裂こうとしたがムエルテは姿を消して、その場を去った……
悲しみと悔しさがムエルテの、その心を満たしていた……
ユリナだけが覚醒し始めた自らの力でムエルテの過去を見ていた。
自分が本当に変わり始めている事に気づき始めた……そしてユリナはその隣にいるメトゥスを見た時、メトゥスが神聖な姿をして天界に居る姿を見て、エレナを見た時に凄まじい悲しみが襲って来た。
「うっ……」
ユリナは悲しみを抑え切れずに走り出しその場を去った。
「ユリナ?」
エレナはフローディアの死をユリナが辛く思ったのかと思ったが、そうでは無かった。
「メトゥス……ユリナを」
ムエルテがメトゥスに言うと、メトゥスが驚きながら……呟く。
「まさか……」
そう言い、ムエルテからフローディアの花を受け取りユリナを追った。
「ムエルテ様……ユリナは?」
エレナが聞いたが、ムエルテはエレナの心に話しかけた。
(神としての力が目覚めようとしているのかも知れぬ……
今はそっとしておいてやるが良い……
この事はユリナに知らせてはならぬ、あやつは優しすぎる。
多くを救えぬ今を重圧に感じ押しつぶされてしまってはならぬ……)
ムエルテはユリナを心配していたが、先の事をエレナに伝える為にその場に留まって居た。
ユリナは陣をはなれクリタス平原に飛び出し……一人辺境地域へ向かい北に向かって行った。
ユリナはあの場に居た者で生き残れる者が、ムエルテしか居ない未来を見たのだ。
ユリナはそれを止める為に、辺境地域に行こうとした。
一人でニヒルに挑むつもりでいた……
「そんな未来……
私は望んでいない‼︎」
ユリナは一人どうしようもない気持ちを叫び、全力で疾走して行く……
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