✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第八章 ファーブラ最終章 ゲネシス〜

143話✡︎✡︎優しい女神✡︎✡︎

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 オプスとムエルテの動きは先程よりも、一体感が生まれ連携されていた。
 其の刃は確実にニヒルを捉える様になったが、依然として致命打を与える事は出来ない……だが明らかに二人の力が一つになろうとしていた。

「オプス……ニヒルは何を隠しておる?」
ムエルテが戦いながら聞く。
「ニヒルは四人います!」
オプスが応える。
「四人⁈」
ムエルテが戸惑う。

「私達は時間を稼ぐしか無い!でもニヒルは幾らでもいるわけではないんです。

今ルーメンと戦って居る一人と、私達が戦って居る一人……
ユリナさんを追ってる一人、もう一人居るはず!」
 ニヒルの攻撃を躱しながらオプスが説明する、その間もニヒルは余裕を見せながら襲って来る、まるで知られても構わないようだった。
「何故四人なのじゃ?」
ムエルテが更に聞く。

「ニヒルは一つの世界が生まれる度に一人産まれる……でもそれは間違った世界だから……その世界の歪みから生まれるんです‼︎」
オプスが応える。

「つまり、四界の過ちの象徴なのか?」

「本来はそうじゃない!
ニヒルは最初の過ちから怒り、其れを隠そうとした天界の行いによって凶暴化してあの姿になってしまいました……

全ては過ちの時から!あの時から歪んでしまったのです‼︎‼︎」
オプスが漆黒の霧になり躱して言う。

「アインめ……
妾からしたら迷惑な話じゃ」

 オプスがニヒルの正体を次々とムエルテに告げて行く……
 ムエルテがオプスの全てを受け入れた、其れによりオプスは本当の友を得て、オプスはムエルテに多くを伝えようとしていた。

「後一人は何処に居るのじゃ……」
ムエルテが聞きオプスが瞳を使いニヒルを探る……

「クロノス……お父様……」
オプスが呟いた。
「?」
ムエルテが疑問に思う。

「記憶の間でお父様が最後の一人と戦っています!」
 オプスはそれ感じた、オプスの感情は天界でアインと戦っている他の兄弟、六大神にも伝わった。

「お父様……」
 天界で巨人族とアインと戦う、ガイアが呟いた……天界でアインを止められるのはクロノスしか居ない、こんな状況になっても帰ってこないクロノスをガイアとエヴァは心配していた。



 クロノスは記憶の間で、たった一人でニヒルと戦っていた。
 クロノスは力の差が大きすぎる事も承知で、破壊神としてニヒルと対峙していた。
(もう少しで、ニヒルが恐れる力を解き放てると言うのに……
ユリナの力の源がここにあると言うのに!
護らなければ‼︎‼︎)

 クロノスは見つけたのだ古い石板を、時の神を記した石板を……本来ならクロノスが操るべき力を、太古の昔にニヒルによって奪われその力の全てが記された石板……。

 それをユリナに届ける術が無かった。

 クロノスは自らそれを使えない事に気づいていた、ニヒルから送られた剣によって、クロノスは呪われて居たのだ。


 その苦悩を察したオプスは賭けに出る……

誰かに何かを心で伝えた……

 暫くしてクロノスは追い詰められて行く。
だが、無駄と知りながらもニヒルから与えられた剣を使い戦っていた。

「ニヒルよ!最初から知っていたのか!
こうなると知っていたのか‼︎」
クロノスが叫ぶ。

「クロノスよ、何故アインの過ちを止めなかった……」
ニヒルが静かに言う。

「くっ……」
 クロノスはニヒルの問いに、返せる言葉が無かった。それが自らの罪である事も認識していたのだ、だがクロノスはアインと違い其れを正せる術を探し続けていた。

 そしてニヒルの怒りが頂点に達したのを知り対抗する術、自らの責任を果たす為に地上世界を救う術を探していたのだ。

 フィリアとピリアも知らなかった石板を探し続けたのだ。

 ニヒルに吹き飛ばされ、クロノスは石板の棚に打ち付けられる。

 そしてニヒルが追い討ちを掛けようとした時、背後からニヒルを骨の槍が貫く。
 カイナがオプスに命じられ暗黒世界を通り石板を受け取りに来たのだ。


 だが手応えがない、貫いたはずなのに全く感じなかった。
 カイナは何かを囁き直ぐにニヒルに槍を通して死霊共をニヒルの中に解き放った。
 ネクロマンサーの力を使いニヒルを惑わそうとした。

 ニヒルは訳の分からない死霊共の叫びを全て無に返して行く、僅かに効果が有るように見えたが無駄を察したカイナは直ぐに槍を引き抜く。

 ニヒルが背中の無数のトゲを凄まじい速さで伸ばしてカイナを襲うが、カイナは瞬時に骨の分厚い壁を作り其れを防いで、距離を取りクロノスの視線の先を見た。
 其処には一つの石板があり、カイナは走りそれを持ちその場を去ろうとする。


「何だ貴様はオプスの気配を感じさせる者……」
 ニヒルがそう言い素早く空間を歪ませた。
 記憶の間がねじ曲げられた様に全てが歪んでいく。

「これは……」
 カイナは驚くが足を止めずにすり抜けようとする。

「愚かな者よ、記憶の間は我が作ったのを知らぬのか?
我が聖域から逃げられるとでも思うのか‼︎‼︎」
 オプスから世界を救う石板を持ち出し、ユリナに届けるように命じられたが、知らなかったのだ。

記憶の間の秘密を……

「行け!その石板を!
ユリナに届けよ‼︎‼︎
それが出来なければ!破壊せよ‼︎」

 クロノスが立ち上がり、剣を空間に向かって振りかざしている、その剣をから発せられるはニヒルの力、その力が空間を戻して行く。
 カイナは直ぐに翼をはためかせ、高速で出口に向かって飛び立つ‼︎


(破壊する……何故……)
カイナは疑問を感じながら飛んで行った。


「クロノス……愚かな神よ」
 ニヒルがそう言いながらクロノスに歩みよる、クロノスは力を使い続ける為に何も出来ない……

「行け!黒い天使よ!」
 クロノスは叫ぶ、その声は記憶の間に響き渡りカイナの心に届いていた。
 次の瞬間、表情を変える事なくニヒルはクロノスの首を爪一本で切り落とし、クロノスは命を落とした。


 そして出口に向かうカイナの正面から、クロノスの首が投げつけられた。
 ニヒルは瞬時にしてカイナの正面に回り込んだのだ、カイナはクロノスの首を認識するも表情を変えずに、それを受け止めた……

「クロノス……」
カイナが呟き止まる……

「ほう……神の死に戸惑わないか……」
ニヒルがゆっくりと姿を表すが、カイナはニヤッと笑った。

「ニヒル……
無の神だがなんだが知らないけど……

私からすればあんたは無能な神さ……

ネクロマンサーの私に死体を渡すんだからね‼︎‼︎」

 カイナはクロノスの首に魔力を注いだ、そして一瞬でその魔力を溢れさせた。

「一度、神ってのを操って見たかったんだよね」
 カイナは不適な笑みを浮かべる、だがカイナは勝てない事を解っていた、だがこのニヒルが黙って居れば!あの幸せな日々が続いたことを知っていた。

 その壊された幸せを想いに乗せて叫んだ‼︎‼︎

「クロノス!
あんたの戦いは終わらせない‼︎
最後まで責任を取れぇぇ‼︎‼︎‼︎」

 その時凄まじい速さで、クロノスの首の無い死体が現れニヒルに襲い掛かる!
 カイナは結界を張り、ニヒルの不意打ちに備える!

 ニヒルがクロノスの亡霊と戦っている。


 死んでいるとは言え……
神……操られているとは言え……
破壊神の死体……

 カイナのネクロマンサーとしての力で操り切れる代物では無いが、クロノス自身の魂がニヒルと戦いたがっていた、その為にカイナは完璧なまでにクロノスを操る事が出来た。



 クロノスの死は瞬時に、オプスとムエルテに伝わっていた。
「ほう、クロノス……
カイナに従うか……
奴も神としておったのだな……」
 ムエルテがクロノスを認めた……クロノスは破壊神でありながら、自らの過ちを償う為に意地も誇りも捨て神でも無い、ネクロマンサーのカイナに従う事を受け入れた。

 ムエルテとオプスは、そのクロノスの意思を重く受け止め、必死で目の前のニヒルを倒す術を探していた。

 ニヒルはオプスの視線に注意を払っていた、そして気付いた、ムエルテは消えてるのでは無い、瞬時に霊体に変化し姿を消して居るのだと。

 神の瞳を持たないニヒルが、それを確かめようとしてオプスの視線の先に、渾身の力で爪を振り抜いた!

「しまっ」
そこにムエルテがいた……

 ムエルテは左肩から胸にかけて深く切り裂かれてしまう。
 その瞬間オプスが怒り迂闊にもニヒルに斬りかかり、オプスはニヒルに鋭い爪で胸を貫かれてしまった。

「かふっ」
 オプスが紫の血を口から吐き、そしておびただしい血が傷口から流れ出す。

「愚かな……
親しい者が斬られ感情を抑えきれなくなるか……ムエルテは死……
この地上で死が生まれる限り死ぬ事はないと言うのに……哀れだな」

 ムエルテの傷は凄まじい勢いでふさがって行くが、傷が深くまだ立ち上がれない、オプスはそれを聞き我に返り呟く、

「良かった……ムエルテ……」
 そしてニヒルを優しい瞳で見つめて伝える様に言った。

「ニヒル……

あなたは知らない……

あなたは永遠に孤独の中にいた。

だから……知らない……

友達も……

仲間も……

愛も……

教えてあげれなかった……

ごめなさい……」

 オプスはニヒルの爪から、ニヒルの無と言う孤独を全て読み取った。
 それは彼に対等する者が居なかった寂しさに溢れていた、対等に話せる者が居ない、その苦しみ其の物だったのだ。

 そして優しい顔のまま、悲しみを浮かべた微笑みを最後に見せ、オプスは命を落としてしまった……
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