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〜第十一章 メモリア・黒い天使〜
197話❅命の女神❅
しおりを挟む「今のは誰?
私の知っている人ですか?」
パリィが聞いた。
「そなたが知ってる訳がなかろう
だがあやつは其方を良く知っておる
いつか解る……」
ムエルテがそう呟いた時、朝日が昇り森はすっかり消えていた。
「さぁ帰るが良い
妾にあまり手間をとらせるでないぞ」
そう言った直後、ムエルテの死の女神を思わせるぼろぼろの黒いローブが光だし、純白の美しいローブに変わった。
「そんな時間か……」
ムエルテが呟く。
「その姿は?」
パリィが驚きながら聞き、メーテリアも驚いていた。
「あやつがな妾に役目をよこしてな
命の女神など……
妾には似合わぬ事を押し付けおって……
新しい命が生まれる為に
行かねばならぬ」
ムエルテは神聖な輝きを放ちながら、微笑みながら言った。
「意外と似合ってますよ」
パリィは思ったことをそのまま言った。
「はい、流石女神様です
子供っぽいムエルテ様も
美人に見えます!」
メーテリアが続く。
(こやつ……)
ムエルテが顔を赤くし恥ずかしそう言う。
「あまり妾を弄るでない!
もう行くからの!」
そう言ってムエルテは空に浮き上がり飛んで行った。
「頑張って下さいねー!」
パリィとメーテリアが手を振っている。
(あやつら……
妾を女神と思っておらぬのか?……)
ムエルテは顔をしかめながらふと思い出した。
(ユリナ・テンプス……
あやつもそうだったのぉ)
懐かしく思い出し今度、思い出話をユリナとしてみようと思っていた。
その昔、神話の時代にユリナと言うエルフがまだ女神でなかった時、ユリナはしだいに友人のようにムエルテと話すようになった、そしてある木の下でユリナはムエルテの運命を変えるような事を、ムエルテに言ったのだ。
懐かしく何故か嬉しくなり、ムエルテは天界に行き、その姿のまま手の六芒星の力を解放して手の平を天に向けて叫ぶ!
「妾が預かりし命よ!
新しき世界に輝け
其方達が奪われし幸せを
新しき世界に花と咲かせよ!
光も闇も
希望も絶望も……
喜びも悲しみも……」
ムエルテはその次が言えなかった。
いや躊躇ったのだ。
だがそうなる事を願い叫んだ。
「愛も憎しみも全てが手を取り合う
その世界に輝くが良い!」
ムエルテが叫んだ後に、その手の平から無数の命の光が、放たれ地上には見えない光として降り注いだ。
ムエルテは優しい瞳で命達を見送り、天から遥か遠くを眺め、悲しげに言う。
「オディウム……何処におるのじゃ……
憎悪の神オディウム
冥界の時代は終わった。
何処から災いを齎しておるのだ……」
「ムエルテ……」
「メトゥスか?
そちも恐怖の女神とは思えなくなったのぉ」
ムエルテが悲しみを見せない様にメトゥスに言う。
「天界の神になったものの
話し方を学ぶのに苦労してます……」
メトゥスがムエルテに合わせてくれる。
「全くだ
そちには似合わぬのぉ……
で見つかったのか?」
ムエルテが聞く。
「いえ……まだ……
やはりテンプス様でなければ
見つけられないと……」
メトゥスが静かにこたえる。
「そうだのぉ」
ムエルテが静かに言った。
天界でも憎悪の神オディウムを探していた、この世界が生まれ変わった時に全てが変わった。
それはエレナがこの地上を生み出した時、全ての神々の前で言った。
「わたくし
アインズクロノス・エレナは……
この世界に光と闇を遮る界をうち払い
我らは……
憤怒……
恐怖……
絶望……
悲嘆……
破滅……
苦痛……
その全てと
手を取り合って来ました
それはこの先も……
未来永劫
永遠に続く事を願っています」
エレナのその言葉を聞き、恐怖の女神メトゥスが微笑んでいた、メトゥスはかつての世界のように、天界と争う事を望んでいなかった。
「それは……
光だけが世を統べること
それはわたくしが
望んでいない世界です
喜びの対とし悲しみがあり
悲しみがあるからこそ
嬉しいことがより光り輝き
恐怖があるからこそ
勇気が生まれる
そのように
美しいものが美しいのは
全てが手を取り合い
ともにあるからです
わたくしは
そのような世界を作りたい
みなと共に手を取り合い
全てのものが
手を取り合う美しい
世界を……
皆よ全ての神々よ
わたくしと共に
新しき世界を‼︎‼︎」
エレナのその言葉により、その言葉を聞いていた神々はより一層まとまり、エレナの理想のためにより強く協力してくれるようになった。
だが憎悪の神オディウムだけは、その時すら現れなかった。
オディウムは地上を憎しみで埋め尽くそうとしている、それを止めようとして天界の神々が憎悪の神オディウムを探しているのだ。
ムエルテも今は命と死を司っている、その意味を深く知っていた。
「ニヒルが怒らねば良いが……」
ムエルテが呟いた。
「その為にテンプス様が
必死になって探しているのです。
我々も探し続けましょう」
メトゥスがそう言い、諦めずにオディウムを探してくれた。
(ユリナ……
其方は本当にそれで良かったのか?
それだけクロノスとアインの罪が
大きかったと言うことか……)
ムエルテは地上を見下ろして、パリィを見つめ心の中で静かに心で言った。
(パリィ・メモリア
其方の記憶と言う名の意味……
そちが思ってるよりも重い名である……
まだそれを知らぬのが……
また歯痒いのぉ)
「綺麗……」
パリィが呟いた。
「え?何がですか?」
メーテリアはパリィが空を見て呟いたので空を見上げたが、雲一つない快晴であった。
メーテリアが不思議に思いパリィの顔を見て納得した。
右目がエミリィの漆黒の瞳になっていた、パリィは快晴の青空から降り注ぐ、無数の流れ星の様な魂の輝きを見ていた。
だが過去にもパリィは見たことがあった、それはパリィが生まれ育った森の小屋から夜空を見上げた時に時折見ていた光景であった。
パリィはガイラの街には向かわず、マルトに戻った、森が消えたのでマルトの街から交流を取る様に伝えた。
まだ東に行くのも良いが、気になった事があったのだ。
セディナの王宮は元々神殿があった場所に建てられた、王宮の地下にはその神殿があった時から、ある古い石扉があり硬く封印されていた、セディナを浄化した後にセディナを探索し王宮も探索したが、その石扉がある地下に行く通路をパリィは過去に封印したが、破られるどころか汚される事さえも無かった。
気にも留めていなかったが、静寂の森から聞こえたあの声の人が探している物が気になっていたら、不意に思い出したのだ。
あの扉にも六芒星が描かれていたのだ。
パリィはマルトの街を後にして、一旦セクトリアに向かった。
帰りは気持ちよくピルピーとユーニを走らせて帰る、ユーニは風の精霊であり爽やかな風を吹かせてくれ快適であった。
そして二日でセクトリアの対岸についた。
「ピルピーお願い道をつくってね」
パリィがそう頼むと、ピルピーはユーニを見て仕方なく、川に歩みより鼻を河原につけて少し息をかけた。
すると川が割れて川底が姿を表す、上流からの流れだけが止まっていて、川底では川魚が跳ねている、二人は急いで川底を渡る。
川の流れを止めると、下流はどんどん水が流れて行って水が無くなってしまうと川魚達が死んでしまう。
それだけでは無い、上流では水が溢れてしまうと洪水が起きかねない。
急いで渡りきると、ピルピーがすぐに川の流れを戻した。
何故そこまでして川の流れを止めたかと言うとユーニは川が嫌いなのだ、何故かは解らないが池のほとりは好むが川を嫌うのだ。
「ここに橋を作らないとね」
パリィがそう言い二人はセクトリアに向かった。
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