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✯第一章 西の国〜前編〜✯
3話✯笑っていようよ!✯
しおりを挟むセリア達がシャルルの小屋に帰ってから三日、妙に静まり返っている、お通夜を通り越して誰も居ないようだ、だが……
(なんでそうなのですか?歯車に魔力を込めてそこに居てね、ってお願いするだけなのよ!)
(えー魔力にお願いしてますよーこうやって……)
セリアが歯車に魔力を込めると、歯車が赤く輝くが……熱くなり溶け出し机が燃え始めた……
(だからなんで燃えるの!)
(なんで燃えるのー‼︎)
中では絶えずあぁだこうだと心で言っている。
(セリア不器用だからね……それにセリアの魔力もセリアに似て落ち着きないよね)
セリエは一人でそう思っていた。
(セリア?水の魔力を送ってみたら?)
セリエがセリアにそう言った。
(水かぁやって見よう)
(そうね、水は穏やかなで慈しむ性格だからね)
シャルルもそう思い気を取り直して見守る。
シャルルとセリエが見守る中、セリアが瞳を瞑りテーブルの上に置いた歯車に魔力を込め始めると、ふわっと水色に輝き始める。
(そのまま静かにしていてねぇ)
セリアがお願いすると、魔力の輝きに変化が現れた。
輝きの中ではっきりと小さな何かが歯車の周りを泳ぐように遊んでいる。
(まさか精霊⁈)
シャルルが驚くが、セリアはお願いし続ける……
「えぇ⁈むぅーりぃーセリア久しぶりに遊ぼうよーー!」
(穏やかじゃない!なぜ?)
シャルルが更に驚く。
水の精霊がはしゃぎだして輝きが増し始める。
「セリア早く遊ぼうぜ!」
(ヤバッ!)
セリアはその歯車を掴み小屋の外に飛び出し。
「遊ぶなら外で遊んでーーー‼︎」
叫んで遠くに投げた!その瞬間輝きが爆発的に増し凄まじい雨が晴天の中降り始めた、セリエが外に飛び出して、何かをささやく。
「……」
そして剣を抜き、魔力を込めて線を引くように振った、その瞬間強力な結界が小屋の周りに張られた!
歯車が高速で回り、歯車からも水が溢れ出し洪水の様になって行く……
シャルルはポカーンと口を開けてそれを見ていた。
雨は止んでセリエの結界で小屋は守られているが、シャルルの結界内がプールの様に水が溜まって行き、三人分の背丈程の高さで止まった。
耳をすますとそのプールから水の精霊達がはしゃいでるのが解る。
(これ……どうするの?)
シャルルがセリアに聞いた。
(うーん、家は守った)
セリアが言う。
(とりあえず、普通に話しません?)
セリエが言う。
目の前にはいきなり溢れて濁っているプールの様な、水溜りがある。
「精霊さん、水を綺麗にしてくれる?」
セリアがそう言うと、その水は濁りが薄くなっていき、次第に綺麗になり美しい透明度を誇る池の様になった。
「綺麗……」
シャルルも思わず声を漏らしウットリしたが……我に返りセリアを見ると水遊び出来る様に着替えていた。
「‼︎ちょっと何してるの⁈」
シャルルが驚いて聞いた。
「精霊さん達と遊んであげないと、多分ずっと居そうだから、遊んであげるのシャルルさんもどう?」
セリアが誘いシャルルはセリエを見ると、セリエも水着に着替えている……
そして二人は水の中に突っ込んで行き、泳ぎ始める、精霊も二人で遊んでいるのか穏やかな水流と速い水流と分かれ、二人は楽しそうに遊び始める。
「……もう知らないからね!」
シャルルはそう言い小屋に入って言ったが、外からセリアの楽しそうな声が聞こえて来る。
「昔聞いた事があります……笑い声程、人を誘うものはないと……
私は負けません!」
「キャハハッ!」
「もう!セリア何するの!」
「ガォォー」
「きゃははっ」
シャルルは紅茶を飲みながら聞こえないふりをして、次に作るアーティファクトの準備をしているが、ワナワナと震え始めた。
「わーい、お姉ちゃん久しぶりだね水遊びするの!」
「そうね、何年ぶりかしら」
バンっ!
「?」
小屋の扉が勢い良くあいて二人は小屋の方を見た。
白い肌にそこまで露出はしてないが、大人の色を見せるには十分な白い水着を着たシャルルが出てきた、いつもの白いベールも脱いでいて、ピョンと可愛くでた耳をしている。
「紅茶とタオル用意しておいてね」
シャルルが使い魔の妖精にそう言い、高く飛んで飛び込む、深く潜り美しく泳いでから顔をだした。
「フーッ少し潜りすぎたかな」
「えーシャルルさんエルフだったんだ~いいなぁ」
セリアが思った事をそのまま言った。
「?どうして」
「エルフは何千年も歳を取らないじゃないですか、魔力の強いエルフは美しいまま亡くなる人もいるからですよ」
セリエが説明してくれた。
「そう?貴方達が思う程いいものじゃないわよ……」
「えーーなんでぇ?」
セリアが聞く。
「私が街に住まないのも、そうなんだけどね……人を好きになっても、居なくなっちゃうから……」
過去に何かあったのか、シャルルは目を伏せながら言っていると。
パシャ!
セリアが水をシャルルの顔にかけた。
「え?」
「そーんな気持ち忘れちゃえーー‼︎」
「なっ何よいきなり‼︎」
シャルルが驚くとセリアが今度は水を操り波を起こしてシャルルを襲う。
「キャハハッ」
セリアは楽しんでいる。
「あなたちょっとちゃんと聞いてる⁈」
シャルルが強く聞くとセリアは手を止め、一瞬で真剣な眼差しになり言った。
「誰でもいつか死んじゃうんだからさ……
今を精一杯楽しもうよ、やる事やってさ自分らしく生きればいいんじゃないの?」
その言葉は普段のセリアを忘れさせる様にとても重みがあった。
「人を好きになってもさ、その人が先に死んじゃっても、好きならずっと好きでいればいいじゃん!
いつかその人を忘れさせてくれる人、いつかもっと好きになれる人、いつか……
その人もシャルルさんも抱きしめてくれる人に出会えるまで待てばいいじゃん
だからその時まで……」
ほんの少し、ほんの少しだけセリアは言葉を詰まらせてから、セリアは精一杯の笑顔を見せて爽やかに言った。
「笑っていようよ!」
そう言ってシャルルに飛びつき、シャルルを沈めようとふざけている。
「なっ!ちょっと」
セリエも全力で加わり沈めようとした、シャルルが抵抗するので、セリアは水着を脱がそうとする。
「コラッ二人とも!」
急にセリアが泳いで逃げ出しシャルルは追いかけた!
「セリア待ちなさーい!」
「キャハハッ!こっちだよー」
深く潜りシャルルも追いかける、セリエは素知らぬ顔でぷかぷか浮かびのんびりしている。
「わーい、お姉ちゃんも沈んじゃえーーー!」
セリアが叫び魔力を高めた。
そして、セリエに大波が襲いかかりセリエは波に呑まれた……そして少しして浮き上がりセリアを睨む。
「セェリぃアァァ‼︎」
「ヒィィ、お姉ちゃんが怒った」
凄まじい速さでセリエが追いかける、霊体の様に水の抵抗を全く受けていない!
「キャーーーー」
気付けば、セリアをセリエが追いかけ回している、シャルルは僅かではあるが久しぶりに楽しめた気がした。
アーティファクトを作り始めたら、声も出さずに完成まで作り続ける、最初は楽しめた、でも時間が経つにつれ日数がかさむにつれ、何百年も作り続けて行くうちに楽しめなくなっていた。
シャルルは久しぶり心が僅かに軽くなった気がした……そして……静かに微笑み何かを囁くと。
渦巻きが発生してセリアが渦に飲まれて行く!
「これはお姉ちゃんじゃない!ってキャーーーー!」
「えっちょっとまっ‼︎」
セリエが渦に飲まれない様に、抵抗して泳ぎ始めるが、そこにシャルルが入ってセリエを魔力を込めて掴み引き込んで行く!
「あそぼ!」
シャルルが元気に言った、それを聞きセリエは抵抗せずに渦に入って行った。
渦の中は別の世界になっていた。
水中なのに息が出来る、キラキラとした魚が無数に泳いでいる、色とりどりのサンゴが輝いている……
「綺麗……」
あのセリアが思わず呟いた。
三人はその海を泳ぎ回り美しい輝く魚達と遊びながら水の世界を楽しんでいた。
「シャルルさん?ここは何処なんですか?」
セリエが聞く。
「うーん、地上と天界の間って言うのかな?天の狭間って言う世界なんだけど、私は時々アーティファクトの素材を取りに来たり、癒されに来てる秘密の場所……」
「わーまってー‼︎」
セリアが見たこともない美しい魚を追いかけ回している、セリアが居るとそんな場所も安らげない場所になる様だ。
二人はセリアを見てるだけでも、十分楽しめていた、ゆったりとした美しい時間が流れている、正に完全なる美しさを誇る世界にシャルルは二人を招待してくれたのだ。
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