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✯第一章 西の国〜前編〜✯
5話✯はーい!✯
しおりを挟む「また来てねー」
セリアは精霊達に明るい笑顔で手を振り見送り一人楽しそうであった。
セリアの能力は異常極まり無い、水と炎の魔力は人が同時に使うと反発し合ってしまい、通常なら術者の命を簡単に奪う。高位魔道士でも二つの魔力を使う時は風と炎、大地と水、大地と風など正反対の魔力は決して掛け合わせない。
それをセリアは簡単にやってしまうのだ、セリアにしか出来ない魔法が無数にある様な気をシャルルは感じていた。
どちらかと言うと、セリエはまともな気がするのだ、セリエは闇の魔力を究極にまで扱っている様なスタイルを感じさせる、誰もが闇はある程度までしか扱わない、それは闇の性質で場合によっては闇に囚われ、肉体を蝕まれ魔物になってしまう者がいるからだ……だがセリエは使いこなしている。極めて珍しいが、まだあり得るのである。
「ふー結界壊せたよー‼︎」
「壊したのは貴女じゃ無くて精霊達でしょ!
それに、結界じゃ無くてアーティファクトが壊れたの!」
「えっ……ダメなの?」
「だめじゃないけど、とりあえず見に行きましょう、壊れたアーティファクト回収しないと」
「はーい」
「セリア頑張ったね。久しぶりじゃ無い?トランス重ねたの」
「うん……でもシャルルさんの魔力本当に強いね、流石元魔女だね!」
「もうそれは言わないで、あまり聞かれたくないんだから、セリエちゃん結界お願い出来る?」
「はい、よろこんで、セリア?」
「うん」
セリエはそう言い一本のナイフを右足に付けているケースから抜いて、空に投げるとセリアがナイフに魔力を送ると、ナイフは五本に分かれて五つの方向に飛んで行き、結界が張られる。
「大きい結界も直ぐに張れるんだ……」
「はい」
セリエが笑顔で答える。
三人は森と広場の境を歩いてアーティファクトのある場所を探し始める。
「シャルルさん、結界のアーティファクトってもしかして、結界を変えれるのですか?」
「そうよ、私のアーティファクトには三つの結界が入っていて、一つは最初の普通の結界と二つ目は、あの魔力を吸収した結界ともう一つ入ってるの、もう一つは今は内緒。」
「それってズルくなーい?さっきみたいに急に結界を変えること出来るの?」
「そうよ、それがアーティファクトの素晴らしいところなの、術者側が魔力を送れば更に強くも出来るし、その辺は普通の結界と同じ様に使えるからとても便利なのよ」
シャルルはいつも通りに優雅に話す、先程の怒りはシャルルにとっては可愛いものだったのか、セリアを怒りはしなかった。
「あっ!あったよー」
セリアが見つけた様だ、明るくシャルルとセリエを呼ぶ、アーティファクトは蓋にヒビが入り、シャルルの魔力がほのかに溢れていた、美しく淡く光っているが使えない様であった、シャルルは丁寧に破片も広い集める、破片まで魔力を帯びている様で、自らの魔力を感じ取りながら一つ残らず広い集め、六つ全てを回収した。
「さて、解ってくれたかなぁ?
結界用のアーティファクトに幾つかの魔法を入れておけば、今みたいな時でも結界を変える事が出来るの、セリアちゃんは魔法が一流だから、セリアちゃんが作ったアーティファクトは凄い筈だから頑張って見ない?」
「うーん……」
「例えばさっき二人の結界をアーティファクトに出来たらどお?
あの結界はその辺の魔道士も使えないし、私でも壊せないと思うの、強すぎる結界だから二人だけしか使えないのは変わらないと思うけど、直ぐに結界を使える様になったらどお?」
シャルルがそう説得すると、セリエがセリアを突っついて囁いた。
「いいんじゃない?危ない時に便利だよきっと」
「うーん、お姉ちゃんが言うなら……でも出来るのかな」
「いいよ、私も手伝うからやってみようよ」
「解った!頑張ってみるね‼︎」
笑顔で元気よくセリアは返事をした。
翌日から三人は材料を調べ始める。
セリアの魔力は異常に強い上に精霊が多く関わっている、普通の材料ではその精霊達から生み出される魔力を留めておけない、そうシャルルが気付いたのだ。
二日後シャルルが一冊の古びた本を読んでいてあるページで手をとめた。
「これかなぁ……」
「わーい!やっと出来た!」
「……」
セリエが無心で微笑みセリアを見ていた、セリアは調べ物をしても、家を散らかすだけだったので、部品に魔力を留める練習していた。
やっと上手く出来たが、セリアが声を出して魔力が逃げてしまったので、セリエは完璧に作った笑顔を見せていた。
「うーん、見せてみて」
シャルルがその部品をみて手に取り、魔力を探り微笑んだ、その部品から僅かに残ったセリアの魔力を感じ取ったのだ。
「いいんじゃない?この要領を忘れないでね、あとちゃんと完成まで声を出しちゃ駄目だよ」
「はーい!」
セリアはまた溢れる様な笑顔を見せるが、シャルルは少しだけ気になった。
(この子……)
何故かセリアの笑顔に暗い影を感じた。
何か無理して明るくしてる様な、そんな笑顔に一瞬見えたのだ。
とは言え直ぐに詮索する気にはならなかった。
昔大切な人にこう言われた事があった。
(解らないものは、いっぱい悩んでも解らないんだよ。
解るものは今解らなくても、いつか向こうから教えてくれたり、ヒントがウサギさんみたいに、ひょっこり!
顔を出してくれるんだよ)
その人はシャルルにとって、とっても大切な人であったが、もう千年も会ってはいない。
ふとシャルルは調べた物をメモして、街までのお使いをセリアとセリエに頼んだ。
「シャルルさん、こんなに高価な物……私達だけで買いに行ってもいいですか?」
しっかり者のセリエがシャルルに聞いた。
「うん、お願いね、セリアちゃんの魔法を留めるには高級品が必要かもなの、でもちゃんと作れば大丈夫だから気にしないでね」
シャルルはニコニコしながら言うが……
「そう!セリアはお高い子なの!」
セリアが言うが、不安そうにセリエがセリアを見ながら呟く……
「ちゃんと……作れれば?」
「えぇ、ちゃんと作れればね」
セリエは渡されたお金を見て決めた。
「お金は大丈夫です。
私達で払えますので、心配しないで下さい」
セリエは笑顔でいいながら、お金をシャルルに返す。
「大丈夫なの?結構高いけど……」
シャルルが普通に気にしながら言う、悪意も感じず、本当に気にしてくれているのが解る。
セリエは綺麗な右耳のピアスをピンッと弾いてから、そっと右手を握ってから開くと、そこにブレスレットがあった。
そしてそのブレスレットをシャルルは知っていた。
何百年か前にシャルルが作ったアーティファクトだった。
「あっ、懐かしい……」
シャルルが思わず声を出した。
作り手からすれば自分が作った物を、誰かが大切に使ってくれているのを見れば、誇らしくもなり、嬉しくもなる、その喜びを感じていた。
セリエは?と思うが正しくそれを使い中からお金の入った袋を取り出して、シャルルに見せた。
袋の中にはかなりの大金が入っていて、高級な材料を買っても、ほんのちょっと減る位だろうと言う程の金貨が入っている。
「お姉ちゃん、いいのそのお金?」
セリアがうーんと言う顔しながら聞く。
「なんのお金なの?」
シャルルが聞いて来てくれた。
「これは、私達で困ってる人がいたらって思って、用心棒で稼いだお金をためて来たお金なの」
珍しくセリアがちゃんと説明してくれる。
「セリアいいよ大丈夫、此処に居る間はお金もかからないし、失敗するかも知れないセリアの材料費を出して貰うのも悪いでしょ?」
「……いいよ私のお金を使って、私はお金に困らないし、あまり興味無いの、それにそれはとっておきなさい、必ず使うことあるから」
そう言いシャルルはお金を再び渡してくれた。
「お姉ちゃん?」
「うーん……セリア一回で必ず作ってよ、失敗しらた悪いからね。」
「はーい!」
セリアが笑顔で返事をして、セリエがお金を受け取り、二人は出かけた。
少しして小屋ではシャルルが何かしまってあった箱を取り出して、静かに箱を開けた……
そこには黒いローブが綺麗に畳まれて入っていて、その上には銀の仮面が置かれていた。
その仮面は右目に二つの瞳のある仮面でシャルルにはとても大切なものだったようだ。
「ロア……」
シャルルが呟きながらそっと仮面に触れ、何かを思い出している様だった。
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