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✯第一章 西の国〜前編〜✯
11話✯フランマレーニス‼︎✯
しおりを挟む翌日シャルルは朝から結界を回って何かをしていた。
既にアーティファクトの結界に治されていて、シャルルが全て管理しているが、何か細工をしている様だ。
「これでいいかな」
細工が終わった様で、シャルルが小屋に戻って来た。
「シャルルさん、朝食の支度が出来てますよ。」
セリエが綺麗に朝食の支度を整えセリアと待ってくれていた。
セリアはまだ眠そうで目を擦っていると、セリエが飲み物をセリアに渡す。
セリアは何も見ずにそれを口にして、ごくごく飲み始めた。
「ちょっと……」
シャルルが心配そうに見て言うが、セリエはすましている。
「すっぱぁぁーーーい‼︎」
セリアは目を丸くし涙を溜めながら叫んだ。
それは薄めて飲む飲み物で、それを薄めずにセリエは渡したのだ。
シャルルはクスクスと笑い始める。
「目が覚めたかな?」
セリエが笑いながら聞くと、うるうるした目でうんうんと頷く。
シャルルも席について楽しい朝食のひと時が流れていく、みんなと食べる食事が楽しい事をシャルルは味わっていた。
こんな生活もいいな、とシャルルは思ったが……
(ずっと一緒には……)
そう心で呟いた。
朝食が終わりシャルルはアーティファクトの製作準備を始めた。
セリアとセリエは片付けを二人で手早く済ませる、自然と師匠と弟子の様にうまい具合に役割分担していて、シャルルと二人は気が合いそうな生活をしていた。
「片付けを終わったかなぁ?」
「はい、今終わりました。」
セリエが返事をする。
「せんせぇー準備終わりましたか?」
セリアが態度のデカい生徒である。
「はいはい、じゃあ心で話そっか」
(はーい!)
セリアは作業机に座り元気に返事をする。
(じゃあこれを見てくれるかな?)
(これは?)
セリエが聞く。
(二人がお使いに行ってる間に書いといた図面なんだけど、多分これで作れるはず)
(ふむふむ……)
セリアが図面をよく見ながら頷く。
(まずね、この歯車からつけて行こうか、基本通りに最初は下から組み立てていこうね。)
(はーい!)
(セリアどうしたの?楽しそうだね)
セリエが聞く。
(うん、コソコソしててなんか楽しい)
セリアが笑顔で言いながら、魔力を込めながら歯車を組み立てて行く。
最初は手こずっていた魔力を止めるのもコツを覚えたのか難なく組み立て行く。
そうしてるうちに魔鏡の魔女ロアがシャルルの様子を見に結界の外まできて、シャルルの小屋を眺めていた。
「元気そうね……会いたいけどまた今度にしようかな」
そう呟きながら静かに眺めて、結界の細工に気付いた。
用がある方は魔法でノックして下さい、と文字が浮き上がって来た。
「何これ……」
一方小屋では……
(あとこの石を口に入れてコロコロして)
(はーい!)
(飲んじゃダメだからね)
シャルルが注意するとセリエが聞いて来た。
(なんの石ですか?)
(テンプ石を加工したの、セリアちゃんの魔力をちゃんと覚えて貰って、セリアちゃん専用のアーティファクトにするから、飲み込んでも毒じゃないから大丈夫なんだけど……)
(けど?)
(吐き出すのに声を出さないで吐き出すのは無理でしょ?
自然と出てくるのを待っても汚いでしょ)
(そっそうですね、セリア飲み込まないでね……)
セリエが言うと……セリアは静かに泣いていた。
(まさか……口を開けてセリア)
セリエが聞く……セリアが満面の笑みになり静かに外に出て吐き出そうとしている。
(……)
シャルルが白い目で見ていた。
シャルルもよくテンプ石を口で転がすが飲んだ事は一度も無い、まさか飲み込むとは思っても居なかった。
魔鏡の魔女ロアは結界を不思議そうに見ていると、セリアが小屋から出てきて何かを吐き出そうとしている。
「何やってるの?声も出さないで……」
不思議に思いメーンスを聞こうとした。
(ハァハァウェェ……)
セリアは器用に心で声をだして吐き出そうとしている。
シャルルとセリエ、そして魔鏡の魔女はその声が耳からでは無く心に直接聞こえて来るので、今まで感じた事の無い不快感を覚える、それは直接頭に聴こえて来る。
「ちょっと……」
魔鏡の魔女ロアは不快感に耐えている……
セリアの苦しみが直接脳内に響き渡り……
悍しく……見ても無いのに聴こえても無いのに、とてつもなく強烈な吐き気を三人は覚え始めた。
紛れも無いテロである。
(ハァハァウェェ……グェェ……)
セリアも苦しいが声に出せなくて、また一段と苦しみを倍増させている。
(ひょっとして……)
セリアは気付いて水の翼を広げる、アクアアンゲルスの魔法を使い体を水に変え、お腹に手を当てると、すんなりとテンプ石を取り出せた。
(取れたよー‼︎)
セリアが元気に戻って来たが、シャルルは居なくセリエがくらい顔をしていた。
(あれ?シャルルさんは?)
セリエがそっと死んだ様に奥を指差す。
バタンッ
トイレの方から扉の閉まる音がして、シャルルが戻って来た。
(アクアアンゲルスの魔法使ったらすぐに取れて、スッキリしたよ!)
セリアは可愛い水の翼をパタパタさせながら可愛く言うと。
「最初からそうしなさい‼︎」
シャルルとセリエが声を合わせて怒った。
(ふぇ……)
(もういいから、席についてちょっと見せて)
シャルルがテンプ石を手に取り、セリアの魔力を覚えてるか確認する。
一方外では……
「ハァハァ……魔女でもこんな思いするんだ……なんて子なの……ウプッ」
魔鏡の魔女ロアは、魔女になって初めて不本意に仮面を外していた。
(大丈夫ね、セリアちゃんを覚えてるね)
(良かった)
セリアがホッとしていた、そして図面に合わせてテンプ石をはめ込む。
(これ、途中で蓋して、話せる様に出来ないの?)
(そう言う道具はあるよ、でも使わない方がいいよ……
訳は後で話すね)
(はーい)
暫くしアーティファクトの大切な、宝石の加工を始める。
呪文を心で唱え、赤いアメジストに炎の結界を吹き込む。
そしてその宝石をはめ込み蓋をしてネジで止めて、魔法で封印した。
(これで出来たの?)
「うん、もう大丈夫だよ、外で使ってみようか」
「やったー」
「ちゃんと使えるといいね」
セリエが言うがまだ表情は暗い、吐き気が残っている様だ。
外に出て小屋から少し離れる。
「こうして手を前に出してみて」
「こう?」
「そうそう、そのまま心でアーティファクトに吹き込んだ魔法を、イメージしてみて」
(うーーん……)
セリアがイメージをすると、アーティファクトが赤く輝き、そして赤い炎が一瞬で燃え上がり、炎の円が生まれ結界が張られた。
そこにシャルルが石を投げると、結界はその石に燃え移った。
石は燃えない……だが燃え移った。
それはセリアの魔力が異質であり、あらゆる物を燃やす性質がある事を表している。
「やっぱり、ただの結界じゃないね。
壁になる様にイメージしてごらん」
シャルルが言う。
セリアは強く集中して硬い壁になる様にイメージした。
そして結界が変わり始めた。
シャルルが同じ様に石を投げると、今度は結界に弾かれ、石が地面に落ちて燃え始めた。
「おー凄い凄い!」
「後は使い方を練習すれば、色んな使い方出来そうね。」
「うん!練習頑張る!」
セリアにとって初めて出来たアーティファクトであった。
「うーーん……」
「どうしたの?」
セリアが悩んでいるのを見て、シャルルが聞いて来た。
「これなんて名前にしよう。」
「うんうん、いっぱい悩めばいいよ、初めてのアーティファクトだからね」
シャルルが言った直後。
「フランマレーニス‼︎」
セリアが叫んだ。
「フランマレーニス?……炎の微笑みか……セリアちゃんなら笑顔なのかな?」
シャルルが微笑みながら、セリアが初めて作ったアーティファクトに合う可愛い鎖を渡してくれた。
「おめでとう、結界用のアーティファクトは一番最初に作るアーティファクトで、みんな結界用のを作ってから他のを作って行くの、何故かわかる?」
「えー……なんで?」
「それはね、解りやすく言うと邪魔されたら作れないでしょ?
アーティファクト作りは、声を出しちゃいけないから……
作ってる最中に誰かに襲われたりしたりして、声を出さないといけない魔法を使わないと身を守れなかったりしたら、作れないよね?」
「うん……」
「だから自分の聖域を作る必要があるの、アーティファクトの職人、マエストロは命を狙われる事もあるの、だから結界用のアーティファクトの出来次第で、その人の作品の良し悪しが決まったりするから忘れないでね。」
「はーい!」
シャルルがそう説明してる様子を魔鏡の魔女ロアは優しい瞳で見つめていた。
そして仮面を身につけてその場を静かに後にした。
(大丈夫そうね、さて私はあれを追い返してからバルゲルに行こうかな……)
ロアは森に入って来た西の国の兵に気付いていた。
「五百人くらいかな?
そんなにあの二人を雇いたいのかしら……
人って本当に醜い……
いや、いい人だっている……」
そう言いスッと姿を消した。
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