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✯第一章 西の国〜前編〜✯
12話✯来るよ!あの問題児が‼︎✯
しおりを挟むその後、魔鏡の魔女は西の国の兵達を軽くあしらい更に警告をする、そして殺気を放ち魔鏡を使いシャーゼンに瞬時に移動した。
西の国の兵達は慌てた、首都バルゲルが魔鏡の魔女に襲われると思い、急いでバルゲルに引き返して行く。
シャーゼンの街は平穏で何もない様だった。
念の為にロアは右手を振るだけで結界を張った。
「街のみんなが信じてくれたからね……ちゃんと守ってあげないと」
ロアは魔女としてでは無く、エルフとしてシャーゼンの街に家を購入していた。
お金は有り余る程持っているので特に困る事はない、ここに家を購入したのはシャルルの小屋からそう遠くない上に、この街が気に入ったからである。
ロアはバルゲルに向かう前にシャーゼンの街が気になった、何かあったら取り返しがつかないので、もしもの事を考えたのだ。
ロアは寝室に置いてある水晶の玉に手を置いて何かを念じる。
そして仮面を外しローブを脱ぎ机に向かい何かを組み立てている。
静かに静かに何かのアーティファクトを作っていた。
(懐かしいなぁ……)
そう思いながら少ししてそれは完成する。
ロアはそれを水晶の前に置いてローブを纏い仮面を身につけ魔鏡を使い姿を消した。
その直後魔鏡の魔女としてバルゲルについていた。
人目を避けるために空き家に身を寄せて夜を待つ、その間も怪しい魔力を探り魔女を探していた、ロアとして街を歩けば簡単だが念の為に用心していた。
セリアと比べれば上級魔道士はロアの相手にならないが、魔女と気付く事があるから警戒しているのだ。
(……?)
そうやって暫く探るとだいぶ離れた場所から邪悪な魔力を僅かに感じた。
(これは……居るな……)
そう思い、床に魔法陣を描き始めた。
夜になりロアは屋根伝いに走り魔力の出所に近づいて行く。
僅かな魔力なので、魔鏡を使って移動すれば見失ってしまうからである。
持ち前のエルフの俊敏な動きが輝く、身軽に音も立てずに屋根の上を走り抜けて行く。
警備兵にも気づかれずに走り抜け確実に近づく、
途中でロアは違和感を覚えた。
(何故なの……)
バルゲルには疫病で苦しんでる人が少ない、どの家からその悲しみを感じないのだ。
他の街では多くの人々が苦しんでいる、その被害は小さな村は無くなってしまう程だ。
それがバルゲルには一切無いの様に思える程疫病が無いのだ。
(治療用のアーティファクトがそんなにあるの?
疫病を治す魔法は回復魔法と違って高等魔法……その辺の上級魔道士じゃ使えないはず。
医術?いや……魔女が振り撒く疫病は呪いの様な物、普通じゃ治せない!)
そう思いながら走り抜けると広い広場に出て、そのままの勢いで飛び降りた瞬間!
広場の中央に黒い影が現れロアは立ち止まる、広場全体からは何も感じない、罠ではない様だ。
「お待ちしてました」
その影が話しかけくる、どうやらロアが魔女だと言う事に気付いている様だ。
「……」
ロアは疑問に思った。
魔鏡の魔女と奇術の魔女は二人で行動し、神すら滅ぼした古の魔女として名が知れている。
それは名だけでは無くその姿も知れ渡っている。
だがこの影は魔鏡の魔女を恐れてはいない様だった。
「お一つお伺いします。
あなたは敵ですか?」
影は話しかけてくる。
「あなた次第ね……」
「そうですか、私も銀の仮面の魔女と争いたくありません。
古から聞く魔鏡と奇術……
魔女でありながら、銀を纏える魔女……
何故、魔女でありながら浄化の力を持つ銀を纏えるのですか?」
そう聴きながらその者が姿を現した……
金色の羽のネックレスを身につけ白いローブを纏いフードを深く被っている、髪飾りだろうか、金色の何かがフードの奥に僅かに見える、顔が月明かりに照らされ美しい顔をしている。
その素顔からしてまだ罪深いが染まりきっては無い様だ。
明らかに死体の魔女とは違う。
「私も銀を身につけてみたいです。
そうすればもっとオシャレが出来るのに……教えてくれませんか?」
その者は聞いてくる。
「あなたも罪を滅ぼせばいつかは纏えるわ……
疫病を振り撒いてるならそれを止め呪いを解きなさい。
罪を重ね過ぎれば、その綺麗な顔も醜くなるわよ」
ロアは彼女が魔女であると確信し、そう話した。
だが、彼女は丁寧に話すが邪な魔力が溢れ出ている、距離を保ち警戒はし続ける。
「それは出来ません……残念ですが……」
彼女がそう言い、ふっと息を吹いた。
次の瞬間、空気の塊と言うのだろうか、その様な突風がロアを襲い吹き飛ばし、ロアは建物の壁に叩きつけられた。
「かっ……」
ロアは血を僅かに吐く、凄まじいダメージをいきなり食らってしまい、彼女を見ようとしたが、そこに居なかった。
「こっちよ」
彼女は真横にいた、そしてまたふっと息を吹き、同じ突風がロアを襲いロアは吹き飛ばされた。
今度は木の壁に叩きつけられ、その壁を破壊し埃が舞うがロアはそこに居なかった。
鏡を使ってバルゲルの街の外に出たのだ。
「油断した……」
バルゲルを気にしてるなら派手には動かないと踏んで居たのだ。
「くっ」
右足に激痛が走り、見ると木の破片が深く刺さっていた。
赤い血が流れ月明かりが怪しく照らす。
「逃がしませんよ」
既に追いつかれていた、その動きは速くまさに風であった。
「あなた……まさか……」
「えぇ、私は風の魔女……」
風の魔女はそう名乗る。
ロアは木の破片を抜き何かを念じた。
風の魔女はスーっと息を深く吸った途端、ロアが苦しみ出した。
ロアの周辺が真空になったのだ。
(息が……まさかこんなに強いなんて……)
ロアは鏡を使い逃げようとしたが、風の魔女がスッと手を振り、真空の刃が鏡を割った。
「どお?息が出来なくても死ねない苦しみは、魔女ってそこが不便よね。
ところで奇術の魔女はどうしたの?
魔鏡と奇術……とても仲がいいって聞いてたけど?」
風の魔女がそう言うと、ロアはニヤッと笑った。
「??」
風の魔女が不思議に思った瞬間、背後から風の魔女は斬りつけられた。
斬りつけたのはシャルルだった。
シャルルはロアが水晶の前に置いたアーティファクトを通してロアの助けを求める魔力を感じ、セリアに言って奇術を使い瞬時にロアが描いた魔法陣に移動をしたのだ。
(手応えがない……そう言うことか……)
シャルルは風の魔女が全身風だと気付いた。
「珍しいね。魔鏡が私を呼ぶなんて」
シャルルはそう言い、ロアはフッと小さく微笑む、シャルルは素早く突きを入れた。
「我が力を……⁈」
風の魔女は斬り裂かれ、貫かれたがシャルル周辺も息を深く吸い真空にした。
「あなた誰?エルフだったらすぐに死んじゃうよ」
「そ…う……かな?」
シャルルは僅かに苦しそう演じ、真空の中で声を出した。
「⁈⁈」
風の魔女は真空の中で声を出したシャルルを見て驚きを隠せなかった。
そして風の魔女は驚いたと同時に、真横から現れたシャルルによって首を切り落とされ、ロアの真空が解かれた。
真空で苦しそうにしていたのは、シャルルの幻であった。
シャルルは素早く黒いローブを纏い、銀の仮面を身につける。
「ありがとう奇術」
「ううん、考え方変えたの?
助けを呼ぶなんて、魔鏡らしくないじゃない」
「ちょっとね」
ロアはセリアに教えた様に、無理せずに助けを呼んだのだ。
「貴方が奇術だったんだ。
だから動けたのね、どんな奇術を使ったの?」
風の魔女は姿を消していた。
ロアとシャルルは相手が魔女であるから驚きはしない、背中を合わせて周りを見渡すが、風そのものになったらしい風の魔女を見る事ができない……変わりに空に何か居るのに気付いた。
「面倒な相手ね……
あの子は何してるのかしら?」
シャルルが言う。
「え?……でも何とかなるわよ、私達なら」
ロアはそれに気付かずに言い、シャルルが微笑みながら言う。
「来るよ!あの問題児が‼︎」
風の魔女が姿を消したまま竜巻を起こして襲い掛かった。
風の魔女は竜巻の中にいる。
凄まじい勢いで真空の刃が二人に目掛けて襲い掛かる。
ロアが巨大な鏡を出してその鏡が全ての真空の刃を受ける。
鏡は割れる事なく映った刃を全て反射させ、その刃は竜巻目掛けて飛んでいく。
「効きませんよ私の刃なんですから」
「えぇ、少し楽しませて貰うわ」
シャルルが言い、鏡が竜巻に飲まれ粉々に砕け散るが、ロアもシャルルもそこに居なかった。
風の魔女が辺りを見回すが、二人は何処にも居ない。
「逃げたのですか?つまらないですね」
風の魔女がそう言った時。
「うっわーい!巻き込まれるぅぅ‼︎」
楽しそうな声が空から聞こえてきた。
空を飛んでいたセリアが、ファイアーエンジェルのまま竜巻に巻き込まれた。
セリアはファイアーエンジェルになって空を飛び、シャルルを追いかけて来たのだ。
「火‼︎」
風の魔女が叫ぶ!
セリアはファイアーエンジェルになってる為に、風に煽られ火の勢いが凄まじく増し火柱の様に竜巻が変わっていく。
「まっじょさん!あっそぼー‼︎」
セリアは心から楽しんでいた、何故かセリアには風の魔女が敵には思えなかったのだ。
そして竜巻に逆らい風の魔女に突っ込んでいく。
セリアの体は炎と化していて竜巻の中の真空の刃全く効かない。
「火ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼︎」
風の魔女の悲鳴が聞こえる。
シャルルとロアは少し離れた場所から怪しい笑顔で見ている。
二人は巻き込まれない様に離れただけであった。
風の魔女は火の塊りとなったセリアの直撃を受ける。
その衝撃を受けてもまだ竜巻は残り完全な炎の竜巻となったが、少しして収まり風の魔女は逃げ出した。
「なんなのよ!この子は‼︎」
風の魔女は叫びその声はシャルル達にも聞こえていた。
「いい子だけど……」
シャルルが言う。
「問題児……」
魔女のロアが言い二人は頷く。
風の魔女は風となって去ろうとしたが、普段から精霊と遊んでいるセリアにはハッキリとその姿が見えていた。
「もっとあそぼーー‼︎」
セリアが炎の翼をはばたかせ、全力で追うが、風の魔女は突風になり遠くに逃げて行った。
「いやーーーーーー‼︎」
風の魔女の悲鳴が夜空に響いていた。
「また遊んでねーー‼︎」
「風の魔女って最古の魔女の一人よね?」
シャルルが仮面の下で呆れた笑顔でロアに聞いた。
「えぇ……」
ロアが同じ笑顔をしたまま答える。
「ロアさん大丈夫?」
セリアが降りてきてロアに聞いた。
「えぇ大丈夫よ、来てくれてありがとうね、本当に助かったわ」
「あっ、足!」
セリアがしゃがみ、手を当てるとロアの右足の深い傷がスゥーっと癒えていく。
セリアがファイアーエンジェルの時は、命の炎も操れるので回復魔法の効果も格段に上がる。
ロアはセリアの優しい温もりを感じていた。
「セリエさんは?」
ロアが聞いた。
「なんか調子悪いから、おうちで休んでるよ」
「そう……お大事にね。」
ロアは苦笑いしながら言うが、仮面のおかげでその表情は気づかれなかった。
そして三人はシャルルの小屋に一旦帰り、セリアはセリエと同じベッドに入り先に休んだ。
ロアとシャルルは外で星を眺めながら、ゆっくりと昔を思い出しながら募る話をし夜が明けて行った。
「まさかね、あの二人があなたの所に行くなんてね」
ロアがそう囁く。
千年ぶりに二人で見る夜明けは、美しくその瞳に映っていた。
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