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✯第一章 西の国〜前編〜✯
14話✯えー見てみたいです!✯
しおりを挟むコンコンッ
コンコンッ!
シャルルとロアがあまりの事に沈黙している所に、訪問者が来た様だ。
二人は魔力を探るが大した魔力を感じずシャーゼンの街の人かと思い、ロアが家の扉を開けた。
「‼︎」
ロアが驚いていた、シャルルがそれに気付き玄関を見た時、シャルルも驚く。
そこには白いローブを着て金のネックレス、かぶったフードからは金の装飾品が見える。
風の魔女がそこにいた。
シャルルは素早く身構えると同時に風の魔女が言った。
「待って下さい、争いに来た訳ではありません」
「何をしにきたの?」
シャルルが聞く。
「ここでは、話しづらいので入っていいですか?」
風の魔女は言う。
ロアは何も言わずに招き入れる。
「ありがとうございます。
早速ですが、この前バルゲルに来られましたが、何か用があったのですか?」
風の魔女が聞いて来た。
「?私は西の国王に警告しに行ったのよ、力づくで白金の二人を護衛として雇いたがっているから、それを警告しに行ったら貴方が私を襲って来たのよ」
ロアが答える。
「そうでしたか……災いを振り撒きに来た訳では無いのですね。
安心しました……」
「?じゃあ今度は私が聞くけど、あなたは何故バルゲルに居たの?」
シャルルが聞く。
「私は西の国で生まれたので大切な祖国を守りたくて、バルゲルに居たのです。
魔女になったのは、いつか忘れましたが風を私だけの為に使ったからです。」
風の魔女が言う。
仮に全世界の風を一個人の為に使ったとなれば、世界の気象が変わってしまい凄まじい数の人々が死に絶えるのは目に見えている。
罪で言えば、その罪はセリアや魔境、奇術の三人を合わせても遠く及ばない……
風の魔女はそれをサラリと言った。
「祖国を守る?
それって悪いことじゃないと思うけど、何か罪でも重ねてるの?」
「私は綺麗になりたいのです。
ですから、私はバルゲルを守る報酬を沢山頂いてます。
それで税金が上がったとも言われます。
それで頂いたお金で……」
風の魔女は話し続ける。
「綺麗な宝石や、美しくなる化粧品を沢山買い続けているのです。
私の綺麗になりたい願望で、税金が上がり、それで私は貴重な物を買い漁る……
なんて罪深い……」
風の魔女はフードを取ると、自慢するかの様に、高そうなイヤリングを見せる。
「それでいくら貰ってるの?」
ロアが少し呆れ気味で聞く。
「月一千万クレアも貰ってますよ」
風の魔女が言う。
確かに高い、祖国を守る為で魔女ならば無償でもいい筈だと、二人は思う。
そもそも魔女と明かして稼ぐ方が間違っている。
「でも、戦争が起きるとその国の貴重な品が入って来なくなるので、戦争や大きな揉め事が起きそうになったら嵐を起こして、戦争を止めたりしてるのです。
美しい物が欲しくて欲しくて、あぁ私って……その為に災いを起こすなんて……」
風の魔女は自分の世界に入り語り続ける。
シャルルとロアはたった一千万クレアで世界の戦が無くなるなら安いと考えた。
確かに一万年以上大きな戦争は起きずに、時が流れている事に気付いた。
そして、それは罪なの?と思える程に風の魔女のしている事は、その受け取っている報酬からして慈善事業に思える。
規模の大き過ぎる罪滅ぼしをしている気がして、美しくなりたいと言う願望にも二人は呆れながらほっとく事にした。
「とりあえず、解りました。
私達はバルゲルに災いを振りまくなんて考えてないからお帰り下さい」
シャルルが邪魔者を帰そうとしている。
「あら?釣れないですね。
そう言えば、あの子は何者なのです?」
風の魔女が聞いて来た、間違いなくセリアの事だ。
「貴方には関係ないわ。」
ロアが答える。
「そうですか?多分心に傷があると思います。
風の精霊が教えてくれましたよ」
風の魔女がそう言うが、二人の秘密を教える訳にはいかないが……
「まぁ天使の魔法を使う者は、いつか天使にならないと、神罰を受ける定めですからね。
彼女の昇華が上手く行くといいですね。
では私は帰りますね。」
そう風の魔女は言って帰ろうとした。
「ちょっと待って、それは何の話?」
ロアが聞いた。
シャルルもロアもその話は知らなかった。
「あら?お二人とも知らないのですか?遠い遠い過去のお話、天使の魔法が生まれた訳を」
「詳しく聞きたいわね」
シャルルが聞く。
「そもそも神の力を借りる。そんな物を簡単に借りようとするのが間違っています。
ですから、魔女が生まれるのです。」
シャルルもロアも真剣に聞く、風の魔女は話してくれる、流石と言えよう最古の魔女一人で、シャルルとロアよりも古い事を知っている様だ。
「そこである者が神々に願いました。
神々は自らの罪を昇華すること、それを条件に力を借したのです。
その者の罪があったからこそ、成し得ること……
その者はその力を使い、荒ぶる魔女を浄化して行きました。
罪に気付いた者が初めて魔女の罪を知り、魔女を大人しくさせたり、慈悲を持って浄化に励みました。
全て、その者が罪深い者であったからこそ成し得たのです。」
懐かしそうに、風の魔女は話している。
「それでその人は天使になれたの?」
ロアが聞いた。
「なれたも何も、炎の大天使ソテリア様ですよ。
魔女が目立たない様になったのも全てソテリア様がそうされたからです。」
風の魔女は全く知らないシャルルとロアに驚く様に言うが、二人はソテリアは知っているが、そうやってなった事を知るはずが無い。
「で、貴方はなんで、風を自分の為に使うのを辞めたの?」
シャルルがふと思い聞いてみた。
「ソテリア様が天使に成られた後に、私が負けてしまい……二千年程、お説教受けまして……
今でも炎の天使はそれ以来怖いんですよね……」
(二千年……)
ロアとシャルルは、その年月を聞き懲りたんだなと思った。
「あの子がもし、天使になる術を知らないのでしたら、導いてあげないといけませんね。
私は関わりたく無いので、お二人で頑張ってあげて下さい」
風の魔女はそう言う。
「なんで関わりたく無いの?」
ロアが聞く。
「私には関係ありません、それに竜巻に巻き込まれて楽しめる子と仲良くなりたいですか?
普通の神経じゃ付き合えないですよ。
命がいくつあっても足りませんよ」
風の魔女はキッパリ断る。
(私は一緒に住んでるんですけど……)
シャルルが心で呟く。
(私は深く関わってるんですけど……)
ロアが心から呟く。
だが風の魔女はセリアを救う術を知っている。
絶望的だった二人は風の魔女を巻き込む事を決めた。
既にその辺の魔女と違い私欲の為にだが悪い事はしていない……魔女としての力はシャルルとロア二人合わせて、同等位だろう……それが厄介だが、何とかなる気がした。
「私はロア、貴方名前は?」
「ウィンです。名前を教えたのですからバルゲルに災いは振り撒かないで下さいね」
魔女にとって名前を自ら教える事は、信頼している証である。
その為に普段は魔鏡、奇術と呼び合っている。
風の魔女は魔鏡の魔女ロアが名乗った事に答えた。
「私はシャルル、もう魔女じゃ無いけどウィンさん、家に遊びに来ない?」
シャルルはウィンを小屋に誘った。
セリアにもう一度合わせて、関わらせようと考えたのだ。
セリアの性格なら絡んでいく、そう読んでいた。
「何か珍しい物でもあるのですか?」
「えぇ、珍しい宝石なら幾つかあるわね。
私は今マエストロしててね、素材として集めてたりするの、少し見てみない?」
シャルルは嘘は言って居ない、普段から珍しい宝石や秘石を収集している、マエストロとして当たり前の事である。
「えー見てみたいです!」
「きっと似合う宝石もあると思うし、行きましょう。
ロア、お願いね」
シャルルは微笑みながら言い、ロアも微笑みながら魔境を出す。
二人とも内心仮面をかぶっている様であった。
(本当にこの子素直ね、相手が魔女ってこと忘れてるのかしら)
ロアが呟く。
(ロア仕方ないよ、ウィンは幼い時に魔女になったみたいで、綺麗って言うより可愛い方だから。
ウィンがそれに気付くのはいつかしら)
そんなやり取りを心でしながら、二人はウィンを小屋に連れて行った。
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