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〜魔性 ただそこにいるだけで男を狂わす
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積川良二が、クラブ〈エンプレス〉に顔を出したという噂は、その日のうちに松岡の耳に入った。
連絡を受けて紀伊田のマンションを訪れると、玄関を開けるなり、紀伊田が、「ひどい顔……」と呆れ混じりの視線を松岡に向けた。
「松岡さんともあろうお方が、心配で一睡も出来なかったとか青臭いこと言うのやめてくださいよ?」
「うるせぇ、ほっとけ!」
お揃いのクッションの並ぶソファーに崩れるように座り込み、膝の上に両肘をついて顎の下で祈るように拳を握る。
歳下の恋人、佐伯の存在をこれみよがしに見せ付ける紀伊田の部屋は、今日もリビングにあるハンガーラックに掛けられた、紀伊田が着るには大きすぎるジャケットで松岡を牽制する。いつもなら嫌味の一つでも言ってやるところだが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。
「そんなに亜也ちゃんが心配なら会いに行けばいいのに……」
飲み物を運ぶ紀伊田に、「そういうわけにはいかない」と溜め息混じりに答えた。
紀伊田の情報筋の話しでは、今回の山崎組組長襲撃に関しては、山崎組若頭であり竜星会の会長でもあった加藤高嗣の弔いとして竜星会が報復に動いているらしく、石破組は表立った動きはしていないとのことだった。
とはいえ、積川良二が東京入りしているのは事実であり、〈エンプレス〉に顔を出したとなれば、積川率いるカラーギャング、〈スティンガー〉が動いているのは間違い無かった。
スティンガーは、もとは、内藤が組の次期構成員の抱え込み目的で作った不良グループであったが、積川良二に指揮を取らせて以降、関東に名を轟かす巨大暴走族を手中に収めたのを皮切りに、他エリアのカラーギャングをも吸収し、今では、渋谷を牛耳るチャイニーズギャング、〈フェニックス〉にも引け劣らない武闘派集団に成長した。
メンバーは、十代半ばから二十代前半と若手だが、若い分、体力、集中力ともに優れており、下手な構成員よりよほど戦力になると内藤も認めている。
その、スティンガーが動いているということは、事実上、内藤が動いているも同然だった。
にも関わらず何一つ情報が入ってこない。情報が入らないということは積川の足取りが掴めないという事を意味していた。
いつなん時、積川が亜也人を奪いに来るか解らない状況の中、積川の動きが読めないのは松岡にとっては大きな不安材料だった。
「何か手掛かりはないのか……」
「事が事だけにガードは固くなるでしょうね。いくら内藤でも、今回ばかりはさすがに部外者の松岡さんに捜査の依頼はしないだろうし、俺の方も色んなコネを当たってるけど、不気味なぐらい何も入ってこない……。もっとも、竜星会との確執もあるんで、さすがの内藤も派手には動けないんでしょうけど……」
「竜星会か……」
もとは竜星会の二次団体であった石破組が本家の直参二次団体に内部昇格したことは、裏社会のみならず世間一般でも一部タブロイド誌に取り上げられるほどのニュースになった。
傘下組織からの直参引き上げという一見華々しい昇格劇であるが、その裏側に金が絡んでいることは言うまでも無い。
暴力団という組織を支えるのは“金”だ。
親から子、孫へと、末広がりに続く巨大ピラミッドによって成り立つ組織は、上納金と呼ばれる、下からの吸い上げ金によって支えられている。
四次団体から三次団体、二次団体へと、上に行くほど金額は高くなり、最終的に親である本家に集められる。
シノギが厳しくなったこのご時世、上部団体の殆どは下からの上納金を重要な資金源として充てにし、それ無しでは上へ納める金の工面もままならないという団体も少なくない。
石破組の上部団体であった竜星会も例外ではなく、今回の石破組の内部昇格により、竜星会は有力な資金源を失うことになり、財政的に厳しい状況に置かれていると業界内ではもっぱらの噂であった。
加えて、シノギに長けた内藤が影響力のある二次団体に資金提供をする形で取り入り、執行部入りを目論んでいるとの噂も流れ、石破組と竜星会との亀裂は決定的なものとなった。
「石破組と竜星会の関係は、今や内部抗争に発展しかねないぐらいヤバめな状況ですからね。ヘタに周りをうろつくと、それこそ厄介なコトにも巻き込まれかねません。今回ばっかりは大人しくしてた方が身のためです」
「それじゃあ積川の動きが掴めない」
「積川はスティンガーと行動してるんでしょ? 奴らの動きが半端無いのは松岡さんだって知ってるじゃないですか。第一、奴らじゃ数が多すぎる。兵隊の数が多けりゃそれだけ行動範囲も広がるわけだし、積川が誰と行動するかによって行き先も全然違ってくるんすから」
「奴を追うのは無理だって言うのか」
「無理とは言いませんが実際難しいでしょ。司令部の〈エンプレス〉に張り込んでりゃ何か掴めるかも知れませんが、俺も松岡さんも面が割れてるから、すぐに見つかって、かえって面倒なことになるのがオチっすよ」
紀伊田は言うと、苛立ちと焦りで顔を火照らせる松岡を、やれやれといった様子で眺めた。
「亜也ちゃんのことが気になる気持ちは解るけど、少し冷静になった方がいいっすよ」
「俺は冷静だ」
松岡は即答したが、すぐに紀伊田に、「どこが」と言い返され、紀伊田の目をキッと睨んだ。
紀伊田は松岡の威嚇などまるで気にせず呆れたように片方の眉を吊り上げた。
「誤解してるみたいだから言っておきますけど、積川は、襲撃犯を探しに来てるんであって、亜也ちゃんを奪いに来てるわけじゃないんすよ? スティンガーと行動してるのだって、犯人を見付けるためであって亜也ちゃんを見付けるためじゃない。亜也ちゃんに接触するにしても、まずは犯人を上げてからと考えるのが普通でしょ? なら、それから追うほうが効率的じゃないですか。何も今から追いかけてわざわざ襲撃事件に首突っ込むような危険な真似すること無いですよ」
紀伊田の言うことはどれも正しく、松岡は何一つ言い返せなかった。
紀伊田は、無言のまま唇を噛み締める松岡を見て、しょうがないなぁとばかり唇を尖らせた。
「今は、亜也ちゃんの側に付いててあげるのが一番だと思うんですけど……?松岡さんだって、本当はそうしたいんでしょ?」
松岡は、どう反応して良いか解らず、紀伊田の視線から逃げるように目を伏せた。
図星を突かれ、腹立たしいような悔しいような気持ちが沸き起こる。
同時に、どこか気恥ずかしいような気持ちに襲われ、身の置き所の無い、居心地の悪さが胸に充満した。
バツの悪さを咳払いで誤魔化すと、紀伊田が、何か言いたげな目で松岡を見、揶揄うようにフフッと笑った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ちょっと……人ん家で何やってんの!」
「せっかく会いに来たのにその言い方はないだろ」
「昨日の今日で何言って……あっ、やぁ……ッ……」
引き寄せた身体をそのままベッドに押し倒し、柔らかい頬に鼻先を擦り付けながら短いキスを繰り返す。
腕の中にすっぽりと収まってしまうほど細い亜也人の身体は、松岡が両手首を掴んで覆い被さると殆ど身動き出来なくなってしまう。威勢は良いが微笑ましいほど無駄な抵抗だ。ジタバタと騒ぐ脚も、ほんの少し体重を掛けるだけでいとも簡単に大人しくなった。
「何だよそんな驚いた顔して」
「だって、しばらく来れないって言ってたのに……」
「会いに来ちゃ悪いのか?」
「誰もそんなことは……」
口元へ視線を落とすと、亜也人の瞳が松岡の唇を追い掛けるように視線を落とし、長い睫毛が怯えるように小さく瞬いた。
紀伊田のマンションを出て直ぐ、松岡は、衝動に突き動かされるまま加山の自宅に車を走らせた。
亜也人を避難させたところで自分が亜也人の周りをうろついていては、積川良二に亜也人の居場所を知られてしまう恐れがある。積川の率いるスティンガーが広範囲に顔が効くという理由もあり、松岡としては積川が東京に滞在している間、亜也人とは一切会わないつもりでいた。
しかし、亜也人の不在は、松岡が思っていたよりずっと松岡の日常に影響を及ぼした。
亜也人のいない部屋は生気を失ったようにうら寂しく、亜也人の温もりの無い独り寝の夜は恐ろしく長かった。
松岡は亜也人に会いたかった。
「お前は俺に会いたかったか? 俺と離れて寂しく無かったか?」
唇を噛むようなキスを繰り返し、吐息の漏れる隙間を割って舌をねじ込んだ。
亜也人が、んんっ、と喘いで松岡の舌を受け入れる。ぴったりと寄り添う亜也人の舌を自分の舌の先で丸めて飲み込むと、甘い唾液が舌の裏側から溢れて粘膜を潤した。
「んんん、ぁむ、ん……ふぁッ……ぅん」
「ほら、会いたかったか聞いてるのになんで何も答えない、ん?」
「だって、吉祥が……んぁッ……キスする……からっ……んんっ」
息継ぎのたびに問い掛け、返事を待たずにまた口付ける。
遮られた言葉が微かな震えとなって舌先を流れていく。
狂おしい想いが松岡をいつもより支配的にさせていた。
「会いたかったんだろ? 正直に言えよ……」
「んんっ……吉祥……ん、んっ……」
気持ちが逸り、本能がまどろっこしい愛撫をすっ飛ばしてより濃密な性感帯へと食指を動かす。
まずは乳首。
激しく舌を吸いながら、Tシャツを捲り上げて乳首の表面を人差し指の腹でこすり付けるように撫で回す。いつ触れても敏感な乳首だ。敏感すぎて痛がっていたのを、ゆっくり時間をかけて慣らし、痛みの中にある快感に気付かせた。亜也人の乳首は松岡が開発したと言っても過言ではなかった。
硬く尖り始めた乳首を指先で摘んでコリコリと揉みほぐし、完全に勃ち上がったところでTシャツを乱暴に首から引っこ抜く。両手をバンザイするように上げさせて脇の下を舐め、そのまま伝い下りて薄桃色の乳輪を舐め乳首を吸った。
「はっ、やめっ……」
激しいキスの影響か、亜也人の乳首は、いつもよりも硬さを増し、唇でつまめるほどの小さな硬い粒になっている。
それを、ぷっくりと膨らんだ乳輪ごと口に含んで吸い、舌の先で転がしたあと、根元を上下左右に潰しながら弾いて強く吸い上げた。
「痛ッ……そんなに強く吸っちゃ……やだっ……てぇ……ぁあぁっ……」
敏感になった乳首に同調するように、重なり合って密着した亜也人の下腹部が松岡のお腹の下で硬く盛り上がる。
熱く脈を打つ昂ぶりをスウェットパンツの上から掴んで撫でさすると、眉間にシワを浮かべて泣きベソ顔で横を向いていた亜也人が、「ヒッ」と肩をビクつかせた。
「やっ……だめっ……こんなとこで……んっ……」
「ベッドの上がダメならどこがいい、って言うんだ?」
「そういう意味じゃないよ! ここは加山さんの家なんだからっ、あっ、ひぁッ! やっ……」
スウェットズボンの上から形をなぞるように上下に扱き、生地をピンと伸ばして先端を指先でグリグリと回し撫でた。
グレーのスウェット生地が、松岡の指の周りで濃いシミを作る。
上体を滑らせ、亜也人の股間の正面に顔が来るようにしてズボンを引き下げると、亜也人のほんのりと赤みのさしたペニスの先端がローライズのボクサーパンツからはみ出しているのが目に入り、松岡は、ゾクっと身震いした。
「見てみろ、待ちきれなくてこんなことになってるぞ」
「やだッ……見んな…」
嫌がる仕草が股間にズクンと来る。
亜也人の端正な顔には不似合いな下腹部の卑猥な状態が、松岡の官能を刺激し、欲望に火を点ける。
顔を真っ赤にして恥じらう姿も身体を甘く疼かせた。
悔しそうに恨めしそうに眉を顰めながら、それでいて、もう許してと言わんばかりに泣き出しそうに瞼を閉じる亜也人を見ているうちに、松岡は、亜也人を自分の腕の中に抱き竦めて逃げれないようにして、もっともっと泣かせてやりたい衝動に駆られた。
腕の中の愛おしい子が、「嫌だ嫌だ」と言いながら快感に喘ぐさまが見たい。
欲望に突き動かされるように、下着を一気に膝まで引き下ろし、剥き出しのペニスを握りながら、股間までずり下がった身体を再び亜也人の顔が見える位置まで引き上げた。
これ以上曲がらないほど首を曲げて顔を背ける亜也人の震える睫毛を見ながら、握りしめた陰茎を勢い良く扱き上げる。
亜也人が、イヤイヤと首を振り、汗に濡れた髪が松岡の頬を打った。
「いやッ……マジで、やめてったら! こんなこと加山さんに知れたら……」
「とっくに感づかれてるさ。気にするな……」
「あぁぁっ、ダメっ! ちょっ……」
首筋に吸い付くようにキスをしながら、腰をくの字に折って逃げる亜也人のペニスをしっかりと握り、勢い良く上下にこすり上げた。
「ばかっ! やだって! これ以上したら汚れちゃうッ!」
人差し指でカリ首を支え、親指で先端の溝をくるくるとこする。生温かい蜜が指先にねっとりと絡み付く。指の腹ですくい、お尻の谷間に忍ばせようとしてふと思いとどまった。
来るつもりじゃ無かったので何も用意していない。
ヘタに後孔を刺激して気分が昂ってしまったら止められなくなるのは目に見えていた。
仕方ない。
一旦、亜也人から離れ、服を脱いで再び亜也人に覆い被さった。亜也人の手を取り、自分のペニスに誘導して握らせ、扱くよう促す。おぼつかない手付きの亜也人を、上から手を添えて助けながら扱き上げ、ガチガチになったところで亜也人のペニスと自分のペニスを二本同時に握り、裏筋と裏筋を擦り合わせるように扱いた。
「あっ、やぁっ、やだ、これッ……」
「お前の負担にならないよう気を使ってるんだ。今日はこれで勘弁してやる……」
「あっ……いやっ……あっあ、あっ」
お互いのペニスを擦り合わせるだけの単純な行為だが、視覚的にはこれが一番興奮する。
亜也人の形良く張り詰めたピンク色のペニスが松岡の、血管の浮き出た赤黒く反り勃つペニスに押し潰されてビクビクと蜜を滴らせる。
色も形も大きさも違う対照的な二つのペニスが、お互いが漏らした蜜でねちょねちょに絡まり合いながらヒクつくさまは身震いするほどいやらしい。
触れ合った部分から伝わる亜也人のペニスの熱さや脈打つ感じが興奮を高める。視線を上げれば、亜也人が、目の縁を紅く染めながら、恥ずかしくてどうにも堪らないといった様子で下唇を噛み、その姿が、この行為自体のいやらしさを増長させていた。
裏筋をしつこく擦り合わせた後、腰を浮かせて亀頭の位置を合わせて擦り付けた。握り締める手に力を加えて素早く扱き上げ、亜也人の様子を見ながら先端を撫で回したり、引っ掻いたりしながら射精感を高めて行く。
天井を隔てているとはいえ、年数の経った木造住宅の壁の薄さが気になるのか、亜也人が、階下にいる加山に気付かれないよう歯を食い縛って声を殺す。快感に耐える苦悶の表情が堪らなく官能をくすぐり、松岡を更なる快感へと掻き立てた。
「見てみろ、俺のとお前のが一緒になってぐちょぐちょ言ってる……」
「やぁ……んなこと言うな……アッ……んあッ……」
根元から握り直して扱き上げるスピードを早めた。
強い刺激に亜也人の腰がヒクヒクと痙攣し始める。
「あぁぁっ、あっ、やっ、だめ、もっ、あっ、あ」
「こっちももうパンパンだ。そろそろ限界か?」
「や、あ! やっ、そんなにしたらダメぇっ!」
首を横に振って抵抗する亜也人に構わず扱き上げると、亜也人の顔がみるみる高潮し、「ひぐっ!」と言葉にならない悲鳴を上げて顔を背ける。
シーツを握り締めたのが先か、亜也人がビクンと背中を跳ね上げ、同時に生温かい精液が松岡のペニスを濡らしながら飛び散った。
「なに一人で先にイッてんだ?」
言いながら、握りしめたままのペニスを再び扱き上げる。まだ痙攣の治らない敏感な部分を刺激され、亜也人が肩をねじりながら流し見るように視線を向けた。
「あぁ、あああ、あッ、ゃダっ、吉祥、またでちゃう……」
こういうところだ。
ある意味“魔性”とも言える亜也人の魅力は、この、見るたびに違った表情を見せる、無意識に欲情を煽る反応や仕草に尽きる。
訴えるように見る亜也人と目が合った瞬間、松岡は、亜也人の眉尻の下がった切なげな表情にズキンと股間を疼かせた。
クソッ! と思った時には時すでに遅く、松岡は殆ど反射的に射精した。
「ーーーったく、お前って奴は……」
亜也人のお腹の上に精液を吐き出し、折り重なるように倒れ込む。
亜也人の頭の横に両肘をついて真上から見下ろし、放心したように虚な目で見上げる亜也人のおでこに自分のおでこを擦り付けた。
「マジでわざとやってんじゃ無ぇんだろうな……」
「なにが……」
「なにが、じゃねーよ、この小悪魔が……」
鼻先に、チュッ、と口付け、左右の頬を順番に口付けてから、唇に軽く口付けた。
舌を絡めたい衝動に駆られたが、収まりつつある下半身が再び疼き出しそうで我慢した。
上半身を起こすと、亜也人のお腹に吐き出した精液が、松岡のみぞおちの辺りでべったりと糸を引いた。
「しまった。何か拭くもんねぇか」
「だから言ったじゃん。ひとン家なんだからすぐにシャワーとか浴びれないんだから」
「そんな怒んなよ……」
自分のお腹と亜也人のお腹をティッシュで拭い、衣服を身に付け、トイレの洗面台でタオルを濡らして亜也人の元へ戻った。
「拭いてやる」と、亜也人を仰向けに寝かせて汚れた部分を丁寧にタオルで拭う。
指を拭いてやろうと手を持ち上げると、亜也人が泣き出しそうに顔を歪め松岡はふと手を止めた。
「どうした。無理にやったのがそんなに嫌だったのか?」
亜也人は静かに首を振った。
「違う……。なんか……すごく幸せで……」
「いきなり何言ってんだ。俺様をからかうと後が怖いぜ?」
「からかってなんか無いよ。……吉祥が……こうしていつも傍にいてくれて……それが凄く幸せだなって思って……。俺ばっかりこんな幸せでいいのかな、って……」
「お前だけじゃないだろ? 俺だって、お前にそう言ってもらえてスゲェ幸せだ……」
「吉祥……」
亜也人の大きな瞳が、松岡を見詰めたままみるみる潤み始める。
何、泣いてんだ。
そう言い掛けた時だった。
「吉祥……」
ふいに、掠れた涙声で言われ、松岡は、吸い寄せられるように亜也人の瞳を覗き込んだ。
「吉祥……俺……」
亜也人は、切ないほど真っ直ぐな瞳で松岡を見上げ、しかしその先を言わずに逃げるように目を伏せた。
肘を曲げ、泣き顔を隠すように腕を目元にあてがい唇を結んで声を噛み殺す。
何かに打ちひしがれるように肩を震わせる亜也人を見ながら、松岡は、得体の知れない不安に襲われていた。
こういう泣き方をする時の心理状態を松岡は嫌と言うほど知っている。
幸せすぎて涙が出るというのとは違う、むしろ幸せとは真逆な、マイナスの感情の滲む泣き方だ。
亜也人は何かを不安がっている。
一体何が……。
咄嗟に沸き上がった言葉を、松岡は喉の奥に押しやった。
ひとたび口を開いたら、亜也人を追いつめてしまうような気がして何も言えなかった。
松岡は、それ以上は詮索せず、声を殺して泣く亜也人の頭をただ黙って撫でた。
亜也人が落ち着くのを待って階下へ降りると、いつの間に帰宅していたのか、台所で夕飯の準備に取り掛かろうとしている加山と鉢合わせた。
「あれ、もう帰っちゃうんですか? せっかくだから夕飯食べて行って下さいよ」
加山の好意は有り難かったが、松岡は、何をしていたか一目で解る亜也人の気怠そうな雰囲気や、まだ身体に微かに残る精液の匂いに気恥ずかしさを感じ、加山の申し出を丁重に断り、玄関先へと急いだ。
加山は、わざわざ夕飯を作る手を止めて松岡を見送るために後ろを付いてきた。
松岡が会釈をしてドアに手を掛けると、加山が、「外まで送る」と言い、亜也人に、家の中で待つよう言い付けて後に続いた。
おそらく、この家で破廉恥な行為をしたことを注意されるのだろう。
松岡は思ったが、加山に、「亜也人くんのことなんですけど」と切り出され背筋をピクンと硬直させた。
「亜也人が何か?」
慌てて聞き返すと、加山は、松岡を見て、まぁまぁ、と宥めるように微笑んだ。
「ご無礼を承知で申し上げますが、実は松岡さんに、亜也人くんともっとたくさん話をしていただきたいんです」
「話しを……?」
加山は松岡の目を見ながら、大きく頷いた。
「ご存知の通り、亜也人くんは同年代の他の子と比べて世間擦れしたところが無く、少し生きづらさを感じるほど繊細で優しい子です。口にこそ出さないものの、おそらく誰よりも周りのことを考えて、自分以外のことでいつも頭の中を一杯にしてる。言いたいこともたくさんあるんでしょうが、たくさん有りすぎて何から話せばいいのか解らないんだと思います。なので、一番近くにいる松岡さんが、亜也人くんの話しをたくさん聞いて、亜也人くんの思いをもっともっと引き出してあげて欲しいんです」
丁寧でありながら自分の意見をハッキリと主張した力強い口調で言うと、加山は、出過ぎたことを言って申し訳ない、と松岡に頭を下げた。
「自分の心の声を吐き出して、伝えたいことをちゃんと伝えられるようになれば、亜也人くんは今よりもっと生きやすくなると思うんです。そのためにも、松岡さんに協力していただいて、亜也人くんにたくさん話しかけて、亜也人くんの気持ちをたくさん聞いてあげて欲しいんです」
松岡は何も答えられなかった。
呆気に取られたわけでも圧倒されたわけでも無い。
嫌な予感が胸を渦巻き身体が反応しなかった。
部屋での亜也人の突然の涙への動揺が冷めやらない今このタイミングでの加山の話し。
勘の良い松岡は、加山の言葉の裏側にある意図を無意識に感じ取っていた。
亜也人は、俺に言えない何かを抱えている。
思いが足元からヒタヒタと這い上がり、松岡の身体を四方から押し潰すように締め付けた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「綺麗だとは思うけど、俺は正直、勘弁だな……」
得意げに語る男の顎髭の感触をおでこに感じながら、宇治原駿は、昔、一度だけ画像で見た寺田亜也人の姿を思い浮かべていた。
深夜のシティホテル。
内藤に言われて同行したものの、積川良二はずっと機嫌が悪く、一緒に行動している間もずっと駿を無視し続け、内藤が用意したツインルームのホテルも、自分は仲間の所に泊まると言って、駿だけを送り届けてさっさと帰ってしまった。
一人取り残された駿は、シーツに包まり、良二が寝る筈だったカラのベッドを睨み付けながら屈辱に耐えていた。
新幹線のホームで顔を合わせた時から歓迎されていないのは解っていたが、良二の冷たい仕打ちは駿の恋心とプライドを傷付けた。
地元では高嶺の花で知られた自分が、一人でベッドに捨て置かれている。こんなぞんざいな扱いを受けるのは初めてだった。
言いたいことだけ一方的に言い、駿の方を振り返りもせずに立ち去った良二の後ろ姿を思い出すと、駿は、悔しくて悲しくて、ベッドをめちゃめちゃに蹴り付けてやりたい気持ちになった。
一方で、気の無い態度もここまで徹底されるとむしろ意地になり、何としてでも落としてやりたいという負けん気も出た。
絶対に良二をモノにする。
そのためには、寺田亜也人をもっとよく知る必要があった。
幸い、知り合ったばかりのクラブ〈エンプレス〉のバーテンダーは良二のチームのメンバーらしく、別れ際に渡された名刺に書かれた連絡先に電話をすると喜び勇んでホテルにやって来た。
駿が、中出しを許してやると、バーテンダーの男は、上機嫌で寺田亜也人のことを喋り始めた。
「どんな奴なの?」
「大人しい人だよ。いつも良二さんの後ろにくっついてた。……白くて細くて、透明感がある、っていうのかな。消えて無くなりそうな感じ……」
でも。
と、男は意味ありげに一呼吸置き、駿の髪を弄びながらゆっくりと言葉を続けた。
「ある意味、一番怖い人だよ」
「怖い?」
「ああ。迂闊に近付いちゃいけない人……」
近付けば確実に怪我をする。
仲良くしてるところを見られたらタダではすまない。
二人きりになるなどもってのほか。
事実、昔、亜也人と仲良くしていたクラスメイトは、ただ亜也人と親しげにしていたというだけで壮絶なリンチに会い学校を去った。
亜也人と関係のあった過去の男たちは根こそぎ叩きのめされ、亜也人に言い寄る者は何処の誰であろうと容赦なく血祭りに上げられた。
積川良二の亜也人に対する思い入れは異常と言って良かった。
積川良二の逆鱗。
誰が言い出したか、いつの間にか、皆、寺田亜也人をそう呼ぶようになった。
寺田亜也人こそが積川良二の決して触れてはならない逆鱗。
学校でも、ここスティンガーの司令部においても、亜也人と面識のある面々は、暗黙の了解のもと、常に良二の顔色を伺いながら亜也人と接していた。
亜也人の類い稀な美貌と高貴な猫のようなしなやかな身体に目を奪われても、下手に鼻の下を伸ばせば、『色目を使った』と目を付けられ、見ないように目を逸せば、『挨拶が無い』と叱られる。
災難なのは亜也人に懐かれてしまうことで、亜也人が気を許して自分から近付いて行った者などは、何もしていないのに、亜也人に気に入られたというだけで問答無用で出入り禁止になった。
良二のために働き、たくさん手柄を立ててきた者ですら、亜也人への態度一つで、簡単に地位を落とされ制裁を加えられる。
そんな戦々恐々とした中で、周りは次第に、関東圏内ではその名を知らない者はいない、泣く子も黙るスティンガーの頭、積川良二より、いつもその後ろをついて歩く、虫も殺さないような顔をした寺田亜也人を恐れるようになった。
「亜也人さんが悪いわけじゃないんだけど、とばっちり、って言うか、正直、関わるとろくな事にならねぇからビビッてたのは事実だね。こんなこと言うのもナンだけど、良二さんと別れてくれてホッとしてる奴は結構多いよ。実際、良二さんの傍若無人ぶりに一部で不満の声が上がり始めてたのもあるし、あのままじゃスティンガーは解散してた。上の人も、それが解ってたから二人を別れさせたんじゃねぇか、って話だよ」
どう見ても亜也人より歳上の男が、司令部を離れたプライベートでも敬語を使うあたり、亜也人の、スティンガー内部での影響力の大きさを物語る。
華奢でひ弱な男が、武闘派で知られる男たちを翻弄している。
寺田亜也人の得体の知れない力に震えを覚えると同時に、駿は、積川良二をそこまで狂わせる亜也人の魅力に強烈な嫉妬を覚えた。
「そいつ……。その、亜也人、って奴、今はどうしてんの?」
「今は、元石破組の幹部クラスの色になってるっていう話しだよ。なんでも、凄腕の殺し屋だった、って噂もあるぐらいの大物らしいぜ?」
「なんで、そんな奴が……」
「亜也人さんの色香にコロっと参っちゃったんだろ? ありゃ魔性だ。なんもしなくてもただそこにいるだけで男を狂わせる……」
しみじみと言う男の遠い目が、駿のプライドを深く傷付けた。
衝動的に、駿は、シーツを跳ね除け男の身体に跨った。
「おい、なにいきなり……」
「なにが魔性だ! ただ顔が良いだけだろ?」
男の上に馬乗りに跨り、両手で頬を挟みながら背中を丸めて荒々しく唇を吸う。駿の突然の行動に、男は、驚きながらも、まんざらでもなさそうに頬を歪めた。
「あれだけヤッといてまだ足りねーの?」
「うるせぇ。天国に行かせてやるからじっとしてな」
唇から首筋、鎖骨とキスを進め、乳首を舐めたり吸ったりしながら身体を滑らせて股間に顔を埋める。半勃ちになったペニスを口に含んで舌を絡ませると、男が、うっ、と呻いて、駿の口の中で完全に勃起する。
テクニックを見せ付けるかのように、駿は、根元まで一気に喉の奥に押し込み、頭を激しく上下させた。
連絡を受けて紀伊田のマンションを訪れると、玄関を開けるなり、紀伊田が、「ひどい顔……」と呆れ混じりの視線を松岡に向けた。
「松岡さんともあろうお方が、心配で一睡も出来なかったとか青臭いこと言うのやめてくださいよ?」
「うるせぇ、ほっとけ!」
お揃いのクッションの並ぶソファーに崩れるように座り込み、膝の上に両肘をついて顎の下で祈るように拳を握る。
歳下の恋人、佐伯の存在をこれみよがしに見せ付ける紀伊田の部屋は、今日もリビングにあるハンガーラックに掛けられた、紀伊田が着るには大きすぎるジャケットで松岡を牽制する。いつもなら嫌味の一つでも言ってやるところだが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。
「そんなに亜也ちゃんが心配なら会いに行けばいいのに……」
飲み物を運ぶ紀伊田に、「そういうわけにはいかない」と溜め息混じりに答えた。
紀伊田の情報筋の話しでは、今回の山崎組組長襲撃に関しては、山崎組若頭であり竜星会の会長でもあった加藤高嗣の弔いとして竜星会が報復に動いているらしく、石破組は表立った動きはしていないとのことだった。
とはいえ、積川良二が東京入りしているのは事実であり、〈エンプレス〉に顔を出したとなれば、積川率いるカラーギャング、〈スティンガー〉が動いているのは間違い無かった。
スティンガーは、もとは、内藤が組の次期構成員の抱え込み目的で作った不良グループであったが、積川良二に指揮を取らせて以降、関東に名を轟かす巨大暴走族を手中に収めたのを皮切りに、他エリアのカラーギャングをも吸収し、今では、渋谷を牛耳るチャイニーズギャング、〈フェニックス〉にも引け劣らない武闘派集団に成長した。
メンバーは、十代半ばから二十代前半と若手だが、若い分、体力、集中力ともに優れており、下手な構成員よりよほど戦力になると内藤も認めている。
その、スティンガーが動いているということは、事実上、内藤が動いているも同然だった。
にも関わらず何一つ情報が入ってこない。情報が入らないということは積川の足取りが掴めないという事を意味していた。
いつなん時、積川が亜也人を奪いに来るか解らない状況の中、積川の動きが読めないのは松岡にとっては大きな不安材料だった。
「何か手掛かりはないのか……」
「事が事だけにガードは固くなるでしょうね。いくら内藤でも、今回ばかりはさすがに部外者の松岡さんに捜査の依頼はしないだろうし、俺の方も色んなコネを当たってるけど、不気味なぐらい何も入ってこない……。もっとも、竜星会との確執もあるんで、さすがの内藤も派手には動けないんでしょうけど……」
「竜星会か……」
もとは竜星会の二次団体であった石破組が本家の直参二次団体に内部昇格したことは、裏社会のみならず世間一般でも一部タブロイド誌に取り上げられるほどのニュースになった。
傘下組織からの直参引き上げという一見華々しい昇格劇であるが、その裏側に金が絡んでいることは言うまでも無い。
暴力団という組織を支えるのは“金”だ。
親から子、孫へと、末広がりに続く巨大ピラミッドによって成り立つ組織は、上納金と呼ばれる、下からの吸い上げ金によって支えられている。
四次団体から三次団体、二次団体へと、上に行くほど金額は高くなり、最終的に親である本家に集められる。
シノギが厳しくなったこのご時世、上部団体の殆どは下からの上納金を重要な資金源として充てにし、それ無しでは上へ納める金の工面もままならないという団体も少なくない。
石破組の上部団体であった竜星会も例外ではなく、今回の石破組の内部昇格により、竜星会は有力な資金源を失うことになり、財政的に厳しい状況に置かれていると業界内ではもっぱらの噂であった。
加えて、シノギに長けた内藤が影響力のある二次団体に資金提供をする形で取り入り、執行部入りを目論んでいるとの噂も流れ、石破組と竜星会との亀裂は決定的なものとなった。
「石破組と竜星会の関係は、今や内部抗争に発展しかねないぐらいヤバめな状況ですからね。ヘタに周りをうろつくと、それこそ厄介なコトにも巻き込まれかねません。今回ばっかりは大人しくしてた方が身のためです」
「それじゃあ積川の動きが掴めない」
「積川はスティンガーと行動してるんでしょ? 奴らの動きが半端無いのは松岡さんだって知ってるじゃないですか。第一、奴らじゃ数が多すぎる。兵隊の数が多けりゃそれだけ行動範囲も広がるわけだし、積川が誰と行動するかによって行き先も全然違ってくるんすから」
「奴を追うのは無理だって言うのか」
「無理とは言いませんが実際難しいでしょ。司令部の〈エンプレス〉に張り込んでりゃ何か掴めるかも知れませんが、俺も松岡さんも面が割れてるから、すぐに見つかって、かえって面倒なことになるのがオチっすよ」
紀伊田は言うと、苛立ちと焦りで顔を火照らせる松岡を、やれやれといった様子で眺めた。
「亜也ちゃんのことが気になる気持ちは解るけど、少し冷静になった方がいいっすよ」
「俺は冷静だ」
松岡は即答したが、すぐに紀伊田に、「どこが」と言い返され、紀伊田の目をキッと睨んだ。
紀伊田は松岡の威嚇などまるで気にせず呆れたように片方の眉を吊り上げた。
「誤解してるみたいだから言っておきますけど、積川は、襲撃犯を探しに来てるんであって、亜也ちゃんを奪いに来てるわけじゃないんすよ? スティンガーと行動してるのだって、犯人を見付けるためであって亜也ちゃんを見付けるためじゃない。亜也ちゃんに接触するにしても、まずは犯人を上げてからと考えるのが普通でしょ? なら、それから追うほうが効率的じゃないですか。何も今から追いかけてわざわざ襲撃事件に首突っ込むような危険な真似すること無いですよ」
紀伊田の言うことはどれも正しく、松岡は何一つ言い返せなかった。
紀伊田は、無言のまま唇を噛み締める松岡を見て、しょうがないなぁとばかり唇を尖らせた。
「今は、亜也ちゃんの側に付いててあげるのが一番だと思うんですけど……?松岡さんだって、本当はそうしたいんでしょ?」
松岡は、どう反応して良いか解らず、紀伊田の視線から逃げるように目を伏せた。
図星を突かれ、腹立たしいような悔しいような気持ちが沸き起こる。
同時に、どこか気恥ずかしいような気持ちに襲われ、身の置き所の無い、居心地の悪さが胸に充満した。
バツの悪さを咳払いで誤魔化すと、紀伊田が、何か言いたげな目で松岡を見、揶揄うようにフフッと笑った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ちょっと……人ん家で何やってんの!」
「せっかく会いに来たのにその言い方はないだろ」
「昨日の今日で何言って……あっ、やぁ……ッ……」
引き寄せた身体をそのままベッドに押し倒し、柔らかい頬に鼻先を擦り付けながら短いキスを繰り返す。
腕の中にすっぽりと収まってしまうほど細い亜也人の身体は、松岡が両手首を掴んで覆い被さると殆ど身動き出来なくなってしまう。威勢は良いが微笑ましいほど無駄な抵抗だ。ジタバタと騒ぐ脚も、ほんの少し体重を掛けるだけでいとも簡単に大人しくなった。
「何だよそんな驚いた顔して」
「だって、しばらく来れないって言ってたのに……」
「会いに来ちゃ悪いのか?」
「誰もそんなことは……」
口元へ視線を落とすと、亜也人の瞳が松岡の唇を追い掛けるように視線を落とし、長い睫毛が怯えるように小さく瞬いた。
紀伊田のマンションを出て直ぐ、松岡は、衝動に突き動かされるまま加山の自宅に車を走らせた。
亜也人を避難させたところで自分が亜也人の周りをうろついていては、積川良二に亜也人の居場所を知られてしまう恐れがある。積川の率いるスティンガーが広範囲に顔が効くという理由もあり、松岡としては積川が東京に滞在している間、亜也人とは一切会わないつもりでいた。
しかし、亜也人の不在は、松岡が思っていたよりずっと松岡の日常に影響を及ぼした。
亜也人のいない部屋は生気を失ったようにうら寂しく、亜也人の温もりの無い独り寝の夜は恐ろしく長かった。
松岡は亜也人に会いたかった。
「お前は俺に会いたかったか? 俺と離れて寂しく無かったか?」
唇を噛むようなキスを繰り返し、吐息の漏れる隙間を割って舌をねじ込んだ。
亜也人が、んんっ、と喘いで松岡の舌を受け入れる。ぴったりと寄り添う亜也人の舌を自分の舌の先で丸めて飲み込むと、甘い唾液が舌の裏側から溢れて粘膜を潤した。
「んんん、ぁむ、ん……ふぁッ……ぅん」
「ほら、会いたかったか聞いてるのになんで何も答えない、ん?」
「だって、吉祥が……んぁッ……キスする……からっ……んんっ」
息継ぎのたびに問い掛け、返事を待たずにまた口付ける。
遮られた言葉が微かな震えとなって舌先を流れていく。
狂おしい想いが松岡をいつもより支配的にさせていた。
「会いたかったんだろ? 正直に言えよ……」
「んんっ……吉祥……ん、んっ……」
気持ちが逸り、本能がまどろっこしい愛撫をすっ飛ばしてより濃密な性感帯へと食指を動かす。
まずは乳首。
激しく舌を吸いながら、Tシャツを捲り上げて乳首の表面を人差し指の腹でこすり付けるように撫で回す。いつ触れても敏感な乳首だ。敏感すぎて痛がっていたのを、ゆっくり時間をかけて慣らし、痛みの中にある快感に気付かせた。亜也人の乳首は松岡が開発したと言っても過言ではなかった。
硬く尖り始めた乳首を指先で摘んでコリコリと揉みほぐし、完全に勃ち上がったところでTシャツを乱暴に首から引っこ抜く。両手をバンザイするように上げさせて脇の下を舐め、そのまま伝い下りて薄桃色の乳輪を舐め乳首を吸った。
「はっ、やめっ……」
激しいキスの影響か、亜也人の乳首は、いつもよりも硬さを増し、唇でつまめるほどの小さな硬い粒になっている。
それを、ぷっくりと膨らんだ乳輪ごと口に含んで吸い、舌の先で転がしたあと、根元を上下左右に潰しながら弾いて強く吸い上げた。
「痛ッ……そんなに強く吸っちゃ……やだっ……てぇ……ぁあぁっ……」
敏感になった乳首に同調するように、重なり合って密着した亜也人の下腹部が松岡のお腹の下で硬く盛り上がる。
熱く脈を打つ昂ぶりをスウェットパンツの上から掴んで撫でさすると、眉間にシワを浮かべて泣きベソ顔で横を向いていた亜也人が、「ヒッ」と肩をビクつかせた。
「やっ……だめっ……こんなとこで……んっ……」
「ベッドの上がダメならどこがいい、って言うんだ?」
「そういう意味じゃないよ! ここは加山さんの家なんだからっ、あっ、ひぁッ! やっ……」
スウェットズボンの上から形をなぞるように上下に扱き、生地をピンと伸ばして先端を指先でグリグリと回し撫でた。
グレーのスウェット生地が、松岡の指の周りで濃いシミを作る。
上体を滑らせ、亜也人の股間の正面に顔が来るようにしてズボンを引き下げると、亜也人のほんのりと赤みのさしたペニスの先端がローライズのボクサーパンツからはみ出しているのが目に入り、松岡は、ゾクっと身震いした。
「見てみろ、待ちきれなくてこんなことになってるぞ」
「やだッ……見んな…」
嫌がる仕草が股間にズクンと来る。
亜也人の端正な顔には不似合いな下腹部の卑猥な状態が、松岡の官能を刺激し、欲望に火を点ける。
顔を真っ赤にして恥じらう姿も身体を甘く疼かせた。
悔しそうに恨めしそうに眉を顰めながら、それでいて、もう許してと言わんばかりに泣き出しそうに瞼を閉じる亜也人を見ているうちに、松岡は、亜也人を自分の腕の中に抱き竦めて逃げれないようにして、もっともっと泣かせてやりたい衝動に駆られた。
腕の中の愛おしい子が、「嫌だ嫌だ」と言いながら快感に喘ぐさまが見たい。
欲望に突き動かされるように、下着を一気に膝まで引き下ろし、剥き出しのペニスを握りながら、股間までずり下がった身体を再び亜也人の顔が見える位置まで引き上げた。
これ以上曲がらないほど首を曲げて顔を背ける亜也人の震える睫毛を見ながら、握りしめた陰茎を勢い良く扱き上げる。
亜也人が、イヤイヤと首を振り、汗に濡れた髪が松岡の頬を打った。
「いやッ……マジで、やめてったら! こんなこと加山さんに知れたら……」
「とっくに感づかれてるさ。気にするな……」
「あぁぁっ、ダメっ! ちょっ……」
首筋に吸い付くようにキスをしながら、腰をくの字に折って逃げる亜也人のペニスをしっかりと握り、勢い良く上下にこすり上げた。
「ばかっ! やだって! これ以上したら汚れちゃうッ!」
人差し指でカリ首を支え、親指で先端の溝をくるくるとこする。生温かい蜜が指先にねっとりと絡み付く。指の腹ですくい、お尻の谷間に忍ばせようとしてふと思いとどまった。
来るつもりじゃ無かったので何も用意していない。
ヘタに後孔を刺激して気分が昂ってしまったら止められなくなるのは目に見えていた。
仕方ない。
一旦、亜也人から離れ、服を脱いで再び亜也人に覆い被さった。亜也人の手を取り、自分のペニスに誘導して握らせ、扱くよう促す。おぼつかない手付きの亜也人を、上から手を添えて助けながら扱き上げ、ガチガチになったところで亜也人のペニスと自分のペニスを二本同時に握り、裏筋と裏筋を擦り合わせるように扱いた。
「あっ、やぁっ、やだ、これッ……」
「お前の負担にならないよう気を使ってるんだ。今日はこれで勘弁してやる……」
「あっ……いやっ……あっあ、あっ」
お互いのペニスを擦り合わせるだけの単純な行為だが、視覚的にはこれが一番興奮する。
亜也人の形良く張り詰めたピンク色のペニスが松岡の、血管の浮き出た赤黒く反り勃つペニスに押し潰されてビクビクと蜜を滴らせる。
色も形も大きさも違う対照的な二つのペニスが、お互いが漏らした蜜でねちょねちょに絡まり合いながらヒクつくさまは身震いするほどいやらしい。
触れ合った部分から伝わる亜也人のペニスの熱さや脈打つ感じが興奮を高める。視線を上げれば、亜也人が、目の縁を紅く染めながら、恥ずかしくてどうにも堪らないといった様子で下唇を噛み、その姿が、この行為自体のいやらしさを増長させていた。
裏筋をしつこく擦り合わせた後、腰を浮かせて亀頭の位置を合わせて擦り付けた。握り締める手に力を加えて素早く扱き上げ、亜也人の様子を見ながら先端を撫で回したり、引っ掻いたりしながら射精感を高めて行く。
天井を隔てているとはいえ、年数の経った木造住宅の壁の薄さが気になるのか、亜也人が、階下にいる加山に気付かれないよう歯を食い縛って声を殺す。快感に耐える苦悶の表情が堪らなく官能をくすぐり、松岡を更なる快感へと掻き立てた。
「見てみろ、俺のとお前のが一緒になってぐちょぐちょ言ってる……」
「やぁ……んなこと言うな……アッ……んあッ……」
根元から握り直して扱き上げるスピードを早めた。
強い刺激に亜也人の腰がヒクヒクと痙攣し始める。
「あぁぁっ、あっ、やっ、だめ、もっ、あっ、あ」
「こっちももうパンパンだ。そろそろ限界か?」
「や、あ! やっ、そんなにしたらダメぇっ!」
首を横に振って抵抗する亜也人に構わず扱き上げると、亜也人の顔がみるみる高潮し、「ひぐっ!」と言葉にならない悲鳴を上げて顔を背ける。
シーツを握り締めたのが先か、亜也人がビクンと背中を跳ね上げ、同時に生温かい精液が松岡のペニスを濡らしながら飛び散った。
「なに一人で先にイッてんだ?」
言いながら、握りしめたままのペニスを再び扱き上げる。まだ痙攣の治らない敏感な部分を刺激され、亜也人が肩をねじりながら流し見るように視線を向けた。
「あぁ、あああ、あッ、ゃダっ、吉祥、またでちゃう……」
こういうところだ。
ある意味“魔性”とも言える亜也人の魅力は、この、見るたびに違った表情を見せる、無意識に欲情を煽る反応や仕草に尽きる。
訴えるように見る亜也人と目が合った瞬間、松岡は、亜也人の眉尻の下がった切なげな表情にズキンと股間を疼かせた。
クソッ! と思った時には時すでに遅く、松岡は殆ど反射的に射精した。
「ーーーったく、お前って奴は……」
亜也人のお腹の上に精液を吐き出し、折り重なるように倒れ込む。
亜也人の頭の横に両肘をついて真上から見下ろし、放心したように虚な目で見上げる亜也人のおでこに自分のおでこを擦り付けた。
「マジでわざとやってんじゃ無ぇんだろうな……」
「なにが……」
「なにが、じゃねーよ、この小悪魔が……」
鼻先に、チュッ、と口付け、左右の頬を順番に口付けてから、唇に軽く口付けた。
舌を絡めたい衝動に駆られたが、収まりつつある下半身が再び疼き出しそうで我慢した。
上半身を起こすと、亜也人のお腹に吐き出した精液が、松岡のみぞおちの辺りでべったりと糸を引いた。
「しまった。何か拭くもんねぇか」
「だから言ったじゃん。ひとン家なんだからすぐにシャワーとか浴びれないんだから」
「そんな怒んなよ……」
自分のお腹と亜也人のお腹をティッシュで拭い、衣服を身に付け、トイレの洗面台でタオルを濡らして亜也人の元へ戻った。
「拭いてやる」と、亜也人を仰向けに寝かせて汚れた部分を丁寧にタオルで拭う。
指を拭いてやろうと手を持ち上げると、亜也人が泣き出しそうに顔を歪め松岡はふと手を止めた。
「どうした。無理にやったのがそんなに嫌だったのか?」
亜也人は静かに首を振った。
「違う……。なんか……すごく幸せで……」
「いきなり何言ってんだ。俺様をからかうと後が怖いぜ?」
「からかってなんか無いよ。……吉祥が……こうしていつも傍にいてくれて……それが凄く幸せだなって思って……。俺ばっかりこんな幸せでいいのかな、って……」
「お前だけじゃないだろ? 俺だって、お前にそう言ってもらえてスゲェ幸せだ……」
「吉祥……」
亜也人の大きな瞳が、松岡を見詰めたままみるみる潤み始める。
何、泣いてんだ。
そう言い掛けた時だった。
「吉祥……」
ふいに、掠れた涙声で言われ、松岡は、吸い寄せられるように亜也人の瞳を覗き込んだ。
「吉祥……俺……」
亜也人は、切ないほど真っ直ぐな瞳で松岡を見上げ、しかしその先を言わずに逃げるように目を伏せた。
肘を曲げ、泣き顔を隠すように腕を目元にあてがい唇を結んで声を噛み殺す。
何かに打ちひしがれるように肩を震わせる亜也人を見ながら、松岡は、得体の知れない不安に襲われていた。
こういう泣き方をする時の心理状態を松岡は嫌と言うほど知っている。
幸せすぎて涙が出るというのとは違う、むしろ幸せとは真逆な、マイナスの感情の滲む泣き方だ。
亜也人は何かを不安がっている。
一体何が……。
咄嗟に沸き上がった言葉を、松岡は喉の奥に押しやった。
ひとたび口を開いたら、亜也人を追いつめてしまうような気がして何も言えなかった。
松岡は、それ以上は詮索せず、声を殺して泣く亜也人の頭をただ黙って撫でた。
亜也人が落ち着くのを待って階下へ降りると、いつの間に帰宅していたのか、台所で夕飯の準備に取り掛かろうとしている加山と鉢合わせた。
「あれ、もう帰っちゃうんですか? せっかくだから夕飯食べて行って下さいよ」
加山の好意は有り難かったが、松岡は、何をしていたか一目で解る亜也人の気怠そうな雰囲気や、まだ身体に微かに残る精液の匂いに気恥ずかしさを感じ、加山の申し出を丁重に断り、玄関先へと急いだ。
加山は、わざわざ夕飯を作る手を止めて松岡を見送るために後ろを付いてきた。
松岡が会釈をしてドアに手を掛けると、加山が、「外まで送る」と言い、亜也人に、家の中で待つよう言い付けて後に続いた。
おそらく、この家で破廉恥な行為をしたことを注意されるのだろう。
松岡は思ったが、加山に、「亜也人くんのことなんですけど」と切り出され背筋をピクンと硬直させた。
「亜也人が何か?」
慌てて聞き返すと、加山は、松岡を見て、まぁまぁ、と宥めるように微笑んだ。
「ご無礼を承知で申し上げますが、実は松岡さんに、亜也人くんともっとたくさん話をしていただきたいんです」
「話しを……?」
加山は松岡の目を見ながら、大きく頷いた。
「ご存知の通り、亜也人くんは同年代の他の子と比べて世間擦れしたところが無く、少し生きづらさを感じるほど繊細で優しい子です。口にこそ出さないものの、おそらく誰よりも周りのことを考えて、自分以外のことでいつも頭の中を一杯にしてる。言いたいこともたくさんあるんでしょうが、たくさん有りすぎて何から話せばいいのか解らないんだと思います。なので、一番近くにいる松岡さんが、亜也人くんの話しをたくさん聞いて、亜也人くんの思いをもっともっと引き出してあげて欲しいんです」
丁寧でありながら自分の意見をハッキリと主張した力強い口調で言うと、加山は、出過ぎたことを言って申し訳ない、と松岡に頭を下げた。
「自分の心の声を吐き出して、伝えたいことをちゃんと伝えられるようになれば、亜也人くんは今よりもっと生きやすくなると思うんです。そのためにも、松岡さんに協力していただいて、亜也人くんにたくさん話しかけて、亜也人くんの気持ちをたくさん聞いてあげて欲しいんです」
松岡は何も答えられなかった。
呆気に取られたわけでも圧倒されたわけでも無い。
嫌な予感が胸を渦巻き身体が反応しなかった。
部屋での亜也人の突然の涙への動揺が冷めやらない今このタイミングでの加山の話し。
勘の良い松岡は、加山の言葉の裏側にある意図を無意識に感じ取っていた。
亜也人は、俺に言えない何かを抱えている。
思いが足元からヒタヒタと這い上がり、松岡の身体を四方から押し潰すように締め付けた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「綺麗だとは思うけど、俺は正直、勘弁だな……」
得意げに語る男の顎髭の感触をおでこに感じながら、宇治原駿は、昔、一度だけ画像で見た寺田亜也人の姿を思い浮かべていた。
深夜のシティホテル。
内藤に言われて同行したものの、積川良二はずっと機嫌が悪く、一緒に行動している間もずっと駿を無視し続け、内藤が用意したツインルームのホテルも、自分は仲間の所に泊まると言って、駿だけを送り届けてさっさと帰ってしまった。
一人取り残された駿は、シーツに包まり、良二が寝る筈だったカラのベッドを睨み付けながら屈辱に耐えていた。
新幹線のホームで顔を合わせた時から歓迎されていないのは解っていたが、良二の冷たい仕打ちは駿の恋心とプライドを傷付けた。
地元では高嶺の花で知られた自分が、一人でベッドに捨て置かれている。こんなぞんざいな扱いを受けるのは初めてだった。
言いたいことだけ一方的に言い、駿の方を振り返りもせずに立ち去った良二の後ろ姿を思い出すと、駿は、悔しくて悲しくて、ベッドをめちゃめちゃに蹴り付けてやりたい気持ちになった。
一方で、気の無い態度もここまで徹底されるとむしろ意地になり、何としてでも落としてやりたいという負けん気も出た。
絶対に良二をモノにする。
そのためには、寺田亜也人をもっとよく知る必要があった。
幸い、知り合ったばかりのクラブ〈エンプレス〉のバーテンダーは良二のチームのメンバーらしく、別れ際に渡された名刺に書かれた連絡先に電話をすると喜び勇んでホテルにやって来た。
駿が、中出しを許してやると、バーテンダーの男は、上機嫌で寺田亜也人のことを喋り始めた。
「どんな奴なの?」
「大人しい人だよ。いつも良二さんの後ろにくっついてた。……白くて細くて、透明感がある、っていうのかな。消えて無くなりそうな感じ……」
でも。
と、男は意味ありげに一呼吸置き、駿の髪を弄びながらゆっくりと言葉を続けた。
「ある意味、一番怖い人だよ」
「怖い?」
「ああ。迂闊に近付いちゃいけない人……」
近付けば確実に怪我をする。
仲良くしてるところを見られたらタダではすまない。
二人きりになるなどもってのほか。
事実、昔、亜也人と仲良くしていたクラスメイトは、ただ亜也人と親しげにしていたというだけで壮絶なリンチに会い学校を去った。
亜也人と関係のあった過去の男たちは根こそぎ叩きのめされ、亜也人に言い寄る者は何処の誰であろうと容赦なく血祭りに上げられた。
積川良二の亜也人に対する思い入れは異常と言って良かった。
積川良二の逆鱗。
誰が言い出したか、いつの間にか、皆、寺田亜也人をそう呼ぶようになった。
寺田亜也人こそが積川良二の決して触れてはならない逆鱗。
学校でも、ここスティンガーの司令部においても、亜也人と面識のある面々は、暗黙の了解のもと、常に良二の顔色を伺いながら亜也人と接していた。
亜也人の類い稀な美貌と高貴な猫のようなしなやかな身体に目を奪われても、下手に鼻の下を伸ばせば、『色目を使った』と目を付けられ、見ないように目を逸せば、『挨拶が無い』と叱られる。
災難なのは亜也人に懐かれてしまうことで、亜也人が気を許して自分から近付いて行った者などは、何もしていないのに、亜也人に気に入られたというだけで問答無用で出入り禁止になった。
良二のために働き、たくさん手柄を立ててきた者ですら、亜也人への態度一つで、簡単に地位を落とされ制裁を加えられる。
そんな戦々恐々とした中で、周りは次第に、関東圏内ではその名を知らない者はいない、泣く子も黙るスティンガーの頭、積川良二より、いつもその後ろをついて歩く、虫も殺さないような顔をした寺田亜也人を恐れるようになった。
「亜也人さんが悪いわけじゃないんだけど、とばっちり、って言うか、正直、関わるとろくな事にならねぇからビビッてたのは事実だね。こんなこと言うのもナンだけど、良二さんと別れてくれてホッとしてる奴は結構多いよ。実際、良二さんの傍若無人ぶりに一部で不満の声が上がり始めてたのもあるし、あのままじゃスティンガーは解散してた。上の人も、それが解ってたから二人を別れさせたんじゃねぇか、って話だよ」
どう見ても亜也人より歳上の男が、司令部を離れたプライベートでも敬語を使うあたり、亜也人の、スティンガー内部での影響力の大きさを物語る。
華奢でひ弱な男が、武闘派で知られる男たちを翻弄している。
寺田亜也人の得体の知れない力に震えを覚えると同時に、駿は、積川良二をそこまで狂わせる亜也人の魅力に強烈な嫉妬を覚えた。
「そいつ……。その、亜也人、って奴、今はどうしてんの?」
「今は、元石破組の幹部クラスの色になってるっていう話しだよ。なんでも、凄腕の殺し屋だった、って噂もあるぐらいの大物らしいぜ?」
「なんで、そんな奴が……」
「亜也人さんの色香にコロっと参っちゃったんだろ? ありゃ魔性だ。なんもしなくてもただそこにいるだけで男を狂わせる……」
しみじみと言う男の遠い目が、駿のプライドを深く傷付けた。
衝動的に、駿は、シーツを跳ね除け男の身体に跨った。
「おい、なにいきなり……」
「なにが魔性だ! ただ顔が良いだけだろ?」
男の上に馬乗りに跨り、両手で頬を挟みながら背中を丸めて荒々しく唇を吸う。駿の突然の行動に、男は、驚きながらも、まんざらでもなさそうに頬を歪めた。
「あれだけヤッといてまだ足りねーの?」
「うるせぇ。天国に行かせてやるからじっとしてな」
唇から首筋、鎖骨とキスを進め、乳首を舐めたり吸ったりしながら身体を滑らせて股間に顔を埋める。半勃ちになったペニスを口に含んで舌を絡ませると、男が、うっ、と呻いて、駿の口の中で完全に勃起する。
テクニックを見せ付けるかのように、駿は、根元まで一気に喉の奥に押し込み、頭を激しく上下させた。
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