十七歳の青い微熱

瀬楽英津子

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〜淫猥なる毒

「若い子の身体はやっぱ違うね。見てごらん、もうこんなにおつゆを垂らして喜んで……」

「んあぁぁぁッ……あぁッ……あッ……」

 尿道を滑る金属の感触に、かろうじて保っていた生流の理性が限界を迎えようとしていた。

「ほぉら、ここ。気持ち良いねぇ」

 ズブズブと、男が鈴口に差し込んだ金属棒をゆっくりと上下に動かす度に、逆毛が立つような疼きがお腹の底から沸き上がる。
 射精する寸前の絶頂感が波のように押し寄せてはギリギリのところで引き返す。
 吐精する道を塞がれてはいるものの、先走りが金属棒と尿道のわずかな隙間を抜けて鈴口からトロリと伝い流れる。
 絶え間なく襲いかかる快楽に、生流の喉は休む暇もなく悲鳴と嬌声を上げ続け、無意識に噛み締めた唇が赤い血を滲ませた。

「おっ、おねがいッ! こわい……もッ……いやあぁぁッ!」

「怖くなんかないよ。ほら動かないで」

 背後からは別の男の手がわき腹を回り両方の乳首を弄んでいる。
 上半身を起こされた後、男の一人に膝の上に後ろ向きに座らされ、両足を足で挟まれて無理矢理開かされた。
 その状態で背中を軽く滑らされると、生流のお尻が浮いて股間が迫り上がり、ペニスに金属棒を突き立てられている様子が嫌でも目に入る。
 狭い尿道を銀色の棒が先走りとローションの混じった淫汁を溢れさせながらヌプヌプと上下するさまを見せ付けられながら、散々なぶられ腫れ上がった乳首を捻り上げられ、生流の目から恐怖と驚愕の入り混じった悲痛な涙が流れる。
 強すぎる快楽に動揺が収まらない。痛みすらも気持ち良いと感じる自分が怖い。

「よしよし。そうか、泣くほど良いか。だが、泣くのはまだ早いぞ?」
 
 大粒の涙を流す生流をよそに、男は手にした金属棒を小刻みに上下させながら少しづつ尿道の奥へと進め、ペニスの根元まで埋め込んだところでふいにぐるりと抉るように奥を突いた。

「んはあぁぁあはぁぁッ! あぁぁぁッ!」

 棒の先が何かに触れた途端、身体を貫くような鋭い痛みが脳天を突き抜け、生流は白い喉を仰け反らせながら絶叫した。
 しかしその痛みもすぐに身悶えるような快感に変わる。
 金属棒が奥の感じる部分をグリグリと抉る度、身体の真ん中を電気がビリビリ駆け上がり、強烈な射精感が襲い掛かる。

「あっ、ああ……いぐッ! イッぢゃうッ!」
 
 会陰がブルッと波を打ち、生流のペニスがビクンと硬直する。
 しかし先端からは何も出ない。生流のペニスは射精をする時と同じようにヒクヒク痙攣するものの、射精するための管は金属棒で塞がれ、堰き止められた精液が行き場を失いお腹に逆流する。
 ペニスリングを嵌められた時とはまた違う圧迫感に生流の顔が苦痛と狼狽に歪む。
 未だかつて経験したことのない感覚に頭と身体がパニックを起こす。
 逆流した精液がお腹の奥で爆発しそうな熱を上げる。睾丸がパンパンに腫れ上がる。
 その間も背後から伸びる手の動きは止まらず、生流の乳首を手のひらで撫でたり、紙縒こよりを作るように指先でネチネチと転がしたり、摘んで捻り上げたりしながら弄ぶ。

「う、んあッ! んあぁぁぁッ!」
 
 限界はとうに超えている。ペニスを内側から扱かれる刺激と乳首を執拗に捏ねくり回される刺激、二つの性感帯を同時に責められ、絶頂感と震えが止まらない。

「出ひたいッ! せッ……せーえきッ! ……はぅ、はぁ、はッ……お願いッ……も……抜いれぇぇぇッ!」

 狂ったように泣き叫ぶ生流の反応を楽しむかのように、金属棒を持つ男は生流の最も弱い部分を何度も突き、乳首を弄ぶ男は赤く腫れた乳首をさらに強く捻り上げる。
 生流は、汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔を激しく左右に振りたくり、身動きの取れない身体で必死に快楽に耐えている。

「んッひいぃぃッ! ひいぃぃぃッ!」

 止まらない絶頂に、腰を何度も突き出して射精出来ないペニスをヒクつかせる生流を男たちの欲望にまみれた視線が舐め回す。

「もうギブアップか? 若いのに情けない……」

「んはッ、はぁぁッ、あッ、もッ、抜いれッ、抜いてッ……」

 生流にはもう訴えることしか出来ない。男は、涙と汗を撒き散らしながらイヤイヤを繰り返す生流を見ながらニヤリと笑い、金属棒を動かす手を止めた。
 ようやく抜いてもらえる。
 思いきや、ふいに後孔にローションを垂らされ、生流は背筋をびくつかせた。

「なッ、なにッ?」

 答えを聞く前に、ローションで湿らせた後孔に堅い塊が押し付けられ、それが男の指とともに中に侵入する。

「これかい? これは、ガンコロ、っていう覚醒剤の結晶だよ。これをお尻の中に入れるとすっごく気持ち良くなるんだ」

 知っている。光哉が上客のために特別によけておくやつだ。思い浮かべているうちにも後孔の入り口がヒリヒリ痛み出し、奥の粘膜がカッと熱くなる。
 しかし本当に辛いのはこれからだった。
 真っ直ぐに挿入した男の指がふいに抜かれ、代わりに何倍も太い極太バイブが手に握られる。
 目にした瞬間、生流の背筋が絶望にも似た戦慄に凍り付いた。

「い、いやッ……そんなおっきいの……入らないッ…」

「たっぷりローションをつけるから大丈夫だよ。それにガンコロが効いてきたら痛みなんてすぐに吹き飛ぶ」

「やあぁぁぁッ! あッ、む、むりぃぃぃぃッ!」

 生流の渾身の訴えにも全く耳を貸さず、男は狭い窄まりにバイブの先をめり込ませると、肉壁をミチミチと拡げながら一気に根元まで突き入れた。

「いぎぃぃッ! いぃぃぃッ……いッッ……」

 強烈な圧迫感に、生流が全身をピンと硬直させる。
 しかし次の瞬間、突然バイブが首を振り、生流は弾かれたように身体を震わせた。

「あああああああッ!」

 息が止まりそうな衝撃に、生流が絶叫したまま痙攣する。
 男はそれすらをも愉しむように、眉根を寄せて喘ぐ生流を興奮気味に見ながら極太バイブをわざと角度を付けてグリグリ押し回す。
 バイブが肉壁を擦り上げながら首を振る度に、ペニスの奥深くに差し込まれた金属棒に振動が伝わり、間に挟まれたもっとも感じる部分が火を上げる。

「ひぐぅッ……」

 後孔からは極太バイブ、尿道からは金属棒。下から上から感じる部分を同時に責められ、想像を絶する快感に目の前がスパークする。
 もう何も考えられない。
 一方男は、息も絶え絶えに喘ぎ悶える生流の反応にうっとりと目を細め、

「いい具合に効いてきたみたいだね……」

 生流がそうなるのを待っていたかのように、おもむろにバイブから手を離し、その手をペニスの先に向けた。

「はひッ! ひあぁぁぁッ、痛ッ……」

 再び、男の指がペニスに刺さった金属棒を摘んでゆっくりと引き上げる。
 とぷん、と、引き出された金属棒の隙間から先走りとローションと精液の入り混じったトロトロとした体液が溢れる。

「ギリギリまで溜まってる……」

 このまま引き抜いてもらえるのだろうかという生流の期待も虚しく、男は、引き上げた金属棒を勢いよく戻して生流の感じる部分を突き、再び引き上げては突く動作を繰り返す。

「いやああぁぁぁッ、はああぁぁぁッ!」

 根元まで刺さった金属棒が、狭い尿道を粘膜を巻き上げながらずるずると滑り、感じる部分を突きまくる。
 その間も、後孔に刺さったバイブは窄まりから突き出た持ち手をくねらせながら動き回り、生流の感じる部分をさらに激しく刺激する。

「あぎぃぃぃぃぃッ、ダメェぇぇぇッ、これ、やぁぁぁぁッ!」

「こんなにグチュグチュにしといて何がダメなんだい? ほら、オチンチンの隙間からこんなに漏れてくる」 

「あはぁッ……やッ……動かしちゃ、やぁ……」

 奥を突かれる刺激とペニスを内側から扱かれる刺激、幾重にも重なる刺激が快楽中枢を発火させ、薄皮一枚で繋がっていた生流の理性が吹き飛んだ。 

「あああぁぁァァぁぁ、んんんッ、あぁあッ」

 耐えられない快楽に身体と心が乗っ取られる。
 絶頂感が止まらない。射精したい。
 いやらしい喘ぎ声が止まらない。
 腸内に注入された媚薬とラムネ菓子でも食べさせられるように口の中に放り込まれた違法ドラッグ、お尻の中に埋め込まれた覚醒剤の塊が、生流を快楽を貪る淫獣に変えた。

「あ、んはぁッ……いぎだいッ! はぁッ……はッ……いぐッ!」 

 ビクビクと射精するようにペニスを震わせる生流を見ながら、男が愉しそうに金属棒を抜き差しする。

「何度も腰をへこへこさせていやらしいね。そんなにイキたいかい?」

「い、い、い、イッてるッ! もうイッでるがらぁッ、出ひたいッ! 出すッ!」

「そうだね。あんまり貯めると大事なチンコが破裂しちゃうからね……そろそろ抜いてあげようか……」

 男の言葉に、生流の両目から大粒の涙が流れる。射精出来ることがただ嬉しい。それ以外は考えられない。

「出すッ! 抜いれッ……抜いれッ!」

 涎を飛ばしながら懇願する生流を満足げに眺めると、男は、ペニスの根元まで嵌った金属棒をスルスルと引き抜いた。
 途端、信じられない快感が尿道を駆け上がり、生流は大きく背中を仰け反らした。

「んはぁあぁぁぁッ、んふッ、んッ、あふッ」

 強烈な衝撃に、射精しながらまた絶頂する。
 喩えようのない解放感。全身がゾクゾクと総毛立ち、筋肉がピンと張り詰める。
 ギリギリまで我慢させられた果ての射精は一回ではおさまらず、生流は何度もペニスを跳ね上げ自分のお腹の上に精液を吐き出した。

「若いだけあってさすがに元気だね。こんなとこまで飛んでる……」

 男は、生流の胸の辺りにまで散らばった精液を指先ですくい取ると、それを自分の指ごと生流の口の中に突っ込んで舐め取らせた。

「じゃあ次は僕が気持ち良くしてもらう番だね」

 言いながら、指を引き抜き股の間に腰を据える。
 股間では、後孔に押し込まれたバイブが今もなお持ち手をうねうねとくねらせながら振動を続けている。
 それを性急に引き抜くと、男は、正座をするような姿勢で自分の男根を生流の後孔に当てがい、生流のお尻を引き寄せながら生流の身体を折り曲げるようにして突き入れた。

「あああッ……ああああぁ……すごいぃッ……」

 ゆっくりと押し当てるように挿入したかと思ったら、一転、ガンガンと激しく奥を突き始める。
 バイブとは違う、血の通った熱い昂りに、生流の肉壁が歓喜に湧き踊り、射精したばかりのペニスが再び硬く膨らみいやらしい蜜を滴らせる。
 もう何も考えられない。ただただ気持ち良い。

「自分から腰を振っていやらしい子だ。もっと奥まで犯してやろうか」

「あ、あ、あ、お、犯してッ! もっと奥まれ……お、犯してえぇッ!」

 奥のズシンと響く深い部分を男のエラの張った亀頭がこじ開け、その奥のさらに狭い部分へと侵入する。
 メリメリと粘膜を裂くように最奥へと先端をめり込ませ、突き当たりで腰を大きく回して腸内を広げると、男は、突き入れた男根を小さく引き戻し、スタート、とばかり猛スピードで抜き差しを始めた。

「んあぁッ! はッ、はげしッ……やぁッ……あッ、あぁッ…」

「僕もいづる君と同じ、チンポがギンギンになるお薬飲んだからね。とうぶんの間は楽しませてもらうよ……んッ……」

 張り詰めた亀頭が奥を出入りするたびに、ずちゅ、ずちゅ、と男根が肉壁を滑る厭らしい音が響き、絶頂を繰り返して敏感になった肉壁が摩擦で更なる熱を帯びる。
 甘美な疼きが次から次へと湧き起こり、身体のあちこちが押し寄せる快楽に打ち震える。
 周りの様子など頭にない。ただ、自分を貫く男根の感触と、粘膜が擦れる感覚、容赦なく襲いかかる絶頂感だけが生流の意識を支配していた。

「すごッ……お、奥まれッ、くるぅ……お尻……壊れちゃ……うッ……」

「ああ。壊れちゃうね……。特に、いづる君のお尻はちっちゃいから奥まで良く届くから……ハァ……本当に……これ以上突いたら壊れちゃうかもね……怖いかい?……怖いなら止めるよ?」

「いやぁぁぁッ! やめらいれぇッ! ……もっと突いてぇ……」

「いいの? 壊れちゃうよ?」

 男の言葉に、生流がガクガクと顎を下げて頷く。本当はこんなことしたくない。しかし口から出てくるのは心とは真逆の卑猥な言葉。

「いいからぁッ……壊れていいからぁッ……もっと奥、突いてぇ……」

 少しの沈黙の後、男が、フンッ、と鼻息を荒げて腰を突き出し、再び猛攻が始まる。
 男の昂りは、生流の弱い部分をゴリゴリとすり潰し、精嚢や膀胱を揺さぶりながら最奥へと突き抜け、肉壁を巻き込みながら引き戻る。
 強烈な突き上げと内臓が引き摺り出されるような排泄感の繰り返し。突かれる度に頭の中がスパークし、意識が遠のくような絶頂感が全身を包む。
 とろけるような恍惚感に、生流は自覚もないまま精液なのかオシッコなのかよく解らない汁をペニスの先から垂れ流し、白い肌をピンク色に染めて身悶える。
 もう快楽しか感じられない。
 自分がどうなってしまうのかなどもうどうでも良い。
 息をつく暇もなく続く絶頂に、生流は次第に全身を痙攣させるだけのただの肉の塊になっていた。
 男は、息も絶え絶えに喘ぐ生流を、羽をもがれた蝶を愛でるような憐れみと狂気の入り混じった目付きで見上げた。

「こんなにグチャグチャになっちゃって……。もう元には戻れないねぇ……」

「いっそ、とことん壊してやりましょうよ」

 口を挟んだのは、背後から生流の乳首を弄んでいた男だ。生流が犯されるのを傍らで座って見ていたが、堪えきれなくなったのか、ふいに猛りきった男根を見せ付けながら生流と男の間に割り込んだ。
 男の思惑を察したのか、生流を犯している男が
呆れた様子で眉を下げる。

「やるのは構わないが、乱暴なのはやめてくれよ。僕は血を見るのは嫌いなんだ」

「大丈夫。そんなヘマはしません」

 暗黙の了解のもと、生流を犯している男が生流を自分の身体の上に抱き上げながら後ろへ寝そべり前傾騎乗位の体勢を取る。そのまま生流のお尻に両手を回して両側から鷲掴みにして持ち上げると、男の昂りを咥え込んだまま引き伸ばされた生流の後孔が、赤く腫れた縁をヌラつかせながら露わになる。その、痛々しくも卑猥な光景にもう一人の男が目をギラつかせ、淫水で濡れた結合部にチューブ入りの軟膏を塗りつけた。
 生流はというと、止まらない絶頂に意識が遠退き自分が何をされているのかも解らなくなっていた。
 ただ、身体の中がどうしようもなく熱く疼き、何でも良いから突っ込んで欲しいという淫らな衝動がおさまらない。

「あひぃぃんッ!」

「よしよし。もうちょっとで効いてくるからな」

 軟膏を塗られた部分が針で刺されたようにチクチク痺れだすものの、今の生流にはそれすらも甘い媚薬。
 とはいえ、既に男根の嵌った後孔の隙間に指を突っ込まれて広げられると、皮膚が裂かれるような感覚に脳が恐怖を覚え、生流を恍惚から覚醒させた。

「ひぎゃッ! ひぃぃぃッ! いッ……痛ぃぃッ……」

「麻酔クリーム塗ったから痛くないでしょ?」

「やっ……やぁぁッ……」

 男は全く耳を貸さず、血管の筋が浮き上がるほど猛り狂った男根の先を、別の男の男根の詰まった後孔のわずかな隙間にグイグイとねじ込んでいく。

「きっつッ……これじゃこっちが怪我しそうだ……」
 
「やあぁぁぁッ! 裂けるッ! ダメッ!」

 強烈な圧迫感に生流が悲鳴を上げるが、男は挿入を止めようとはしない。
 生流が泣こうが喚こうがお構いなしに先端をねじ込み、やがて一番太いカリ首を無理やり入れてしまった。

「んあぁぁぁぁッ!」

 未知なる衝撃に生流が引き攣ったように全身を硬直させる。男はさらにその先へと挿入を試みたが、生流の後孔の狭さに手を焼き半分まで入れたところで断念した。
 それでも苦痛に喘ぐ生流を、下敷きになった男が優しく宥める。

「初めてなのによく頑張ったね。……いづる君の中に二本も入ってるんだよ? ほら、触ってごらん」

 猫撫で声で言いながら、生流の手を取り結合部へと誘導する。
 生流が自分のお尻に二本の男根が上下に並んで押し込まれているのを手のひらで確認すると、今度は上に跨った男が男根を二本も咥えた生流の小さなお尻を横から愛おしむように撫でた。

「これから二人でいづる君の中を犯してあげるからね。ほら、動くよ?」

 ミチッ、という音とともに上の男が動き出し、合わせるように下の男が突き上げる。

「んふぅッ!」

 互いの昂りを擦り合わせるように、男たちが上から下から生流の後孔に男根を突き立てる。
 あり得ない質量に肉壁がズキンズキン脈を打ち、押し上げられた胃がドラッグの混じった胃液を喉元に押し上げる。

「んあぁぁッ、うあッ、うあぁぁぁッ!」

 痛いのかどうかも解らない。ただ、熱くて、苦くて、苦しい。
 逃れようにも、下敷きになっている男に両手を掴まれて押さえられているせいで生流は全く身動きが取れない。

「やだやだッ! 裂けるぅッ! 裂けちゃうぅッ! いやぁぁぁぁッ!」

 胸板に顔を擦り付けて喚き散らす生流を、下敷きになった男が子供をあやすように「よし、よし」と宥める。

「弛緩剤を使ったから酷いことにはならないよ」

 それでも泣き喚く生流を見るに見兼ねて、スタッフらしきスーツ姿の男が注射器を持ってステージの上の生流に近付く。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。直ぐに黙らせますんでここで失礼致します」

 男の手元に光る注射器に、生流の上に跨った男が、ヒュウッ、と口笛を吹く。
 男は構わず、生流の腕を伸ばして二の腕に素早くゴムバンドを巻くと、手のひらを上に返して浮き上がった静脈に針を突き立てた。そのまま芯棒を引いて血液が逆流するのを確認し、再び芯棒を押して逆流した血液ごと薬液を血管に流し込む。

「これでたちまち天国だ……」

 生流の腕にチクンとした痛みが走り、冷たい薬液が手足の先までスッと伸びていく。
 それが背筋を伝って頭の裏側を通り抜けた瞬間、冷んやりとした感触が一転沸騰するような熱さに変わり、強烈な快感が身体中の毛という毛を逆立てながら生流の全身を駆け巡った。

「ああああああああああ……」

 もはや痛みも恐怖も感じない。限界を超えた快感に、生流は、充血した瞳を裏返し、白目を剥きながら絶叫した。

「さすが、初めてだとキマるのも早いね」

「これで心置きなくお楽しみいただけると思います。『ドラッグは最初がすべて』と言いますから、皆様の手管でこの者に最高の快楽を与えていただければ幸いです」

 男の言葉に応えるように、下の男が腰を激しく突き上げる。
 反動で、上の男の昂りが一緒に揺さぶられ、それが次第に前後の抜き差しに変わって行く。
 二つの猛々しい男根が、生流の後孔を限界まで広げながら掻き回し、感じる部分を抉りながら何度も出入りする。
 半分までしか入らなかった男根は根元までズッポリと嵌まり込み、擦られた粘膜が焼かれるような熱を上げる。
 苛烈な刺激に、二人の男に挟まれ押し潰されたペニスが自覚もないまま精液を垂れ流し、後孔がローションと体液の混じった汁を滴らせる。
 そのうち上の男がガクガクと腰を振りながら射精し、続いて下の男が一番奥に男根を突き入れたまま痙攣したように身体を震わせながら射精した。
 ずるずると二本の男根が抜かれると、パックリと開いた後孔から二人分の精液がドロッとお尻の割れ目を伝い流れ、ステージを取り囲むギャラリーが歓声を上げた。

「良かったよ、いづる君」

 満足げに微笑む男たちの足元で、生流は、打ち上げられた魚のように身体をビチビチと跳ねさせながら痙攣している。
 普通の様子でないことは誰の目にも明らかだったが、生流を休ませてやろうと言い出す者は一人もいない。むしろ、ようやくありつけるとばかり、瀕死と言っても過言ではない、焦点の合わない目をぼんやりと開いたまま息も絶え絶えに喘ぐ生流の身体を、また別の男がまさぐり、舌を這わす。
 暴力と化した快楽に、生流は自覚もないまま甘い嬌声を上げ、大粒の涙を流した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ドアの隙間から流れ込んでくる青臭い匂いに、応接室のソファーに座るゲストが顔を顰めた。

「これは……大麻……ですか?」

 一目で上質と解るチャコールグレーのスーツに上背のある身体を包み、ソファーの背もたれに深々と背中を預けて長い脚を組む。
 焼けた肌に、黒い短髪。仮面の奥から覗くヘーゼル色の鋭い瞳が、いかにもやり手な青年実業家の風格を漂わせる。

「お嫌いですか?」

「いや。クラックを楽しむと聞いていたもので……」

「もちろん会員の皆様にはとびきり純度の高いものをご用意しております。大麻これは、どちらかというとキャスト用の安定剤です。契約書にもありましたように、私どものキャストには、催淫剤から覚醒剤までさまざまなドラッグが使用可能です。その中には強烈なバッドトリップを引き起こすものもございますので、これはいわば予防対策と申しますか、まぁ、簡単に言うと中和剤ですね」

「ふうん」と、ソファーの男が素気なく応える。
 新規会員への説明は手慣れたものだが、今日の客は、二十代にして国内外の若者から絶大な支持を受けるファストファッションブランドを手掛けるアパレル企業の社長であり、大手芸能プロダクションとも親交がある相手ということもあり、田之倉の背筋が自然と伸びる。
 そうでなくとも、このところの会員数の伸び悩みに田之倉は頭を抱えていた。
 毎週末に開催されるドラッグパーティーは、誰にも知られることなく安全にドラッグとセックスが楽しめるという理由から官僚や代議士、各界のセレブの間で人気を博してはいるものの、秘めごとを好む日本人にスワッピングは抵抗があるのか、メンバーは一部の常連ばかりで新顔が加わる気配はない。イコールそれは、本来の目的であるコカインの購買客獲得が滞っていることを指し、田之倉を憂鬱にさせた。
 そんな時に外交官関係者からの紹介でアポイントを取ってきたこの青年実業家は、田之倉に取っては救世主といえた。
 アパレル業界という煌びやかな業種に加え大手芸能プロダクションとの繋がり。目の前の青年が持つコネクションは、新規顧客を獲得するための開拓先としては申し分無かった。

「気になるようでしたら消しますので遠慮なくおっしゃってください」

 下手に出ながら様子を伺い、青年が、「大丈夫です」と答えたのを確認してから手元のカルテに目を通す。
 身長183cm、体重77kg。見た目よりも体重があるのは筋肉質なせいだろう。体重を把握するのはドラッグを使用する上でとても重要だ。とくに切れ目の早いコカインの場合、身体が求めるままに追加吸引を行えば命取りになる危険性もある。会員の中には長年の使用で耐性がつき、致死量を超える量を打ち込んでも平然としている猛者もいるが、死人を出してはサロンの信用を失墜させるばかりか田之倉自身の命にも関わるので、会員の使用するドラッグの量はスタッフによって厳重に管理されている。
 体重に加え、病歴、アレルギーの有無、これまでに使用したことのある薬物も当然把握する。

「大麻、LSD、MDMA、ラッシュ、ゴメオ……おや? 覚醒剤はやられてないんですねぇ……」

「機会がなくて……」

 これだけの違法ドラッグに手を出しながら機会がなかったとは考えにくいが、経験者だから量を増やせと言われるよりはましだと思い、田之倉は、軽く聞き流してタブレットに表示された計算ソフトに体重を入力した。
 一回当たりの致死量と一日に取れる最大摂取量が算出されると、同じタイミングで性病検査の結果がメールで届く。

「H I V、性病、ともに陰性です」

「もう解ったんですか?」

「特殊なケースでない限り、二、三十分もあれば結果は出ます。ご面倒ですが、安全なプレイのために一ヶ月に一度は検査を受けていただくことになります」

 結果が陽性ならパーティーへの参加は不可。陰性の場合は参加可能となりシャワーを浴びた後、会場へ入る。
 シャワールームは応接室の室内扉から続きで行けるようになっており、その奥はパーティー会場に続いている。

「私の案内はここまでです。シャワールームに専用スタッフがおりますので、あとはその者が会場内をご案内致します。衣服はこちらで保管し、お帰り際にお渡し致しますのでそのまま置いておいて下さい」

 説明を終えると、青年が、え? と唇を歪ませる。

「服を保管……? 中は裸ということですか?」

 へ? と、今度は田之倉の唇が嘲笑混じりに歪んだ。
 何を今さら。

「もちろんです。抵抗がおありならショーツをお貸ししますが皆様全裸で参加されますよ?」

 呆れながらも丁寧に説明すると、田之倉はこれ以上の議論は無用とばかりシャワールームへと続く室内扉を開けた。

「ではどうぞこちらへ」

 手を広げて廊下へ誘導するものの青年は動かない。

「お客さま?」

 不審に思い、仮面の奥の瞳を覗き込んだ時だった。
 ふいに、チッ、と舌打ちのような音が聞こえ、青年の姿が視界から消える。
 次の瞬間、首筋にチクッとした痛みが走り、田之倉は、訳もわからないまま膝から床に崩れ落ちた。

「お前……」

 意識はあるのに身体が動かない。

「残念だったな、おっさん」

 霞んでいく視界の中で、端の切れ込んだ目が鋭く光った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 

 二人の男の昂ぶりを同時に受け入れて以降、メンバーたちは、生流への陵辱を本格化させた。
 現役男子中学生という触れ込みを鵜呑みにしていたメンバーばかりではなかったが、生流の見た目の幼さと反応のウブさに、こんなにも無垢な子供を己の欲望の犠牲にしてしまって良いのだろうかと躊躇う空気が漂っていたのも事実だった。
 しかし、いきり立った男根を二本同時に咥え込んで喘ぎ悶える生流の姿が、男たちの中に残っていた躊躇いや戸惑いを吹き飛ばした。
 壮絶な二輪挿しをキメる生流の痛々しくも匂い立つような淫猥な姿は、男たちの理性を奪い、欲望を最大限に引き上げるには充分だった。

『子供のくせになんて淫乱な子だ』
『お望み通り攻めてやろう』

 ある者は壁に陳列されたローターやバイブなどの淫具を両手に抱えてステージに上がり、またある者は凶悪なペニスサックを生流の後孔に突き立てる。
 頭上では金属のバケツに入れられた大量の大麻がもくもくと煙を上げ、その独特の臭気を放つ煙を全身に浴びながら、生流は男たちに好きなように身体を弄ばれていた。
 痛みに絶叫すれば水に溶いた覚醒剤を乳首やお尻に打たれ、気絶すればアンモニアを嗅がされて無理やり覚醒させられる。
 考えもなしに口の中に放り込まれた錠剤が喉の奥に貼り付く。尋常でない喉の渇きに水を求めれば、唇をこじ開けられて口移しで覚醒剤の混じった苦い液体を流し込まれる。
 何を求めても返ってくるのは、クスリ。
 薬物の使用量は運営側によって徹底管理されているものの、安全面に配慮して設定されたメンバーたちとは違い、キャストの使用量は効果を最大限に引き出すために致死量ギリギリで設定されており、しかもそれをメンバーたちが直接、自由にキャストに投与出来るという、メンバー任せの無秩序状態になっていた。
 キャストの中には、致死量を超える覚醒剤を注射されて泡を噴いて痙攣する者も、使える限りの違法ドラッグをちゃんぽんで投与され鼻血を出して卒倒する者もいた。
 命を落としたところで、キャストの多くは訳ありの家出人かヤクザ絡みの債務者であり、遺体は漁船に積まれて遥か沖で投棄され、その死は永遠に闇に葬られる。
 生流もまた、通常では考えられない量の覚醒剤や幻覚剤、勃起不全解消のための強壮剤や興奮剤やらを手当たり次第に投与され、幾度となく失神、覚醒を繰り返していた。
 メンバーたちは、何度も射精されて精液まみれになった生流を、上から下から前から後ろから、時に口とお尻を同時に犯し、時に狭い後孔に二本まとめて挿入して愉しんだ。その様子を、ステージに群がる順番待ちのメンバーたちが、クラックと呼ばれる高純度のコカインを仕込んだ炙り専用のガラスパイプを咥えながら眺めている。
 何度も生死の境に追いやられている生流とはうらはらに、一番良い状態でキマるよう計算された分量を吸いながら安全に。

『いづる君、おしりこっちに向けて』
『お口が休んでるよ』
『こっちも咥えて』

 生流にはもはや抵抗する気力も残っていない。頭が上手く働かない。自分の身体がどうなっているのかも解らない。

 ーーー二十四時間。

 途切れ途切れの意識の中をその言葉だけがぐるぐる回る。
 二十四時間耐えれば帰れる。しかし時間の経過が全く解らない。

「い、い、い、いまわぁ……なんじ……れすかぁ……」

「どうした? まだ始まったばかりだよ?」

「にっ、にじゅうよじかん……」

「二十四時間? それがなに? そんなことより、この前みたいに奥まで咥えてよ……」

 無理やり咥えさせられた男根が喉を圧迫する。
 息苦しさに気が遠くなる。身体のあちこちが痛みを上げるが、大波のように訪れる快楽がそれを上回り、生流をただの色情狂に変える。

「んッ、んんッ……んぐッ……」

 下から身体を突き上げられながら、真正面に立つ男に、両手で頭を押さえ付けられながら喉の奥にグイグイ男根を突っ込まれる。
 両サイドにはそれぞれ男たちが赤黒く反り上がった男根を生流の横顔に向けて突き立て、生流はそれを細い指で健気に扱いていた。

「もっと強く握って! 強く扱いて!」

「んん、んんッ……」

 お尻と口を同時に犯され、両サイドの男根を一心不乱に扱き上げる。
 自分よりもガタイの良い男たちを4人も相手に、生流は白く小さな身体を忙しなく震わせていた。

「もっと、お尻の中、締めて!」

 下の男に言われてお尻を締めようと力を入れるものの、イキっぱなしで痙攣のやまない身体は肉壁を締めるほどの力を生み出せない。
 思うようにならない生流に痺れを切らしたのか、ふいに、男が背面騎乗位の姿勢で股の上に乗せた生流の乳首を両手で捻り潰した。

「んふぅッ!」

「ほら、締まった、締まった」

 その間も、正面の男は、生流の後頭部を押さえて顔を引けないようにしてガンガン腰を振り、両サイドの男は生流に男根を扱かせながら、生流の、興奮剤を飲まされて強制的に勃起させられたペニスを足の先で突いたり踏んだりしながら弄ぶ。
 上から下から、男たちのいきり立った男根が生流の後孔と口を同時に犯し、ギリギリまで追い詰めたところで示し合わせたようにパッと手を離す。
 後孔と喉奥に嵌まった男根は同時にズルリと引き抜かれ、両サイドの男の足によるペニスへの刺激もピタリと止まる。

「もう少しでイケそうだったのに、こんなことして何か意味があるんですか?」

 男の一人が訪ねると、それを見越したように、男の一人が卑猥に笑う。

「まぁ見てなさい。これからいづる君が素敵なショーを見せてくれるから」

 男の言葉を裏付けるように、生流が、突然放り出されて床の上に横向きにうずくまった身体を、床に擦り付けるようにくねらせる。
 快楽への刺激を突然絶たれた身体はその変化に付いて行けない。自分の意思とは別のところで、身体が快楽を求めて暴走し始めていた。

「あ……なんで……もっと……欲し……」

 男たちの見ている目の前で、生流は、自分の身体をまさぐり、乳首を摘み、ペニスを扱き始める。
 男の一人がイボ付きバイトを手に持たせると、うっとりと目を細めて頬ずりし、ついには自分の手で後孔に突っ込んだ。

「んんんッ……これ……すごッ……いいッ……あはぁッ……」

 両脚を限界まで開き、両手でバイブを持って腰をくねらせる生流を、男たちが好色な目で眺める。

「これはまた楽しいショータイムだ」

「そうでしょうとも。一週間前はあんなに嫌がってたのに、もうすっかりバイブの虜だ。見なさいあの厭らしい腰つき」

 激しく腰を突き上げながら自慰行為をする生流を周りの男たちが笑う。
 悔しい。恥ずかしい。
 しかし、バイブを挿入する手が止まらない。

「あひぃぃッ! おくッ……きもちいッ……」

 男たちの淫猥な視線を浴びながら、生流はバイブで身体の奥深くを掻き回す。

「あぁぁぁぁッ、いぐッ、いぐッ!」

 度重なる絶頂に痙攣が止まらない。苦しい。やめたい。しかし、どうしようもなく気持ち良い。
 相反する思いが頭の中でせめぎ合う。
 自分で自分が解らない。苦痛と快楽の狭間で、生流は、自分自身が内側から壊れていくのを感じていた。
 どうしてこんなことになってしまったのだろうと今更ながら思う。
 ただ、強くなりたかった。
 光哉のように、堂々としたカッコいい男になりたかった。
 誰の助けも借りず、自分だけの力で何でも解決出来る強い男になりたかった。
 スティンガーのツートップ、積川と新庄のように、そこにいるだけで誰もが平伏す圧倒的な力が欲しかった。
 そうすれば、ゴミだらけの部屋の中で食べ物を探すことも、いつ洗濯したのかも解らないすえた臭いの服を着させられることも、サイズの合わない靴を踵を踏んで無理に履かされることもなくなる筈だった。
 いつも何かが足りない。何一つ満たされていない。いつも何かに怯えながら暮らす日々。そんな日々から解放されたい。
 光哉は、『自分のせいで生流が少年院に行った』と自分を責めているようだったが、生流にとって少年院は、光哉が想像しているような悲惨な場所ではなかった。
 むしろ、現実よりも遥かに陽の当たる場所だった。
 “自称、ヤクザの息子”に女扱いされるのは嫌だったが、清潔な寝床と衣服、食事らしい食事を三度きちんと摂ることが出来、週に二度はお風呂に入れる少年院での生活は、生流にとっては現実世界より遥かに人間らしい生活だった。
 その事実が生流の思いに拍車をかけた。

 ーーーもう前の生活には戻りたくない。

 誰もが、もう二度とごめんだ、と口を揃える少年院ですらまともに思えるような辛い現実にも、それを抗いもせず受け入れていた弱い自分にももう二度と戻りたくはない。
 これからは自分の思うままに生きていく。
 自分でお金を稼いで、自分の力で。光哉の仕事を手伝いながら、光哉と、そして恭平と。

 ーーー茅野さん。

 恭平のピアスの光る目元がふと脳裏に浮かぶ。

 ーーー逢いたい。

 恭平を思うだけで条件反射のように切なさが込み上げる。
 恭平に逢いたい。恭平のところへ帰りたい。
 しかし、思った矢先、お尻に焼けるような痛みが走り、生流は我に返った。

「あぅぅぅッ……」

 苦しくて声が出ない。
 無意識に伸ばした手が床を掻き、自分がうつ伏せにされていることに気付く。
 いつの間にかバイブは引き抜かれ、代わりに注射器が後孔の周りに突き立てられていた。

「入り口の周りに覚醒剤シャブちょこっと打ったからねぇ。あと、蟻の門渡りにも打っとこね……」

 うつ伏せの状態で肩を床に押さえ付けられ、お尻だけを上げさせられるイヤらしい格好で、水に溶かした覚醒剤を後孔の周りに小刻みに注射されて行く。
 針先から広がる熱と疼きから逃れようと床に爪を立てておでこを擦り付けると、後頭部を鷲掴みにされて顔を起こされ、鼻先にストローを突き付けられた。

「コカインだよ。勿体ないからキャストにはあげるなって言われてるんだけど、生流くんは良い子だから特別にあげる。ほら、早く吸って、吸って!」

 イヤイヤと首を振るものの、手のひらで口を塞がれれば鼻から空気を吸うしかない。

「もう一回! まだ残ってるよ、ほら、吸って!」

 鼻腔の痛みに、田之倉に輪姦された時の記憶がフラッシュバックする。

「あああああああ……」

「もう効いてきた? 覚醒剤シャブとダブルだから効き目が早いのかな」
 
 何もかもがどうでもいい。頭の中のモヤモヤが一瞬にして吹き飛び、開放感と快感が脳内を埋め尽くす。
 身体の底から興奮が湧き上がり、訳もなく涙がぽろぽろ流れる。
 堪らず嗚咽を漏らすと、生流がそうなるのを待っていたかのように、背後の男が、生流のお尻を指先が食い込むほど強く掴み、覚醒剤を打たれてカッカと火照る後孔に男根を突き立てた。

「んはぁぁぁぁぁっ、入ってくるぅッ、あッぁ、ぁッ……」

 叫んだ口を塞がれまた粉を吸わされる。
 頭がキンと痺れる。身体が蕩ける。

「ああ、熱い。中がキュンキュン締まる」

「あッ、はぁッ、凄いッ、凄ッ」

 犬のように舌を出して喘ぐ生流の痴態をコカインを吸わせた男が実況し、背後の男が淫靡な笑みを浮かべる。

「自分から腰を振ってイヤらしい子だね。大人のチンポがそんなに気持ち良いのかい?」

「うぅ……すッ、好きッ……だ、から……もっと奥までッ……大人のチンポ……奥まで、いッ、いれてッ!」
 
 理性を失うほどに発情した生流の身体は、本人の意思とは関係なく、薄っすらと上気した桃色のお尻を揺らして快楽を貪る。
 その、あさましくも匂い立つような色香を漂わせた動きに男の腰がさらに激しく抜き差しを繰り返す。

「あぁ、いづる君は本当にスケベなイケナイ子だ。たくさん出してあげるからね。お腹の奥に、たっくさん出してあげるからねぇ」

「出してッ! なんでもいいからッ、おッ、奥にィ、奥に入れてぇぇぇッ!」

 喉を引き攣らせ、虚な瞳をカクカクと震わせる生流の姿は、誰の目から見ても既に限界であることが解る。
 しかし、大量の薬物によって性欲の奴隷となった生流の身体は、そんな状況でもなお一突きごとに歓喜の叫びを上げ、ペニスの先から色の無くなった精液を撒き散らす。
 膝が震えていつ崩れ落ちるのかも解らない。お尻を上げているのがやっと。
 しかし、コカインの多幸感に判断力を狂わされたメンバーたちは、そんな状態の生流に対しても欲望をぶつけることを止められない。
 さらなる追い討ちを掛けるように、メンバーの一人が注射器の針を生流の首筋に当てる。
 ヒヤリ、と冷たいモノが首筋に当たった時はもう遅かった。
 突然、心臓が爆発したかのような衝撃が走り、生流は、ヒッ、と叫んだまま硬直した。

「あ? え? なに? いづる君?」

 身体が氷水に漬けられたように冷たい。
 舌がもつれて、視界が霞む。遠くなる意識の中で、ひぃぃぃっ、という男の叫び声が、遠い過去の記憶の喧騒のようにぼんやり響く。

「なんだこれッ……ガタガタ震えてヤバくないか?」

「まさか死ぬんじゃないだろうな!」

 身体を揺さぶられるが、生流は何も答えられない。
 慌てふためく男たちとはうらはらに、生流は、真っ暗な世界に一人佇んでいた。
 凍えそうな寒さは痺れに変わり、やがて何事もなかったように落ち着いた。
 このまま死んでしまうのだろうかという思いが頭を掠めるが、不思議と怖さは感じない。
 ただ、このまま死んでしまうのだとしたら、なんて可哀想な人生だったのだろうと自分自身の人生に憐れみを覚えた。
 せめて人生の最後ぐらい自分の思うように死にたかった。
 安らかでなくても、愛する人の腕の中で、愛する人に見守られて死んで行きたい。

 ーーー茅野さん。

 思いが込み上げるものの、もう声も涙も出ない。
 破裂しそうなほど暴れ回っていた心臓も、今では動いているのかさえもよく解らないほど静かに波を打っている。
 意識がだんだん曖昧になる。息をしている実感もない。
 すると、生流の意識を引き戻すように、突然ステージの床がドタドタ揺れた。

「下がって下さい。奥へ運びます」

「何を勝手に……」

「本部の指示です」

 瞬間、口から泡を噴いて運ばれて行ったキャストの姿を思い出し、生流は身構えた。
 あの姿を見たのはいつのことだっただろう。そもそも現実だったのかどうかも解らない。しかし、口から泡を噴き鼻血を出しながらスタッフに運ばれて行ったキャストの姿が生流の記憶の中に確かにあった。
 その時のキャストは、結局それきり戻ってこなかった。
 自分もそうなるに違いない。
 そんなのは嫌だと、近付く足音から逃れるように重い身体を必死で動かすものの、足音はすぐに追いつき、逞しい腕が生流の背中と膝の裏に伸びる。
 しかし、その手が膝裏をすくってひょいと抱き上げた時だった。
 抱き上げられた感触に、生流は、おや、と意識を向けた。
 逞しい腕、頬に当たる胸板の感触。生流はこの感触を知っている。これは生流をベッドに運ぶ時の恭平の腕の感触だ。

 ーーー茅野……さん?
 
 霞がかった視界の先に人の顔が見える。
 真っ黒い髪に白いシャツ。ピアスはどこにも見当たらない。
 しかし、この面影には見覚えがある。
 意思を伝えようと唇を動かすと、微かに震える生流の頬を節くれ立った手が優しく撫でた。

「遅くなってごめんな」

 愛しい声に、生流の意識が一瞬鮮明に覚醒する。
 しかし、その喜びを伝えるには、生流は、ドラッグに身体を侵され過ぎていた。
 覚醒したのも束の間、強烈な寒気に襲われ再び意識が遠退く。

「生流?」

 恭平の声がどんどん小さくなる。
 顔を見ようと目を見開くと、突然目の前が真っ暗闇になり、生流の意識はプツリと途切れた。


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