元社畜の転生者は魔導士になりたい~魔王を倒す為に、訳アリ女の子と冒険者になります

めれ

文字の大きさ
15 / 27
怪しい彼女と謎編

11.5話 新しい依頼

しおりを挟む
気まずい夜が明け、神々しい朝日が昇り朝が始まる。そう、貫徹である。
 
ひと悶着があった後、サーシャとリリナは部屋へと戻り床に就いたわけだが一連の流れのせいか、将又は単純に眠気を超えたせいなのか、目が冴えてしまい休むことができなかった。
 
ハウクスさんの課題に取り組もうと思ったのだが、頭は回らないし体に疲れが残っているし、ただひたすらソファに寝っ転がり天井を眺める時間が続き、ただただ苦痛だった。
 
俺とサーシャは例の前衛職の件と、俺たちが受けることが出来そうな依頼を確認するためギルドに向かう。リリナはリリナでダンへの謝罪に向かうため、俺たちは家の前で別れた。
 
リリナは一言「ありがとう」と別れ際に言ってきた。俺とサーシャは心の中でもうこの人とは会わないのだろうと感傷に浸りながら、リリナの背を眺め見送った。 
 
そして現在、俺たちはギルドに到着したのだった。
 
「うーん、パーティ加入者はいないようですね・・・」
 
「今冒険者になる人が少ないわけだし、昨日の今日でそんな簡単にうまくいかないさ。気長に待とう」
 
ギルドの中は閑散としており、他のパーティの姿は見えない。依頼の張り出しが少ないということは、みんな各々出払っているようだ。
 
その依頼が張り出されている掲示板には、俺達が欲している前衛職のパーティ加入のチラシがある。「初心者歓迎」「前衛は大歓迎!」と書いているのだが、こんなので来るわけもないだろう。受付の人に任せないで、俺が応募要項を考えればよかったか。
 
その意味のないチラシから視線を外し、何枚かの依頼書を見た。残っているのはパーティランク星1の依頼が3枚。「ペット探し」「店番」「子供のお守り」とギルドに頼むことか?という内容の張り紙しかない。そして報酬も低い。

どれくらい低いかというと、少し前の最低賃金より200円くらい安い時給の3時間分くらいだ。これならコンビニでバイトした方が断然いい。
 
「依頼も今日はちょっと微妙じゃない?」
 
俺がサーシャに聞くと、彼女は「うーん」と明らかに悩んでいるような態度を取り、考え込む。今日、バスタさん達は任務に就いているようだし、休みになるかなあ。
 
悩む俺たちの横から、緑の受付お姉さんが顔を覗かせてきた。
 
「今日はあまり依頼が入ってないんですよねぇ、一応今新しく依頼が入ったんですけど……」
 
「どんな依頼ですか?」と、受付嬢の手にある新しい依頼書に目をやる。
 
内容は「魔鉱石採集場の調査」と書いてある。
 
この魔鉱石について俺は、詳しい用途を知らない、一応聞くところによるとどうもその鉱石自体に魔力が宿っているらしく、、武器やら魔道具やらで使われる素材らしい。実際に使われているところを見たことがないので何とも言えない。
 
その魔鉱石の調達任務は何回か受けたことがあるのだが、今回は「調査」という文言が書いてある。

これはどういうことだろうか。
 
「調達じゃなくて調査なんですか?」
 
俺はなんとなく疑問が残った部分を受付嬢に聞いてみた。緑の彼女は少し困った顔をしながら質問に答え始めた。
 
「そうなんです、なんでもローグから東にある『ディアナ鉱山』の麓で魔物の発生数が増えているらしいんです。そこの鉱山で見られる魔物は大体『ブラックバット』や『ストーンモール』みたいな、鉱山内で大人しくしているような魔物が生息していて、、鉱山麓までは降りてくることはなかったんですけど、つい先日あたりから謎の魔物が鉱山麓村で被害を出していて、少しずつ増えているみたいなんです」 
 
「なるほど、でもわたし達何回か魔鉱石採集に行ったことがあるので分かりますけど、麓で魔物なんて見たことがありません」
 
サーシャは「うーん」と考え込むようなポーズで話に加わる。
 
確かに、俺たちが鉱山に行ったときは受付嬢が言ったように、危害を加えるようなモンスターは見たことがない。『ブラックバット』は言わば少し大きいコウモリ、『ストーンモール』は読んで字のごとく石で身を守るモグラだ。強いて言うなら『ブラックバット』が人間に驚いて飛び回るくらいだろうか。

鉱山麓までの道中は確かに魔物が姿を現すが、被害を及ぼすほどではないし、鉱山麓村の護衛隊で事足りるくらいだ。
 
その護衛隊がいるにも関わらずこのような状態になっているということは、少し危機感を感じざるを得ない。

 「ですので、その発生源を突き止める調査ということになります。しかし、何が起こるかはわかりませんので、パーティランク3以上でパーティ人数3以上を推奨した依頼なんです。『明けの明星』さんはパーティランク2になりますし、パーティ人数もお二方なので厳しいですね」
 
そういう条件なら俺たちの出る幕はなさそうだ。一応、パーティランクより1個上くらいの依頼は、ギルドの温情で受けることは可能なのだが、今回は条件が厳しそうだ。
 
「そっか、そしたら俺たちは受けられませんね」

 

「受ければいいじゃん」

 

「いやそう簡単には・・・え?」
 
サーシャと一緒に声の主の方へ振り向く。そこには先ほどまで一緒にいたゴスロリ姿の黒髪少女、リリナの姿があった。謝罪しに行ったんじゃなかったのか?
 
サーシャは若干「ええ・・・」と戸惑いながら、リリナに質問をした。
 
「リリナさん、ダンさんへの謝罪は済んだんですか?」
 
それに対しリリナは腕を組み始め、けだるそうに口を開いた。
 
「家に行ったけどいなかったのよ。どこにいるのかも分からないし、とりあえずこっちに来たの」
 
タイミングが悪かったようだ。ダンの仕事の都合上家にいるかどうかは運頼りになる。仕事中に会いに行っても邪魔だろうから、ここに来る方が得策だと考えたのだろうか。

しかし、彼女は別に冒険者でも何でもない一般人だ。まさか、俺のパーティに入るとか言うんじゃないだろうな?
 
「ともかく、この依頼は俺らのランクより一つ上だし、そこを免除してもらったとして、3人じゃないと受けられないんだぞ?リリナが冒険者になってパーティに入るわけでもあるまいし」
 
俺は横にいるサーシャと目を合わせる。サーシャもまた、ジト目で首を横に振っている。考えていることは同じのようだ。
 
「冒険者にならなくても、同行するくらいならいいんじゃない?」

は?何言ってんだ?無理だろそんなの。
 
「いや、危ないって!危険度が未知数な依頼なんだから、素人を同行させられないって!」
 
「そうですよ!万が一同行したとしても、何かあったら守り切れませんよ!」
 
俺たちはリリナの提案に抵抗した。自分勝手にも程があるでしょ、何を思ったのかは知らないが、なぜ俺たちについてきたがるのだろうか。

ここがわからない。
 
「大丈夫よ、自分の身くらい自分で守れるし。あんたらだって魔王の眷属?を倒したらしいじゃない。受付さん、一緒についてくのはどうなの?」
 
「えーと・・・一応無報酬になりますが同行は出来ますけど・・・」
 
リリナは行く気満々だ。ここまで行くと怒りを通り越して呆れてくる。のだが、俺達的には人数問題がクリアされることは喜ばしいことだ。

なんせ報酬が少し高めだし、同行者は無報酬というもんだから、報酬を分ける必要もない。
 
とはいっても危険なものは危険だ。何かあった時の責任を負うくらいのレベルに達していないし、むしろ戦闘で邪魔になる可能性が高い。

いくら自分の身を守れるとは言っても、限度があるだろう。受付も受付で同行できるなんて言うなよな。
 
「リリナはなんでそこまで行きたいのさ?自分に益なんてないのに」
 
俺がリリナに当然の疑問を投げかけると、彼女は組んだ腕の片方を崩し手を顎に持っていき「うーん?」というポーズをとる。
 
「なんでって、あんたらには一応泊めてもらった借りがあるでしょ。今回の人数合わせで借りを返したいだけよ」
 
「だからって・・・」と俺は再びリリナを止めようとするが、サーシャが横から口を挟んでくる。
 
「ヤナギさん、多分何言っても無駄だと思います。意志は結構固まってるようですし、連れていくしかなさそうですよ・・・」
 
納得できないが、サーシャはもう諦めているようだ。確かに、言っていることは軽いように思えるが、彼女の目を見るに結構マジなようだ。

これ以上は不毛な言い合いになりそうだし、折れるしかないか・・・
 
「俺達だってどうなるか分からない。万が一の時責任は取れないけど、それでもいく?」
 
「大丈夫よ、邪魔はしないって」
 
本当に大丈夫かなぁ。不安は拭えないが、背に腹は代えられない。依頼を受けるか。。
 
「じゃあ、俺とサーシャ、同行一人で任務ついていいですか?」
 
俺が受付嬢にそう言うと、緑の女性はニコッとこちらに笑顔を向けて了承するのだった。
 
「かしこまりました、特別に依頼を受領します。場所はここから東のディアナ鉱山。徒歩ですと時間がかかりますし、こちらとしても情報を持ち帰っていただきたいので、ギルドから荷馬車を用意します。荷馬車は東門にありますので、荷馬車の管理者に一言お伝えいただいて、ご利用ください。また、今回一般の方の同行となりますので、一応貸出しの大楯をお持ちください」
 
依頼は受理された。一通りの説明を終えると受付嬢は、奥の部屋から150センチはあろう黒い少し反った長方形の大盾を持ってきた。若干引きずりながら持ってきていることから、重量があるのだろう。
 
リリナはその大盾を受け取ると「ありがとー」と一言。そして、その重量のある大盾を背中に背負ったのだった。
 
「リリナさん、その重くないですか?」と心配そうにサーシャは聞くと、「まあ少し重くて歩きづらいけど、いけるでしょ」となんとも軽い返事を返す。

サーシャは苦笑いだ。
 
リリナの無理な要求とこれからの任務への不安を胸に抱きながら、俺たちは東門に行くのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや
ファンタジー
クラスメートからのイジメが元で死んでしまった主人公は、その報われぬ魂を見かねた女神によって掬い上げられ異世界で転生する。 女神から授けられた不思議な剣を持つことで、彼はあらゆる敵に打ち勝ちあらゆる難問を解き明かし、あらゆる女性を虜にする力を手に入れる。 無敵の力を手に入れた男が次に望む物は果たして…? 不定期連載(7〜10日間隔で出していく予定)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

処理中です...