元社畜の転生者は魔導士になりたい~魔王を倒す為に、訳アリ女の子と冒険者になります

めれ

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怪しい彼女と謎編

独白

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あたしは今、隣の冴えない金髪の男と村に戻った。
 
門を潜ると髭と甲冑共がこっちをみて、「おお!」と大げさに声を上げてわらわら近づいてくる。
 
そのうちの髭の管理長?が「他の人は?」とあたしに話しかけてきたので、ありのままの事を話した。
 
管理長と甲冑共は「まずい、村を出た方が」とか「住民に知らせろ!」とか慌てふためいている。
 
金髪も金髪で「避難しましょう!」とか無駄にうるさい声で叫んでる。
 
あたしはみんなが忙しくしてる様子をただ見てるだけで突っ立っていた。
 


あたしって今、なんでここにいるんだっけ?
 
あたしが無理やりあいつらについてきたんだっけ。

でも同行だから戦力外だしやることないし。
 
何でだろう、あいつらと離れたくなかったのよね。
 
それは何故?寂しかったから?戦いたかったから?暇だったから? 
 
違う、あたしあいつらと一緒にいたかった。
 
あたしの人生って、親以外と全く人と関われなくて、そんな親もしょーもないやつ。
 
ちっちゃい頃から叩かれたり、殴られたり、罵声を浴びたり。
 
いつからそうだったか分からないけど、気が付いたらそんな感じ。
 
親の影響だからか、父親にずっと反抗的な態度取ってた。

殴られても、蹴られても、踏みつけられても、投げ飛ばされても。
 
母親はあたしの事庇ってくれてたけど、気付いたらいなくなっちゃった。

当たり前よね。
 
父親はギャンブルと酒ばっかりで、悪い人から借金してた。

仕事すればいいのにね。
 
そんな父親だったから、周りの人は「あそこの家の人と関わっちゃダメ」って感じで誰もあたしに近づかなかった。
 
村八分ってこんな感じ。

村の子供もあたしに石投げたり、馬鹿にしたりもう最悪。
 
人ってなんてクソなんだろうって思いながら生きてた。
 
あたしはいらない人間。
 
でも、そんな中で唯一あたしにご飯くれたり、服くれたりしたおじさんがいた。
 
黒い服着て、怖そうな顔だったけど優しかった。
 
あたしはその人しか話す人いないし、何でもしてくれるからおじさんの事は信用してた。
 
他の人は虫、おじさんだけは人間。

こんな感じの線引きで。
 
でも聞こえちゃった。
 
父親とあのおじさんが話してるところ。
 
おじさんは父親に「あいつもそろそろでかくなったし、高級娼館で働いてもらう」だって。
 
父親もそれに反対なんてあるわけがない。
 
あたしにずっと言ってたから。「身体を売れって」
 
そう、おじさんは借金取りで最初からあたしを、金の成る木として優しくしてくれてたと気が付いた。
 
あたしって顔はよかったみたいだったから、高給取りになるんだって。
 
聞いた時、世界が逆さまになる感じがした。
 
あたし個人に向けられてた優しさは、家畜に餌をやる行為と一緒だったって、気付いちゃったから。
 
嫌だった。

なんでか分からないけど、身体を売るのだけは嫌だった。
 
でも、一番いやだったのは裏切られたこと。
 
あたしの気持ちを裏切ったこと。
 
逃げた。
 
街から、父親から、おじさんから、全部。
 
行く当てなんてないけど、走った。
 
おじさんから最後に貰った、この服を着てとにかく、行けるところまで、逃げた。
 
お腹空いてたけど、捕まったら何されるか分かんないし。
 
魔物がいて襲ってきたけど、ちょっとやそっとじゃあたし効かない。
 
何でだろう、毎日暴力を振るわれてたから慣れちゃったのかな。
 
街の人に石投げられてたからかな。
 
少しは丈夫。
 
偶然手に入った能力?で暴力も痛くないし、何投げられても痛くない。

痛くないのに痛い。
 
だから、特になんもなく歩いてたら、町に着いた。
 
変な鎧に「入るな」って言われたけど、胸触らせたら通してくれた。
 
手段を選ぶ余裕はなかった。

でも辛かった。

身体売ってるのと同じ感じがして。
 
でもしょうがないわよね、生きるためだし。
 
街に入ってもお金ないし、お腹空いたからどうしようかなって思ったら、偶々いた。

ダンが。
 
彼は何か買ってるところだったけど、そんなの構わずに話しかけた。
 
自分の中での可愛いを演じて、近寄って、嘘で好きって。
 
しょうがないわよね、生きるためだし。
 
辛かった。
 
悪いことされて育ったのに、悪いことするのっていやな気持になるものなのね。
 
ダンからお金貰っても、宝石貰っても、嬉しくない。
 
悪いことしてるって自覚をしてると、全部台無し。
 
止めたかった。

でも、そうしないと生きていけない。
 
止めたい。

辛い。

痛い。
 
身体売るのが嫌なくせに、やってることは一緒。
 
一人は嫌。
 
ダンがいなくなったら?

どうなる?

今後は?
 
本当の自分を見せようか、また逃げようか、ずっと考えて考えて。
 
考えだしたら、目から水が出てきた。
 
初めて流した涙。

ずっと泣いたことなかったから。
 
そんなときにあったのがあいつら。
 
意味わかんない正義感振り回してくる、あたしと同じ年くらいの男と女。
 
ダンにやったように、甲冑にやったように騙そうと思ったのに、通用しなかった。
 
色々言われて、もういいやってなって、素で喋った。
 
嬉しかった。

素のあたしと普通にしゃべってくれる人がいるんだって。
 
嬉しかった。

素のあたしに暴力も罵声も浴びせてこない人がいるんだって。
 
嬉しかった。

信用してくれるって言ってくれて。
 
嬉しかった。

人と食事が出来て。
 
ダンの時と違って素のあたしだから、心が軽い。
 
楽しいってこんな感じなんだって、初めて思えた。
 
あいつらの家に泊まるのも、楽しかった。
 
1人じゃない空間って、なんて温かいんだろうって思えた。
 
素の自分は出せても、素直な言葉は出ない。
 
不思議よね。
 
今まで普通のお喋りってしたことなかったから、会話って難しい。
 
ダンの家に行ってもいなかったから、また会いたくなって、ギルドに行ったらあいつらがいた。

嬉しかった。
 
困っているみたいだったから、何とかしようと思った。
 
人生で初めて人にいいことをしようとした。
 
あいつらがどう思っているかは分からないけど、自分が思ういいことを。
 
あいつらの仲の良さを見ちゃったら、あたしも入りたくなった。
 
しょうがないわよね。
 
荷馬車の中でおしゃべりするのも楽しかった。
 
初めて、本当の自分と対等に接してくれる人と一緒だったから。
 
輪の中に入れた気がしたから。
 
友達が出来るってこんな感じなのかなって。
 
おかしいのよね、あいつ。

あたしがちょっと言ったら、泣いて喜んだりして。
 
あたしがいいことできたんだって、内心嬉しかった。
 
でも、照れくさくて素直に言葉が出てこない。
 
この時初めて思った。
 
ああ、あたしって生きてるんだって。
 
初めて知った。

人にいいことをすると気持ちがいいものなんだって。
 
人の事は信用できなかったけど、こいつらなら大丈夫って、なぜか思えて。
 
一緒にいると暖かい。
 
でも、今は?
 
逃げろって言われた時、辛かった。
 
もう会えない気がして。
 
逃げる時のあいつらの背中見たら、もう戻ってこないと思って。
 
逃げたくなかった、居場所がなくなるのが怖かったから。
 
あたしも一緒に・・・
 
聞こえてきた、あいつの痛そうな声。
 
心臓が痛くなった。
 
本当に一生会えなくなっちゃう。
 
あたしも戦うって、言えたらよかったのに。
 
戦ったことないけど、逃げるよりずっとずっとずっと良い。
 
失う方が怖いって、そう思うから。
 
あいつらに会えなくなる方が怖い。
 
嫌、一人になるのが。
 
嫌、初めてできた友達がいなくなるのが。
 
嫌、いや、嫌、嫌、いや、嫌、いや、いや、嫌、いや。
 
自分が何もしないことが、嫌。
 
手放す方が、嫌。
 
あたしは今何してる?
 
立ってる?

見てる?

聞いてる?

逃げる?
 
動けよ、脚。
 
動けよ、身体。
 
心臓が飛び出るくらい動こうとしているのに、手足が棒みたい。
 
あたし、魔物が怖いんだ。
 
あれを見た時、無理だと思ったから。
 
丈夫なあたしでも、死ぬんじゃないかって。
 
それなのに、あいつらは戦ってる。
 
あたしはまた逃げるの?
 
動け。怖い。走れ。怖い。逃げたくない。逃げたい。
 
どっちが大事?
 
あたしとあいつら。
 
-それは勿論-













「お嬢さん、どうするんだい?」

「なにが?」

「逃げないのかい?」

「逃げるわけないでしょ」

「そうかい、勝つんだよ」

「当たり前でしょ?」

「村を守ってほしい」

「任せなさい!」

白髪のジジイに背を向けて、あたしは走り出す。

 
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