体で払ってくれませんか?

メンタルは大事に

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新たな交友関係

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夢花がバイトに出掛けて数時間。

俺は申し訳なさで一杯だった。誘われたからとはいえ、後先何も考えずに行きつくところまでいってしまった。

だからせめて、帰りを待っていようと思った。

これまで聞かないようにしていた。いったいどんな仕事だろうか。割が良いという他に情報はない。

ちょうどそんなことを考えていた時、扉が開いて夢花が帰ってきた。

「おかえり」
「!?…ただいま」
「もし夢花がよかったらさ」
「?」
「今度、夢花のお店行ってもいい?」

******

茶色をベースに統一感のある室内。暗黒な外界からやって来た人々を受け止める控えめな灯り。落ち着いた店内で、俺はに席を案内された。

給料が入って最初の木曜日。夢花の休みの日ならば…ということで、この日になったのだ

「いらっしゃい。アナタ初めてさんよね?」
「えぇ、知り合いに教えてもらいまして…」

ぽっちゃり体系のママは、野太い声を隠すことなく微笑む。傍にいた女性店員は、素早くグラスにお酒を用意し始めた。

「あら嬉しい。それじゃ初めてさんにはサービスを出させて貰うわね」
「あの、明日も仕事なので…お酒はすみません」
「まぁ、そう。真面目なのね。それじゃアタシが頂こうかしら」

目くばせで他のドリンクが、カウンターに差し出される。

「すみません…」
「いいのよ、それよりアナタ名前は?」
「七坂といいます」
「七坂君ね、覚えたわ。こう見えても記憶力いいのよアタシ」

ママがお酒を飲んだのに釣られ、俺もグラスに手を伸ばす。ごく普通のウーロン茶。

「ところで七坂君。今日は悩み相談でもあったのかしら?」
「悩みというか…アドバイスが欲しいなぁと…」
「いいわよ。聞かせてちょうだい」

俺は夢花の事を知人とボカして、話し出した。親友とのすれ違いからケンカ別れになったこと。仲直りの仕方を知らない俺は、何をすべきだったのか。

「どうやって仲直りしてもらったらいいんでしょうか?」
「その子はどうしたいのか言ってた?」
「それが、なんか諦めている感じで…俺が居ればいいって…」

本当は、ちょっと嬉しかった。頼られていると思うと。でも、将来的に一人の人間としてそれでいいのかは不安だった。

「確かに七坂君の言いたいことは、一般的には正しいわ」
「……」
「でも世の中、綺麗に白黒付く事なんてそうないわ」

ハッと顔を上げた俺の前で、ニコっと笑うママ。思い出してみれば、始まりからそうだった。俺は、己の欲望、見返りのために人助けをしただけだ。

「必ず溢れる人たちはいる。ほらアタシなんか正にそうでしょ?」

綺麗に整ったママの髭。それは紛れもなく、性別という概念の色が混ざり合っている証だ。

「その子も、親友さんも、今は距離を置きたがっている。その状況をムリにくっ付けようとしても、反発を招くだけよ?」
「確かに…そうですね」
「その子はきっと優しいから、七坂君に対して文句を言ったりしないだろうけど」
「……」
「余計な頑張りに付いていけなくて、疲れちゃってるかもしれないわね」

気付こうとしなかった。希海に会うと伝えた時、夢花が見せた表情の内側。

仲直りして欲しい、すべきだ、というのは俺の我儘でしかない。

体という対価を得ながら、心までも奪い取ろうとする強欲。今更正義ぶったところで、俺の所業は消えやしない。

「俺はどうしたら…」
「アタシだってこのお店始めると言った時に、応援してくれる友人もいれば、去っていった友人もいる。でも去っていった人を追いかけたりしても意味がないって気付いたの。それなら目の前にいる人、これから新たに出会う人と仲良くしたほうがいいじゃない?」

言葉に詰まった俺に向けて、ママはゆっくりと言葉を紡ぐ。

「その子はきっと、新しい環境の中で、新しい人と出会って、人間関係を勉強している最中なのよ。ほらウチは、こういう店だから色々なお客さんが来るじゃない。もしかしたら、あの子にも何かの縁が転がって来るかもしれないわね」
「!?」

ママは、分かっていたようだった。夢花の話だということに。俺は、頭を上げれなかった。

「七坂君に出来ることは、そんな彼女のことを信じて、歩き出している姿を見守ってあげることじゃないかしら?友達の一人や二人いなくなったって、また見つければいいのよ。でもその時に独りにならないようにアナタが傍にいてあげたら?っていうのがアタシの意見よ」
「ありがとうございます…」
「でもね、本当のところ、答えなんて無いのが、人生の難しいところでもあり、面白いところでもあるのよね」
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