体で払ってくれませんか?

メンタルは大事に

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好きな色は?

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「どこか…いく?」
「ん?」

不意に夢花が尋ねてきた。仕事から帰って一息ついていた所に、湯気立つ冷凍炒飯が置かれた。

俺はここ最近、夢花に干渉しないよう意識していた。加減が分からず、会話も少なくなっていた。

だからか、言葉の意味を理解するのに少し時間が掛かった。

「どこかに…」
「海行こうか、海!」
「海!?」

夢花の表情がパッと明るくなったのが分かった。まるで太陽に向かって花開くヒマワリのよう。

「俺、夢花の水着が見たい」
「えっ…いいの?」
「ど、どういう意味?」

同棲を始めて3週間が経っていた。俺には、この生活の中で気付いたことがある。

夢花は意外とエロに対してノリノリである。下手をすれば俺よりも頭の中がピンク色の可能性まである。

だから、自信なさげな夢花の返事に少し困惑した。

「私…その、他の人に見せられるような身体してないし…」
「大丈夫だよ」

なるほど、納得した。隣に座り込む夢花の体に視線を移す。

「俺は元気になる自信はあるけど?」
「……」
「てか今、想像しただけで元気になったけど見る?」

俺は腰を浮かしながら、ピラミッドを見せつけた。あまりにもくだらない返答、くだらない返動。

夢花は吹き出してしまった。

「もうwいいよ、そんなのwww」

こんなやり取り、久々な気がする。いや初めてか。俺は内心でホッとしていた。

「弥人は何色が好きなの?」
「うーん、悩ましいなぁ。まずピンクとか水色は鉄板でしょ。黄緑と白のチェック柄とか、黄色にオレンジの水玉とか、星とかイラストとか入ったりしててもいいし…」
「注文多すぎっ!」

夢花が俺のピラミッドに軽いデコピンを食らわせる。いやチンピンか…?

「ウッ……白と黒の無地以外なら何でもいいよ」
「なんで無地はダメなの?」
「大人っぽいから」
「それだけ?」
「それだけ」

夢花は何か言いたげだった。

普段から着ている黒色無地の下着を気にしたのだろう。思い返して少し焦る俺の前に、スマホの画面が現れる。

「分かった。いつ行く?」
「どこかの金曜に休み取るよ。土日より人いないだろうし」
「この日とか?」

積極的な夢花。

最初の印象とは随分変わったような気がする。慣れなのか、成長なのか、それとも元々こういう性格なのか。

お互いの程よい距離感が分かって来たのかもしれない。くっ付き過ぎず、離れ過ぎず。

俺自身も、自分の内側で何かが変わることに喜びを感じていた。

******

金曜日、出発前の自宅。

「今見たらダメ」
「お、おう」
「そのまま、振り返らないでね」

何もここで着替えなくても。脱衣室に行けば?という言葉を飲み込み、"NewTube"の動画に集中…できない。

モソモソと動く音が気になって内容が全く入ってこないのだ。

「ちゃんと下着持っていかないと大変なことになるよ?」
「分かってるよー」

今日は夢花と初ビーチ。

俺は欠伸をしながら、胸に手を当て膨らむのを感じていた。昨夜からの緊張感は、期待感へと昇華して鼓動を高々と鳴らす。

電車までの時間には余裕がある。"伊豆下田駅"と書かれた指定席券を強く握りしめた。

財布の中には何人かの諭吉。夢花に貰ったものだ。正確には、返してもらっただけだが。

このお金はお互いのために使いたい。そう、心の中で決めていると夢花に肩を叩かれた。

「準備できた」
「ん、それじゃ行こうか」

******

白い砂浜、煌めく海、熱のこもった塩の風。

「おまたせー」
「…!」

予め約束していた場所に、夢花がやって来た。

ピンク地に黒の水玉。いつもより気持ち盛られている胸にフリルから覗く逆三角形。

俺は即座に、白砂の上に腰を落としていた。

「大丈夫?」
「あ、あぁ…」

隣に夢花もしゃがみ込んだ。視線を合わせようとしない俺に察したのか、腰に下げていたポーチを確認している。

「ちょっと飲み物買って来るね」
「すまん…」
「いいよ」

すぐ傍にいた大学生らしき2組のカップルが波間へ駆けて行く。俺は青い空を見つめながら、時の流れを感じていた。

幸せ者だ……

これまでの彼是を思い出しながら、遠景を眺める。絵画とか映画の中といった、別世界に自分がいるようだ。

大地から噴き上げる熱と、降り注ぐ太陽光に身も心も温められ…いや、暑い。真っ白だった肌が、既に赤みを帯びている。

「どう?収まった?」
「わっ!?」

急に冷たい物体が腕にぶつかり、俺の上体が傾く。

「ごめん。弥人がそんなに驚くとは思わなかった…」
「あぁ、悪い悪い」

いつかどこかであった光景。俺は見事にやり返されていたのだった。

「昨日、エッチしておけば良かったかな?」
「ちょっ夢花!公然の場でなんてことを…」
「大丈夫、聞こえないよ」

耳元で意地悪に囁く夢花。遠くから聞こえてくるのは、雑多な嬌声に波の音。

「そろそろ慣れた?」
「……」

夢花は前かがみになって横から俺の股間へ視線を送った。盛り上がった海パン山は、増々隆起していく。伊豆だけに。

「暑いから早く海入りたいなぁ…」
「い、いってきなよ。俺ここで見てるから」
「やだ。それだとせっかく二人で来た意味ないし」

挑発的な上目遣いから、プイっと拗ねる所まで、何から何もが愛おしく感じてしまった。

そんな夢花を酷暑でダウンさせる訳にはいかない。

「それなら俺ダッシュで行くから、夢花はゆっくり来て」
「なんで?」
「…揺れると垂れるじゃん!」
「揺れる程ないし!」
「約束したからね。サラバじゃ!」

俺は言い捨てると走り出していた。喜びのオーラが、身体中から放たれて、強く強く砂浜を蹴った。

幸せじゃぁぁぁぁぁあああああ!!!
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