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旅先にいた好男子
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出発の合図と共に歓声が上がった。夢花の髪をさらう様に突き抜けてくる風。思っていた以上に強く、心地よかった。
ここは山間の湖を進む船の上。芦ノ湖遊覧船。賑わう観光客を乗せ、対岸の桃源内港まで向かう。
これまでにバスで駅伝ルートを登り、関所跡を見学した。船の後は、ロープウェイ、ケーブルカーに登山電車。
1週するだけで、様々な乗り物にお出迎えされる旅である。そして何より、富士山をはじめとする雄大な自然。
「弥人?」
「ん?」
「風すごいね」
なびくパンフレットを必死に握っている夢花の姿が可愛い。俺は両手を広げて、全身で風を受けてみた。
「すごいね。俺このまま飛んで行っちゃいそう」
「それは困るからダメ…」
ふざけて笑うと夢花が手を差し伸べてきた。
「冗談だよ?」
「うん、知ってる」
二人の手が重なる。清々しい風の中に生まれる確かな温もり。
そんな中、より強い風に体が揺れた。空を転がるように飛んでくる麦わら帽子。
俺は咄嗟に掴もうとして、叩いてしまった所を夢花がキャッチ。
我ながらナイスな連携プレー。
「どうもすみませーん」
「どうぞ…」
「ありがとうございます!」
「いえ…」
夢花から帽子を受け取った男は、嫉妬してしまう程のイケメン。
そして、イケメンの後ろからやって来た、お似合いの美少女。
情けないことに安堵する俺。
そんな俺を見て、イケメンが驚いた表情をした。
「あの、もしかして″西大”の方じゃないですか?」
「えっ?」
首都西大学。
東大の滑り止めの滑り止めの滑り止めとも言われる我らが大学は、みな自虐をこめて西大と呼んでいる。
その言葉を聞くとも思っていなかった俺と夢花は絶句した。お互いに顔を見合わせるが、全く覚えがない。
「あの、いつかの日にコンビニにいませんでしたか?」
「っ!」
どうやら、このイケメンは俺と希海のやり取りを見ていたらしい。
「あの時の落ち着きっぷり、同じ学生とは思えなくて格好いいなって」
「……」
一応、これでも社会人なんです。というか、君のほうが格好いいじゃねーか!何言ってんだ!!
俺は心の中で喚き散らす。
「あ、紹介遅れました。僕はマルチメディア3年の倉持藤矢です!」
「!?」
「そして、こちらが妹で高3の、」
「倉持藤花です」
マルチメディア特科。
西大で唯一、滑り止めと言われない学科だ。最も頭の良い人が行く学科で芸能人も在籍しているらしい。
俺は天に向かって「何が二物も与えないだ」と嘆きたかった。が、ギュッと手を握ってくれる夢花によって、現実へ連れ戻される。
「七坂弥人だけど、あの、俺、既卒生なんだ」
「なるほど。それは失礼しました」
「いや、全然」
そして、藤矢と藤花に見つめられた夢花。俺は助け舟を出すか迷った。
ただ、出来ることなら…今がチャンスとも思った。
「私は臼井夢花です。幼児教育1年です」
杞憂だった。夢花は真っすぐ相手を見据えていたのだ。
「それなら藤花の先輩になるかもしれないなぁ」
そんなこんなを続けているうちに、途中の港に着いた。倉持兄妹とはここで、お別れらしい。
船は再び出航する。目的地はすぐに見えていた。
「夢花?」
「うん?」
「ぶしつけな事聞いていい?」
「いいよ」
「あの子とは、友達になれそう?」
あぁ、まるで保護者のようだ。俺は口に出して、激しく後悔していた。
「うーん。分かんない」
「なんかごめん。変なこと聞いて」
「ううん、ありがと」
腕に縋りついてくれた夢花に俺はほっとした。
ここは山間の湖を進む船の上。芦ノ湖遊覧船。賑わう観光客を乗せ、対岸の桃源内港まで向かう。
これまでにバスで駅伝ルートを登り、関所跡を見学した。船の後は、ロープウェイ、ケーブルカーに登山電車。
1週するだけで、様々な乗り物にお出迎えされる旅である。そして何より、富士山をはじめとする雄大な自然。
「弥人?」
「ん?」
「風すごいね」
なびくパンフレットを必死に握っている夢花の姿が可愛い。俺は両手を広げて、全身で風を受けてみた。
「すごいね。俺このまま飛んで行っちゃいそう」
「それは困るからダメ…」
ふざけて笑うと夢花が手を差し伸べてきた。
「冗談だよ?」
「うん、知ってる」
二人の手が重なる。清々しい風の中に生まれる確かな温もり。
そんな中、より強い風に体が揺れた。空を転がるように飛んでくる麦わら帽子。
俺は咄嗟に掴もうとして、叩いてしまった所を夢花がキャッチ。
我ながらナイスな連携プレー。
「どうもすみませーん」
「どうぞ…」
「ありがとうございます!」
「いえ…」
夢花から帽子を受け取った男は、嫉妬してしまう程のイケメン。
そして、イケメンの後ろからやって来た、お似合いの美少女。
情けないことに安堵する俺。
そんな俺を見て、イケメンが驚いた表情をした。
「あの、もしかして″西大”の方じゃないですか?」
「えっ?」
首都西大学。
東大の滑り止めの滑り止めの滑り止めとも言われる我らが大学は、みな自虐をこめて西大と呼んでいる。
その言葉を聞くとも思っていなかった俺と夢花は絶句した。お互いに顔を見合わせるが、全く覚えがない。
「あの、いつかの日にコンビニにいませんでしたか?」
「っ!」
どうやら、このイケメンは俺と希海のやり取りを見ていたらしい。
「あの時の落ち着きっぷり、同じ学生とは思えなくて格好いいなって」
「……」
一応、これでも社会人なんです。というか、君のほうが格好いいじゃねーか!何言ってんだ!!
俺は心の中で喚き散らす。
「あ、紹介遅れました。僕はマルチメディア3年の倉持藤矢です!」
「!?」
「そして、こちらが妹で高3の、」
「倉持藤花です」
マルチメディア特科。
西大で唯一、滑り止めと言われない学科だ。最も頭の良い人が行く学科で芸能人も在籍しているらしい。
俺は天に向かって「何が二物も与えないだ」と嘆きたかった。が、ギュッと手を握ってくれる夢花によって、現実へ連れ戻される。
「七坂弥人だけど、あの、俺、既卒生なんだ」
「なるほど。それは失礼しました」
「いや、全然」
そして、藤矢と藤花に見つめられた夢花。俺は助け舟を出すか迷った。
ただ、出来ることなら…今がチャンスとも思った。
「私は臼井夢花です。幼児教育1年です」
杞憂だった。夢花は真っすぐ相手を見据えていたのだ。
「それなら藤花の先輩になるかもしれないなぁ」
そんなこんなを続けているうちに、途中の港に着いた。倉持兄妹とはここで、お別れらしい。
船は再び出航する。目的地はすぐに見えていた。
「夢花?」
「うん?」
「ぶしつけな事聞いていい?」
「いいよ」
「あの子とは、友達になれそう?」
あぁ、まるで保護者のようだ。俺は口に出して、激しく後悔していた。
「うーん。分かんない」
「なんかごめん。変なこと聞いて」
「ううん、ありがと」
腕に縋りついてくれた夢花に俺はほっとした。
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