体で払ってくれませんか?

メンタルは大事に

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変幻自在Ⅰ

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いつ頃からだろう。

俺には、プレゼントを貰った記憶がない。

学生時代にくれる人はいなかったし、会社の義理物は受け取らないようにしてきた。

当然、本命などは渡されたことがない。

俺は、到着音を鳴らして扉を開けたバスから降りた。

昨日の同じ時刻には、夢と希望の世界ネズミーランドにいたと思えない程、平常運転な世界。

ひとつだけ違うのだとすれば、首元に巻いたマフラー。

ネズミーランドの帰り際に、夢花から貰ったものだ。

寒風揺れる駅前のロータリーには、人込みに紛れて装飾替えを行う職人たち。

「もう正月だもんなぁ…」

会社を休んで、隣町の百貨店“パル丹”まで来ていた俺は、夢花へのお返しに悩んでいた。

初めは、アクセサリーなどが無難かと思ったが、好みが違えば宝の持ち腐れになりそうでやめた。

服を選ぶにも、センスがない。

生活の役に立つ雑貨…それはプレゼントなのだろうか。

遂には、バラの匂いにつられて、花屋の前で足が止まっていた。

花言葉を調べていると、カスミソウは「夢」の意味を持つらしい。

素朴な花――。

細く青い茎に、白の花弁。

何本にも纏められた束の中から花火のように咲き誇るカスミソウ。

「いらっしゃいませ」
「あの、この花を贈答用にしたいのですが」
「こちらですね、畏まりました。白単色でよかったです?」
「え、はい。お願いします」

さすがに黒色はないだろうと思ったので、やめた。

「どなたかへのプレゼントですか?」
「…そ、そうっすね」
「メッセージカードお付けしましょうか?」

******

……あれ?

俺は、帰りのバスの中で気づいてしまった。

この花、田舎の道端そのへんでいくらでも咲いてないか。

淡色のラッピング紙に包まれた花束を見て、苦笑するが今更である。

不意に不安になった。

引き返して、別のものを買うべきだろうか。

食べ物を買えばよかったのか。

あれやこれやを悩んでいるうちに、最寄りのバス停までついていた。

若干の後悔と、見事な花束を抱え、俺は玄関に鍵を差し込む。

「はい。夢花にクリスマスプレゼント」
「……?」

俺は、財布の中から取り出していた諭吉を机に置いた。夢花は、急に差し出された現金を二度見する。

「ごめん。結局、思い浮かばなくて」
「え…うん。それはいいけど、そっちは?」
「これは、その、さっき道端で」

もう片方の手に持っていた花束。咄嗟に隠したが遅かった。立ち上がる夢花。

「ありがと」
「夢花?」

遅れ髪から、ふわっと香る甘い匂い。身体中に伝わる熱と、乙肌の感触。

俺は、腕を後ろにしたまま抱きしめられていた。花束を握った手をなぞる様に、夢花の手が重なった。優しい支配に俺の鼓動は立ち昇る。

「でも、花瓶ないね」
「確かに」
「私、いいこと思いついちゃったんだけど」
「ん?」
「内緒w」

******

浴槽に浸かっていた俺は、脱衣所に気配を感じた。

いつもと様子が違う。

夢花が風呂に入るのは、いつも夜の仕事が終わる時間だ。申し訳ないと思いながらも、一番風呂は俺である。

洗濯ものをどうこうしている訳でもない。そのドア越しの影は、明らかに服を脱いでいた。

…ガラガラガラ

「弥人」
「ん?」
「一緒に入ろ?」

選択肢は初めから1つしか用意されていなかった。

包み紙を外した白いカスミソウの花束を手にした夢花がいつもの黒い下着を身に着けたまま、浴槽を跨ぐ。

「ひ、久しぶり」
「お久しぶりw」
「もしかして、その花浮かべるの?」
「正解~」
「ずいぶんオシャレだね」
「でしょ?」

いつも通りの会話のはずなのに、高ぶっていく気持ち。

湯嵩が上がるのと同時に、俺の角度も上がっていた。

狭い箱の中で向き合う二人。

開いた両膝の水間くうかんにちょこんと座る夢花。恥ずかしき俺の棒と、艶めかしき夢花の身体を、隠すように広がるカスミソウ

揺れる湯面から1本の茎を拾い上げる夢花。目が合うと微笑んでくれた。まるで天使のように。

そして夢花は、茎で俺の肩をなぞり始めた。擽ったさに思わず、俺の体は揺れる。

「ちょっ夢花」
「ダメ、このままでいて」

俺の反応に満足げな夢花は、挑戦的な笑みで矛先を胴体へ向ける。まるで小悪魔のように。

気が付けば、茎は2本になっていた。両手に責められた俺は脇の下から視線を上げる。

楽しそうな夢花――。

珍しく後ろで束ねた髪に、黒色のブラ紐が揺れる。

そして遂に、夢花の両手が俺の棒へと伸びた。

手の内から離れ、水中に浮かびあがってくる2本の茎。

それが攻戦の狼煙だった。

「夢花サン!?」
「なぁに?」

温かいお湯に紛れた温もる感触が、俺の体内に走る。上目遣いの夢花に、次の言葉が浮かばない。

「ちょッ…」
「どうかしたぁ?」

棒をそっと包んだ夢花の手が、ゆっくりと上下に動く。呼応した水面は揺れ、浮き花も踊り始めた。

「俺、あんまり触られたく…」
「どこを触られたくないの?」
「…それは」
「ど・こ・を?」
「ソレ…」
「ソレってなに?w」

髪をかきあげた夢花と視線が合う。確信犯である。

ニヤっと微笑む小悪魔に、俺の身体は溶かされそうになっていた。
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