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番外編
オトナのやり方 01※
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本編第2章『独占』のアフターストーリー。
亜矢の20歳のバースデーエピソードです。
終始、性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
------------------------------------------------
「結月さん」
俺を見下ろすその榛色の瞳は、うっすら潤んで、明らかに情欲に満ちていた。
「さて、どうするか……」
思わず口に出してから大きく息を吐いた。
* * *
亜矢が20歳になったこの日。
ホテル内に併設するレストランで祝ったあと、取っておいたゲストルームへ二人で向かった。
「あ……」
扉を開けた瞬間、隣に居た亜矢が小さく声を上げた。
真っ暗な空間に、大きい一枚窓から臨むベイエリアの夜景が絵画のように浮き上がる。所々に置かれたキャンドルが、幻想的な雰囲気を演出していた。
リビングルームのテーブルには、小ぶりなホールケーキとシャンパンが置かれている。ここに来る頃合いに用意しておくよう、事前に頼んでいたものだった。
「色々考えたんだが……。悪い、ベタなことしかできなかった」
目を丸くしている横顔を見ながら、髪をさらりと撫でると、亜矢は「嬉しいです」とこちらを向いて穏やかに微笑んだ。
「ふふ、結月さんと同じもの飲めるって嬉しい」
シャンパンをグラスに注ぐ様子を見つめながら、にこやかに亜矢が言う。
「初めてなんだから無理するなよ」
「分かってます」
誕生日おめでとう、と祝いの言葉を告げて、軽くグラスを合わせる。
亜矢はぎこちなくそれに口をつけた。
それが30分前。
そして今、何故か亜矢に組み敷かれている状態だ。
既視感――こういった時は、何か良からぬことをぐるぐる悩んでいる、前もそうだった――と思っていたのに、今回はどうやら違うらしい。
先刻から一言も発することなく、真顔で濡れた目をすっと俺に向けていた。
「どうした、亜矢」
あくまで冷静に訊いてみる。
右手を伸ばして頬を撫でると、ピクリと肩を震わせた。
「何?言ってごらん」
「僕、もう大人、ですよね」
「うん?法律的なことか?」
苦笑してとぼけると、耳元に熱い唇が寄せられる。
「今日は、僕が結月さんを気持ち良くさせますから」
掠れた声でそう言われ、掌が胸板の上を滑るように動いた。
「……ああ、君も男だったな」
シャツを脱がされるのを黙って見ながら、ふと初めて出会った時のことを思い出す。
当時、彼は17歳だった。その年齢にしてはまだ少し幼さの残る少年だったが、大学生になり、他の男に対して泰然とした態度をするよう強要しているうちに、気がつけば大人の色香を纏うようになっていた。
屈託のない笑顔はもちろん大好きだが、時折、その端正な顔に儚げな表情を浮かべるので、その度にドキリとさせられる。
確実に、大人の男に成長しているのだろう。
そんな事をぼんやり考えていると、鎖骨の下に唇が寄せられ小さく吸い付つかれた。
「今日は上手くいった、かも」
満足そうに微笑んだあと、首筋から臍の当たりまで舌を這わされる。
正直、むず痒いのは得意じゃない。ゾワゾワと変な感覚が背を上る。顔をしかめた俺を見て、亜矢がぼそっと「可愛い」と言った。
そのまま下肢の所まで顔を降ろし、スラックスのベルトとボタンを手で外したあと、カチとジッパーを噛んだまま降ろされる。
その慣れた様に少しばかり驚いたが、制止せず亜矢の様子をじっと観察した。
「そんなにとり澄ました顔してるくせに、もう大きくさせてるんですね」
下着から取り出したソレに手を添えて、側面から舌を這わしながら、ちらと俺を見て口角を上げた。
いつもの恥じらうような仕草はなく、濡れた瞳で煽っている。そして、はふはふと息をしながら、先の方から呑み込むように熱い口に含んでは、苦しそうに離していた。
「君こそ、余裕ぶっているくせに、その程度で満足させられるとでも?」
「だって……結月さんの、全部口に入らない……」
汗に濡れた前髪を指先で横に流してやると、涙を溜めた目が露わになる。
「教えただろ?どうすればいいか」
亜矢は悔しそうに小さく頷いた後、顔を横に向けて口に含み、頬の内側の肉に当たるように咥え込んだ。柔らかく粘着性のある感触が先端に纏わりつき、舌全体で側面を舐られると、腰全体が気怠く熱くなってくる。
「上手になったな、亜矢」
「っ……そんな、余裕たっぷりに言わないでください」
顔を赤くしてキッと睨まれるが、効力はまったくない。むしろその顔が色欲を唆るということを、本人は解っていないようだった。
亜矢の20歳のバースデーエピソードです。
終始、性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
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「結月さん」
俺を見下ろすその榛色の瞳は、うっすら潤んで、明らかに情欲に満ちていた。
「さて、どうするか……」
思わず口に出してから大きく息を吐いた。
* * *
亜矢が20歳になったこの日。
ホテル内に併設するレストランで祝ったあと、取っておいたゲストルームへ二人で向かった。
「あ……」
扉を開けた瞬間、隣に居た亜矢が小さく声を上げた。
真っ暗な空間に、大きい一枚窓から臨むベイエリアの夜景が絵画のように浮き上がる。所々に置かれたキャンドルが、幻想的な雰囲気を演出していた。
リビングルームのテーブルには、小ぶりなホールケーキとシャンパンが置かれている。ここに来る頃合いに用意しておくよう、事前に頼んでいたものだった。
「色々考えたんだが……。悪い、ベタなことしかできなかった」
目を丸くしている横顔を見ながら、髪をさらりと撫でると、亜矢は「嬉しいです」とこちらを向いて穏やかに微笑んだ。
「ふふ、結月さんと同じもの飲めるって嬉しい」
シャンパンをグラスに注ぐ様子を見つめながら、にこやかに亜矢が言う。
「初めてなんだから無理するなよ」
「分かってます」
誕生日おめでとう、と祝いの言葉を告げて、軽くグラスを合わせる。
亜矢はぎこちなくそれに口をつけた。
それが30分前。
そして今、何故か亜矢に組み敷かれている状態だ。
既視感――こういった時は、何か良からぬことをぐるぐる悩んでいる、前もそうだった――と思っていたのに、今回はどうやら違うらしい。
先刻から一言も発することなく、真顔で濡れた目をすっと俺に向けていた。
「どうした、亜矢」
あくまで冷静に訊いてみる。
右手を伸ばして頬を撫でると、ピクリと肩を震わせた。
「何?言ってごらん」
「僕、もう大人、ですよね」
「うん?法律的なことか?」
苦笑してとぼけると、耳元に熱い唇が寄せられる。
「今日は、僕が結月さんを気持ち良くさせますから」
掠れた声でそう言われ、掌が胸板の上を滑るように動いた。
「……ああ、君も男だったな」
シャツを脱がされるのを黙って見ながら、ふと初めて出会った時のことを思い出す。
当時、彼は17歳だった。その年齢にしてはまだ少し幼さの残る少年だったが、大学生になり、他の男に対して泰然とした態度をするよう強要しているうちに、気がつけば大人の色香を纏うようになっていた。
屈託のない笑顔はもちろん大好きだが、時折、その端正な顔に儚げな表情を浮かべるので、その度にドキリとさせられる。
確実に、大人の男に成長しているのだろう。
そんな事をぼんやり考えていると、鎖骨の下に唇が寄せられ小さく吸い付つかれた。
「今日は上手くいった、かも」
満足そうに微笑んだあと、首筋から臍の当たりまで舌を這わされる。
正直、むず痒いのは得意じゃない。ゾワゾワと変な感覚が背を上る。顔をしかめた俺を見て、亜矢がぼそっと「可愛い」と言った。
そのまま下肢の所まで顔を降ろし、スラックスのベルトとボタンを手で外したあと、カチとジッパーを噛んだまま降ろされる。
その慣れた様に少しばかり驚いたが、制止せず亜矢の様子をじっと観察した。
「そんなにとり澄ました顔してるくせに、もう大きくさせてるんですね」
下着から取り出したソレに手を添えて、側面から舌を這わしながら、ちらと俺を見て口角を上げた。
いつもの恥じらうような仕草はなく、濡れた瞳で煽っている。そして、はふはふと息をしながら、先の方から呑み込むように熱い口に含んでは、苦しそうに離していた。
「君こそ、余裕ぶっているくせに、その程度で満足させられるとでも?」
「だって……結月さんの、全部口に入らない……」
汗に濡れた前髪を指先で横に流してやると、涙を溜めた目が露わになる。
「教えただろ?どうすればいいか」
亜矢は悔しそうに小さく頷いた後、顔を横に向けて口に含み、頬の内側の肉に当たるように咥え込んだ。柔らかく粘着性のある感触が先端に纏わりつき、舌全体で側面を舐られると、腰全体が気怠く熱くなってくる。
「上手になったな、亜矢」
「っ……そんな、余裕たっぷりに言わないでください」
顔を赤くしてキッと睨まれるが、効力はまったくない。むしろその顔が色欲を唆るということを、本人は解っていないようだった。
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