【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り

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30 兄と再会2

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 それから同時に首を傾げた。双子のシンクロ率も良いままだ。

 カイもそんな二人を見て、ほっとしたようにため息をつく。

「どうやら行き違いがあったみたいだな。そういえばリーンの専属メイドってヤギ獣人じゃなかったっけ……」
「そうだけど。って、もしかして……」

 リーンハルトはおろおろした様子で、リーゼルを見つめてくる。一気に事の真相を理解したリーゼルは、くったりと力が抜ける気分で再び兄に抱きついた。

「……食べられちゃったのね」
「いつも要らない紙をその子に渡しているから、間違えられちゃったかな……」
「もう……。大切な手紙なら伝えておいてよ」
「言えば、引き止められると思って……。ごめん……」

 そもそも兄は、皆に迷惑をかけてまで自分の意思を貫きとおす度胸がない。できる限りの配慮はしていたのだ。

 家族に詳しい事情を言えなかった理由は、リーゼルが元同級生たちと会うこで身をもって体験した。
 これ以上は兄を責める気にもなれない。
 
「とにかく今は長く話していられないよ。リーン、ゆっくり会える機会はないのか?」

 カイがそう尋ねると、リーンハルトは嬉しそうにうなずく。

「殿下が、なんとか僕を外に出せるよう手配してくれたんだ。明日の朝に、二人の馬車へ紛れて戻るつもり」
「それなら今夜はゆっくり話せるのね」

 久しぶりに兄と過ごすことができる。リーゼルも笑みを浮かべた。
 リーンハルトが隣国でどのように過ごしていたかも知りたいし、リーゼルも意外と楽しく働いていたことを知ってもらい、少しでも兄を安心させたい。

「うん。リーゼル。今夜、大切な話があるんだ」
「大切な話……?」

 今後についての話だろうか。リーンハルトの無事も確認できたことだし、兄がまだ留学を望むなら、もう少しだけ男装状態を続けるのも悪くない。
 リーゼルはそれくらい、侍従の仕事を気に入っている。

 リーハルトはうかがうように、リーゼルの顔を覗き込む。

「……ラース殿下のことは気に入ってくれた?」
「ええ。お優しい方みたいね。リーンがあの方と一緒にいると聞いて、ひとまず安心していたわ」
「それなら良かった」

 ラウレンティウスの庇護下にいるなら、安心して兄を留学へ送り出せる。
 けれど今のはそういう意味で、聞いたのだろうか?

(なんだか、はぐらかされてしまった気がするわ。大切な話ってなにかしら……)



 その頃。お茶会会場では男二人が残された状態であり、近くで待機しているレオンはハラハラしながらそれを見守っていた。

 かつてラウレンティウスが留学へ来ていた際は、二人は仲が良かった。皇帝という存在を恐れない彼を気に入ったディートリヒは、たびたびラウレンティウスを皇宮に招いていたのだ。

 去年の誕生日までは確かにその友情が続いていたはずだが。今のディートリヒは、獣人なら近づけないほどの威圧感をまとっている。

 声が小さいのでどのような会話をしているのかまではわからないが、状況から察するにリーンハルトを巡って、けん制し合っているのだろう。
 しかしリーンハルトは、女装中。ラウレンティウスは、リーンハルトを女性だと思っているはず。
 ますます話がややしこしくなると、レオンはため息をついた。


「――つまり、私がリーゼル嬢に好意を寄せることがお気に召さないという話ですか?」

 そう聞き返すラウレンティウスを、ディートリヒは寒々とした視線で返した。

「そうではない。俺は、伯爵家から大切なお嬢様をお預かりしている身だ。それなりの距離感で接してもらわなければ、シャーフ伯爵に申し訳ない」

 それでなくても今は、リーンハルトが女装してリーゼル嬢を演じている状態。下手に隣国の王太子との関係が深まれば一大事だ。
 女装をお願いしてしまった身として、ディートリヒはリーンハルトを守る義務がある。

 しかしそれは建前であり、実際のところはラウレンティウスとリーンハルトが楽しそうにしているだけで、はらわたが煮えくり返りそうだ。

「そういうことでしたら、ご心配なく。事が良い方向へ進めば、私が直々にシャーフ家へご挨拶に参りますので。そのくらいの礼儀はわきまえているつもりですよ」
「貴様……!」

 何食わぬ顔でお茶を飲むラウレンティウスをますます憎く感じる。
 年下相手に余裕なく振る舞っている自分にも嫌気がさす。

 けれど、リーンハルトが関わっているとなれば、余裕ぶって傍観しているわけにはいかない。
 ラウレンティウスには男女の垣根を超えて、人を惹きつける魅力がある。
 うかうかしていたら、女装していない状態のリーンハルトすら奪われてしまうかもしれない。

「なぜそこまで、私の恋路に介入するのですか。もしかしてリーゼル嬢が、前に話されていた『運命の番』なのですか?」

 そうだと言えたらどれほど楽なことか。
 ディートリヒはすでに確信の域に入っているというのに、リーンハルトにはその気配がまったく見られない。
 同じ匂いを持つという双子のリーゼル嬢が本当の番だとして、本人に出会ってもいない状況で勝手に話を進めることもできない。
 しかしこの状況で、「違う」と宣言もしたくない。



 リーゼルがお茶会会場へと戻ると、二人は話もせずに見つめ合っている状態だった。
 席を空けすぎて待たせてしまっただろうか。心配しながら「お待たせいたしました」と挨拶すると、ディートリヒが席を立った。

「リーゼル嬢。そろそろ帰ろうか」
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