【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り

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32 兄と再会4

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(陛下にまでそう思われていたなんて……)

 パウルから助けられて厳しい処罰をしてくれた時は、本当に嬉しかったのに。兄を理解してくれる者が皇宮にもいると安心したのに。
 その相手にまで男色だと思われていたとは。あの時の気持ちを踏みつけられた気分だ。

「私は男色ではございません……。私は、陛下がお困りでしたのでこの恰好をしていいるだけですよ」

 確かに女装を提案したのはリーゼルだが、好んで女装する者だとは思われたくなかった。

「悪いっ。そういう意味では……!」
「それならどういう意味なんですか。女装しているのも、他国の王子に失礼がないように接していいるのも、陛下のためですよ。それなのに疑うなんて、ひどいです……」

 リーゼルは涙が溢れないようにドレスをぎゅっと握り閉めた。ここで泣けば、さらに女々しいと思われる。

「リー……」

 カイの呟きのあとに、沈黙が流れた。
 そしてその沈黙を破ったのもカイだった。

「馬車を止めていただけますか。私たちは歩いて帰ります」
「いや。俺が降りよう。アイヒ卿はリーンハルトを頼む」

 ディートリヒは馬車を止めさせると、レオンにドアを開けるよう指示する。

「しかし陛下。それでは警備に問題が……」
「いいから降りろレオン」

 レオンを外へと押し出してから、ディートリヒも自ら馬車を降りる。
 それから振り返り、うつむいたままのリーゼルを見つめた。

「……リーンハルト。俺は一度だって卿を好奇の目で見たことはない。卿に対してはいつも真剣だ。これだけは信じてくれ」



 静かにドアが閉められ、再び馬車は動き出す。
 リーゼルは、大きなため息とともに顔を両手で覆い隠した。

「どうしよう……。陛下に対して、なんて無礼なことを言ってしまったのかしら……!」

 あそこまで言うつもりはなかったのに、ディートリヒに誤解されがことがひたすら悲しくて、感情があふれ出てしまった。

「リーは悪くないよ。侍従として正しい行動だったと思う」

 そう。侍従としては正しかったが、陛下の気持ちを考えると居たたまれない……。
 カイは初めて長い時間をディートリヒと過ごしたことで、気づいてしまった。リーゼルへ向ける感情が侍従と主人の域を超えていると。

 リーゼルの伴侶が陛下ならよかったのにと思いはしたが、これはこれで問題だ……。



 その頃。馬車から降りたディートリヒは、街路樹に手をついたままずっと項垂れていた。

「終わった…………」

 完全に嫌われた。
 馬鹿みたいに嫉妬して、それを隠すこともできなかった。
 リーンハルトは同性から異常な愛情を向けられて困っていたというのに、自ら同じ目に遭わせてしまった。

「レオン。俺を刑務所に入れてくれ。その後、首都から追放してくれないか」
「お気を確かに。陛下はただ、お気持ちを伝えられずに誤解されているだけです。失恋で落ち込むのは、堂々と告白した後にしてください」
「黙れ、レオン」

 それをできないから、悩んでいるというのに。
 けれどこれで確信した。リーンハルトは男が嫌いで、それがディートリヒに対しても例外ではなということ。
 リーンハルトは運命の番ではないのか。
 ならばやはり、リーゼル嬢が……。



 その足で邸宅へと戻ったリーゼルとカイは、ラウレンティウスとリーンハルトを迎えるために忙しく準備を進めた。
 綺麗に整えられた食堂や応接室を見て回ったリーゼルは、満足しながら使用人たちへと笑みを浮かべる。

「皆。急なことで時間も無かったのにありがとう」
「とんでもございません。王子殿下をおもてなしできる機会など滅多にございませんもの。料理長も張り切って準備をしておりますわ」

 皆がやる気に満ちて整えてくれたおかげで、リーゼルも少し気分が晴れた。
 ディートリヒの希望に添えなかったのは悔やまれるが、今夜は予定どおりにラウレンティウスをおもてなししよう。結果的には、それが陛下のお役に立つと信じて。


 夜になり。約束どおり、ラウレンティウスとリーンハルトが邸宅へとやってきた。

「ようこそ、お待ちしておりました。王太子殿下。お帰りなさいリーンハルト」
「急に押しかけてしまい申し訳ありません。招待してくださってありがとうございます」

 ラウレンティウスは、リーゼルへと花束を差し出す。それを受け取っていると、殿下の横でリーンハルトが不満げな表情を見せている。

「そうですよ。本当は僕だけのはずだったのに……」
「えっ。そうでしたの……? 私はてっきり作戦なのかと」
「いやあ。皇帝と話していたら、あのままリーゼル嬢と別れるのが悔しくなりましてね」

 あの時は、お世辞にも話が弾んでいるようには見えなかったが。

「陛下とどのようなお話しをされたのですか?」
「大したことではないですよ。強いて言うなら、男同士の意地の張り合いですかね」
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