この世界で i を歌え。

ひとはな

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第二章

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「好きだよ。」
夏星は確かにそう言った。
ほんとに?わからない。ただひたすらに気持ちが悪い。
誰かを好きでいることと私が真瑞以外にこんなことを求めたなんてただただ気持ちが悪くて吐き気がする。
夏星が近づいてくる。顔にかかった吐息が熱い。
「ちょっと、まって、。」
「なんで、真那は俺のこと好きじゃないの?」
そう言われて何も返せなかった。
私はそのまま走って逃げた。履いていたのがスニーカーじゃなかったから地面を踏む度に足が痛んだけれどそこで止まってしまうのが怖くて走った。
もうここまでくれば大丈夫だろうか。ここはどこだろう。真っ暗な田舎で電車も無い。親も今日は夜勤で家にいない。
「まみず…助けてよ。」

「真那。こっち向いて。」
真瑞?なんで?また夢を見ているのだろうか?
顔を上げると2年前と変わらない、昨日と同じような服を着た真瑞がそこにいた。
「ま…みず?真瑞、会いたかった…」
「会いたかったって昨日会ったばっかりでしょ」
優しく笑った彼が言った。そうだね。と笑う。
「真那」
溶けてしまいそうな優しい声で私を呼んだ。
真瑞の熱い吐息が顔にかかる。幸せだった。
「僕も会いたかったよ。」
その言葉を聞いた瞬間私の中で何かが切れた音がした。
涙が、零れていた。
「泣かないでよ。ここに、いるから。」
そう言って抱きしめてくれた。その間私は彼の名前を呼ぶことしか出来なかった。
「そろそろ、ばいばいかな。」
真瑞は確かにそう言った。
「嫌だよ。真瑞のいない世界なんてつまらないよ。」
「僕だって真那のいない世界はつまらないよ。」
私のいない、世界?ごめんね、そう言うと真瑞はぼやけて消えた。まるで今のことが全部幻想だったかのように、夢だったかのようにそこは家の近くの橋で朝日が昇っていた。なんなのだろうこの幻覚は。
何かの病気なのだろうか?そんなの笑える。
誰もいないひとりぼっちの世界で私は笑った。大声をあげて。そのとき涙が出ていたのはきっと太陽が眩しすぎたせいだ。
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