この世界で i を歌え。

第一章

「真那、久しぶり。」
ま…みず？なんで？
もうずっと前にいなくなったはずの渡世がそこにいた
「夢？かなぁ」
ははっと彼が笑う。そんな顔をしたところを初めて見た。
「そうかもね。」
久しぶりにみた彼のことを愛しく、懐かしく感じてしまって彼の輪郭をなぞった。すると急に改まった顔で「真那」と私の名前を呼ぶ。キス、される？
そんな私の予想とは裏腹に
「音楽、やってる？まだ歌ってる？」
そんなことを聞かれた。やってないとは言えなかった｡
失望されるのが目に見えていたから。
「うん、たまに、ね」
嘘をついた。でもこれは夢なんだから。
渡世はまた何か言おうとしていたがそれを聞くのが怖くて無理やりキスをした。何回も。
「ちゃんと触れてる。」
「僕まだ死んでないよ。こっちの世界では。」
え？こっちの世界って？どういうこと？

「真那、おはよう」
真瑞？じゃない。夏星だ。やっぱり、夢だった。
夢か、夢だよね、そうだよね。
もしかしたらと思った私が馬鹿だった。そんなはずない。彼はもうこの世界にはいない。
「どうした？大丈夫？」
心配そうな顔で夏星が覗いてくる。夏星曰く、キスした瞬間私が倒れてそのまま朝まで起きなかったらしい。息はしてたし顔色もよかったからほっといたけどと笑っていた。疲れでも溜まってるんじゃない、ちゃんと休んでと言われた。疲れてるの、、か？
「ほたる、私のこと、好き？」