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作戦その3「Ms.Aと総仕上げ」

恋愛マイスターとMs.Aの誘惑

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ここで一気に攻めるつもりだ。

「君は好きな人とかいるの??」
「えっ...その、一応ね?」

知っている。それは俺だ。

「どんな人なのー??」
「えーと、かっこよくて、何でもできて、」
「うんうん」

相づちを次の言葉を急かすように打つ。

「それで、その...よく落し物とかする人...かな?」

俯いて最後にそう言ったMs.Aの顔はチークの色が隠れるほど赤くなっている。

「そーなんだ。おっちょこちょいなのかな??」
「ちょっとね。あと、とってもにぶいぃー」

ぷくっと頬を膨らませる彼女はもはや好きと言ってしまっているようなものだった。

「実はさ、俺も好きな人いるんだよね」
「えっ、そーなの!?どんな子どんな子??」

思ったよりもグイグイ聞いてくるのには少し驚いたが、踏み込むならここだと東野は思った。

「とても美人で、ベレー帽のよく似合う子だよ」

東野自身がかぁーっと熱くなるのが分かったが、Ms.Aもほかから見ても分かるほど赤くなっていた。

「もうさ、分かってるよ...ね?」

はい、もう分かってます両想いパターンです。

観覧車は残りの4分の1を高度を下げながら急かすように降りていく。

「私さ...告白したことしかないんだよね...」

前髪の隙間から上目遣いでこちらを眺めてくる彼女の目は、拾われたばかりの子犬のようだ。

「ふーんそれでー??」
「もうっ!いじわるしないでよ!女の子に言わせるなんて男らしくないよ??」

またぷくっと頬を膨らませる。
もはやあざとさまでもが彼女を飾るようだった。

だが、もう確信している。俺たちは両想いだ。必ず付き合える。
思えば恋愛ソムリエとして生活してきて、自分から告白なんてするとは思いもしなかった。
しかし、振られる心配もないこの状況。
最後の一歩を踏み出したのは東野のほうだった。

「じゃあ心して聞いてね...」

大きく息を吸い込むと優しくつぶやくようにこう言った。

「僕と付き合ってください。」





「ふふふっ...、あーっはははははは!」

告白のあとの長い沈黙を切り裂いたのは、Ms.Aの笑い声だった。
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