初恋のキミ

天野 奏

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ライバルと答え

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ロブを送って、返して。

繰り返してるだけでも、いい運動になる。

息が切れるほどではないけど、ちょうどいい。

テニスをしているときは、回りの声は全く聞こえなくなる。

男の人が応援していても、気にならない。

やっぱり、私、テニスが好きだ。


「はーい………!?」

突然、ボールが降ってきた。

慌てて打ち返すと、そこには………

「っ……三ッ橋、先輩!?」

いつの間にか、打ち合っていたハズの子が後ろに下がっていて、先輩が構えていた。

ボールの色も変わっているから……これは……先輩が打ってきたボール?

先輩が1歩踏み込む。

………来る!

「っらぁ!」

スゴい早さの球が飛んできた。

慌てて膝を曲げて、ストロークを構える。

でも、引きが遅くて、弾かれてしまった。

相手コートに甘い球が飛ぶ。

「らぁ!」

先輩が前に詰めて、スマッシュを決めた。

さすがに、追い付けない。

「お、おい、キョーヤ……」

横から、男子部員の声がする。

先輩はすぐにポケットからボールを出すと、また後ろに下がる。

私も慌ててまたラケットを引いた。

「おらぁ!」

高い声で気合いを入れて、打ち返す。
今度は私が打つ番だ。

思いっきり打ったボールは先輩の足元に届いたが、先輩は膝を曲げて地面スレスレでボールを返した。

ライジング………!

また追い付けなくて、やっとの思いで返すが、先輩は既に前に出ていた。

スゴい勢いで、スマッシュを叩き付けてくる。

「あぶなっ!」

「うっ!」

ラケットでギリギリ押さえるも、またもう一度スマッシュを決められてしまった。

「何甘い球ばっかあげてんだ!
繋いでやる乱打はただの仲良しごっこだろーが!
本気で倒しに来いよ!」

「何をぉ………」

ムッとしたのと同時に、火がついた。

先輩の口角が上がった。


…………

………………


「はぁ…はぁ………」

膝に手をついた。

全然、勝てない。

ベースラインにいても、先輩のサーブは返せなかった。

逆にファーストが入ったレシーブですらエースを取られてしまう。

「女子には勝てても、遊びじゃ俺には勝てない」

頭では分かっていても、体がついていかない。

悔しい。

「おい、キョーヤ……終わりにしなよ……」

「安藤さん、もう参ってるって……」

大きく深呼吸して、先輩を見た。

「はぁ~~~………!
悔しい~~!!」

「………………」

「「えっ」」

周りのみんなが、点になった。

「安藤さんが、叫んだ………」

「私……テニスが大好きで!
でも、負けるのは嫌いで!
だから、ホントに、悔しい!!」

吐き出したら、スゴくスッキリした。

「クククッ……俺に負けてんだから、こっちでテニスしろよ」

「はぁ……え?」

「だぁから!
女子なんかやってねーで、こっちでマネージャーやれっつってんの!
負けた方が勝った方の言うこと聞くルールだろ?」

「え……え!?
そんなの聞いてない……っ!」

「へぇーそんな賭けやってたんだー!
ナイスだねキョーヤ!」

桐谷先輩がククッと笑う。

「咲來、どんまい!
でもきっと次は勝てるよ」

「あれ、夏蓮いつの間に……じゃなくて!
私の意思は無視ですか!!!」

私が思いっきり叫ぶと、先輩は頭を掻いた。

「じゃあ、お前はどうしたいんだよ!
ちゃんと、口で言え!
お前は何がしたいんだ!!」

「………そんなの………っ………!」

大きく、息を吸った。
手が、少し震えた。

「マネージャー、やりたいです!!!
私を負かした先輩に、先輩たちに、更に上に行って貰えるように……!
私に出来ること、やりたいです!!!」

また、心の中のモヤモヤが、吹き飛んだ。
もう、手の震えは無くなっていた。

先輩が、フッと笑った。

「やったぁ!
ナイスですキョーヤ先輩!」

「女神っすね!」

「いいねー!
俺ら次で終わりだけど」

「いやー
青春を見たなー」

みんなに囲まれ、急に、男の人意識が強くなる。

わ、この感じは……ヤバイかも………!

「ま、待ってください……!」 

「??」

「わ、私は………!」

慌てて、先輩の横に移動した。

ダメだ、と思いつつも、もうこれしかない。

「私は……この人が好きです!!」

「………はぁ?」

またもや、乱戦が始まりそうです。
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