地味な私が天敵俺様イケメン部長に娶られそうなんですがそれは

天野 奏

文字の大きさ
16 / 106

15.杉村部長(UMA)のおさらい

しおりを挟む
  改めて杉村部長の、大人とは思えない奇妙奇天烈摩訶不思議な発言をまとめてみる。

  まず1つ目、私にキスをした上、求婚した。
  それも、子供を産ませるとか言ってた。
  それはつまり、をするということであって……いや、今はやめておこう。

  2つ目、部長の心拍は遅い。
  めちゃくちゃ遅い。
  正直象と同じくらいだと思う。(詳しくは知らないけど)

  そしてそれに伴ってか、体温が低い。
  何度も言うが、人は平均体温36度であり、34度を下回ると死ぬと聞いたことがある。
  唇は少し冷えてる程度だが、額に触れた感覚から言えば、絶対34度無い。

  キスをすると変わる金色の瞳もおかしい。
  その理由はよく分からないが、おそらくエネルギーを吸われてる(イメージ的に)

  更には吸血鬼であると恥じらいもなくむしろドヤ顔で牙を見せながら言う始末。

  しかも今まで伝承にあった世界の謎大きモンスター達みんな、この吸血鬼だというのだ。

  吸血鬼がもし、万が一、本当に実現するのだとしたら、他のサキュバスやら狼男は実在しそうだけども、彼は私をバカにしてはっきり述べたのだ。

  もうこんなの、悪い夢だと思いたい。

  だってあの、私にとっての天敵部長が、こんなわけの分からない相手だったなんて。

  そんなの……

  そこまで一瞬で頭をフル回転させて、なんとか状況整理をしたところで、考えるよりも先に、口がボソッと声を上げた。

「う、嘘だぁ~」

「ほう、俺を目の前にして、まだ信用出来ないと?」

  興味深いとばかりに顎に手を添え、マジマジと私を見つめるこのイケメン・未確認生物ユーマ部長は、目を細めて口角を上げ、悪い笑みを浮かべている。

「し、信用とか、言われても……じ、じゃあ、雪男は!?」

「あー、それは俺だ」

「は!?」

「一時シベリアに住んでたことがあってな。
 吹雪の中裸で歩いてたら勘違いされた」

  私のタメ口に対しては何も触れずに、まるで懐かしむように思い出に浸り出す部長に、おぞましさすら感じ始めた。

  確かに、部長の身長は180センチありそうだし、シベリアの吹雪の中を裸で歩いている人間なんて普通いないだろうから、そんなの見られたら騒ぎになるのも不思議じゃない。

「海外は結構巡ったぞ。
それこそ1世紀ぐらいは観光してたかもな。
アフリカに行った時は動物の方が逃げて……どうした?  顔色が悪いぞ」
「っ!」

  急に頬に手が触れて、ビクッと身を固めた。

  怒るかと思ったが、部長はすぐに手を引いて、少しだけ、ほんの少しだけ、寂しそうに瞳を揺らした。

  その表情に、胸がズキズキと痛んだ。

  あ……ごめんなさい、ごめんなさい……!

  言葉に出ないその声をグッと飲み込んで、部長に向き直る。

  だって、色んなことがあり過ぎて……。
  こんなに楽しそうに喋る部長も、こんなに悲しそうな顔をする部長も……全部、知らない。

「……ホントに、もし本当に、部長が、吸血鬼なら。
その……私の血、吸いたいんですか?
私はその……エサ、ですか?」

  こうして余裕を見せて私に色んな話をするのは、ただの余興で。
  この後、血を吸われて……出血多量で殺されてしまうのかもしれない。

  考えないようにしていたことが、一気に溢れてきて、恐くなった。

  部長は目を細めて、寂しげに、儚げに、私を見つめた。

「そうだ」

  違う、全部冗談だと、言ってくれることを期待していたのに。

  一度引いた手で、私の肩を抑えると、ゆっくりと顔を近づけてくる。

  希望を打ち砕かれて、この怪物から逃げられないことを悟り、ギュッと目を瞑るも、少しひんやりした肌が首筋を掠めようとしているのを感じて、全身に鳥肌が立った。

「刻印の相手なだけあって、いい匂いがする。
その血は、にとって極上の味。
お前の心臓が早く鼓動を刻めば刻むほど、香りは強くなる」

「っ……あ……!」

  心臓が大きく跳ねた。
  彼のひんやりした唇が、首筋に吸い付いたのだ。

  私の人生、ここまでなの……?

  思えば短い人生だった。
  まだろくにお酒も飲めてないし……いや、そもそもお酒を飲んで酔いつぶれなければ、こんなことにはならなかった。
  
  結局は私の自業自得だ。
  じゃあやっぱり、私の運が悪いだけだ。

 これから、私は部長のエサになって……ん?

「え……」

  チュッ……とまたリップ音がして、彼の顔が離れていく。

  ハッとして首筋に手を伸ばすと、少し湿っただけで、痛みは無かった。

  血を吸われた、の?
  こんなに、痛くないものなの?
 
  理解が出来ずに頭の上にハテナマークを飛ばしていると、正面にいた部長の不敵な笑みが目に入った。

「吸うけど、吸ったらもう逃げられないから、吸わないでいてやるよ」

「は……?」

  思わず、またも上司に向けてとは思えない言葉を使ってしまったが、意味が分からなかった。

  この時何故、部長が吸おうとしなかったのか。

  分かっていたら、あんなことにはならなかったのに。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...