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65.図工の才能

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「これだな」
「な、なんで分かるんですか!?」
「いや、ほとんど今と変わらねーし。この唇とかまんまお前だ」
「だ、だって、メガネかけてないし…バレないかと……てか唇って……!」

  長い指でアルバムの写真を指差し、ニヤリと口角を上げて横目で見上げる部長に、思わず口元を手で覆った。

 『誰かの家に来たらこういうのが定番だろ? 』

  とか言い始めたと思ったら、押入れ奥深くのダンボールの中に収めていたはずのアルバム達を1秒程度で運んで来たこの悪魔は、ベッドに寝そべりながら勝手に見始めてしまったのだ。

  写真は小学校の卒業アルバムだったから、慌てて名簿のページ欄を隠したわけだが、「どれが凛か当てられたら言うこと聞けよ」となんとも恐ろしいことを提案して来た為、負けられない戦いだった。

  ……たった今敗北したわけだが。

「お前はかなり個性的だしな。
てかこれ折り紙で何作ってんだ?  イカ?  タコ?」
「ろ、ロケットですっ!
後ろのそれは、ジェットエンジンの火の部分で…その……」
「プッ……ハハ……!
ホントお前のセンスは最高だな」

  思いっきりバカにされて顔が火照る。

  こんなロケットを作ってしまったが為にしばらく“イカ女”とか『おいスルメー!』とかってバカにされたっけ……。

  思わず、頭を抱えた。

  あー……今を去ることながら、思い出すと恥ずかしい黒歴史……!

「そんな眉間に皺寄せてるとすぐババアになるぞ」
「なっ…!」

  ツンと眉間を押されれば目の前で私を覗き込む黒真珠のような瞳と目が合って、息を飲む。

「……凛」
「は、はいっ!!」

  背筋をピンと伸ばすと、部長はククッと笑う。

「じゃ、言うこと聞いてもらおうか」
「っ……」

  女の子座りをしていた私と視線を合わせるかのように、腕の力で身体を起こす部長に、何をされるのかと心臓が恐怖で暴れ始める。

  その間も部長の黒真珠の瞳は私を逃してはくれないのだ。

  頬にひんやりした手のひらが添えられれば、ゾクゾクと鳥肌が立つ。

  確実に今、部長を身体が拒否し、恐がっているはずなのに……。

  私はーー何を待っているのだろう……?

  それに気づいて、また大きく心臓が揺らいだ。

「凛…俺ーー」
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