入れ替わるようになりまして。

天野 奏

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2人に流されて…最低なオレ。

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「失礼します……佐倉は?」
「あら。
こっちのベッドで寝てるわよ?」

声がして、目が覚めた。
あれ、いつの間に眠ったんだろう?
この声は、誰…。

「……純。大丈夫か?」
「あ……健斗……」

いつもよりも小声で、落ち着いた健斗がカーテンを開けて入ってきた。
少し、ホッとした。

身体を起こして、シャツの感触に不思議に思う。
あれ、いつ着替えたっけ?
なんか、顔周りとか、スッキリしてるし……。
ショック受け過ぎて自分で着替えたことも忘れ、た……?

「今、何時……?」
「1限目終わったとこ。
頭打ったんだって?大丈夫か?」
「あ……だ、大丈夫……」

カーテンの向こう側で、電話の音がする。
先生が、電話に出た。

「……泣いてたのか?」
「え……っ?」

健斗の手が、頬に伸びてくる。
途端に、亜貴とここで何をしてたのか思い出して、健斗の手を払ってしまった。

そうだ、ほとんど眠ってたけど、なんとなく覚えてる。
亜貴だ。
亜貴が、来て、身体拭いてくれて……。
着替えさせて、くれてた……。
身体に、触れてた……。

「あっ……ごめん……」

顔を逸らした。
悔しい。
自分が凄く、汚い物のように思えて。

「純……京野と何かあったのか?」
「え……」
「お前が頭打ったのは京野とぶつかったからだって。
京野がお前をここまで運んだって、聞いた。
だから、何かあったのかと……」
「っ……」

まだ電話を続ける先生の声がする。
健斗が心配してくれてる。
亜貴とのことを……。
ダメだ、心配かけちゃ。
オレは、平気だし。

「亜貴とは…大丈夫……問題なんて、無いし……」

声が、身体が震えた。
ヤバい。
そう思った時、顔を上げると、辛そうな顔の健斗がオレを抱き締めた。

「……嘘つくの下手すぎ。
何があった?」

頬から、涙が伝う。

「……ごめん…ごめん……」

言葉が、詰まる。
健斗は徐ろにため息をついた。

「……あのさ、俺は純のこと、かなり親しい友人だと、思ってるよ」
「え?」
「高校に入ってからの付き合いだけど、なんでも話せる相手だし、これからも、そうでありたいと、思ってる」

言葉を選びながら、健斗はゆっくりと口を開いた。

「純は大事なダチだから。
純が本気で悩んで、悲しんでんなら、俺が話聞いてやるから」
「健斗……」
「だから、ちゃんと話せよ、俺に。
俺を…もっと、頼れよ」

健斗の温もりが、温かい……。
健斗って、こんな匂いだったんだ……。


***


「俺を…もっと頼れよ」

思わず、抱き締めてしまって、正直自分が一番驚いている。
腕の中の純は、凄く小さくて、初めて、触れた気がする。
それでもまだ、少し震えている。

こんな純は、見たことない。
そもそも、純は人に弱みを見せない。

初めて会った頃も、あまり人と関わらない感じがした。
壁があるタイプだと思った。
始めは女子といることが多かったけど、あんまり楽しそうではないというか、結構気を遣っていて。
今より髪も短かったし、男っぽい女って感じだった。

購買でパンを買う時、あの大量のパン購入場面を見て俺が爆笑しなければ、もしかしたらこんな風につるんだりもしなかったんじゃないかと思う。

とにかく、純は弱みを見せない。
人に頼ったりしない。
プライドなのかと思ったけど、たぶん違う。
人に迷惑をかけたくないんだ。
心配とか、そういうの、かけたくないんだ。

もっと頼って欲しい。
もっと甘えて欲しい。
純には、心の底から笑っていて欲しい。
いつも、教室でするように。
くだらないことでいいから、笑っていて欲しい。

「ん……!」

ギュッと手に力を入れると、純が声を漏らした。

「あ、ごめん…!」

顔を放すと、純の顔は赤くて、ちょっと…色っぽくて。
胸が、キュッと、熱くなった。

……あれ?

「っ……ご、ごめん。
健斗にこんなこと言われると思ってなかったから…その……」
「あ、いや、その……」
「佐倉さーん?」

今まで電話してた先生がいつの間にか終わったようでカーテンを開けた。
バッと、慌てて離れた。

「もう授業始まるけど、戻れそう?」
「は、はい!
戻ります!!」

純は勢いよく布団を捲ってベッドを降りようとした。

……が。

「あ……」
「あ!」

慌てて純は布団を戻した。

……なんで、パンツ一丁////
純自体、忘れていたようでかなり動揺してる。

「み、見てない!見てないから////」
「あらあら……フフ」

俺が手を振って顔を逸らしていると、先生が横で笑って、出て行く。
俺も出て行こうとすると、純が手を握った。

「健斗……あの、ありがとう」

振り返ると、純は恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、俺を見た。

「健斗が友達で、良かったよ」

ドキ……。

「あ、ああ……」

にこやかに笑う純を、なるべくまっすぐ見て笑った。

「後でちゃんと教えろよ?
約束な」
「お、おう。
どこから話せばいいか、分かんないけど」

純は、最近一層女らしい表情をするようになった。
時折、ドキッとする。

それが、京野亜貴のなのか、なのか。

京野が泣かせたのには、違いないけど。
話を聞いてから、考えよう。


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