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入れ替わり再び!……亜貴の危機

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「はは……仲が良いね、ホント…」

オレに殴られた頬を抑えて、身体を起こす理央先輩。

「先輩……なんでこんな……」
「……僕さ、純ちゃんに色々教えたじゃん?亜貴のこと」
「え?……はい……」

亜貴が怪我をした後、すごく荒れてたって話だ。
でも、なんで急にそんなことを……。

「あれ、僕のことだよ。
僕が、荒れてたの」
「……え?」

「中3の部活が終わって、少し解放的になっててさ。
不良と裏で関わってて。
亜貴に、止められたんだよ。
亜貴は…僕の味方だったから」
「……はっ…」

オレの身体の亜貴は呆れた様に息を吐いた。

「でも、僕はムカついて、不良達使って亜貴を襲わせたの。
亜貴、気付いてたんだ。
僕の仕業だって。
だから手は出さなかった。
でも、不良達が調子に乗って、僕を殴ろうとしたら、亜貴がキレて…一回大事になったんだ。
亜貴は昔からケンカ強かったけど、あそこまで本気出すとは思ってなくて、ビックリした」

理央先輩の方だったんだ。
亜貴が、守ってくれてたんだ。
話の内容は過激なのに、どこかホッとした。

亜貴は、口が悪いけど、ホントは、芯は、友達想いのいい奴だ……。

それが分かって、胸が熱くなった。

「……純。
変わって」
「お、おう……」

突然声をかけられて、亜貴が楽な様に心掛けてしゃがみ、膝に乗せて後ろから抱き締めた。
途端に身体が焼ける様に熱くなって、パッと目を開けた。
上にいる亜貴は先に目を開いたようで、そちらは身体の痛みに顔を歪めていた。

「っ!?
なに、これ……んっ!」

言葉を発しようとしたところで思わずビクッと身体が震え、声が漏れる。

こんなの、なんで亜貴は平気そうだったんだ!?

「あ、戻ったの?面白い!」

理央先輩が楽しそうに笑った。

いやいや、笑えねーっスよ、これ……。
頭がガンガンする。
身体中が性感帯みたいだ。

「っ……純はそれに耐えてろ。
気が散って話も出来ない」

「はぁ…ぁっ…んんっ…」

声を抑えようにも、急にピクッと身体が揺れてしまう。
風邪を引いたみたいに熱が出て、呼吸が乱れるのに、それすら感じてる。

「……我慢しろ」
「が、我慢って……んん……」

服を直されるだけでも、声が漏れてしまう。
下半身が疼いて、熱い。

「……理央。
昨日のあいつらは、お前が雇ったんだよな」
「え……」

理央先輩を見ると、特に悪びれた様子はなく、肩を上げた。

「そう。亜貴が悪者だって、ヤバいやつと関わってるって、純ちゃんに思わせたかった。
僕には、ああいうやり方しか出来なかったから」

やっぱり、あれは先輩の嘘だった……。
そこまでして、なんで……。

「……純に近付いたのも、興味本意だろ?
他の女と違う純を、丸め込めたら面白そうだと思って」

え……。
理央先輩は後ろに手をついて呑気に笑った。

「だって、磨けば光りそうじゃん。
普段男っぽいのに、去年の文化祭の、あの可愛さ見たらねぇ。
現に光ったし。
ホント、ズルイよ亜貴は。
楽しみまで奪って。
でも、亜貴だって、同じでしょ?
別に純ちゃんに興味があったんじゃなくて、僕が気にしてたから」

っ……。
理央先輩は、オレのこと、好きだったわけじゃないのか。
両想いになったわけじゃ、なかったのか。
亜貴も理央先輩も、興味本位……。

胸の奥が痛む。

「違う。
俺はもっと前から純を知ってた」
「……え?」

亜貴を見上げるも、亜貴は理央先輩を見据えたまま目を合わせることはなかった。

「一緒にするな。
ただ…純が理央を好きなことにも、気付いた」

亜貴は、ずっと、気付いてたの?
一体、いつから……?

「最低なことばっかしたと思う。
入れ替わったのをいいことに、純に近付けたのは、正直嬉しかった。
理央には…渡したくなかった」
「で、結局レイプして、無理矢理身体の関係作って、忘れさせないようにしたんだろ?」
「先輩……っ!」

制しようと声を張るも、身体がまた反応してしまって、痛い。

「やってることは僕と変わらないじゃないか。
それがなんで、亜貴なんだ……!?」

えっ……?
それは、嫉妬……?

身体を少し起こして、ドキドキする心臓を抑えるように手を乗せ、理央先輩に向き直った。

「……確かに、亜貴と一緒にいる時間が、長くて……洗脳、かもしれません。
ただ都合いい言葉を繋いでるだけかもしれない、でも…亜貴が笑うと、私も嬉しくて…ケンカも嫌な時もあるけど、楽しくて…っ……亜貴は、ありのままで受け入れてくれてるんだと、思います……。
先輩の気持ちとは、ちょっと…違う……」
「違うって何が!?
僕だって!
亜貴と、純ちゃんと関わってるうちに、気づいて……僕も本気で、純ちゃんが好きなんだって…思ったのに……!
本気で、僕のそばに、いて欲しいのに……なんで……!」
「……先輩……」

今にも泣き出しそうな理央先輩に、胸が痛くなる。
理央先輩が、自分と重なる。
オレと同じだったんだ。
オレが亜貴を好きになったように、一緒にいて、楽しくなって、好きになって……。
理央先輩の、本心なんだ。

しばらく黙っていた亜貴は、オレをゆっくり床に下ろして、静かに立ち上がる。
そして……とんでもないことを口にした。

 「……じゃあ、3Pでもする?」
「「は!?」」
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