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第2章 少年の決め事
嫁候補
しおりを挟む「リヴ、村の外から嫁さん連れて来たんだって?」
「っ!ゴホッ!……は!?」
急に売店の小太りのご婦人がニコニコしながら横にいる私たちを覗き見た。
思わずムセって、せっかくのパンを吐き出しそうになる。
それは、このタイミングで言うことなのか!?
というか、嫁さんって…まさか私のことではないよな!?
「え?」
少年を見ると、指についたパンくずを舐めながら、間の抜けた、特に何とも思った様子もなく返事を返す。
「その子じゃないのかい?
金髪で色白、碧眼の美人さんだって聞いたねぇ」
金髪で色白、碧眼……それは、私ですが。
私のいた地方ではだいたいが同じような感じで、この特徴を見慣れない地方の人間からはよく注目を集めるが……。
美人とは……!
誰がそんな風に思ったのだろうか?
チラッと目を向けると、少年は未だに横柄な態度を取って猫が毛づくろいするかのようにペロペロと指を舐めている。
「美人ねぇ…」
「ムッ……!」
ただそう呟く彼に、思わず口を結んだ。
いや、思ったことは無いけど、なんだか、ムカつく。
「まぁさ、リヴもいい年頃なんだし、そろそろ所帯持っても良いと思うよ?
お前さん1人でいると、何かと危なっかしーからねぇ。
誰かに管理してもらわんと」
「…………」
少年は特に何も答えない。
一体、何を考えているのだろうか?
こんな得体の知れない男、私は願い下げだが……相手にする女はいるのだろうか?
ふと視線がこちらに流れてきて、私がまた彼を見つめていたことに気付いて、ハッとした。
「…………」
「……な、なんだ!?」
ジーッと目を合わせたまま、何も言ってこない少年に痺れを切らした。
「……あんた、名前は?」
「っ……シュライカ・ディートだ」
何を今更……!
というか、今まで私に対して微塵も興味が無かったことがよく分かって、また腹が立つ。
名乗る必要すら感じなかったが、つい不機嫌に口走った。
「ふーん…長いからシュラでいい?」
「どうとでも呼べばいいだろ」
まったく、早速略すのか、と思いつつ、子供の頃はよくそう呼ばれていたし、別に違和感は無い。
「じゃあシュラで。
俺はリヴ・ラインド。
よろしく」
スッと手を差し出される。
握手しろと言うことか。
……さっきまで舐めていたその手を。
ため息を付きつつ、最後の一口を口に頬張って喉を通した後、仕方なくその手を握った。
「……よろしく、リヴ」
少年リヴはほんの少し口角を上げた。
それは、笑ったのか?
「あらあら、式はいつかしらねぇ~」
………はっ!?
横から顔を出してご婦人はニヤニヤしていた。
え、この握手はそういう意味があったのか!?
いや、そんな規約はどこにも無いし、まず結婚の告白とは程遠かったが……!
「ち、違います!私は別に……!」
リヴは特に否定も肯定もせず、慌てる私を尻目に握手したままの手を引いた。
「行こ」
「ど、どこに……!」
「あんたの討伐対象」
ハッとして、顔を上げる。
何故そのことを……!
「会わせてやるよ」
意味深な単語だけを告げて、リヴは歩き出す。
思わず息を飲んだ。
この言葉を、鵜呑みにしていいのだろうか?
いや、疑うよりも、百聞は一見に如かずだ。
この目で見て、判断しよう。
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