【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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本編【表】

第17話-拡散

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シェーヌは二通の手紙を取り出した。

一通目はアルテア王家から貴族家各位に宛てられた物だ。

セリアはまさかと息を飲み、恐る恐る封を開く。

中に書かれた内容を要約すると、


・王太子妃になる筈だったハイネ・ラグライア公女との婚約をリフェリオ王太子が破棄した事。


・ハイネに代わりセリア・フェレネスを王太子妃に任命しセリアがこれに了承した事。


・2人の結婚式を1ヶ月後に執り行う事。


この3つの要点をソルガデス王家の家紋入りでアルテア中の貴族家に送り付けている。

王家の家紋入りと言う事はクランツ王も公認と言う事だ。

王太子はどんな魔法を使ったのか…とセリアは疑問に思い血の気が引いた。

セリアの意志はお構い無しにもう婚姻に了承した体でアルテア中に情報を拡散したのだ。


クランツ王は誰もが知る堅物でまがった事は許さない人物だ。そんな王をどう説き伏せて納得させたのかセリアには分からない。


『今朝フェレネス家に送られてきたんだ。驚くのはまだ早い。こっちのも見てみろよ』


シェーヌはもう一通の手紙をセリアに手渡す。


これ以上、何を驚く事があるのだろうと思うセリアだった。


差出人はサイン侯爵家
内容は凄惨足るハイネに対する誹謗中傷だ。


・学生時代は公爵家の権威で下位貴族を虐げ、それでも従わない子息・子女らには配下の人間を使って国教に背く様な卑劣な加害を加えた性悪である。

・王宮入りしてからも、従者達を虐げ暴力沙汰も日常であった。

・正式な婚姻前にも関わらず王太子妃の地位を確固たる物にすべく殿下に夜這いを仕掛けるも、殿下は毅然と誘惑を退けた。その誘惑は意志の弱い男性ならば容易く靡いてしまう程過激な物で王太子妃には到底不向きな淫売な女性であった。


サイン侯爵家はサイン家が始まって以降、代々ラグライア公爵家に仕えていた一族だ。

ラグライア家の領地は広大故、飢饉の被害が一番大きく、近代では力を失った公爵家を見限りサイン侯爵家は当代で王太子の家臣に転身した経歴を持つ。


幾ら主君が変わったとは言え、元々仕えていた公爵家の子女に対して、よくここまでこき下ろせる物だ。


嘘か真かは定かでないが、サイン家の書状にはハイネ嬢がどれだけ酷い人間で、王太子の婚約破棄は正当である主張する内容だった。


それに加え新しく王太子妃に迎えるセリアの事も記されていた。


学園時代は非常に優秀な成績を残す才色兼備な女性であり、アルテアの女性の憧れだの。

創世神アルテルシオンに祝福された聖女だの。


ある事 ない事 本人が見ていて背中が痒くなる様な程大袈裟なセリアを賞賛する内容が…

セリアが王太子妃としてどれだけ適しているかを書き連ねられていた。



『そっちの方は貴族家だけでなく各町村の長達にも拡散されていた。これを読んだら…誰も王太子の婚約破棄に異論を唱えないだろうな』


『信じられませんわ…』


セリアの顔は蒼白していた。
もはや比喩でもなんでも無く、王太子が狂人であると理解したからだ。




『さて…この手紙を読んで大まかな内容は理解したが……セリア?昨日王宮で何があったんだ?』


セリアは昨日の出来事全てを説明した。


王太子の唐突な王太子妃任命
横暴な物言い
ハイネ嬢の乱入・流血沙汰
王太子の二面性
王宮勤めの者たちの異様な歓迎


全てを説明し終えるとシェーヌはため息を吐いて言った。


『じゃあこの手紙に書いてある事は嘘なんだな?』

『嘘の中に幾つか真実を織り交ぜて手紙には書かれております…しかし私が王太子妃の任命を承知する筈がないでしょう!気持ち悪い!あんな人嫌いに決まってます!』


セリアは怒りの感情を表した。
これは王太子に見せた様な怒った振りではない。


信頼出来る数少ない人間に見せるセリアの素の姿だ。
そんなセリアの怒った顔を見てシェーヌは大声で笑い始めた。


『何がおかしいんです!!私はもう怒りで目を回しそうです!!こんな出鱈目をばらまかれて!!』


セリアはファルカシオン邸の庭に積もった雪で雪玉を作りシェーヌに投げ付けた。


『悪かった悪かった!勘弁…!いやぁ…お前と久しぶりに意見が一致したのが嬉しくてよ!』

『意見が一致…?』

『俺もあの王太子 大っ嫌いだからよ!』

『そうなんですか?』


シェーヌの意外な言葉にセリアは目を丸くする。
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