【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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本編【表】

第16話-シェーヌ・フェレネス

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家族との団欒はセリアにとってかけがえのない楽しい時間であったが、楽しい時はあっという間に過ぎる物で気が付けば夕日が陰り始める時間となる。

別れの時を知らせるのは、セリア達のいる客間の扉を開き入って来た男性によって告げられる。


『レベッカ。待たせてすまなかったね!』

『アーク!』


アークと呼ばれる男性が姿を表すと先程まで大人しく椅子に座りしおらしく繕っていたレベッカが立ち上がり目を輝かせる。


アークレイ・ファルカシオン。


ライアンの弟であり、レベッカの婚約者である男性だ。


アークレイが一族の人間や家臣団の人間に帰郷の挨拶回りをしている間、レベッカ達がファルカシオン邸で待ち。

最後にアークレイと共にフェレネス家に挨拶に向かうと言うスケジュールだった様だ。


即ちアークレイが来たと言う事はフェレネス家に帰る時間と言う事だ。


『私も一緒に同行しなくて本当によかったのか?ほら…私も一応…これからファルカシオン家の一族に加わる訳だし…』


レベッカはモジモジとはしながらも、アークレイの公務を気を配っている事にセリアは少し驚く。


マイペースで、社交の場が苦手な妹の成長ぶりに驚いているのだ。


『大して意味のない社交辞令の場だよ。そんな物より久々に会う家族との団欒の方が大事じゃないか…でもこれから先、重要な社交の場ではレベッカにも支えて貰いたい。頼りにしているよレベッカ』


アークレイはレベッカを気遣うばかりか、彼女の"婚約者の為に力になりたい"と言う献身を汲んだ言葉を掛けた。

きっと…レベッカが

"つまらない社交辞令の場でも呼んで貰えないのは自分が頼りないからでは?"と言う不安を抱かない様にする為の優しい配慮だろう。


現にレベッカは嬉しそうに微笑んでアークレイの目を見据え頷いている。


負けず嫌いで気が強いレベッカが…ここまで穏やかな表情を見せるのはアークレイの心優しい人間性が故だろう。


『おほん。もしもし?お邪魔でしたでしょうか?』


セリアは2人のそんな惚気けた雰囲気に耐え兼ねて口を挟んだ。


すると2人は気恥しそうに、互いに目を逸らしてアタフタとする。


『し、失礼しました…お久しぶりです 義姉上…シェーヌ様もご無沙汰しております。』


そんな慌てた素振りのアークレイを見てセリアも思わず可愛いと思ってしまい微笑む。

『兄上はまた鍛錬でしょうか?お変わりございませんか?』

『はい。相変わらずですよ』


セリアがそう言って苦笑するとアークレイも苦笑した。

彼は表情も感受性も豊かな男で見ていて和やかになるムードメーカー気質だ。


なんてお堅いね アークレイ!気軽に兄貴でいいんだぜ?なんならお兄ちゃんでも可だ!』

『あっ!じゃあにぃーにがいい!』

『アークレイ!にぃーにって呼びなよ~!』


ラーシャとマトラもシェーヌの悪ふざけに便乗する。


『よしアークレイ!淑女2人からのリクエストだ!今後俺を呼ぶ時は"にぃーにぃ"と呼ぶ様に"おにぃたま"でも可だぞ!』


『そんな!?恐れ多いですよ…シェーヌ様は僕の憧れで…父上と同じ位尊敬するお方なんですから…』

『なっ…なんかそこまで持ち上げられると気恥しいぞ…』

『持ち上げて等おりません!シェーヌ様の武勇はアルテア中に轟いております!ファルカシオンの兵達も皆 シェーヌ様の剣さばきを見てアルテア無類の武者と…』

『だぁぁ!!もうっ!!この口の上手い奴め!!煽てたって何も出やしねーぞバカ野郎!!』


しかし口調とは裏腹にシェーヌの口元が僅かに綻んでいる事をセリアは見逃さなかった。


-兄上ったら…すぐ調子に乗るんだから


しかしアークレイの言葉はおべっかやご機嫌取りではない。

シェーヌは性格とは裏腹に剣技の腕は一級なのだ。
アルテアの熟練兵は一人で並の異国の兵士5人分と等価とされる力を持つが

シェーヌは一人でそんなアルテア兵10人分と等価の戦力と評されている。

シェーヌの初陣は13歳の頃で、子供ながらに前線で兵を率いてサラバドの盗賊団を撃滅している。


15歳の頃に王政に反発の意を唱えた武家の剣聖と称された達人を相手に王邸で御前試合を催し

一騎打ちでこれに勝利している。

他にも例をあげればキリがないが…一見適当に見えるシェーヌだが…剣を握らせればアルテア一番の使い手として名が上がる程の実力者だ。

シェーヌに憧れてフェレネス家の門を叩く若者も少なくない。


『確かに兄上は口さえ開かなければ立派に見えますわね。でも1年も一緒に暮らせば憧れは消え去りますよ』

浮かれているシェーヌを制す為、セリアが口を挟む。
今のままで十分良い男であるアークレイがシェーヌに毒されて悪影響を受けたらレベッカが可哀想だ。


『がはは!まぁそー言うこった!分かったらさっさとウチの頑固親父殿に2人仲良くイビられてくるが良いさ!!』


シェーヌはシッシッ!と言わんばかりにレベッカとアークレイを追いやる。


双子達はセリアとの別れを惜しんだが、また近い内に再会する事を約束して馬車に押し込んだ。


セリアとシェーヌはレベッカ達を乗せた馬車を見送るとシェーヌは途端に真剣な表情に変わる。


『さて本題だが…セリア お前に見せたいものがある。』


シェーヌは懐から二通の手紙を取り出した。
彼がセリアに会いに来た本当の目的はこれからだった。
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