【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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本編【表】

第15話-家族

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「セリア様。フェレネス家の御家族の方々が面会に参られました。」


時刻は昼時を少し過ぎた頃
支出管理の書類仕事も午前には済ませて読書をしていたセリアにファルカシオン邸の執事が家族の来訪を告げる。


この面会は月に一度必ず行われていた。
最初は週に1回の面会が取り決められていたが、セリアがそこまでする必要は無いと父に強く提言し月に1回の面会まで減らした。


それではまるで、フェレネス家がファルカシオン家を疑っている様で失礼にあたると思ったからだ。

だから手紙でやり取りはマメに行っていたが、身内の人間に会うのは1ヶ月ぶりとなる。


家族に会いたくない訳じゃない。
寧ろ友人の少ないセリアにとって、家族は数少ない絆を感じさせてくれる者だからこの月一度の面会日はセリアにとって嬉しい日なのだ。


しかも普段は兄だけが様子を伺いにやってくるのに対して今日は3人の妹達も面会にやってくる。


セリアは少しだけ明るい気持ちを取り戻して、家族達が待つ応接室の扉を開ける。



『いよぉ~!セリア久しぶりだなぁ~!2年振りくらいか?』

『いえ1ヶ月ぶりです。兄上。』

『ちぇ、相変わらずセリアはノリが悪いな!』

『ノって欲しいなら面白い事を仰って下さいませ。兄上』

『ぐっ…次は努力するよ』


一番最初にセリアに陽気でくだらない冗談を飛ばして来たのは兄のシェーヌ・フェレネス。

フェレネス家の次期当主して父にもっともプレッシャーを掛けられ厳しく育てられた筈なのに、どう言う訳がひょうきんでお調子者な性格の人物だ。


『姉上!お久しぶりでございます!!』

いきなり力強く抱擁して来たのは次女のレベッカ・フェレネス。

セリアと違って体が丈夫で昔からお転婆な所があり、兵士たちに紛れて剣術指南の稽古に参加する等、男勝りな所があるけど、純心で真っ直ぐな性格でアルテアの女性の模範の様な強い心を持つ妹だ。


セリアをとても慕っている。


『レベッカ久しぶりですね。しかし…人前での抱擁ははしたないですよ?』


『はは…ごめんなさい 姉上』


『ふふ、でも本当に久しぶりですね。最後に会ったのはあなたが一般の寄宿学校に入学する前だから1年程ですかね?』


レベッカはセリアやライアンが卒業した王立学園ではなく、一般の平民の子供が通う寮制の学校に入学し現在も在学中の身だ。

一般の学生達と共に学び、一般市民の暮らしをして社会を学びたいと強く父に提言して入学が許された。


一年見なかった間にレベッカは背も髪もかなり伸びて、しっかりと大人の女性らしく成長していた。

服装も、動き難いドレスやコルセットは苦手と言って乗馬用のキュロットでほっつき歩いて父に咎められていたのに…しっかりと余所行きの正装をしている。


たった一年の間に本当に見違える程、レベッカは綺麗になっていた。


-やっぱりがいると女は変わるのね


『聞きましたよレベッカ。アークレイさんとの婚約おめでとう!』


『…だ、誰から聞いたんです…?、姉上に直接報告したくて同行したのに…』


『あなたの事はなんだって知っているのですよ』


『さ、流石姉上…』


レベッカは今年15歳となり、アルテアの法律上婚約可能となった事で、ファルカシオン家の次男アークレイ・ファルカシオンの正式な婚約者となった。


二人の婚約もまたフェレネス家とファルカシオン家の政略結婚の一つだった。


幼少の頃、病弱だったセリアにもしもの事があった場合、レベッカがファルカシオン家に嫁ぐ事になっていた。


それほど迄に当時のセリアの体の弱さは深刻であった。

そのもしもの時の為に、両家は歳が同じだったレベッカとアークレイに許嫁の関係を結び幼少の頃から度々顔合わせを繰り返していたのだ。


二人の相性はとても良く、政略結婚の関係とは思えないほど仲睦まじかった。

レベッカから送られてくる手紙には近況報告を除けばアークレイとの惚気話ばかりで、二人の関係は損得勘定の政略を越えた絆がある事が文章だけでも見て取れた。

レベッカが王立学園ではなく一般の学校に行きたがった理由も、本当はアークレイが一般学校への入学を強く望んだことが理由だろう。


アークレイはライアンとは性格が全く事なり、武家の息子とは思えない程、穏やかで繊細な心の持ち主だ。


口下手だけど自分の感情に素直で行動的なレベッカと心優しく人の感情に敏感なアークレイは…


まるでお互いの得意不得意を補い合っている様な関係でセリアからすれば妹のレベッカを時々羨む事すらある程のまさにベストカップルだ。


『実はこの後、本家にも挨拶に帰るんです。』


『あらあら…それは大変ですね。"あの方"に挨拶ともなると…』


セリアは此処に珍しく皮肉めいた口振りで返す。
"あの方"とはフェレネス家の当主であり、セリア達の父親を指す。


セリアとフェレネス伯の関係はお世辞にも良好とは言えない。


セリアにとって父親とは、厳格を通り越して恐怖の存在でしかなかった。


大陸最強とまで恐れられた聖騎士団の騎馬隊を率いるフェレネス家の当主ともなれば、しきたりや家の誇りを重んじる強さは尋常ではない。

セリアもレベッカも…他家に嫁がせる為、フェレネス家の恥にならない様にと物心付く頃からそれは厳しく育てられた。

教養や作法は王族の王妃教育と大差ない程複雑で厳しく

歩き方から喋り方。
食べるものまで全て管理され


期待に添わない振る舞いをすれば恐ろしい罰が待っていた。特に長女であったセリアは一番厳しく躾られ父親に対して良い思い出等一つもなかった。


セリアにとって父親とは、自分に苦しみを与える存在でしかなく、そんな人間に良い感情を抱けるはずも無いのだった。



『セリア~~俺も親父殿は今でもおっかねぇけどさ、昔よりかはだいぶマシになったんだぞ?なぁ、レベッカ?』


『確かに…昔と比べたら、時折笑顔も見せる様になったし…』


『あらあら?遂にボケたんでしょうかね?』


セリアの毒舌は止まらない。
そんなセリアに2人は苦笑いしていると。


『ネェーネ!ネェーネ!ラーシャの髪むすむす結んでしてぇー!』


『ネェーネ!マトラの髪もむすむすしてぇー!』


会話に割って入りセリアの脚にしがみついて来たのは5歳の双子の妹 ラーシャとマトラだ。

セリア達の母はこの双子を産み落とすと同時に入れ替わる様に亡くなってしまい、言わば母親の忘れ形見の様なもの。

二人はセリアがファルカシオン家に住み込む1年前まで、まるでセリアを母親であるかの様にベッタリ甘えていた程懐かれており、セリアがファルカシオン家に旅立つ日には阿鼻叫喚の大号泣で、シェーヌもレベッカも、二人の扱いに長けた侍女すらも手が付けられない状況でセリアの服にしがみつき、双子が泣き疲れて眠った隙に別れを告げなければならない程の有様だった。

この双子の妹達に出会うのも1年振りだ。

5歳ともなればフェレネス家の厳しい淑女教育も始まっている筈なのに、双子達は久しぶりのセリアの再会を子供らしく感情のままに振る舞い

ラーシャはセリアの手を握りはしゃぎ飛び回り
マトラはセリアの周りをグルグルと走り回っている。


この場に父親がいたら、まず間違いなく小突かれていただろう。


『2人共、姉上は午前のお仕事でお疲れなんだから無理を言っては…髪なら私が結んであげるからおいで』

『やーー!!ネェーネに結んで貰うー!!』

『やーー!!だってレベッカネェーネ下手なんだもん!!』

『…そ、そう言わずに…』


『『やーーー!!!』』


レベッカが双子達を窘めるが、双子らしく同時に息を合わせて拒絶されてしまう。

シェーヌは堪らず吹き出し笑い声をあげる。


『それじゃあ私のお膝にいらっしゃい。順番にね!』


セリアは苦笑いしながらも、無邪気な二人に優しく声をかける。


『マトラが先ー!マトラが先ー!』

『ずるいよマトラ!ラーシャが先ぃ!!』

『焦らなくても2人共結んであげますからね。どんな結び方がいいかしら?』

『んとねぇ!ネェーネと同じやつがいいー!』

『ラーシャも!ラーシャもネェーネ同じやつー!』


セリアは家族との一時を心から楽しんだ。

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