【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

文字の大きさ
33 / 81
本編【表】

第32話-執着

しおりを挟む
-セリア視点-


セリアはコンスタンスに跨りライアンを追う
ライアンは逃げる様にドゴンの速力を上げて駆ける。


しかしセリアの馬術とコンスタンスの脚力がやはりそれを許さない。


ファルカシオン邸はあっという間に見えなくなり
オオアマナの花畑を突風の様な速さで通り過ぎる二人、花達はその突風で揺れる。


ドゴンもコンスタンスも戦場を駆ける為の調教を受けた軍馬だが…ドゴンは老馬でコンスタンスは若い。


スタミナと騎手の腕前が重なりライアンとの距離がどんどん縮んで行く。


体力の限界を迎えたドゴンは速力を落とし遂に歩き出してしまう。


『そんなに飛ばしたらドゴンの心臓が飛び出してしまいますよ?』


『・・・』


セリアの言葉に無言で返すライアン。
彼女を振り切って逃げる事は諦め常歩のスピードまで落とす。


-やはり…私を無視する気ですか


-でも私だって引き下がりませんよ…ライアン


セリアは昨日の事は無かったかの様に日常の会話を振った。


"今日はまだ暖かい方ですね"


"でも…夜になるとまた雪が降るかも知れませんね"


"明日もこんな天気がいいです"



セリアが話題を振っても…ライアンは一向に無言を貫いた。


-ダメだダメだ…私の話はつまらな過ぎる…


セリアも普段口数が少ない事から自分から人に積極的に話し掛ける事が少なく月並みな天気の話題しか出て来ない。


これでは普段喋らないセリアが昨日の事を気にして無理に話をしようとしているのがバレバレだ。


-遠回しな会話じゃダメね...


セリアは意を決して思いの内を口にする。


『私が嫌いですか?』


『.........っ!』


変わらず口は閉ざしたままだがライアンの体がピクリと反応した。


『どうなんです?』


『君は...どう思われてると思ってる?』


漸く口を開いたライアンだが、その言葉は解答ではなく、質問に対する質問であった。


『君が心で感じている事...それが俺の答えだ。』


"君の想像している感情が俺の答えだ"と...
ライアンはこの期に及んで自分の心は明かさない


セリアは小さくため息を吐いて目を伏せた。


ライアンの心を暴くには..."いつものセリア"ではダメなのだと覚悟を決めた。


幼い頃から父の躾により封じ込めていたを解き放つ覚悟だ。


手網を握り締める手に力を込めたセリアはその瞳を大きく見開くと、コンスタンスを操りドゴンの前に横入りして進路を塞ぐ。


『ブルゥ~~フ!!!!』


突然進路を塞がれたドゴンは急停止すべく上体を跳ね上げて二本足で跳ね馬状態になる。


当然 ドゴンに乗っていたライアンは身を雪の中に放り出されて落馬する。


『な、何をするんだセリア!?』


突然の事で流石にライアンの無表情ポーカーフェイスは崩れ驚いた表情になる。


『ライアン...質問を質問で返すのは無礼です。答えになってませんもの。』


セリアはコンスタンスから降り、雪に埋もれるライアンの前で屈み語りかける。


『何故戻って来たんだ...』


『まだ昨日の返答を頂いてませんから。』


『返答ならした...それ以上伝える事はない。』



ライアンの言う返答とは、"君の幸せを願っている"と言う言葉だ。

しかしそんな言葉は答えになっていない。



『あんなんじゃ抽象的過ぎて伝わりません。』


『賢い君なら分かるだろう。』


『分かりません。』


『君と結婚する必要はもう無い。フェレネス家に帰りなさい...』


『返答次第ではそうしても構いません。』


『どう言ったら納得する?』


ライアンの問いに少し間を置いてから口を開くセリア。


『"君が嫌いだセリア" 』


『.........っ!』


『"君が側にいるだけで苦痛だから消えて欲しい"』


『この言葉を...私の目を見て言って下さい。』


『.........』


雪の上に座り込んだままのライアンはセリアの足元にジッと目をやる。

暫くして漸く口を開き


『君が俺の側に居るのは苦痛だ...』


絞り出す様な声で呟いた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

婚約破棄までの七日間

たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!  ※少しだけ内容を変更いたしました!! ※他サイト様でも掲載始めました!

婚約者が番を見つけました

梨花
恋愛
 婚約者とのピクニックに出かけた主人公。でも、そこで婚約者が番を見つけて…………  2019年07月24日恋愛で38位になりました(*´▽`*)

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】がり勉地味眼鏡はお呼びじゃない!と好きな人が婚約破棄されたので私が貰いますわね!

水月 潮
恋愛
アドリアン・メラールはメラール公爵家の長男で一つ下の王女ユージェニーと婚約している。 アドリアンは学園では”がり勉地味眼鏡”というあだ名で有名である。 しかし、学園のダンスパーティーでアドリアンはユージェニーに「がり勉地味眼鏡なんてお呼びじゃないわ!」と婚約破棄される。 その上彼女はクレメント・グラミリアン男爵家令息という美少年と新たに婚約を結ぶと宣言する。 フローレンス・アンベール侯爵令嬢はその光景の目撃者の一人だ。 フローレンスは密かにアドリアンを慕っており、王女の婚約者だから無理と諦めていた。 フローレンスは諸事情あって今は婚約者はおらず、親からも政略結婚を強いられていない。 王女様、ありがとうございます! 彼は私が貰いますので! これを好機ととらえたフローレンスはアドリアンを捕まえる。 ※設定は緩いです。物語としてお楽しみください *HOTランキング1位(2021.9.20) 読者の皆様に感謝*.*

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

処理中です...