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本編【表】
第41話-迷い無き瞳
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ファルカシオン邸に戻ると。
敷地内の馬繋場に見慣れた馬が1頭繋がれていた。
シェーヌの愛馬であるボンゴレだ。
シェーヌの好物であるボンゴレから名前を付けられた赤茶色の色毛に白い鬣の大柄な雄馬は性格もまたシェーヌに似てお調子者な性格でセリアを見るなりステップを踏む様に体を動かし存在をアピールする。
"久しぶりだな。挨拶は?"と目で訴えて居るのが分かるセリアはボンゴレの背を撫でる。
『お久しぶりですねボンゴレ。貴方が此処に居ると言う事は兄上が来ているのですね。』
セリアは昨晩、フェレネス家を出た事は侍女のベルと御者の者しか知らない。
故に朝起きて見たら寝室がもぬけの殻の状態を見たシェーヌがすっとんで追いかけて来たのだろう。
彼は適当でちゃらんぽらんなお調子者に見えて家族の事となると後先考えずに行動が早い。
しかしその後先を考えない所がまた恐ろしい。
妹のレベッカがまだ中等科に籍を置いていた時代、他家の令息・令嬢であるクラスメイトに卑怯な嫌がらせをされたと聞いた時も、誰よりも先に行動し、そのクラスメイト一人一人に落とし前を付けに行った程だ。
きっと…昔、私がウラドの山に置き去りにされた時に何も行動出来なかった事を悔いての今なのだろう
セリアはそう思いシェーヌの行動の速さに関心しつつも、不安を覚えた。
昨日までのライアンに対するシェーヌの態度。
本心を明かすに明かせなかったライアンに業を煮やしシェーヌはセリアをフェレネス家に連れ帰った。
もしその熱が…一晩たっても変わらぬままだと厄介だ。
先程も言った様にシェーヌは、家族の有事とあらば後先を考えない。
もし仮にシェーヌがまだライアンに対して怒りの感情があるのなら…最悪流血沙汰になる可能性もある。
あぁ見えて彼は必要と感じれば暴力も辞さないタイプだ。
特に家族を貶められれば誰であっても鉄拳を振るう。
伊達にアルテア随一の剣士と渾名されている訳では無く、シェーヌは信念の為ならどんな行動を起こすか分からない狂犬でもあるのだ。
『ライアン…兄上の対処は私に…』
『いや…シェーヌには俺が言って聞かせる。』
ライアンはセリアの言葉を遮って言った。
これだけは譲る訳には行かないと言う信念が伺えた。
『今までの俺の態度を見ていれば兄として俺に腹を立てるのも当然だ。だから俺がケジメを付けなければならない。』
ライアンの真っ直ぐな瞳を見てセリアは頷く
『分かりました。兄上の事はお任せします。』
『俺が奴にぶっ飛ばされても止めないでくれセリア。俺が今まで君にして来た態度はそれ位不誠実だった。だがセリアを諦める気はもうない。奴の気が済むまで殴らせて俺はそれに耐えて見せる。幸い打たれ強さにだけは自信があるんだ。』
ライアンは冗談を言う様に言う。
セリアも小さく微笑む。
『昨日、兄上に無理やり連れ帰られそうになった時、咄嗟に兄上を殴ってしまいました。ライアンに手を出したらまた私が兄上を殴りますから』
セリアも冗談を言う様に返す。
ライアンは一瞬"まさかセリアが?"と驚きの表情を見せたが、小さく笑みを零すと二人は何時しか手を取り合って邸内に向かって行った。
-----------------
邸内に入ると何処からとも分からぬ程大きな笑い声が邸内に響いていた。
笑い声の出処に当たりを付けて客間の戸を開くとシェーヌを中心にアレクシアやファルカシオン家に仕える従者達は笑いの坩堝にハマっていた。
シェーヌが…アルテアの要人達のモノマネをして、果ては誇張した顔真似や声真似までしておちゃらけて居るのだ。
何故こんな事になったのか…おおまかな検討は付く。
恐らくセリア達の出発と入れ違いになったシェーヌをアレクシアが応対した。
アレクシアはお喋り好きで…ファルカシオン家と交易関係にある家との苦労話や愚痴をシェーヌに零したのだろう。
退屈な話を嫌うシェーヌはアレクシアが口にした交易相手の貴族を茶化し始める。
笑い上戸なアレクシアが笑い始めるとシェーヌの悪ふざけのスイッチが入り茶化しはモノマネに変わる。
普段なら客人の会話に笑う等と言う不躾は許されない従者達は最初は堪えて居たのだろうが、そうなるとシェーヌは従者達も笑わせようと躍起になりモノマネに誇張が入り始める。
癖のある喋り方や口癖を3割増程で演じて真似するシェーヌに一人また一人と堪え切れず吹き出す。
気が付けば普段しっかり者のメイドも、魂を悪魔に吸われたと噂される程無機質で無表情の執事長も腹を抱えて笑いの渦に飲まれていた。
彼らがシェーヌのモノマネの対象だった本人が来客した時、笑いを抑えられるのか心配になる程、目に涙を溜めて大爆笑していた。
アレクシアに至ってはソファから崩れ落ちシェーヌにもう辞める様に懇願していた。
辞めろと請われる益々シェーヌの悪戯心に火が付き、モノマネ相手の声真似と喋り方の癖を模倣しながら、その要人の口癖を歌にして歌い出した所で漸くセリア達とシェーヌが目が合った。
『あ……おほん。』
気まずそうに咳払いをするシェーヌ。
空気が変わった事を察し得た従者達は各々持ち場に帰って行った。
アレクシアも膝を付いて崩れ落ちていたドレスの丈を手で払って息を整えると再びソファに腰掛けた。
『お帰りなさい。セリアちゃん。ライアン。その…シェーヌから全部聞いたわ。昨日の事。』
アレクシアがシェーヌから聞いた昨日の出来事を口にしようとした時、シェーヌはアレクシアの前に手をやって制するとまじまじと2人の姿に目をやった。
2人の繋がれた手を見るシェーヌは
『いよぉ~!ご両人!朝から見回りご苦労さん!』
いつもの様に軽快な語調で挨拶をした。
セリアもライアンも呆気に取られた。
あれほど覚悟を決めて来たのに…シェーヌのそのあまりに飄々とした態度に。
『シェーヌ。あのな…』
ライアンが口を開こうとした。今までのセリアに対する不義理な態度や、それを見せつけられた兄としてのシェーヌの怒りに対する謝罪を告げようと。
今までライバル視していたシェーヌに頭を下げる事に抵抗がない訳ではないが、それがこれからの変化を示す宣言や、誠意に近い物になるならと…
しかし再びシェーヌは手をライアンの前にやり遮る。
『言葉は要らねぇよ。どんな大層な言葉よりも俺は行動で示す奴を信じる』
『何があったかは聞かねぇ。お前のその迷いのない眼を見てもう大丈夫だって確信したからな!』
『妹を頼むぜ…!相棒!』
『あ…あぁ…』
"なんと…清々しい男だろう"
ライアンはシェーヌの人間の深さに驚かされた。
普通の人間なら、昨日あれだけの醜態を見せた相手にすんなりと妹を任せられたりはしない。
つまらない人間ならば話も聞かず喚き立てるだろう。
しかしシェーヌは…ライアンの眼が変わった事を見抜いていた。
人間の本質を計る野性的な勘とでも言うのだろうか
熟く彼の異端振りには驚かされる。
だが…ライアンも怖気ている場合では無いのだ。
これから先、最愛の女性であるセリアを守る為ならば王太子も…シェーヌも…神でさえも凌げる様な者にならなければ…
ライアンは決意を込めて頷いて見せると。
『任せろ』
そう端的に返した。
彼らの間柄に長い言葉は必要ない。
『もし…またあんな醜態をセリアに見せたら顔面パンチだからな』
コソッと笑いながら耳打ちするシェーヌ。
『二度と無様は晒さないさ』
その言葉に迷い無く返すライアン。
『では参ろうか!あのボンクラ王太子の鼻柱をへし折りに!』
シェーヌが胸を叩いて言う。
『本当に殴ったりしないで下さいよ兄上』
セリアが釘を刺す。
『あらセリアちゃん。あぁ言う気位の高い男は鼻の骨の2~3本へし折れてた方が謙虚になるかも知れないわよ?』
アレクシアまでシェーヌの悪ノリに便乗する。
『場合によっては…血が流れる事も覚悟すべきだな。』
ライアンまでも…
『王太子が乱心したら直近の兵士共の相手は任せろ。ライアンは王太子にだけ集中しておけ』
『心得えた』
どんどん話が物騒な方向に進む。
『ちょっと待って下さい!!本当に今から王宮に殴り込みにでも行く気ですか!?』
セリアの慌てふためいた姿を見て一同は再び笑いに包まれた。
敷地内の馬繋場に見慣れた馬が1頭繋がれていた。
シェーヌの愛馬であるボンゴレだ。
シェーヌの好物であるボンゴレから名前を付けられた赤茶色の色毛に白い鬣の大柄な雄馬は性格もまたシェーヌに似てお調子者な性格でセリアを見るなりステップを踏む様に体を動かし存在をアピールする。
"久しぶりだな。挨拶は?"と目で訴えて居るのが分かるセリアはボンゴレの背を撫でる。
『お久しぶりですねボンゴレ。貴方が此処に居ると言う事は兄上が来ているのですね。』
セリアは昨晩、フェレネス家を出た事は侍女のベルと御者の者しか知らない。
故に朝起きて見たら寝室がもぬけの殻の状態を見たシェーヌがすっとんで追いかけて来たのだろう。
彼は適当でちゃらんぽらんなお調子者に見えて家族の事となると後先考えずに行動が早い。
しかしその後先を考えない所がまた恐ろしい。
妹のレベッカがまだ中等科に籍を置いていた時代、他家の令息・令嬢であるクラスメイトに卑怯な嫌がらせをされたと聞いた時も、誰よりも先に行動し、そのクラスメイト一人一人に落とし前を付けに行った程だ。
きっと…昔、私がウラドの山に置き去りにされた時に何も行動出来なかった事を悔いての今なのだろう
セリアはそう思いシェーヌの行動の速さに関心しつつも、不安を覚えた。
昨日までのライアンに対するシェーヌの態度。
本心を明かすに明かせなかったライアンに業を煮やしシェーヌはセリアをフェレネス家に連れ帰った。
もしその熱が…一晩たっても変わらぬままだと厄介だ。
先程も言った様にシェーヌは、家族の有事とあらば後先を考えない。
もし仮にシェーヌがまだライアンに対して怒りの感情があるのなら…最悪流血沙汰になる可能性もある。
あぁ見えて彼は必要と感じれば暴力も辞さないタイプだ。
特に家族を貶められれば誰であっても鉄拳を振るう。
伊達にアルテア随一の剣士と渾名されている訳では無く、シェーヌは信念の為ならどんな行動を起こすか分からない狂犬でもあるのだ。
『ライアン…兄上の対処は私に…』
『いや…シェーヌには俺が言って聞かせる。』
ライアンはセリアの言葉を遮って言った。
これだけは譲る訳には行かないと言う信念が伺えた。
『今までの俺の態度を見ていれば兄として俺に腹を立てるのも当然だ。だから俺がケジメを付けなければならない。』
ライアンの真っ直ぐな瞳を見てセリアは頷く
『分かりました。兄上の事はお任せします。』
『俺が奴にぶっ飛ばされても止めないでくれセリア。俺が今まで君にして来た態度はそれ位不誠実だった。だがセリアを諦める気はもうない。奴の気が済むまで殴らせて俺はそれに耐えて見せる。幸い打たれ強さにだけは自信があるんだ。』
ライアンは冗談を言う様に言う。
セリアも小さく微笑む。
『昨日、兄上に無理やり連れ帰られそうになった時、咄嗟に兄上を殴ってしまいました。ライアンに手を出したらまた私が兄上を殴りますから』
セリアも冗談を言う様に返す。
ライアンは一瞬"まさかセリアが?"と驚きの表情を見せたが、小さく笑みを零すと二人は何時しか手を取り合って邸内に向かって行った。
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邸内に入ると何処からとも分からぬ程大きな笑い声が邸内に響いていた。
笑い声の出処に当たりを付けて客間の戸を開くとシェーヌを中心にアレクシアやファルカシオン家に仕える従者達は笑いの坩堝にハマっていた。
シェーヌが…アルテアの要人達のモノマネをして、果ては誇張した顔真似や声真似までしておちゃらけて居るのだ。
何故こんな事になったのか…おおまかな検討は付く。
恐らくセリア達の出発と入れ違いになったシェーヌをアレクシアが応対した。
アレクシアはお喋り好きで…ファルカシオン家と交易関係にある家との苦労話や愚痴をシェーヌに零したのだろう。
退屈な話を嫌うシェーヌはアレクシアが口にした交易相手の貴族を茶化し始める。
笑い上戸なアレクシアが笑い始めるとシェーヌの悪ふざけのスイッチが入り茶化しはモノマネに変わる。
普段なら客人の会話に笑う等と言う不躾は許されない従者達は最初は堪えて居たのだろうが、そうなるとシェーヌは従者達も笑わせようと躍起になりモノマネに誇張が入り始める。
癖のある喋り方や口癖を3割増程で演じて真似するシェーヌに一人また一人と堪え切れず吹き出す。
気が付けば普段しっかり者のメイドも、魂を悪魔に吸われたと噂される程無機質で無表情の執事長も腹を抱えて笑いの渦に飲まれていた。
彼らがシェーヌのモノマネの対象だった本人が来客した時、笑いを抑えられるのか心配になる程、目に涙を溜めて大爆笑していた。
アレクシアに至ってはソファから崩れ落ちシェーヌにもう辞める様に懇願していた。
辞めろと請われる益々シェーヌの悪戯心に火が付き、モノマネ相手の声真似と喋り方の癖を模倣しながら、その要人の口癖を歌にして歌い出した所で漸くセリア達とシェーヌが目が合った。
『あ……おほん。』
気まずそうに咳払いをするシェーヌ。
空気が変わった事を察し得た従者達は各々持ち場に帰って行った。
アレクシアも膝を付いて崩れ落ちていたドレスの丈を手で払って息を整えると再びソファに腰掛けた。
『お帰りなさい。セリアちゃん。ライアン。その…シェーヌから全部聞いたわ。昨日の事。』
アレクシアがシェーヌから聞いた昨日の出来事を口にしようとした時、シェーヌはアレクシアの前に手をやって制するとまじまじと2人の姿に目をやった。
2人の繋がれた手を見るシェーヌは
『いよぉ~!ご両人!朝から見回りご苦労さん!』
いつもの様に軽快な語調で挨拶をした。
セリアもライアンも呆気に取られた。
あれほど覚悟を決めて来たのに…シェーヌのそのあまりに飄々とした態度に。
『シェーヌ。あのな…』
ライアンが口を開こうとした。今までのセリアに対する不義理な態度や、それを見せつけられた兄としてのシェーヌの怒りに対する謝罪を告げようと。
今までライバル視していたシェーヌに頭を下げる事に抵抗がない訳ではないが、それがこれからの変化を示す宣言や、誠意に近い物になるならと…
しかし再びシェーヌは手をライアンの前にやり遮る。
『言葉は要らねぇよ。どんな大層な言葉よりも俺は行動で示す奴を信じる』
『何があったかは聞かねぇ。お前のその迷いのない眼を見てもう大丈夫だって確信したからな!』
『妹を頼むぜ…!相棒!』
『あ…あぁ…』
"なんと…清々しい男だろう"
ライアンはシェーヌの人間の深さに驚かされた。
普通の人間なら、昨日あれだけの醜態を見せた相手にすんなりと妹を任せられたりはしない。
つまらない人間ならば話も聞かず喚き立てるだろう。
しかしシェーヌは…ライアンの眼が変わった事を見抜いていた。
人間の本質を計る野性的な勘とでも言うのだろうか
熟く彼の異端振りには驚かされる。
だが…ライアンも怖気ている場合では無いのだ。
これから先、最愛の女性であるセリアを守る為ならば王太子も…シェーヌも…神でさえも凌げる様な者にならなければ…
ライアンは決意を込めて頷いて見せると。
『任せろ』
そう端的に返した。
彼らの間柄に長い言葉は必要ない。
『もし…またあんな醜態をセリアに見せたら顔面パンチだからな』
コソッと笑いながら耳打ちするシェーヌ。
『二度と無様は晒さないさ』
その言葉に迷い無く返すライアン。
『では参ろうか!あのボンクラ王太子の鼻柱をへし折りに!』
シェーヌが胸を叩いて言う。
『本当に殴ったりしないで下さいよ兄上』
セリアが釘を刺す。
『あらセリアちゃん。あぁ言う気位の高い男は鼻の骨の2~3本へし折れてた方が謙虚になるかも知れないわよ?』
アレクシアまでシェーヌの悪ノリに便乗する。
『場合によっては…血が流れる事も覚悟すべきだな。』
ライアンまでも…
『王太子が乱心したら直近の兵士共の相手は任せろ。ライアンは王太子にだけ集中しておけ』
『心得えた』
どんどん話が物騒な方向に進む。
『ちょっと待って下さい!!本当に今から王宮に殴り込みにでも行く気ですか!?』
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