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本編【表】
第43話-王太子の条件
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『セリアをお譲りする気はありません。』
ライアンらしい単刀直入にして単純明快な言葉だ。
『う~~む…分からぬなァ…』
王太子はその言葉を聞いて頭をトントンと人差し指の甲で小突く。
まるで忘れ事を思い出そうとする様な仕草で。
『ファルカシオン令息。全てはセリアの自由意志であると言ったのは貴殿では無かったか?』
『それに貴殿はセリアに情等無いとも言った…あれは謀り…王家に対する虚偽の申告であったと言う事か?』
やはりこの男も一筋縄では行かない。
ライアンの言質を利用して来たのだ。
ライアンは確かにセリアの自由意志に委ねると言った。
王太子の"セリアに情が沸いたか?"と言う問いにNoと答えたライアンの言葉を"セリアに情はない"とライアン自身が言った様に事実を改竄して
全ては今日の様な事態の為の布石だったのだ。
賢い者は自分が発した言葉が後でどう利用出来るか考えて言葉を発する。
数週間前に話した言葉の内容すら利用する
全てはこの時の為。駄々を捏ねるライアンを捩じ伏せる為の言質だ。
ライアンも、王太子の発言は8割が事実なだけに勢いを失う。相手を従わせるには8割の真実があれば良い。残りの2割の嘘でどれだけ自分に都合のいい様に改竄出来るかが嘘吐きの技の見せ所だ。
『はて、私はその様な事は申しておりませんが?』
『なに…?』
まさかのライアンの言葉に王太子は言葉を詰まらせる。まさかこんなあからさまな嘘を吐いて来るとは夢にも思わなかったからだ。
目には目を
嘘には嘘をだ。
『私はセリアの自由意志に委ねるとは申しましたが、その後のセリフ等身に覚えが御座いません。』
『何を言う…お前は確かにセリアに情は無いと申したではないか…』
『殿下。論より証拠でございます。証人はおりますか?』
『直属の護衛達が証人だ。』
『それは有り得ませんな。セリアの話をした時、殿下は護衛を人払いして私と二人きりでした。』
『ふふ…ファルカシオン令息…貴殿を過小評価していたぞ。存外口が回る様だな。』
『殿下の享受の賜物でございます。』
ライアンは普段寡黙で言葉足らずだが
決して頭は悪くない。
必要に迫られれば状況に応じた言葉回しが出来る。
石の様に感情を出さないライアンの冷静さはセリア以上だ。
『殿下ァ。言った言わないは水掛け論です。殿下が何を仰ろうがセリアとライアンの婚約は2人が生まれた時から定められた物で、その効力は後出しで手を出した殿下にどうにか出来るモノじゃないんですよ』
シェーヌが畳み掛けて来た。
『次期フェレネス家当主として。両家の政略結婚に王家が水を差すとあらば…我々フェレネス一門は黙っていられませんぜ。』
アルテアの二大勢力…王家の懐刀と称されたフェレネス家が敵に回るぞ?と遠回しに脅し掛けるシェーヌ。
『ファルカシオンの一門も、この権威乱用に口を紡ぐつもりはございません。』
更に守のファルカシオン家と評された、ライアンの一族も敵に回る事になると脅しに拍車を掛ける。
これでは…セリアを取り入る事でフェレネスの力を取り込む作戦は水泡に帰す。
王太子は渋い顔をした。
"忌々しい…取るに足らない使い走りの分際で…"
王太子の脳裏にはこんな思いを巡らせて居た。
『殿下。私からもハッキリ申し上げさせて頂きます。』
セリアが遂に口を開こうとした時、王太子は…
『頼む!!セリアの1日を私に譲ってはくれないか!!!』
深々と頭を下げてセリアに懇願した。
『はい?』
セリアは聞き返す様に返事を返した。
『1日だけ…1日だけ!お前と過ごすチャンスをくれ!私がお前に愛されるに足る器であると証明して見せる!!』
『いや…』
『もし1日を共に過ごしてそれでも気が変わらないのであらば…俺は二度とこの話はしないと誓おう…だから頼む!!』
再び王太子は深々と頭を下げた。
"プライドの高い王太子がこんなにも必死に頭を下げた"
このギャップに絆されてはならない。
この男はプライドが人一倍高いが、目的の為ならば必死なフリもするし頭も下げる
プライドと感情を使い分ける小賢しさがある。
役者になれば美麗な顔立ちも相まってそこそこ名を馳せただろう。
しかしライアン達はもう既に王太子の二枚舌に気付いている。
故にこんな要求相手にする必要等無いのだが…
ここで断っても…"一日一緒に過ごせば気が変わったのに"としつこく食い下がられるのは明白だ。
落とし所が必要なのだ。
"最善を尽くして頑張ったけどダメでした"と言う落とし所が。
ライアンとセリアは互いに目配せして頷いた。
『殿下、私は婚約者を持つ身。殿下と夜を明かす訳には行きません。ですので夕方までをリミットに定めて頂けるなら私は承知致します。但し殿下が申された宣誓…ゆめゆめ反故にされません様よろしくお願い致します。』
『俺もそれで依存はありません。』
セリアとライアンのセリフを聞いて深々と下げていた頭をあげると王太子は笑みを浮かべる
『ありがとうセリア。今日は忘れられない日になるだろう。』
セリアの手を握り自信満々に言った。
たった1日でセリアを籠絡して見せると王太子は宣言したのだ。
セリアにとっては長いレンタル婚約者の1日が始まる…
ライアンらしい単刀直入にして単純明快な言葉だ。
『う~~む…分からぬなァ…』
王太子はその言葉を聞いて頭をトントンと人差し指の甲で小突く。
まるで忘れ事を思い出そうとする様な仕草で。
『ファルカシオン令息。全てはセリアの自由意志であると言ったのは貴殿では無かったか?』
『それに貴殿はセリアに情等無いとも言った…あれは謀り…王家に対する虚偽の申告であったと言う事か?』
やはりこの男も一筋縄では行かない。
ライアンの言質を利用して来たのだ。
ライアンは確かにセリアの自由意志に委ねると言った。
王太子の"セリアに情が沸いたか?"と言う問いにNoと答えたライアンの言葉を"セリアに情はない"とライアン自身が言った様に事実を改竄して
全ては今日の様な事態の為の布石だったのだ。
賢い者は自分が発した言葉が後でどう利用出来るか考えて言葉を発する。
数週間前に話した言葉の内容すら利用する
全てはこの時の為。駄々を捏ねるライアンを捩じ伏せる為の言質だ。
ライアンも、王太子の発言は8割が事実なだけに勢いを失う。相手を従わせるには8割の真実があれば良い。残りの2割の嘘でどれだけ自分に都合のいい様に改竄出来るかが嘘吐きの技の見せ所だ。
『はて、私はその様な事は申しておりませんが?』
『なに…?』
まさかのライアンの言葉に王太子は言葉を詰まらせる。まさかこんなあからさまな嘘を吐いて来るとは夢にも思わなかったからだ。
目には目を
嘘には嘘をだ。
『私はセリアの自由意志に委ねるとは申しましたが、その後のセリフ等身に覚えが御座いません。』
『何を言う…お前は確かにセリアに情は無いと申したではないか…』
『殿下。論より証拠でございます。証人はおりますか?』
『直属の護衛達が証人だ。』
『それは有り得ませんな。セリアの話をした時、殿下は護衛を人払いして私と二人きりでした。』
『ふふ…ファルカシオン令息…貴殿を過小評価していたぞ。存外口が回る様だな。』
『殿下の享受の賜物でございます。』
ライアンは普段寡黙で言葉足らずだが
決して頭は悪くない。
必要に迫られれば状況に応じた言葉回しが出来る。
石の様に感情を出さないライアンの冷静さはセリア以上だ。
『殿下ァ。言った言わないは水掛け論です。殿下が何を仰ろうがセリアとライアンの婚約は2人が生まれた時から定められた物で、その効力は後出しで手を出した殿下にどうにか出来るモノじゃないんですよ』
シェーヌが畳み掛けて来た。
『次期フェレネス家当主として。両家の政略結婚に王家が水を差すとあらば…我々フェレネス一門は黙っていられませんぜ。』
アルテアの二大勢力…王家の懐刀と称されたフェレネス家が敵に回るぞ?と遠回しに脅し掛けるシェーヌ。
『ファルカシオンの一門も、この権威乱用に口を紡ぐつもりはございません。』
更に守のファルカシオン家と評された、ライアンの一族も敵に回る事になると脅しに拍車を掛ける。
これでは…セリアを取り入る事でフェレネスの力を取り込む作戦は水泡に帰す。
王太子は渋い顔をした。
"忌々しい…取るに足らない使い走りの分際で…"
王太子の脳裏にはこんな思いを巡らせて居た。
『殿下。私からもハッキリ申し上げさせて頂きます。』
セリアが遂に口を開こうとした時、王太子は…
『頼む!!セリアの1日を私に譲ってはくれないか!!!』
深々と頭を下げてセリアに懇願した。
『はい?』
セリアは聞き返す様に返事を返した。
『1日だけ…1日だけ!お前と過ごすチャンスをくれ!私がお前に愛されるに足る器であると証明して見せる!!』
『いや…』
『もし1日を共に過ごしてそれでも気が変わらないのであらば…俺は二度とこの話はしないと誓おう…だから頼む!!』
再び王太子は深々と頭を下げた。
"プライドの高い王太子がこんなにも必死に頭を下げた"
このギャップに絆されてはならない。
この男はプライドが人一倍高いが、目的の為ならば必死なフリもするし頭も下げる
プライドと感情を使い分ける小賢しさがある。
役者になれば美麗な顔立ちも相まってそこそこ名を馳せただろう。
しかしライアン達はもう既に王太子の二枚舌に気付いている。
故にこんな要求相手にする必要等無いのだが…
ここで断っても…"一日一緒に過ごせば気が変わったのに"としつこく食い下がられるのは明白だ。
落とし所が必要なのだ。
"最善を尽くして頑張ったけどダメでした"と言う落とし所が。
ライアンとセリアは互いに目配せして頷いた。
『殿下、私は婚約者を持つ身。殿下と夜を明かす訳には行きません。ですので夕方までをリミットに定めて頂けるなら私は承知致します。但し殿下が申された宣誓…ゆめゆめ反故にされません様よろしくお願い致します。』
『俺もそれで依存はありません。』
セリアとライアンのセリフを聞いて深々と下げていた頭をあげると王太子は笑みを浮かべる
『ありがとうセリア。今日は忘れられない日になるだろう。』
セリアの手を握り自信満々に言った。
たった1日でセリアを籠絡して見せると王太子は宣言したのだ。
セリアにとっては長いレンタル婚約者の1日が始まる…
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