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【SS1】ハイネの譚
第9話-不信感
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-シャリア視点-
今更動いても何もかも手遅れだった…
今までハイネ様が蔑ろにして来た下位貴族の生徒達はマチルダの元に集い、今まで私達にすり寄っていた者達も、もはや我々に与する気は無いようだ。
その事はまだいい…
私もハイネ様も端から彼ら彼女らの力等宛にしていない
問題は数の力だ…
マチルダの取り巻き一人一人は大した者ではないが
大魚から身を守るべく寄せ集まった魚群の様な彼らは日に日にその数を増し、態度を肥大化させて行った…。
今まで隅で大人しくしていた下位貴族達は堂々と道の真ん中を群れを成して歩く様になった…
そして、その中心にはいつもマチルダがいた……
『きゃはは!それはウケますわね~!…あら?』
道行く先でマチルダの一派と鉢合わせしてしまった…
私達は5人…向こうはマチルダの後ろにゾロゾロと十数人も配下を従えている。
『ご機嫌ようロレーヌ!』
マチルダは上級生ある私を呼び捨てにしながら、その不敬に対しなんとも思っていない様な涼しい顔をしていた。
『こちらは見ての通り大人数ですの~。悪いけどどいて下さる?』
『くっ…』
私は下唇を噛み締めた…
由緒ある歴史を持つ御三家ロレーヌ公爵家の娘である私に対する横暴な物言い…
家名の重さで言えば天地の差がある、先代まで男爵家だったサイン家の小娘如きに"どけ"と命じられるのは余りに屈辱だった。
『シャリアさん…』
今にも食って掛かる勢いの表情だった私を察してリティシアさんが止めに入った。
私は…力なく頷き彼女達に道を開けた…
『ふんふ~ん♪』
鼻歌を歌いながら私達が開けた道を行くマチルダ一派…
しかし私にはこの小娘に道を開けるしかなかった…。
彼女の父親であるサイン侯爵が王太子殿下の第一家臣として召し抱えられたからだ…。
即ち王太子殿下が即位なされた暁には、サイン侯爵は筆頭家臣となり、私達の父より立場が上になる…
ここで今…このマチルダに意見出来るのは…後の国母となるハイネ様だけだと言うのに…
ハイネ様は姿を表さない…
高位貴族達と交友を深める事に力を入れ過ぎた結果
成績が下がった事を気にし…寮の自室に籠り勉強ばかりしている…。
今学園内がどう言う状況なのかまるで理解していない…今こそ王太子妃としての器を見せなければ配下の者達の心が揺らぐと言うのに…
ハイネ様は自身が首席で卒業する事に血眼になっていた。
私はこのやるせない気持ちをどうしようもなかった…
『シャリアさん…このまま彼女達を増長させては不味くないかしら…?』
リティシアさんも私と同じ気持ちの様だ…
しかし肝心のハイネ様が自分の事しか考えていないんじゃ…どうしようもない
『私、ハイネ様に直談判して参りますわ。』
私はそう言ってハイネ様の部屋を目指した。
このまま私達高位貴族が下位貴族達に舐められていては将来の進退にも影響が出かねないのだ。
----------------------------
『ハイネ様…失礼致します。』
私の声が届いて居ないのか…ハイネ様は机に向かいペンを走らせていた。
『ハイネ様…?』
『あら…シャリアさん…来てらしたのね。何か仰いました?』
『サイン令嬢を征して頂きたいです』
『またそのお話ですか…たかだか中等科の下級生相手に私達がムキになる必要はありませんわ…』
『彼女の増長は度が過ぎます…下級生でありながら派閥を作り学園内でも王立学園の生徒に見合わない下品な振る舞いや態度が目立ち…派閥の中心である彼女がそう振る舞えば配下の生徒達もそれに習います。このままでは学園の品位が…』
『彼女が風紀を乱していると言うなら私でなく先生方や学長に相談すべきじゃなくて?』
『先生方も学長もサイン侯爵の後ろ盾ある彼女を恐れて何も言えやしません!ここは後の王太子妃たるハイネ様に言って頂かないと!!』
私は未だ事の重大性を理解していないハイネ様に苛立ちを募らせながら詰め寄った。
学園内でのカースト制度が子供のままごとで済むのは平民が通う一般学校での話で貴族の子だけが通う事が許される王立学園では訳が違う。
ここでの派閥の優劣が…後の将来に大きく尾を引く事になるのだ。
『わ、分かったわ…』
ハイネ様は些か食い入る様に詰め寄った私に気圧されながら、マチルダ達に然るべき注意をすると約束したが…どこまで宛になるか分からない。
『シャリアさん…ハイネ様はなんと…?』
部屋の外で待っていたリティシアさんが私に声を掛けて来た。
『余り…期待出来ませんわね』
『そ、そんな…』
私はハイネ様の煮え切らない態度を見たまま伝えた。
『もしかして…ハイネ様はマチルダを…サイン家を恐れているんじゃ…』
『確かに…ラグライア家は…サイン家の先代当主に食糧支援を懇願して醜聞晒した汚点がありますからね…御三家筆頭のラグライア家が…当時男爵の地位だったサイン家に支援を頼み込む等…』
『もしハイネ様もサイン家を恐れているなら…あの方も宛になりませんわね…』
私達は場も選ばず不安故に胸の内を吐露してしまった…
ハイネ様の部屋の前である事も忘れて…
今更動いても何もかも手遅れだった…
今までハイネ様が蔑ろにして来た下位貴族の生徒達はマチルダの元に集い、今まで私達にすり寄っていた者達も、もはや我々に与する気は無いようだ。
その事はまだいい…
私もハイネ様も端から彼ら彼女らの力等宛にしていない
問題は数の力だ…
マチルダの取り巻き一人一人は大した者ではないが
大魚から身を守るべく寄せ集まった魚群の様な彼らは日に日にその数を増し、態度を肥大化させて行った…。
今まで隅で大人しくしていた下位貴族達は堂々と道の真ん中を群れを成して歩く様になった…
そして、その中心にはいつもマチルダがいた……
『きゃはは!それはウケますわね~!…あら?』
道行く先でマチルダの一派と鉢合わせしてしまった…
私達は5人…向こうはマチルダの後ろにゾロゾロと十数人も配下を従えている。
『ご機嫌ようロレーヌ!』
マチルダは上級生ある私を呼び捨てにしながら、その不敬に対しなんとも思っていない様な涼しい顔をしていた。
『こちらは見ての通り大人数ですの~。悪いけどどいて下さる?』
『くっ…』
私は下唇を噛み締めた…
由緒ある歴史を持つ御三家ロレーヌ公爵家の娘である私に対する横暴な物言い…
家名の重さで言えば天地の差がある、先代まで男爵家だったサイン家の小娘如きに"どけ"と命じられるのは余りに屈辱だった。
『シャリアさん…』
今にも食って掛かる勢いの表情だった私を察してリティシアさんが止めに入った。
私は…力なく頷き彼女達に道を開けた…
『ふんふ~ん♪』
鼻歌を歌いながら私達が開けた道を行くマチルダ一派…
しかし私にはこの小娘に道を開けるしかなかった…。
彼女の父親であるサイン侯爵が王太子殿下の第一家臣として召し抱えられたからだ…。
即ち王太子殿下が即位なされた暁には、サイン侯爵は筆頭家臣となり、私達の父より立場が上になる…
ここで今…このマチルダに意見出来るのは…後の国母となるハイネ様だけだと言うのに…
ハイネ様は姿を表さない…
高位貴族達と交友を深める事に力を入れ過ぎた結果
成績が下がった事を気にし…寮の自室に籠り勉強ばかりしている…。
今学園内がどう言う状況なのかまるで理解していない…今こそ王太子妃としての器を見せなければ配下の者達の心が揺らぐと言うのに…
ハイネ様は自身が首席で卒業する事に血眼になっていた。
私はこのやるせない気持ちをどうしようもなかった…
『シャリアさん…このまま彼女達を増長させては不味くないかしら…?』
リティシアさんも私と同じ気持ちの様だ…
しかし肝心のハイネ様が自分の事しか考えていないんじゃ…どうしようもない
『私、ハイネ様に直談判して参りますわ。』
私はそう言ってハイネ様の部屋を目指した。
このまま私達高位貴族が下位貴族達に舐められていては将来の進退にも影響が出かねないのだ。
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『ハイネ様…失礼致します。』
私の声が届いて居ないのか…ハイネ様は机に向かいペンを走らせていた。
『ハイネ様…?』
『あら…シャリアさん…来てらしたのね。何か仰いました?』
『サイン令嬢を征して頂きたいです』
『またそのお話ですか…たかだか中等科の下級生相手に私達がムキになる必要はありませんわ…』
『彼女の増長は度が過ぎます…下級生でありながら派閥を作り学園内でも王立学園の生徒に見合わない下品な振る舞いや態度が目立ち…派閥の中心である彼女がそう振る舞えば配下の生徒達もそれに習います。このままでは学園の品位が…』
『彼女が風紀を乱していると言うなら私でなく先生方や学長に相談すべきじゃなくて?』
『先生方も学長もサイン侯爵の後ろ盾ある彼女を恐れて何も言えやしません!ここは後の王太子妃たるハイネ様に言って頂かないと!!』
私は未だ事の重大性を理解していないハイネ様に苛立ちを募らせながら詰め寄った。
学園内でのカースト制度が子供のままごとで済むのは平民が通う一般学校での話で貴族の子だけが通う事が許される王立学園では訳が違う。
ここでの派閥の優劣が…後の将来に大きく尾を引く事になるのだ。
『わ、分かったわ…』
ハイネ様は些か食い入る様に詰め寄った私に気圧されながら、マチルダ達に然るべき注意をすると約束したが…どこまで宛になるか分からない。
『シャリアさん…ハイネ様はなんと…?』
部屋の外で待っていたリティシアさんが私に声を掛けて来た。
『余り…期待出来ませんわね』
『そ、そんな…』
私はハイネ様の煮え切らない態度を見たまま伝えた。
『もしかして…ハイネ様はマチルダを…サイン家を恐れているんじゃ…』
『確かに…ラグライア家は…サイン家の先代当主に食糧支援を懇願して醜聞晒した汚点がありますからね…御三家筆頭のラグライア家が…当時男爵の地位だったサイン家に支援を頼み込む等…』
『もしハイネ様もサイン家を恐れているなら…あの方も宛になりませんわね…』
私達は場も選ばず不安故に胸の内を吐露してしまった…
ハイネ様の部屋の前である事も忘れて…
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