【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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【SS1】ハイネの譚

第8話-マチルダ・サイン侯爵令嬢

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優雅な談笑を嗜むサロンに似つかわしくない下品で甲高い笑い声が響く

またあの娘…
マチルダ・サインだ…

彼女はまた性懲りも無くサロンに上がり込み
大股を開いて椅子に腰掛け、彼女にお似合いの下品な取り巻き達とはしゃぎ騒いでいた

他の生徒達は何故か下級生の彼女達を相手に怪訝な目線を送るだけに留めていた。 

『また貴女達ですの?一体何度注意されたら…』

シャリアがマチルダ達の無法を咎めようとする
しかし私はシャリアの前に手を翳し彼女の言葉を遮った。

彼女達の行いは目に余る。
ここは私が言って聞かせる必要がある。


『サインさん…余程このサロンがお気に召した様ね。』

『あ~~ら!ハイネ様じゃありませんか~!よかったらご一緒しますぅ?』


マチルダはニタリ顔で私が現れても尚、余裕の表情だった。


『お誘いありがとう…でも遠慮しますわ。貴女も…貴女のご友人方もこのサロンを利用する権利がありませんもの』

『残念ですわ~~~』

マチルダの取り巻きの中には高等科の生徒も紛れているが、皆下位貴族家の者達だった。


サロンを利用出来る生徒の条件である
"高等科に籍を置きかつ成績上位50位以内"の要項を満たしていない。

お連れ共々退室して頂きましょう。
静粛で気品ある社交の場の空気が淀みますので


『あら?聞こえませんでしたかしら?貴女達にはこの場を利用する権利が無いと申したのですよ?直ちに退室なさい。』


私は語気を強める。
舐められてはおしまいだ。


『え~~?折角盛り上がっていた所なのに皆どうします~?ん~~~~』


『嫌です~!』


『は…?』


『私達はもっとお喋りしたいんですよ~~?それを後から来たハイネ様に出て行けなんて言われる筋合いはありませんわ~~』


『筋合いの話ではありません…これは規則…校則だからです!サロンを利用出来るのは高等科生徒で、かつ…』


私の言葉を遮る様に…マチルダは私の眼前に一枚の紙切れを突き付けた。


『なんですか…これ…』


『学長の署名ですわ。書面の内容はサロン及び学内のあらゆる設備・備品の使用条件を撤廃し学園に籍を置く者ならば誰でも平等に利用出来ると書いてありますわ~!』


『え…』


私は突き付けられた書面に目を通す。
彼女の言っている事は本当だ…
書面には学年や成績を問わず学内のあらゆる設備・備品の使用を認める旨と学長の署名が刻まれていた。


ありえない…
この設備利用に制約を設ける校則は、学生の本文である学業において優秀な成績を納めた者に対する報奨で…中等科生や成績が劣る者はクラブ活動や設備利用よりも先に勉学に打ち込む事を促す為の規則だ。


それを…学長が覆した…?


『私…常々学園内の理不尽ルールには腹に据えかねる物がありましたの…私の友人には下位貴族の出身者も沢山いて…彼ら彼女らは教育にお金を掛けられなかったが故に高位貴族家の生徒達に遅れを取り…学園内での待遇に不遇を受けていると聞いて…私は胸を痛めましたわ…』


『この悪しき風習は!下位貴族家の生徒達に対する不当な差別以外の何者でもありませんわ!!』

「そうだ!!」

「マチルダ様は不当に扱われる私達に真の平等を与えて下さったのです!!」


彼女の演説に同調し声を挙げる取り巻き達…

学長公認とあらば…私に口を出せる権限はない…


『他に何かございます?』

『べ、別に…』


私は…引き下がるしかなかった…


マチルダは私が引き下がるのを見るとニィっと口角をあげ卑しく笑った…



-----------------------------------

『あんなの気にする必要ございませんわハイネ様…!』

『・・・』

シャリアとリティシアに私の配下達は私の機嫌を伺って回った…。


私が彼女に言い負かされ機嫌が悪いと察し得ての諂いだろう。その事が一層私を逆撫でした。


今日は完全にしてやられた…


中等科生でありながら下位貴族達を束ね…徒党を組み出すとは…


私は…下位貴族の生徒等率いても益がないと見限り交友もおざなりだった…


その事に付け込まれ…まさか自身の派閥に吸収するなんて思いもしなかった…


そして実質、高位貴族家の生徒達が独占していたサロンやその他設備を下位貴族家の生徒達も利用出来る様にする根回し…


恐らくサイン家の力で学園に多額の寄付でもしたのだろう…私が学力や個人能力で力を誇示するのに対し彼女は財力で力を誇示して来た…


今日の一件で下位貴族家の生徒達はマチルダに一目置くだろう…生徒の割合は下位貴族家の者の方が断然多い。


このままでは学園内での勢力図が覆されてしまう。


私が焦りと思考を巡らせていると…
下位貴族の集団と私達の集団が一本道で鉢合わせする。


-邪魔よ…どきなさいよ


私は苛立ちを込めた視線を向ける…すると


「おい…」


一人のリーダー格であろう男子生徒が声掛けし
下位貴族達はバラバラと端に寄り私達に道を開けた…


「なによ…あの態度…」

「感じ悪いわねぇ…」

「生まれた家が偉かったからって勘違いしてんじゃないかしら…」


-うるさい…うるさい


私は有象無象達の陰口を背に久しく内心に焦りを宿した…

シャリアやリティシアの声すら耳に入らぬ程に…
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