【一章完結】王太子殿下は一人の伯爵令嬢を求め国を滅ぼす

山田山田

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【SS1】ハイネの譚

第7話-ラグライア派

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殿下がデラガド留学に旅立って1年


私はアルテアの王立学園で高位貴族家の子息子女達と交友を密接にし、学園内で地位を固める事に邁進した。


彼ら彼女らは何れアルテアの重要な柱となる。
件の飢饉で王家に疑問を持つ貴族もいる今、リフェリオが王位を継いだ際に、彼らを上手く取り込む為の下地を作るのが私の…王太子妃の役目だ。


"弱い者に従う生き物はいない"


殿下の言葉に習い、私はまず力を誇示した。
成績は常にトップクラス
学園内で乗馬クラブ会長に推薦され
座談会が催されるサロンにも必ず顔を出し他の生徒達一人一人と交友を深めた。


一人また一人と生徒達は私を認める様になった。


『ハイネ様ごきげんよう』

『あらシャリア、ごきげんよう』


私が学友会で"危険な大魚"と捉えていたシャリアも…今では私を慕っている。


私はラグライアの名に…
リフェリオの婚約者ハイネとしての立場に名前負けしない様に…格の違いを見せ付ける事に躍起になっていた。


「ハイネ様ごきげんよう!」

「ハイネ様ご機嫌麗しゅうございます!」

「ハイネ様!今日もサロンに参られますでしょうか?是非御一緒させて下さいませ!」

「ハイネ様!」


学園内で高位貴族家の令嬢達に一目置かれる存在となった私は徐々に不安がなくなって行った。


私を差し置きリフェリオに擦り寄ろうとする者に対する不安がだ。


思えば辛い半生を過ごして来たが…両親が私に課した異常とも言える厳しい教育の下地があったお陰で…今の私がある。


"誰も私に敵う女等いない"


その自信が何時しか余裕に変わった。

御三家令嬢の
シャリア・ロレーヌ
リティシア・バーキン

この二人が私に頭を下げた時点で、他の令嬢達はもはや誰も私に敵わないと悟り、堰を切ったように私の元に集まった。


そんな私を中心とした高位貴族家の集団は何時しか派閥と呼ばれる程拡大し"ラグライア派"等と呼ばれる様になった。


気分が良くないと言えば嘘になる。
私の努力が目に見えた形として現れた事が嬉しかった


個人的な虚栄心等はない…
有象無象の賛美の言葉等、私にはなんの価値もない

私はただ…彼に褒めて貰いたい
"よくやったハイネ"と言って髪を撫でて貰いたい


ただその一心だった。


--------------------------------

ある日…サロンに来られるはずの無い中等科の令嬢が私達の座談会に水を刺しに来た。


『あ~~~ら!ロレーヌにバーキンにラグライア先輩まで、何を楽しそうにお話になられているのかしら?』


だ。


中等科に籍を置く彼女は、このサロンを利用出来ない。


このサロンを利用出来るのは…高等科に籍を置き、かつ成績が上位50位以内の生徒だけに限られる

彼女はそのどちらも満たしていない。


『ちょっとあなた…ハイネ様に向かって言葉を慎みなさい』

『上級生に対して無礼な口利きはお家の名を貶める事になりますわよ』


シャリアとリティシアが諌める。
まだ彼女の様に私に面と向かって噛み付く者がいたのは驚きだった…学園に籍を置く令嬢はが私の実力を認めたとばかりに思っていた。

『あら~~?"学園内では身分や爵位に関わらず平等"これが王立学園の理念じゃありません~?』


-こいつ…

サイン家とは因縁があるラグライアの娘である私は、彼女が中等科に入学した事に警戒し動向を配下の生徒達に探らせていた


だが彼女は成績も大した物でもなく気を揉む必要もないと警戒を緩めていたら面と向かって突っかかって来た…


しかし…雑魚のやっかみに心騒がせる弱い私はもういない


『サイン令嬢、このサロンは高等科の生徒しか利用出来ないと校則で決まっておりますのよ。後3年お待ちあそばせ…まぁ、のお話ですけど』


私は毅然と小娘に言い返した。
特大の皮肉を込めて


シャリアとリティシアはクスクスと口元に手を当てて笑う。


-私に楯突こう等…10年早くてよ


『ふん…覚えてろよハイネ…』

『すぐに忘れて差し上げますわ。』


彼女は虫の鳴くような小さな声で負け惜しみを呟きサロンを後にしたが…私にはどうでもよかった。


昔、父を誑かしラグライア家を貶めたサイン侯爵家だが…その小娘に出来る事等たかが知れている。


サイン家の小娘等取るに足らない…
私が注視すべき相手は他に1人だけいる…

--------------------------------

『ごきげんよう!アレクシアさん!これからサロンに行きますの、よかったら私達とお話しません?』


『え?あぁ…えっとラグライアさん…でしたわよね?』


武家の重鎮…ファルカシオン辺境伯家の長女



『ハイネ・ラグライアと申します。貴女と是非お友達になりたいわ』


彼女は…リフェリオから是非にと交友を深める様に言われていた令嬢の一人だ。


アルテア御三家と御三家に匹敵する権威を持つ家の者は必ず配下に加える様に彼から言い付けられている。


彼女は成績も上位に位置し
女だてらにアーチャーシューティングクラブ弓道に属し名をあげている…


性格は世話好きで中等科の後輩達からも慕われていると聞く…彼女を私の派閥に取り入れない理由はない。


『お誘いありがとうございます。私の友人達も同席させて頂けるのなら御一緒させて頂きますわ!』

彼女の取り巻きを見て私は思わず眉を顰めた…
学友会で殿下に擦り寄った下位貴族家の娘達だったからだ

別に殿下に軽くあしらわれていた彼女達に恨みがある訳では無いが…

殿下に醜く諂い媚びる姿を思い出しほんの僅かだが…嫌悪感が蘇った…

彼女達は同じく殿下に近付いたシャリアとは違う…
家柄も個人能力もあからさまに劣って置きながら殿下に擦り寄る様な浅はかさをあの日お披露目した…


こんな俗物を私の傍においても仕方ない…
彼女達下位貴族の令嬢を得ても利にならない

それ所か…私の学友達の質を下げる害にすらなりかねない…


私は…遠回しに彼女達の同席を拒否する事にした。


『ですが…サロンは成績上位50位以内の生徒しか利用出来ないと校則があるので……ね?』


私の無言の圧力を察し得た下位貴族家の令嬢達は萎縮し、下を向いた。


彼女達の成績を把握していた訳ではないが
成績上位50位以内に下位貴族の者が入るのは困難を極める。


皆生家で受けた教育の下地を武器に成績上位に食い込んでいる。つまり教育に金を注ぎ込める高位貴族家が成績上位を独占しているのだ。


逆に下位貴族家の生まれで上位50位に食い込めたら大した者だが…彼女達が成績上位者でない事は聞くまでも無い事だ。


「私達はいいから…アレクシア…行ってらして…」

「そうよ…アレクシア…」


そう…それでいいのよ

力足らぬ者には慎みが必要だわ


『さぁ、アレクシアさん!行きましょう?』

『なんかあなた…やな感じね』

『え?』

『行きましょう!2人共!』


アレクシアは…私に背を向けて行った。


私が…嫌な感じ…?


『まぁ!ハイネ様に向かってなんなのでしょう!ファルカシオン令嬢ったら』

『あの態度は頂けませんわね!』


シャリアとリティシアが私の顔色を伺っていた。


『シャリア…リティシア…今の私の態度…嫌な感じだったかしら…?』


私の質問に対して二人はただ私を肯定するだけであった。


彼女達は優秀だ…故に計算高い…
後の王太子妃となる私に否定する様な事等言わない…
例え私が石を掴み下位貴族達に投げ付け様と全肯定するだろう…


私……間違ってないわよね…?


両親も力をつけた私を叱らなくなった今…
誰も私の行動を咎める者が居なくなった…
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