グッバイ現世、僕は異世界で最強になる。〜才能が全ての世界をヘタレ冒険者が押し通ります〜

アキタ

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オルディスの英雄

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 夜。嘉武はイヴと久々に夕食を共にした。話題は昼間の出来事である。嘉武が意識を失っている間はイヴが必死の思いでドレインして黒い力を吸い出していたらしい。その大変さを力説されていた。

「それにしてもヨシタケ、腕三本飛ばした時のアレ何なのよ」
「よくわからないけど、大穴開けた時と同じ感覚だね」
「アレばかりは、あたしでも無理だわ・・・でも、あそこで行かなきゃ負けてたかもね」
「先手必勝、ってやつだよ」

 嘉武はバロー牛のステーキを口へ運ぶ。あれから、すっかりハマってしまっている。
 そして、自分が意識を持って行かれた際に有った出来事を話した。

「昔のオルディス・・・の記憶だよね・・・。『ミルフィ』の名前も気になるけど・・・」
「あぁ、どこかで聞いたことあるような気がするんだ」

 二人は首を傾げる。

「「・・・シルフィだ(よ)!」」


 翌日、珍しくイヴが待ち合わせの時刻に姿を現す。
 嘉武はいつも通り、ギルドへ向かう。
「ようこそ、オルディス冒険者ギルドへ!」と小気味の良い挨拶が聞こえる。

「今日も依頼の受注ですか?精が出ますね!・・・おや?今日は珍しく、イヴさんもご一緒だったんですね」
「いえ、もうそろそろオルディスを出ようと思っているんです。なので、挨拶をと思いまして」
「あらっ、ローダルヘインに行く気になったんですね!あ、でも、嘉武さんが来なくなるって考えると、少し寂しくなりますね」
「いずれ出ていく予定ではありましたから」
「ですよねぇ、嘉武さん、見かけに依らず結構お強いみたいですしね!私もウワサ聞いた時、驚いたんですから~」

(何のウワサだよ)と思いながらも調子良さげなシルフィに嘉武は聞いてみる。

「それと、聞きたいことがありまして『ミルフィ』、という名前に聞き覚えはありませんか?大分昔のオルディスに居たかも知れない・・・人の名前だと思いますが」
「んー・・・?あっ!多分、居ますよ!私の父の母の父の母ってなんて言うんですかね。名前だけなら聞いたことありますよ!」

 軽快に笑うシルフィ、やはり見当は間違えていなかった。本当に、昔のオルディスに実在した人かも知れない。そうすれば、あの時の記憶はきっと青年の・・・。

「良ければ、こんなものを拾った。受け取って欲しい」

 嘉武はきれいなクォーツで飾られた古いバングルを出した。

「・・・何でそれを?嘉武さんがもってらっしゃるんですか・・・?」
 意味深な雰囲気を満々にリアクションするシルフィ。すぐに演技だとわかる棒演技である。

「森で拾ったのよ」とイヴ。
「そ、そうですか・・・」

 シルフィには似つかない思考を経て、口に出す。

「私、オルディスの歴史とかわからないんですけど」とヘラヘラ笑う。
「別に良いですよ、持っていても仕方の無いものなので置いていきます」
「でもそのバングル、ひいお祖父様の家で見たことありますよ。良ければ伺って見て下さい。あと私、そんなボロ要りませんので!」

 両手でバングルを押し返し、失礼な事をにこやかに言い放つシルフィ。

 嘉武達はギルドを出て紹介のあった場所へ向かう。
 オルディスの中でもかなり上級な建物が立ち並ぶ、如何にも金持ちが住んでいそうな屋敷の前で歩みを止めた。

「ここで、あってんのかよ・・・」
「はえー、すっごい、何か良い茶菓子とか出てきそうね」
「不躾な奴だな」

 嘉武は術式で出来たチャイムに触れる。そしてすぐに扉が開かれた。

「どうか、されましたかな?」と中年の執事が顔を覗かせた。


 それから嘉武達は広間の椅子に腰を掛けていた。
(どうにも落ち着かないな・・・椅子、汚しちゃったりしてないよな)

「茶菓子まだかな」とイヴは何故かウキウキで待機している。

 そして、姿を見せたのは老けた男。

「ーーーーそう、でしたか・・・」

 シルフィの曽祖父、ガルフィードが嘉武の話を聞き終わった。神妙に会話するその間もイヴは用意された甘味を食い漁っていた。喉に詰まらせ、飲み物のおかわりまでもらう始末。

 静かな、時間が流れる。机上には綺麗なバングル、その対となる様に古いバングルが置かれている。
 デザインは非常に酷似していることから、同じ者の作品であることが理解できる。

「僕のみた記憶はここまででした」
「それはきっと正しい、事実だ。私はあの森の秘密を知っていた。知らされていないのはシルフィだけなのだ・・・」

「では・・・これは、受け取って下さい。きっと、彼もそう望むでしょうから」
「済まないね・・・感謝するよ美濃、嘉武殿。これで私の母にも良い報告ができるよ」

 古いバングルを見つけるガルフィード。ぱっちりと開かない瞳でただただ見つめ続けた。
 そして語る。
「・・・これはね、私の母・・・ミルフィの兄、バルフィリアの物なんだ。母は生前よく言っていた・・・」

 兄はオルディスの英雄だと。それでも禁忌を犯して救済した事実より、英雄だと公表することは一切されることはなかったと言う。それでも兄が残した功績により莫大な謝礼が払われ、この家が建てられた。ミルフィは信じていた、まだ兄はどこかで生きている・・・と。いつでも兄が帰ってこられるようにこの家を建てた。家族皆が幸せに暮らせるのは全て、バルフィリアのおかげなのだと言い伝えた。

 ただ、その事実は民衆により虚実とされる。他言すれば罵詈雑言を浴びせられる。もはや、ただの迷信と化した。だから、シルフィに話すことは無かった。
 ミルフィは兄が救った街、オルディスを愛した。ガルフィードもミルフィの姿を見て育ち、オルディスを愛した。
 そう、ガルフィードの家系は皆オルディスに身を捧げ、オルディスを愛し続けている。
 それはシルフィにまで続く。
 そんなガルフィードも昔はオルディスの街を統べていたと言う。

 そして、変わること無く、今でもバルフィリアはワイゼル家の英雄であると語り終えた。

 イヴは完全に寝てしまっている。

「待っておれ、嘉武殿に渡したい物がある」

 ガルフィードが執事へ指示を下す。それから暫くして、持ってきたものは一枚布に包まれた棒状の何か。
 柄が飛び出している辺り、武器だろう。

「バルフィリアの願いが果たされた今、君に受け取って欲しい」
「荷が重いですよ、使えません」
「ふっ、どうせ大したものではない。使ってやってくれ、その方がこの剣も喜ぼう」

 嘉武は、バルフィリアの死期に装備していた剣を受け取った。
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