仲間に裏切られパーティ追放された元回復職は復讐者になれるのか

アキタ

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リアン

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 岩陰に身を隠し、俺はヤツらが姿を現すのを待った。

 そして、紫煙の上がる荒地が落ち着く頃。

 アスト達の姿と……。

 ……!?

 俺は一瞬、言葉を失った。

 遠い視線の先には、変わり果てた姿のリアンがいた。
 まだ、生きていたのか。生きていて、くれたのか。

「「リアン……」」

 俺が呟くと同時に、声が聞こえた。
 そう、アストだ。

「よう、またお前らに会えるとは思ってもみなかったぜ?」

「リアン、お前こそ生きていなのなら連絡しろ!」

 アストは相変わらず頭ごなしにリアンへ指図する。

「それは出来なくってな。今俺は、アルケーの塔の一部として組み込まれている。第五層守護者してな」

「馬鹿げた事を言うなッ! それに、あの時のキマイラはどうした!?」

 リアンは不敵な笑みを浮かべる。俺はその笑みの意味が理解できた。奴は、きっと。

「そうだな、俺があの時のキマイラだとしたら、お前らはどうするだろうよ?」

「そんなデタラメがあってたまるか!」

「クハハハハッ。まぁ、``声``が聞こえないお前らからすれば、デタラメも同然か」

「何がおかしい……!」

 アストはギリギリと奥歯を噛み締める。戦いの火蓋はいつ切られてもおかしくない状況だ。

「お前らには分からないだろうな……特にアスト。俺がこの二年、どれだけ苦しみ、どれだけお前らを呪ったか。そして、この時をどれだけ待ち望んでいたか。俺はもう壊れそうなんだ。お前らを殺したくて、捕食したくて堪らナイ……」

「リアン! 何を言っている!! そんな事になるなら俺たちはお前を!!」

「殺ス……。てかァ?」

 リアンは均衡を破れたかのように人の造形からはみ出していく。正しく、人外。
 キマイラに取り込まれたリアンはあの時の恨み、辛み、恐怖を未だに持ち続ける怨念。俺と違う点を上げるとするならば、奴は既に死んでいる。亡霊である事だろう。

 リアンは腕を一瞬で伸ばし、アストの首を掴み上げた。アストはリアンの姿を取り繕っている化け物に熱を上げすぎだ。

「お前らァ、こンなに弱かったっけなァ?」
「くそぅ……化け物め……!!」

 ズバァン!!

 リアンの腕が千切れて、激しく大地に叩きつけられる。その腕は気味悪く、切り離されても尚、ビチビチと動いている。

「イナビア、助かった」

 アストが着地し、その命を救ったイナビアへ礼を言う。

「アスト、あまり油断するな。こいつはリアンの姿をしただけの化け物だ」
「すまない、俺もあの時の事を……」
「気持ちは分かるがな……」

 アストは剣を構える。その後ろにはイナビア、ヒルルの姿があった。

「俺達だって、二年前とは違うって所を見せてやるぜ」
「そうよ! リアンの仇はここで打たせてもらうわ!」

 アストとヒルルがリア・キマイラを挑発する。

「ゲヒァ。アアア……」

 リアンは既に崩壊し始め、気色の悪いキマイラの姿へと変貌しかけている。
 ここぞとばかりに飛びかかるアスト。だが、そうはさせない。仕事の時間だ。

 俺は岩陰から指を鳴らす。

 ドゴォァァン!!

 アストの直下から爆風が巻き起こり、アストは激しくきりもみしながら地面と衝突する。
 突然の出来事に面食らうアスト。ヒルルがその救護に向かう。だから、もう一発。

 ドゴッドガァァン!

「きゃああああっっ!!」

 瓦礫を巻き込んだ爆風がアストとヒルルの仲を裂く。アストは既に息も絶え絶え、ヒルルも既に体力の殆どを消耗している。


「何故だっ!? リアンは、何もしていないはずッ……!!」

 混乱するアストは次第に、得体の知れない第二の刺客の可能性に気付こうとする。
 そして、リア・キマイラはただただ、蠢き、覚醒の時を迎えた。プシュゥゥゥと熱い蒸気を解き放ち、成形が完了する。

「さぁ、アルケーの塔、第五層守護者。リアンが参ろう」

 グジャア。

 究極体リアンへと変貌したキマイラは目下に転がるアストをヒルルの元へと蹴り飛ばし、激突させる。

「一体、何が起きているんだ……」

 イナビアが目の前の出来事を信じられずに、目を点にしている。

「ガァッハ……」

「アスト!! ヒルル!! 大丈夫か!?」

 イナビアが弓で応戦するも、直ぐ窮地に追いやられる。それも当然だ。俺が影から弓矢を抑制している。

 イナビアの元へとゆっくりと近づくリアン。そしてアストが飛び上がり、リアンの腹部を突き刺す。

 グザァッ……。

 するとジュワーっと、リアンの腐肉が溶けていくのが分かる。やはりか。
 今回、リアン、イナビア、ヒルルは全員アンデッド対策をメインにしっかりと戦力を増強してきている。

 流石は、ディオーネ随一の冒険者と言った所だ。それでも甘い。リアンは剣を腐食させ、次第にその剣まで腸の一部として飲み込み、アストを地に叩き伏せた。

 そう、対策済みなのは、リアンも同じようだ。

 リアンは再び歩みを進め、イナビアを追い込む。
 俺は裏からイナビアの放つ弓矢を全て反射し、イナビアを磔にした。
 リアンは自分以外の者による力の介入を気にもせず、イナビアの顎を掴み、言う。

「……お前が、俺達の仲を引き裂いた。解るか?」

「俺は、何もしていないッ! もう、こんな事するのはやめてくれぇ!!」

「俺はお前らが居なくとも、俺はアストやディンと一緒に冒険者もして居られるだけで充実していた。それなのに、今はどうだ。アストは愚かにも、ディンを切り捨てた。あの時の俺達はディン無くしては、ここまで来れなかったのに気づいていなかった……。俺は、生きて、ディンに詫びたい……。お前の苦労も知らずに、帰還を断り、あまつさえ俺が死んでしまった事を……。きっと、アイツはまだ、生きている……」

「そんなの、知るかッ! 俺じゃなくアストに言えよ!」

 イナビアは目を剥き、端正な顔を崩しながらリアンへ吠えかかる。

「アイツには失望した。何も言わずに苦しみだけ与えてやる。だからイナビア、お前に言っている。お前がヒルルを連れて来てから、俺は死に、ディンはアストによって葬られた。 お前が齎した最悪はお前の命で償え。分かったな」

「やめ、てくれ……。あああああっっ!!!」

 ズルズルと触手を伸ばし、イナビアの頭に手をかける。

 ズプゥ、と頭蓋を軽くくり抜き、リアンの触手がイナビアの脳を掻き回す。

「…………!!」

 この世のものとは思えないイナビアの絶叫は物や形に表すことは出来ない。口をバックリと開き、赤い涙を滂沱の様に流す。イナビアは既に脳を掻き回され、神経が狂わされている。抵抗する力を失い、ただただ、終わるその時まで、痛み感じ、もがき続ける。

「そうだったのか……」

 全てを知ったように、リアンが呟く。ピクリとも動かないイナビアは呼吸はしているものの屍の様にだらしなく、体を投げ打っている。
 そして、足元に現れた砂塵に飲み込まれ、存在は消滅した。
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