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幼少期
王様襲来です。
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「クッ、嫌味か?フィル。わざわざ『国王陛下』などと」
「それ以外にないだろう」
嫌味か?なんてセリフはそんな楽しそうに言うことじゃないと思います!
つーか……やっぱり国王陛下ですかそうですか!
えーえー知ってましたよ、だって「クロヒル」で聞いたことある声だったからね!
でもいきなり現れるなんて思わないでしょ普通!
この国の国王陛下……ヘルシャータ・クローネ・シックザール。
愛称はヘルだったかな?
確か──お父様の幼馴染の一人であり、性格は豪胆で自由奔放、けれどやることはきっちりとこなすタイプ。
王としては融通が利き、柔軟な考え方をすることが出来る賢王、って感じだったかな。
「お前の大事な息子たちが城に来ると聞いて会わないわけにはいかんだろう?」
「来るなら来るで先に知らせれば良いものを……」
「何を言う、それでは楽しみが半減してしまうだろう。俺はお前の驚く様子も楽しみだったんだからな。それより……この二人だな?お前の大事な『宝』は」
『クロヒル』での陛下について思い出していたら、陛下はいつのまにか私たちの正面に回り、面白そうに私たちの顔をまじまじと見つめていた。
私は少々居心地悪く感じながら大人しく観察されながら考える。
挨拶……しなくちゃだよなあ、やっぱり。
私が挨拶しないとセイル兄様も挨拶できないしね。
そう思って指先まで気を使って優雅に立ち上がり、極上の微笑みを浮かべながら跪いて頭を垂れる。
それに追随してセイル兄様も同じポーズをとったのを確認し、口を開いた。
「初に御目にかかります、陛下。私は……」
「ああ、そのように畏まるな。今の俺は『王』ではなく『フィルの幼馴染』だからな、陛下などと呼ばずヘルとでも呼んでくれ」
「わ、分かりました、ヘル様」
「……ほう?つまり、ここに来るためにわざわざ仕事を終わらせた……もしくは明日に回したということか」
ヘル様の言葉に、お父様が片眉を上げながらそう言った。
……つまり、ヘル様はただのお父様の幼馴染としてここに来るために仕事を片付けて、自分が王でなければならない時間を終わらせたってこと?
もっと簡単に言えば、今はプライベートだってことだね?
私とセイル兄様が理解して席に戻るのと同時に、お父様が絶対零度の視線をヘル様に浴びせながら、呆れたように口を開く。
……ちょ、お父様、表情間違ってるよ!
その顔は心底軽蔑してる人とか、嫌悪してる人に使う顔であって、ただ呆れてる時に使う顔じゃないから!
「……お前がそんな面倒なことまでするなら、リュートとセイルに会いに来たのは顔が見たかったという理由だけではなさそうだな。用件を話せ」
何か他にも目的があったからヘル様は仕事を前倒ししてまでわざわざここに来たのであって、そうじゃなかったら呼びつけられてたってこと?
……呼びつけられるってことは謁見……いや、謁見じゃないにしても緊張が半端なかっただろうなあ。
良かった、呼びつけられなくて。
「さすがだな、フィル。それと…リューティカとセイラートだったか。お前たちもだ。俺の発言の意図を正確に読み取っていただろう?優秀だな」
にやりと笑い、お父様と私たちを褒めるヘル様。
その後で満足気に「やはりこの二人を選んで正解だった」と呟き、うんうんと一人で頷く。
……ちょっと待て、今『選んだ』って言った?何に?!
「…『選んだ』…そういうことか…。まあ、色々な事情を踏まえた上でそれが最善ではあるし、断る理由もないので構わないが、せめて私にくらい話を通しておけ」
「フッ、さっきも言っただろう?それでは楽しみが半減してしまう、と。それに、この件に関してはお前が断らないのは分かっていたからな」
疲れたようにため息をつくお父様と、楽しそうににやにやと笑うヘル様。
いやー、お父様ってヘル様の側にいると苦労人っぽく見えるけど、つんけんしてる猫とちょっかいをかける猫がじゃれついてるみたいでなんか和むな。
……でも、今お父様たちが話してるのって私たちのことだよね?
『この件』とはどの件でしょうか。
私たちは何に選ばれたんだ。
まあお父様に話を通してないんだから、そう大事な話じゃない…と、思いたいなあ…。
ちょっと不安なのでセイル兄様の手を握ると、セイル兄様が頭を撫でてくれた。
この短時間の間に頭を撫でられるのは二度目なので、『かっこいいリュート様』を目指している身としてはなんか情けないような気もするが、気持ちいいから良しとしよう。
そうやって私が落ち着いている間にも、お父様とヘル様の会話は進んでいく。
「…まったく…日取りはいつにする」
「ん?今日に決まっているだろう?」
……おいおいおい、何か今聞き捨てならない言葉が聞こえましたけど!
今日?!今日って言ったよこの人!
てゆーか何の日取り?!
いい加減当事者にも事情を説明してくれませんか?!
せっかく落ち着いたのにまたも荒れ狂いだした私の内心など露知らず、ヘル様はイイ笑顔だ。
「はあ……お前ならばそう言うとは思ったが、リュートとセイルはまだ何も知らないのだぞ。せめて後日に」
「おおそうだな。二人にも説明しなければならなかったのをすっかり忘れていた。悪かったな、二人とも」
「あ、いえ、大丈夫です…」
「……人の話を最後まで聞け、ヘル」
お父様がフォローを入れてくれたけど、ヘル様は華麗にスルー。
……日取りは今日で決定なんですね、うん。
何の日取りか知らないけどね!
もうお父様でもヘル様でもどっちでも良いから早く説明してください!
「俺たちが先程から話しているのはだな、俺の息子たちの最初の学友についてだ。……ま、平たく言えば幼馴染だな。ここの人選に失敗すると後が悲惨でな……俺もかなり気を使うんだよ」
幼馴染……え、私たちがそれに選ばれたってこと?
いやまあ、家柄的にもゲームでの立場的にもごくごく自然なことなんだけど、なんかヘル様が難しい顔してるのは何でだろう。
「面倒なことに、今代は五つの公爵家全てに俺の息子たちと年の近い令息、令嬢が揃ってしまったのだ。いつもならば一つか二つの家は少し年が離れるのだがな……。実質はどうであれ、建前上はどの公爵家も同じ身分であり、王家との親密度も優劣はないからな。ある家の者を側近にして、ある家の者を側近にしない、というわけにもいかんだろう?」
あー……乙女ゲームだからね、不自然なくらい同じ年代に重要人物が揃っちゃうよね……。
野心の強い家なら側近にするために王子や王女の年齢に合わせて子供をもうけたり、養子を取ったりするんだろうけど、さすがに全部の家がそうとは思えない。
公爵家なんだからパワーバランスとかも考えて、敢えて歳をずらす家だってあるだろうし。
けど、同じ年代に揃っちゃった以上は側近にしないわけにもいかないよね。
よっぽどの悪評があるとかならあれだけど。
国の中心である王家がどこかの家だけ冷遇してるとか優遇してるとか言われるのはあまり外聞がよろしくないだろう。
特にこの国は、王家と五つの公爵家がバランスを保ってこそ上手く回ってきた国なんだから。
「……だからせめて、最初に側につく者は信頼のおける者にしてやろうというわけだ。信頼できる可能性が高く、尚且つ最初に選ばれても不自然でない者となると、俺の幼馴染であるフィルの息子たちか、もう一人の幼馴染の息子くらいしかいないんだよ」
……で、どっちにするか悩んでるところに私たちがタイミング良く城に出向いたと。
そりゃー選ばれるわけだ……。
あと、お父様の息子だからといって安易に『絶対に』信頼できる、とは言わない辺り、ヘル様はやっぱり賢王ってことなんだろうな。
…と考えていると、黙っていたお父様がおもむろに口を開いた。
「……リュート、セイル。王子殿下が二人いるのは知っているな?」
「はい、知っています」
この国の王族や貴族の名前や歴史についてはクラハに叩き込まれたのでよく知っている。
そう答えると、いつも無表情で凍てつくような眼差しをしているお父様の目元が、ほんの少し和らいだ。
なんだかそれだけで、お父様に褒められているような気がして、私もつい表情が緩む。
……勉強もっと頑張ろう、うん。
「……そうか。第一王子がセイルと同い年で、第二王子がリュートの一つ下だ。王太子はまだ決まっていないので、どちらが上ということはない。覚えておきなさい」
「分かりました」
その一連のやり取りをじっと見ていたヘル様が、突然ニッと唇の端を上げて笑った。
何だろう……今笑うようなことあったかな?
「視線だけで人を凍りつかせるフィルが父親なんてやれるのかと案じていたが、その調子では意外と大丈夫そうだな。ここのところ忙しくてあまり家に帰れていないし、息子たちとの距離の詰め方が分からずに溝が出来ているかと思ったよ」
……ヘル様、正解です!
その溝は私が強引に埋めたけど、そうしなかったらどんどん深くなっていってたと思います!
そう思ってお父様をちらっと見上げると、お父様も心当たりがあるのか、微妙にヘル様から視線を逸らしている。
「お、もしかして当たっていたか?だが、今はそう問題なく見えるぞ?」
「……リュートとセイルのお陰だ。二人の方から歩み寄ってくれたのだ」
……これは、お父様も距離を縮めたいと思ってくれていたってことかな?
そうだったら嬉しいなぁ。
ていうか、今までのことを踏まえて考えると、あれだね。
お父様は感情を表に出すのが苦手な不器用さんらしい。
「ほう……父親に歩み寄るのは勇気がいっただろうに。……やはり、この二人ならば任せられそうだな」
ヘル様は感心したように私たちを見て、「よく頑張ったな」と褒めてくれた。
そして佇まいを正し、軽く頭を下げる。
いきなり頭を下げられて困惑する私たちをよそに、ヘル様は口を開いた。
「……リューティカ、セイラート。俺の息子たちをよろしく頼む」
「「……」」
お父様が了承している以上引き受けないなんて選択肢は私たちにはないというのに、ヘル様はわざわざ頭を下げ、「頼む」とまで言ってくれた。
多分、これは王ではなく父親として、ってことなんだろう。
これは断れないよね。
私とセイル兄様は顔を見合わせ、微笑み合ってから返事をした。
「「はい、喜んで!」」
「……ということで、今から俺の息子たちに会いに行くぞ!」
そ、そういえば、日取りを今日にするとか言ってたの、完っ然に忘れてたぁぁぁぁぁ!!
「それ以外にないだろう」
嫌味か?なんてセリフはそんな楽しそうに言うことじゃないと思います!
つーか……やっぱり国王陛下ですかそうですか!
えーえー知ってましたよ、だって「クロヒル」で聞いたことある声だったからね!
でもいきなり現れるなんて思わないでしょ普通!
この国の国王陛下……ヘルシャータ・クローネ・シックザール。
愛称はヘルだったかな?
確か──お父様の幼馴染の一人であり、性格は豪胆で自由奔放、けれどやることはきっちりとこなすタイプ。
王としては融通が利き、柔軟な考え方をすることが出来る賢王、って感じだったかな。
「お前の大事な息子たちが城に来ると聞いて会わないわけにはいかんだろう?」
「来るなら来るで先に知らせれば良いものを……」
「何を言う、それでは楽しみが半減してしまうだろう。俺はお前の驚く様子も楽しみだったんだからな。それより……この二人だな?お前の大事な『宝』は」
『クロヒル』での陛下について思い出していたら、陛下はいつのまにか私たちの正面に回り、面白そうに私たちの顔をまじまじと見つめていた。
私は少々居心地悪く感じながら大人しく観察されながら考える。
挨拶……しなくちゃだよなあ、やっぱり。
私が挨拶しないとセイル兄様も挨拶できないしね。
そう思って指先まで気を使って優雅に立ち上がり、極上の微笑みを浮かべながら跪いて頭を垂れる。
それに追随してセイル兄様も同じポーズをとったのを確認し、口を開いた。
「初に御目にかかります、陛下。私は……」
「ああ、そのように畏まるな。今の俺は『王』ではなく『フィルの幼馴染』だからな、陛下などと呼ばずヘルとでも呼んでくれ」
「わ、分かりました、ヘル様」
「……ほう?つまり、ここに来るためにわざわざ仕事を終わらせた……もしくは明日に回したということか」
ヘル様の言葉に、お父様が片眉を上げながらそう言った。
……つまり、ヘル様はただのお父様の幼馴染としてここに来るために仕事を片付けて、自分が王でなければならない時間を終わらせたってこと?
もっと簡単に言えば、今はプライベートだってことだね?
私とセイル兄様が理解して席に戻るのと同時に、お父様が絶対零度の視線をヘル様に浴びせながら、呆れたように口を開く。
……ちょ、お父様、表情間違ってるよ!
その顔は心底軽蔑してる人とか、嫌悪してる人に使う顔であって、ただ呆れてる時に使う顔じゃないから!
「……お前がそんな面倒なことまでするなら、リュートとセイルに会いに来たのは顔が見たかったという理由だけではなさそうだな。用件を話せ」
何か他にも目的があったからヘル様は仕事を前倒ししてまでわざわざここに来たのであって、そうじゃなかったら呼びつけられてたってこと?
……呼びつけられるってことは謁見……いや、謁見じゃないにしても緊張が半端なかっただろうなあ。
良かった、呼びつけられなくて。
「さすがだな、フィル。それと…リューティカとセイラートだったか。お前たちもだ。俺の発言の意図を正確に読み取っていただろう?優秀だな」
にやりと笑い、お父様と私たちを褒めるヘル様。
その後で満足気に「やはりこの二人を選んで正解だった」と呟き、うんうんと一人で頷く。
……ちょっと待て、今『選んだ』って言った?何に?!
「…『選んだ』…そういうことか…。まあ、色々な事情を踏まえた上でそれが最善ではあるし、断る理由もないので構わないが、せめて私にくらい話を通しておけ」
「フッ、さっきも言っただろう?それでは楽しみが半減してしまう、と。それに、この件に関してはお前が断らないのは分かっていたからな」
疲れたようにため息をつくお父様と、楽しそうににやにやと笑うヘル様。
いやー、お父様ってヘル様の側にいると苦労人っぽく見えるけど、つんけんしてる猫とちょっかいをかける猫がじゃれついてるみたいでなんか和むな。
……でも、今お父様たちが話してるのって私たちのことだよね?
『この件』とはどの件でしょうか。
私たちは何に選ばれたんだ。
まあお父様に話を通してないんだから、そう大事な話じゃない…と、思いたいなあ…。
ちょっと不安なのでセイル兄様の手を握ると、セイル兄様が頭を撫でてくれた。
この短時間の間に頭を撫でられるのは二度目なので、『かっこいいリュート様』を目指している身としてはなんか情けないような気もするが、気持ちいいから良しとしよう。
そうやって私が落ち着いている間にも、お父様とヘル様の会話は進んでいく。
「…まったく…日取りはいつにする」
「ん?今日に決まっているだろう?」
……おいおいおい、何か今聞き捨てならない言葉が聞こえましたけど!
今日?!今日って言ったよこの人!
てゆーか何の日取り?!
いい加減当事者にも事情を説明してくれませんか?!
せっかく落ち着いたのにまたも荒れ狂いだした私の内心など露知らず、ヘル様はイイ笑顔だ。
「はあ……お前ならばそう言うとは思ったが、リュートとセイルはまだ何も知らないのだぞ。せめて後日に」
「おおそうだな。二人にも説明しなければならなかったのをすっかり忘れていた。悪かったな、二人とも」
「あ、いえ、大丈夫です…」
「……人の話を最後まで聞け、ヘル」
お父様がフォローを入れてくれたけど、ヘル様は華麗にスルー。
……日取りは今日で決定なんですね、うん。
何の日取りか知らないけどね!
もうお父様でもヘル様でもどっちでも良いから早く説明してください!
「俺たちが先程から話しているのはだな、俺の息子たちの最初の学友についてだ。……ま、平たく言えば幼馴染だな。ここの人選に失敗すると後が悲惨でな……俺もかなり気を使うんだよ」
幼馴染……え、私たちがそれに選ばれたってこと?
いやまあ、家柄的にもゲームでの立場的にもごくごく自然なことなんだけど、なんかヘル様が難しい顔してるのは何でだろう。
「面倒なことに、今代は五つの公爵家全てに俺の息子たちと年の近い令息、令嬢が揃ってしまったのだ。いつもならば一つか二つの家は少し年が離れるのだがな……。実質はどうであれ、建前上はどの公爵家も同じ身分であり、王家との親密度も優劣はないからな。ある家の者を側近にして、ある家の者を側近にしない、というわけにもいかんだろう?」
あー……乙女ゲームだからね、不自然なくらい同じ年代に重要人物が揃っちゃうよね……。
野心の強い家なら側近にするために王子や王女の年齢に合わせて子供をもうけたり、養子を取ったりするんだろうけど、さすがに全部の家がそうとは思えない。
公爵家なんだからパワーバランスとかも考えて、敢えて歳をずらす家だってあるだろうし。
けど、同じ年代に揃っちゃった以上は側近にしないわけにもいかないよね。
よっぽどの悪評があるとかならあれだけど。
国の中心である王家がどこかの家だけ冷遇してるとか優遇してるとか言われるのはあまり外聞がよろしくないだろう。
特にこの国は、王家と五つの公爵家がバランスを保ってこそ上手く回ってきた国なんだから。
「……だからせめて、最初に側につく者は信頼のおける者にしてやろうというわけだ。信頼できる可能性が高く、尚且つ最初に選ばれても不自然でない者となると、俺の幼馴染であるフィルの息子たちか、もう一人の幼馴染の息子くらいしかいないんだよ」
……で、どっちにするか悩んでるところに私たちがタイミング良く城に出向いたと。
そりゃー選ばれるわけだ……。
あと、お父様の息子だからといって安易に『絶対に』信頼できる、とは言わない辺り、ヘル様はやっぱり賢王ってことなんだろうな。
…と考えていると、黙っていたお父様がおもむろに口を開いた。
「……リュート、セイル。王子殿下が二人いるのは知っているな?」
「はい、知っています」
この国の王族や貴族の名前や歴史についてはクラハに叩き込まれたのでよく知っている。
そう答えると、いつも無表情で凍てつくような眼差しをしているお父様の目元が、ほんの少し和らいだ。
なんだかそれだけで、お父様に褒められているような気がして、私もつい表情が緩む。
……勉強もっと頑張ろう、うん。
「……そうか。第一王子がセイルと同い年で、第二王子がリュートの一つ下だ。王太子はまだ決まっていないので、どちらが上ということはない。覚えておきなさい」
「分かりました」
その一連のやり取りをじっと見ていたヘル様が、突然ニッと唇の端を上げて笑った。
何だろう……今笑うようなことあったかな?
「視線だけで人を凍りつかせるフィルが父親なんてやれるのかと案じていたが、その調子では意外と大丈夫そうだな。ここのところ忙しくてあまり家に帰れていないし、息子たちとの距離の詰め方が分からずに溝が出来ているかと思ったよ」
……ヘル様、正解です!
その溝は私が強引に埋めたけど、そうしなかったらどんどん深くなっていってたと思います!
そう思ってお父様をちらっと見上げると、お父様も心当たりがあるのか、微妙にヘル様から視線を逸らしている。
「お、もしかして当たっていたか?だが、今はそう問題なく見えるぞ?」
「……リュートとセイルのお陰だ。二人の方から歩み寄ってくれたのだ」
……これは、お父様も距離を縮めたいと思ってくれていたってことかな?
そうだったら嬉しいなぁ。
ていうか、今までのことを踏まえて考えると、あれだね。
お父様は感情を表に出すのが苦手な不器用さんらしい。
「ほう……父親に歩み寄るのは勇気がいっただろうに。……やはり、この二人ならば任せられそうだな」
ヘル様は感心したように私たちを見て、「よく頑張ったな」と褒めてくれた。
そして佇まいを正し、軽く頭を下げる。
いきなり頭を下げられて困惑する私たちをよそに、ヘル様は口を開いた。
「……リューティカ、セイラート。俺の息子たちをよろしく頼む」
「「……」」
お父様が了承している以上引き受けないなんて選択肢は私たちにはないというのに、ヘル様はわざわざ頭を下げ、「頼む」とまで言ってくれた。
多分、これは王ではなく父親として、ってことなんだろう。
これは断れないよね。
私とセイル兄様は顔を見合わせ、微笑み合ってから返事をした。
「「はい、喜んで!」」
「……ということで、今から俺の息子たちに会いに行くぞ!」
そ、そういえば、日取りを今日にするとか言ってたの、完っ然に忘れてたぁぁぁぁぁ!!
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