29 / 56
魔術師団の見学へ!
決闘の始まり
しおりを挟む
「ルールは簡単です。相手に一言でも降参と言わせれば勝利。相手に傷を負わせた場合はルール違反となります」
フォード先生のその言葉に私は応の返事をしようとしたのだけど、先を抜かれてメイエド魔術師団長が講義する。
「はあ?舐めてんのか?そんなの俺の勝利が決まってるようなもの―」
「いいからお前は黙ってろ。これでも最大限助けてあげてるんだ」
そう言って先生はキッとメイエド魔術師団長を睨んだ。
あら、フォード先生も少なからず被害を受けているはずなのに助けるなんて、随分と広い心を持っているのね。
「何言ってんだお前? ついに頭までおかしくなったか?」
「頭がおかしいのはお前だ!よりにもよってこの方を怒らせるなんて…!」
「はっ、ただのガキに何ができるってんだ」
「..........」
諦めたのか、呆れたのか、それとも他の何かなのか。フォード先生はメイエド魔術師団長の発言を聞くなり、微妙な顔をして黙り込んでしまった。
それにしてもこの人は、どこまで人を侮辱すれば気が済むのだろうか。
ここまで私を侮辱したのだから、当然私も遠慮はいらないわよね?
思わずニヤリと片方の口角を上げると、すかさずフォード先生が悲鳴を上げた。
「ひっ!あ、あの日と全く同じ顔をしているじゃないですか!やめてください!お願いですからこれ以上恐怖の記憶を増やさないでください!」
「うふふふふ、心外ですわね先生。私は一度決めたことは絶対に覆しませんよ?」
でも、あの日っていつのことかしら?
そう疑問に思い己の記憶を巡らせると、ふと、とある日の事を思い出す。
あっ、そういえば確かにあの日も、状況は違うけど今と同じようなことがあったわね。フォード先生もあの場にいたし、あのことを言っているのかもしれないわ。
でも、よく覚えているわね?あれは私が先生の教え子になったばかりの頃の話なのに。
「…全てお前が悪いんだからな。僕は助けようとした」
「はあ?いつ俺様がお前ごときに助けなんて求めた?」
「ごとき?フォード先生がごときだと言うなら、あなたはクソ以下ね」
いい加減に頭にきて言い返すと、慌ててフォード先生が口を挟んだ。
「ああああ!もうこれ以上この方を怒らせるな!よし、始めましょう!今すぐに決闘を始めましょう!」
確かに結構な時間が経過していて、その意見は尤もな話だ。だけど、私を時限爆弾のような扱いをするのはちょっとどうかと思う。
決闘を始めるために私とメイエド魔術師団長は距離をおいて向かい合い、フォード先生はその近くに立つ。
元から多かった観衆は更に増えていて、私達を離れた位置から取り囲んでいる。
…見世物じゃないんだけどなぁ。
そんな私の不満もよそに、フォード先生は決闘の始まりの合図をした。
「…始め!」
さあどうでる?
――傷を負わせずに相手を降参させる。
聞いただけでは簡単そうなルールでも、結構な難易度なのだ。
魔法の使用は許可されているけれど、それを使ってどう降参させるかが問題になる。
メイエド魔術師団長は「火」と「風」属性を持っていると聞いた。
なら私の周りに大きな火を浮かべて恐怖心を煽ろうとするか、風魔法を使って私の周りの酸素を消してギリギリまで窒息させるか…いや、それは流石のこいつでもそこまではしないはず。
「ふっ、いくら私の魔法が凄すぎても泣かないでくださいね!」
へぇ、そこまで言うなんて、どんな魔法を使ってくるのかしら?
メイエド魔術師団長はそう言うと、火魔法を使ったのか私の足元の周りを火で囲んだ。
わあ!私の足元の周りが火で囲まれてる!って......えっ?セリフは大人げないほど自信満々だったのに、これだけ?…いやいやいや、まさかね。きっとまだ何かあるんだわ。
そう思い、次は何をするのかと観察するも特に何もする様子はなく、得意げな顔を浮かべているだけ。
そ、そんな馬鹿な!こんな、水魔法でちょっと水をかけただけで消える火で囲むだけで私を降参させようと!?
もっと、こう、他にあるでしょう!せっかく結界術を発動しているのに全く役に立たないじゃない!
えええ?もしかして4歳児ってこれで怖がるのが普通なの?降参するほどに?
でもさっき威厳のある姿を見せたわよね!?
黙り込む私をどう思ったのか、彼は勝ち誇った顔をしている。
…うん、きっとまだ策があるのよ。
そう思い至った私は、次の策を見るために周りの火を水魔法で全て消化した…が、彼はぽかんと口を開けるだけで、何か次の策があるようには見えない。
「え!? 本当にこれだけ!?」
思わずそう口に出すと、周囲の観衆達が一気に吹き出した。やはりこう思っていたのは私だけではなかったらしい。
けれどフォード先生は笑っている周囲とは裏腹に、深刻な顔持ちをしている。
どうしたのかとは心配はするも、決闘を申し込んだ目的を思い出し、そちらに集中する。
ふぅ、呆れている場合ではないわ。できるだけ彼のプライドをズタズタにして勝たなければいけないのだから。そしてあいつの性根を叩き直せる命令を下すのよ。
笑われているのが気に触ったのか、ヘインツ・メイエドの顔は真っ赤だ。
――私の復讐(?)は、まだ始まってもいない。
フォード先生のその言葉に私は応の返事をしようとしたのだけど、先を抜かれてメイエド魔術師団長が講義する。
「はあ?舐めてんのか?そんなの俺の勝利が決まってるようなもの―」
「いいからお前は黙ってろ。これでも最大限助けてあげてるんだ」
そう言って先生はキッとメイエド魔術師団長を睨んだ。
あら、フォード先生も少なからず被害を受けているはずなのに助けるなんて、随分と広い心を持っているのね。
「何言ってんだお前? ついに頭までおかしくなったか?」
「頭がおかしいのはお前だ!よりにもよってこの方を怒らせるなんて…!」
「はっ、ただのガキに何ができるってんだ」
「..........」
諦めたのか、呆れたのか、それとも他の何かなのか。フォード先生はメイエド魔術師団長の発言を聞くなり、微妙な顔をして黙り込んでしまった。
それにしてもこの人は、どこまで人を侮辱すれば気が済むのだろうか。
ここまで私を侮辱したのだから、当然私も遠慮はいらないわよね?
思わずニヤリと片方の口角を上げると、すかさずフォード先生が悲鳴を上げた。
「ひっ!あ、あの日と全く同じ顔をしているじゃないですか!やめてください!お願いですからこれ以上恐怖の記憶を増やさないでください!」
「うふふふふ、心外ですわね先生。私は一度決めたことは絶対に覆しませんよ?」
でも、あの日っていつのことかしら?
そう疑問に思い己の記憶を巡らせると、ふと、とある日の事を思い出す。
あっ、そういえば確かにあの日も、状況は違うけど今と同じようなことがあったわね。フォード先生もあの場にいたし、あのことを言っているのかもしれないわ。
でも、よく覚えているわね?あれは私が先生の教え子になったばかりの頃の話なのに。
「…全てお前が悪いんだからな。僕は助けようとした」
「はあ?いつ俺様がお前ごときに助けなんて求めた?」
「ごとき?フォード先生がごときだと言うなら、あなたはクソ以下ね」
いい加減に頭にきて言い返すと、慌ててフォード先生が口を挟んだ。
「ああああ!もうこれ以上この方を怒らせるな!よし、始めましょう!今すぐに決闘を始めましょう!」
確かに結構な時間が経過していて、その意見は尤もな話だ。だけど、私を時限爆弾のような扱いをするのはちょっとどうかと思う。
決闘を始めるために私とメイエド魔術師団長は距離をおいて向かい合い、フォード先生はその近くに立つ。
元から多かった観衆は更に増えていて、私達を離れた位置から取り囲んでいる。
…見世物じゃないんだけどなぁ。
そんな私の不満もよそに、フォード先生は決闘の始まりの合図をした。
「…始め!」
さあどうでる?
――傷を負わせずに相手を降参させる。
聞いただけでは簡単そうなルールでも、結構な難易度なのだ。
魔法の使用は許可されているけれど、それを使ってどう降参させるかが問題になる。
メイエド魔術師団長は「火」と「風」属性を持っていると聞いた。
なら私の周りに大きな火を浮かべて恐怖心を煽ろうとするか、風魔法を使って私の周りの酸素を消してギリギリまで窒息させるか…いや、それは流石のこいつでもそこまではしないはず。
「ふっ、いくら私の魔法が凄すぎても泣かないでくださいね!」
へぇ、そこまで言うなんて、どんな魔法を使ってくるのかしら?
メイエド魔術師団長はそう言うと、火魔法を使ったのか私の足元の周りを火で囲んだ。
わあ!私の足元の周りが火で囲まれてる!って......えっ?セリフは大人げないほど自信満々だったのに、これだけ?…いやいやいや、まさかね。きっとまだ何かあるんだわ。
そう思い、次は何をするのかと観察するも特に何もする様子はなく、得意げな顔を浮かべているだけ。
そ、そんな馬鹿な!こんな、水魔法でちょっと水をかけただけで消える火で囲むだけで私を降参させようと!?
もっと、こう、他にあるでしょう!せっかく結界術を発動しているのに全く役に立たないじゃない!
えええ?もしかして4歳児ってこれで怖がるのが普通なの?降参するほどに?
でもさっき威厳のある姿を見せたわよね!?
黙り込む私をどう思ったのか、彼は勝ち誇った顔をしている。
…うん、きっとまだ策があるのよ。
そう思い至った私は、次の策を見るために周りの火を水魔法で全て消化した…が、彼はぽかんと口を開けるだけで、何か次の策があるようには見えない。
「え!? 本当にこれだけ!?」
思わずそう口に出すと、周囲の観衆達が一気に吹き出した。やはりこう思っていたのは私だけではなかったらしい。
けれどフォード先生は笑っている周囲とは裏腹に、深刻な顔持ちをしている。
どうしたのかとは心配はするも、決闘を申し込んだ目的を思い出し、そちらに集中する。
ふぅ、呆れている場合ではないわ。できるだけ彼のプライドをズタズタにして勝たなければいけないのだから。そしてあいつの性根を叩き直せる命令を下すのよ。
笑われているのが気に触ったのか、ヘインツ・メイエドの顔は真っ赤だ。
――私の復讐(?)は、まだ始まってもいない。
1
あなたにおすすめの小説
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
神々の寵愛者って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~
結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』
『小さいな』
『…やっと…逢えた』
『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』
『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』
地球とは別の世界、異世界“パレス”。
ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。
しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。
神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。
その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。
しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。
原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。
その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。
生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。
初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。
阿鼻叫喚のパレスの神界。
次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。
これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。
家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待!
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
小説家になろう様でも連載中です。
第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます!
よろしくお願い致します( . .)"
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる