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お茶会デビュー
お茶会4
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「で、どうしてなの? 」
「…誤魔化されてほしかったんだけどな」
話が本題からそれたと思い、もう一度同じことを問えばエドはわかりやすく目を逸らす。
「…私が何かしちゃったの?言ってくれないとわからないわ」
エドは目を伏せるだけで、話してくれそうにない。
うーん、本当にどうしたのかしら…贈り物は悪くなかったはずよ?あの花が出回るようになれば、国の利益になること間違いなしだもの。書類だから見栄えは悪いけれどね。
だったら何が不満なんだろう…ああ不満といえば、エドは一人の子供としてじゃなくて王太子として接されるのを嫌っていたわね。
…うん? ああああ! そ、それだわ! 国益のためのプレゼントを渡すなんて、全く友達として渡していないじゃない! だから私に怒っているのね!?
恐る恐るエドの顔を見やると、表情を取り繕っているではないか。
なるほど…あれは、絶対に内心で怒っているのだわ…嫌われちゃったかしら。いいえ、元から嫌われていたのかもしれないわ。
そうしょんぼりしていると、そんな私の様子に気づいたのか、慌ててエドが否定する。
「あっ、ごめん、アイシャは全く悪くないよ。全面的に僕が悪いから気にしないで」
これは、気を使わせてしまってるんじゃないかしら。ああ、エドはこんなにも優しいのに、自分が情けないわ…
「…アイシャ、本当だよ? 」
ええ、ええ、エドが優しすぎるというのは十分にわかっているわ。
「その顔は、信じてないね…はあ、どうしてそう――…ねえ、どこへ向かっているのか聞いてもいいかな」
早くあれを渡さないと―と考えた私は急いでエドの手を取り目的の場所へ連れて行こうとすると、エドが不審な視線を送ってくる。
「エド、私からの贈り物はあれじゃないわ」
「え? 君からはもうもらっ―」
「いいえ! あれはウィステリア公爵家から王太子への贈り物で、私からはまだあげていないのよ」
エドを連れて庭の奥へ進んでいくと、だいぶお茶会の場から遠ざかったようで、周りは完全に静かになる。
よし、ここなら大丈夫そうね。あら、辺り一面が薔薇だわ。薔薇園だったのね。うふふ、確かお母様は「薔薇に囲まれた場所で贈り物をすれば仲良くなれる」と言っていたわよね。今の私達にはぴったりだわ!
「ねえエド、私はね、エドと出会えて本当に良かったと思っているのよ。身分は全く関係ないわ。だからね、いやじゃなければ、これからもずっと仲良くしてね! 」
私はそう言って用意していた栞をエドに手渡した。そしてもう一つ用意していた自分の分の栞も手に持ち、はにかんでみせる。
「あのメリルの花を押し花にして、しおりを作ったの! 私とおそろいよ」
するとエドは驚いたようにい目を見開き、顔を手で覆ってしまった。
あれ、エドの耳が赤いわ。…もしかして私とお揃いは嫌で、怒ってしまったの? それとも、こんな誰でも作れるようなプレゼント、いらなかったのかしら…
「あっ、ごめんなさい…おそろいがいやなら、私の分もエドに―」
「ううん、ありがとう。これまでの人生で一番嬉しいよ」
そう顔を綻ばせるエドは、長く一緒にいた私でも見たことのないほどに嬉しそうだった。人生で一番というのは流石に大袈裟すぎるから、きっとそれぐらい嬉しいということなのだろう。
ふふっ、さっきは焦っちゃったけど、良かった、喜んでもらえて。
だから少し前から心臓がドキドキしてしまうのは、喜んでもらえた嬉しさからよ。それ以上でも、それ以下でもないわ。
「そ、それより、このバラきれいね! 」
どんどん大きくなる心臓の音を誤魔化すように近くの薔薇を指差すと、またもやエドが距離を近ずけてくる。
「アイシャはバラが好きなの? 」
「えっ? え、ええ、そ、そそそそうね、今好きになったわ」
私、どうしてこんなに緊張してるんだろう…?
「ぷはっ、なにそれ。うん、じゃあ、また一緒にここに来よっか。ああ、その時にはもう学園を卒業しているかもしれないけどね。苦労しそうだなあ」
「?わかったわ、約束ね」
何か変なことを言っていたけど、きっとこれからも忙しくなるだろうから、次にいつ来れるかわからないってことよね。
どうしてかな。次一緒に来れるのがいつなのかも決まっていないのに、もう楽しみになってきたわよ。
「…誤魔化されてほしかったんだけどな」
話が本題からそれたと思い、もう一度同じことを問えばエドはわかりやすく目を逸らす。
「…私が何かしちゃったの?言ってくれないとわからないわ」
エドは目を伏せるだけで、話してくれそうにない。
うーん、本当にどうしたのかしら…贈り物は悪くなかったはずよ?あの花が出回るようになれば、国の利益になること間違いなしだもの。書類だから見栄えは悪いけれどね。
だったら何が不満なんだろう…ああ不満といえば、エドは一人の子供としてじゃなくて王太子として接されるのを嫌っていたわね。
…うん? ああああ! そ、それだわ! 国益のためのプレゼントを渡すなんて、全く友達として渡していないじゃない! だから私に怒っているのね!?
恐る恐るエドの顔を見やると、表情を取り繕っているではないか。
なるほど…あれは、絶対に内心で怒っているのだわ…嫌われちゃったかしら。いいえ、元から嫌われていたのかもしれないわ。
そうしょんぼりしていると、そんな私の様子に気づいたのか、慌ててエドが否定する。
「あっ、ごめん、アイシャは全く悪くないよ。全面的に僕が悪いから気にしないで」
これは、気を使わせてしまってるんじゃないかしら。ああ、エドはこんなにも優しいのに、自分が情けないわ…
「…アイシャ、本当だよ? 」
ええ、ええ、エドが優しすぎるというのは十分にわかっているわ。
「その顔は、信じてないね…はあ、どうしてそう――…ねえ、どこへ向かっているのか聞いてもいいかな」
早くあれを渡さないと―と考えた私は急いでエドの手を取り目的の場所へ連れて行こうとすると、エドが不審な視線を送ってくる。
「エド、私からの贈り物はあれじゃないわ」
「え? 君からはもうもらっ―」
「いいえ! あれはウィステリア公爵家から王太子への贈り物で、私からはまだあげていないのよ」
エドを連れて庭の奥へ進んでいくと、だいぶお茶会の場から遠ざかったようで、周りは完全に静かになる。
よし、ここなら大丈夫そうね。あら、辺り一面が薔薇だわ。薔薇園だったのね。うふふ、確かお母様は「薔薇に囲まれた場所で贈り物をすれば仲良くなれる」と言っていたわよね。今の私達にはぴったりだわ!
「ねえエド、私はね、エドと出会えて本当に良かったと思っているのよ。身分は全く関係ないわ。だからね、いやじゃなければ、これからもずっと仲良くしてね! 」
私はそう言って用意していた栞をエドに手渡した。そしてもう一つ用意していた自分の分の栞も手に持ち、はにかんでみせる。
「あのメリルの花を押し花にして、しおりを作ったの! 私とおそろいよ」
するとエドは驚いたようにい目を見開き、顔を手で覆ってしまった。
あれ、エドの耳が赤いわ。…もしかして私とお揃いは嫌で、怒ってしまったの? それとも、こんな誰でも作れるようなプレゼント、いらなかったのかしら…
「あっ、ごめんなさい…おそろいがいやなら、私の分もエドに―」
「ううん、ありがとう。これまでの人生で一番嬉しいよ」
そう顔を綻ばせるエドは、長く一緒にいた私でも見たことのないほどに嬉しそうだった。人生で一番というのは流石に大袈裟すぎるから、きっとそれぐらい嬉しいということなのだろう。
ふふっ、さっきは焦っちゃったけど、良かった、喜んでもらえて。
だから少し前から心臓がドキドキしてしまうのは、喜んでもらえた嬉しさからよ。それ以上でも、それ以下でもないわ。
「そ、それより、このバラきれいね! 」
どんどん大きくなる心臓の音を誤魔化すように近くの薔薇を指差すと、またもやエドが距離を近ずけてくる。
「アイシャはバラが好きなの? 」
「えっ? え、ええ、そ、そそそそうね、今好きになったわ」
私、どうしてこんなに緊張してるんだろう…?
「ぷはっ、なにそれ。うん、じゃあ、また一緒にここに来よっか。ああ、その時にはもう学園を卒業しているかもしれないけどね。苦労しそうだなあ」
「?わかったわ、約束ね」
何か変なことを言っていたけど、きっとこれからも忙しくなるだろうから、次にいつ来れるかわからないってことよね。
どうしてかな。次一緒に来れるのがいつなのかも決まっていないのに、もう楽しみになってきたわよ。
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