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プロローグ[婚約破棄と引き換えに失った王国の損失]

彼は言いました。「婚約破棄だ!」

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 「ユリエラ・カリギュラ・エンドハイム侯爵令嬢!貴様はここにいる俺の真に愛する令嬢、ナナリー・トリカプト男爵令嬢に悪辣なるイジメをしていたな…!?」
等と新年祝賀会『言祝ことほぎの彩』の開口一番に口にした空気読まねぇー令息──いやいや、残念…“残念お貴族サマ”……もとい、残念王子(笑)は──何を隠そう槍玉に挙げられた私、ユリエラ・カリギュラ・エンドハイム侯爵家が次女の婚約者なのですから。…あ、いやーー“元”婚約者…?いや、まだ打診されたばかり……??
……。

 「教科書を隠すなど卑劣な──」

いや、でも…私もそうですが、このボンクラーー

 「キャッ♡エリック様ぁ~は素敵です♡ナナリー、ときめきいちゃいますぅう~~♡♡」

…若干歯に物でも詰まったかのような、頭も下半身もゆるゆるな癪に障る猫なで声のご令嬢──いや、これもう阿婆擦れだろ、と春麗らか~な和やか~な雰囲気を秒でぶち壊しにされた誰かが口にした。
…………。

……?あー…、返事?

 「畏まりました。婚約破棄との事、此方に既に記載済みです。…はい、確かに。では続いて慰謝料と昨年度末がゴルトー村から川挟んでの三つの都市部全域で蔓延まんえんしていたパグナ病による飢饉に対する2億コルの貸付を即時返済してください。──期限はとっくに過ぎてんだよ、このボンクラ!?しっかりきっかり耳揃えて返せや、このど阿呆!!」
 「……ひぃぅっ!?ご、ごごごごごめんなひゃいっっ!!?」
ダンッ、ダンッ…と右耳、左耳…とスレスレを短剣ダガーのようなモノが掠めていった…ガンッ、ガンッ!…壁に刺さった“ソレ”は唐突に消える。
 「オオー!!」「な、なんだ…っ!?」
 「…早業で殆んど見えなかった…なんか飛んできたような…?」「いや、あれ短剣だろ、どーみても!」
 「…そうか?」「そうだよ!」
……。
なんか、外野が盛り上がってますね。
…エリック・ジャン・ブルーライトもとい、今現在は国王陛下より賜った(押し付けられた)…直轄地の自治統治を任されているのですが……まあ、国王陛下の思惑が透けて見える今回のお話し。
すわ私とこのボンクラの婚約・結婚の契約。
……。まあ、初っから決まっていた──なんて知ったら。
……。
…発狂するのではなくて?このど阿呆。
……。
…まあ、どーでもいいですけどね。
 「で、でも…ユーちゃん!?そ、そそそんな大金直ぐに用意出来ないよぉ~~?!」
青ざめ狼狽え縋りついて来そうなボンクラと私の間に素早く現れて妨害しているのは…当然私の護衛騎士。漆黒の長髪を高く結わえ小麦色の肌、怜悧な氷の如く冷めた眼差しで縋りついて来ようとしたど阿呆の腕を片手で捻りあげている…。
 「手を離せ、このボンクラ王子。お嬢様の玉のような肌に痕でも残ったらどーする?……。…切るか?この腕。」
 「い゛、いだだだだっ!?痛い痛い痛い~~~ッ!!?」
 「黙れ、虫。お嬢様の方がもっと痛かった筈だ。お前が任された筈の領地…何故?本来は万事抜かりなく采配しているのたぞ?…お前がした事はなんだ?愛人を堂々と領主の家にあげることか?その阿婆擦れ女に貢ぐ事か?ん?死ぬか?今ここで」
「…ひぃぅっ!?ずびばぜんっ!許して…殺さないで……ッ!?」
……。
うん、護衛騎士ルイス・ハイランドは相当鬱憤が溜まっていたようですね…。
……。…まあ、私には実害ないので放置しましょう。
元々この幼馴染み兼元婚約者には恋慕の情は毛ほどもなかったですし。
件の村三件と小さな街は一つに統合されて新たな所に「街」として一つに纏められてますし。
私の仕事はもう終わってます。
そしてーー

 「…蝗害で作物は食い尽くされ、四年前の5月頃から雨があまり降らなかった…そしてそのまま夏へ突入。確かに泣きっ面に蜂のような天災だろう。だからと言ってーー愛人に走るのはどうなんだ?折角お嬢様の努力でどうにか貯めた復興支援金…何故そこな阿婆擦れの下らんドレスに換えたんだ?え?言ってみろ。」
 「下らなくない!!ナナリーは僕の大事な人だ!僕は…僕はナナリーと結婚するんだぁーーあ!?いだっ、いだだだだッツ!!」
ギリギリ…。
いや、護衛騎士が益々締め上げているみたいですね。
……。
腕、使い物にならなくなるのでは?
心なしかボンクラ王子の顔面も蒼白から赤、青、白…と目まぐるしく変化しているような…。
……。
 「…はぁ、ルイス。その辺で離して頂戴」
 「……。」
 「お・願・い」
テノールボイスが素敵な私の護衛騎士様…どうかお願いを聞いてほしい。
そんな毒にも薬にもならない男なんて放って私の方を見て欲しい。
…そんな念を込めて上目遣いで熱っぽく見詰めます。
……。
 「…チッ、分かった。分かりました。お嬢様にそこまで言われたら離しますよ…おい、お前ーーどーせ極刑だろうが、死罪はないだろうから言っておくが──もう二度とお嬢様の手を煩わすなよ?分かったな?!」
 「…ひぃぅっ!?」
バターンッ!
シーーン。
一瞬の静寂後、会場の壁にずらっと並んで警戒任務に当たっていた騎士が数人此方に向かって来ている…おおう、どうやら阿婆擦れ令嬢(笑)は猿轡を嵌められ、魔力封じの腕輪を両手に付けられ、ぐるぐるの簀巻きにされ退場して行った…。

(結局一言も口を挟めなかったな…あの阿婆擦れ)
(ああ、違いない…あの王子はもう終わりだな。)
(…やれやれ。新年早々に宴を騒がせて…何がしたいんだか。)
(他二人の王子殿下は優秀なだけに…、な?)
ヒソヒソと声を潜めて語らう貴族子息とその親兄弟達。
…そもそも第三王子は頭があまり宜しくない。考えも足りない。知識も足りない。努力と言う名の言葉は大っ嫌いで王族に必須な周辺諸国の地名や特産品、主に発展している工業・産業、食文化…等々。
国内外の伯爵位以上の名前と顔(これは写真がある)の一致。
他国の優れた文化、マナー、国内外に通じる晩餐会に於ける作法。会話運びやお茶会マナー、お茶会時の避けるべきワードや、適切な距離感を保っての和やかな雰囲気作り。
当然あのボンクラ王子に出来る訳がない。
自国語ですら真面に話せないのだから。
……。あの阿婆擦れーートリカプト男爵の庶子と知り合ってからは更に酷くなった。
元々なかった信頼と王族としての器。
……正直子供の頃はマシだった。
なんでああなったのか。
……。
私が優秀だから?
女に負けて悔しい?
努力したくない?自分は王子なのだから忖度しろ?
仕事はしたくないが一生遊んで暮らしたい?
女遊びして何が悪い?
俺は第三王子なんだぞ!
いや、ふざけんなよ?マジで。
それはそういう親の下で生まれただけですし。
それを言うなら私も同じく「侯爵家」に生まれた貴族令嬢なだけです。
偉い訳では御座いません。
…何を威張れるのか。
親の意を借りて何でもかんでも好きに出来ると思ったら大間違いですよ。
……。
馬鹿も休み休み言え、ボンクラ王子。
 「…この国に疫病を蔓延させましょうか。ボンクラ王子がそこまで言うなら」
 「!?」
 「!?」
 「!?」
 「!?」
……。

場は一気に静まり返った。
…いや、どれだけ驚いているのか。
皆その顔には「こいつなら遣りかねない…」と書かれている。
ーーそう、今世の私──と言うか「エンドハイム侯爵家」は魔導師と薬師の家系。そこに新たな風──まあ、私の事です。はい。
古の錬金術師の古文書と錬金釜を自宅の納屋で見つけて色々弄っていたら──
 「大丈夫。私、錬金術師ですから。…望みなら王子とそこな阿婆擦れ二人限定に呪いでも掛けましょうか。」
笑顔で言ってやりました。
 「…ひぃぅっ!?」
……。
…なんでかボンクラ王子とごろか阿婆擦れも一緒に気絶。……。…いや、何故に?
…………
……。


 「…それは止めてくれ。ユリエラ嬢」
 「……。」
 「……。」
 「……それは〝命令〟、ですか?」
 「いや……」
 「では、私はこの国には何の思い入れもないですし、帝国に渡る許可ーーああ、これも必要ないですね?身一つで今にでも出て行けますし。そもそもこの国は選民思想が強すぎて修復不可ですわ、国王陛下に置かれましては我が家の帝国への寝返りと鞍替えを黙って見送るべきだと愚考致します。」
温故知新。
新しきを知り旧きを知る。
……実にいい言葉だと思いませんか?
…と、小首を傾げて微笑んでみました。…うふふ。
 「…ユ、ユリエラ嬢!?言葉が過ぎますぞーーッ!!」
 「黙れ」
 「なん、」
 「余の声が聞こえなかったか?それともその耳は飾りか。」
 「…………。」
 「黙ったな…それでエンドハイム嬢は如何する?」
 「答える義理があるとでも?」
 「……。」
 「……。」
 「……ない、な。」
 「…陛下の事は嫌いではなかったですよ。と言うか私の初恋の相手であるあなた様を私が心底嫌える筈が有りませんわ。ブルーライト国王陛下」
他人行儀な…、元婚約者であり、元義理の娘になる予定だった二人…両者の間には物悲しくも寂寥感と明日への希望が仄かに流れている。
そこには僅かの期間でも「義娘むすめ」と「義父ちち」と呼びあえた確かな絆があった。
 「ユリエラ…」
 「…さようなら。そして、益々のご健勝を遠い帝国の地より祈らせて下さいな」
 「……ああ、達者でな」
 「はい。…はい、陛下。」
……。

その後は恙無つつがな く新年祝賀会は無事に再開され、会場である主応接間メインホールは盛況の内に和やかな笑い声がささやかに聞こえてきた…。
件のお馬鹿二人とその取り巻き(ボンクラの側近候補と言う名の腰巾着)…は、それぞれ家の者が別室へと運ばれた。
……。
まあ、そちらはボンクラ王子様(笑)に追随してあの阿婆擦れが言うままの証拠や証言の──捏造…とは言うものの、ほぼほぼ第三者の目撃者も第三者からの「証拠」の提示もない証拠を元にこんな衆人環視の中糾弾する──…一体どこの暴君だろうか?ヒットラーもここまで酷くなったぞ?ーーたぶん。
言い分も癇癪かんしゃくもまるで幼児。
取るべき対応も、覚悟も中途半端。
そもそもが学院の成績も後ろから探した方が早いボンクラ(エリック)と上から探した方が早い学年首席(ユリエラ)とでは頭の出来からして違うのだ。

 「災難だったわね、ユリ。」
 「?何の事ですか?」
 「何の事…って、アンタねぇ…」
呆れたような眼差しを向ける紫パールのドレス…上はワンショルダーで胸元は大胆にV字でカットされ、絶妙に谷間…と言うか、横乳が見えている大胆なデザイン。紫地に白の刺繍で(前世だと東洋龍だと言われる)蒼光龍ブルーライトドラゴンの横顔…これは彼女の夫──この国の「王家」の紋章だ。
勇ましくも気高い厳のある紋。…学院の卒業と同時に臣籍降下が決まっていたユリエラの婚約者…エリックも又本来なら卒業後に学生(中等部)の頃より王族は皆小さな領地を任される。それが仕来たり。
第三王子だったエリックにはその先の三つの村と小さな街…どちらも卒業後移り住むエリックの領地であり、守るべき領民がいる場所。
学生の頃から暇を見つけては交流を怠らない…まあ、社交やら勉強やらで殆んど取れないと言うのならそれを代わりに見れる人材の手配や派遣をすればいいのだ。臣籍降下しても使なのだから。…貴族と言う者は。
 「…?エリーの言うことが分かりません。…困りました。アズさんどう思われます?」
 「…いや、そこで私に振られても…ね?」
最愛の妻の親友の唐突過ぎる振りに苦笑で返すのは赤毛の青年。

アズーリア・ブロウ・ブルーライト。
第一王子。年齢は18歳。
侯爵家令嬢ユリエラ公爵家令嬢エリーゼの二つ上。高等部二年Sクラス。魔導技師科所属。
因みに「王立学院」は下が12歳。上は16歳で卒業だ。
4年通う。ここまでが「初等部」。16歳~19歳まで通うのが「中等部」。19歳~25歳まで通うのが「高等部」。
……前世風に言うなら初等部はそのまま小学六年生から通い始めて中学校卒業までを指すのが「初等部」で、高校三年間がそのまま「中等部」。
高校三年間だけじゃあ足りないと言う人が大学─…「高等部」へと進学する。
四年通うのが基本だがーーまあ、研究を続けたい学生はいつまでも大学に在籍していた前世日本のように、ブルーライト王国でも同様に既に卒業出来るだけの単位も論文も提出しているが一向に卒業しない生徒は多い。(これには学院の生徒限定学生寮が格安で使用できるから研究費が足りない、時間が足りないと嘆く学生=研究生は諸々の面倒を面倒臭がって出て行かないのが要因である)
家にも領地にも戻らない変わり者──彼等は度々そう揶揄されるが決して研究室からは出ないと言うのだから。その情熱はすごいものがある。
因みに「王立学院」は飛び級が認められている。それは「初等部」から可能で、希望するならいきなり「高等部」に初等部一年の時点で進学する事も可能だ。
……。
まあ、その分飛び級試験は厳しいものになるが。
初等部四年の内容を全問正解するのは勿論の事、中等部三年ないし、一年分の学習量を空で解けなくてはならない…。

 「アズ」
 「…もういいのかい?」
 「うん♡」
見詰め合う美男美女。……。
甘い…実に甘い。
ブルーライト国王陛下は68歳、王太子殿下は35歳。
そしてーー国王陛下の孫であり王太子殿下の長男であるアズーリア様…次代も次々代も安泰な豊歌的で平和も平和。
気候も一年を通して一定の温度。けれども四季もちゃんと存在していて…穏やかな気性の者が多い。
風光明媚な自然がそのまま残っている国。ブルーライト王国。東に海、北は山脈、他は森林と川と湿地帯に囲まれた国だ。
前世だと北海道丸々一つ分くらいの面積。…形は大きなひし形?だ。…空中から見下ろしたらそのように見える。
 「弟がーー、エリックが悪かったな。ユリ」
 「気にしてませんよ。アズさん」
第三王子ーーエリックは何を隠そうこのアズーリア様の異母弟なのです。
…どうしてなのか、それとも元からなのかは分からない。
国王陛下としてはお辛いのでしょう。
次代は問題なく、次々代も優秀。…なのに第三王子があんなの。
エリックの母君であるロゼリア側妃は忠臣の祖、バラクシア侯爵家の出で在らせられるのに…。
…因みに公の場では陛下は例え孫であろうとも自分の子として口にされるが、それは真の関係性に則してはいないので悪しからず。
国王陛下にとっては己以外全て等しく〝自分の子〟と見做して発言する。…それは例え血縁があろうと無かろうと。
……まあ、“孫”であるエリックの婚約者として遇していた期間も飛び級して暇になったユリエラのとしてあの領地は与えられたのだが。
ああ、因みに件の領地はもう領地毎している。ーー帝国の廃鉱山と
その地にいる領民毎、土地毎交換したのはユリエラが【聖女】の称号を獲得した瞬間に授かった奇跡…〝銀の鍵〟が原因だろう。

【銀の鍵】
は時と時を繋ぐ鍵。
は地と地を交換する鍵。
黄昏たそがれよりでて、此方こなたへと還る楔。
定められた時、定められた地へと導きし泡沫うたかたみち
我は鍵。我は路。我は楔なりて。契約者よ、いと高き御方に愛されし者よ…願わくば正しく我を振るえ。
約束された勝利の先に我を提げよ。
……。

 …ね?自己主張の激しい鍵でしょう?
因みに使い方は銀の鍵を口頭か思考入力で呼び出す。
「転移」か「土地の交換」なのかを選び前者なら具体的な場所、後者ならワールドマップが現れるので何処と何処の土地を「交換」するのかをタッチして決める。
使用する際に魔力MPとは別にSP…スキルポイントも使用するので注意が必要。
……。

…正直いろいろと突っ込みどころの多い自己主張激しい聖遺物スティグマだがーーまあ、こうしてユリエラをと決めたのだから。…その慧眼は正しいのだろう。
この祝賀会は各国の王族と貴族の交流と親睦を目的としている。
ここにはユリエラが「家毎」鞍替えする事になる帝国ーーヴァルバロッサ帝国からも皇太子夫妻とその息子…第一皇子も同行しているようだ。
……?…ああーー、はい。
笑顔が此方に向けられてますね~。
……。
取り敢えず会釈しておきましょう。軽く。…はい。これでいいでしょう。


 「いや、それだけかい!」
 「何が…でしょう?」
 「元婚約者に思うことはないの?とエルは言っているのよ」
 「?…はい?」
挨拶は終わったのでユリエラは級友である帝国の皇女殿下に誘われるまま、王族用控え室に招かれソファに座って会場にあるものと同じものを侍女より取り分けて貰い、談笑。
本当にわからない、と首を傾げるユリエラにはぁ、もういい…と呆れたような…諦めたような視線を向ける失礼皇太子から目を反らし皿の上のローストビーフをフォークで突き刺しタレを着けて口に放り込む。
 「~~っ!!」
美味しい…ああ、やはり王宮の料理は違いますね。
我が家(侯爵家)も一応貴族ですからの料理は食べてますよ?ですが、やはりーー王族が食べるものはやはりその国の頂点。
国の“指標”ともなる王宮の料理人の腕は……凄いですね。
前世日本も食に煩い国と他国からは見られてましたが──それに通じる垣間見えますねぇ。
んーー!美味しい!!
因みに私調べでは帝国皇宮が一番、ブルーライト王国王宮が二番、エンドハイム侯爵家領主館厨房が三番目…ですね。
帝国はそこ実力主義のようで…わりかし下剋上が罷り通るお国柄。
「武」でも「文」でも何でも頂点トップを獲った者勝ち。
例え皇帝の直系男児であってもそのまま「皇位継承」が成る国ではなく──誕生してから成人する満16歳までの学園での素行、学びに対する親身な姿勢、ふとした瞬間の言動、テーブルマナー、国内外の上位貴族の顔と名前、領地や特産品の一致、学園の成績、帝国憲法や国際法の把握、お茶会マナー、夜会マナー、共用語と大陸語、帝国の土着の部族の言語と訛り…それから交渉事で優位になる会話運び、又不利になった・なりそうな時の上手い避し方等々。
それから帝王学もに用意されている。
帝国皇帝陛下は…45歳だ。上皇様の妹御のお子である。
そして、「皇太子」と呼ばれたアズーリアはユリエラ、エリーゼの両者の同級生であり、飛び級で僅か数年(一年くらい)で卒業した後は帝国に小等部から訳だ。
因みにユリエラが留学したのはヴァルバロッサ帝国帝立バルバロッサ学園は満6歳~18歳までを学園に在籍する事になる。
6歳から12歳までの6年を「小等部」、
12歳から15歳までの3年を「中等部」、
15歳から18歳までの3年を「高等部」、
18歳から21歳までの4年を「大学部」、
21歳から25歳までの4年を「大学院部」
としてそれぞれ独立した“浮遊都市”…[学園島・バルバロッサ]は帝都から東に30㎞離れた古代遺跡にある古代遺物アーティファクトを駆動してそのまま利用している。
それぞれの「学園」は浮島毎に独立し、分かれ、存在する。
浮遊都市の「学園」に通う生徒は国内外から訪れ日夜勉学や研究に勤しんでいる。
ヴァルバロッサ帝国は魔導大国でもあり、そこには帝国の技術の粋が分段に使われ、惜しみ無く注ぎ込まれた魔力や古代遺物の賜物。
空を駆る鉄の馬車ーー、いやそれよりも高性能な「飛行船」や、地を物凄い速さで走る鉄の馬車ーー魔動車。馬や騎獣に代わる鉄の馬ーー「魔動バイク」。
魔動バイクよりも遅いが何の燃料も必要としない「自転車」。
これらが帝国の都市には多く稼働していて、それともはまた別の「魔動列車」クーリアンテは帝都から各都市へとレールは引かれており…ブルーライト王国が中世ヨーロッパ風の頃の時代なら、帝国は近代。
馬車など廃れており、式典で形式的にしか使われて居らず、区画整理された帝都はアスファルトが敷かれ、車線と歩道を隔たる白線が黒のアスファルトに堂々と書かれている。
信号機もあるし、道路表記は前世日本にある物と大差がない。
…電線がなく、魔石が代わりに等間隔に置かれ街灯は全て魔道具。
魔動テレビからは常にドラマや歌、教育番組や料理番組、政治・経済や国からの発表なんかも時々行われる。
特に人気なのは…「週間冒険者通信」だろうか。
冒険者に必要な装備や備品の紹介や近隣都市のダンジョン情報、緊急依頼の危険度、該当地区の詳細なんかも流されたりするので避難を早めたりする効果になる。
…勿論アニメなんかも観れたりする。
…中等部、ないし中学校を卒業するまでは義務教育であり場合によっては無料で通える。
スラムはなく、平民貴族関わらず同じ学び舎で寝食を共にする…。
───…




 「…帝都に戻りたい」
 「アリサ…私でもですが一応我が家は王国の所属ですよ。今その手続き待ちですから…ね?」
 「……はい。お嬢様」
…ボソッと何を渋々と呟いているのでしょうか。
私の専属侍女、アリサは。
アリサは3歳上の19歳です。付き合いは10年になりますよ。元々我が家に仕えてくれているローゼッタ子爵家の次女なんです。ええ、そうです。私も次女。アリサも次女。次女繋がりで私達は歳の離れた姉妹のように仲良くして頂いておりますのよ。今も。





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